1. のりが ないのに、なにで くっついて いるの?
1. のりを使っていないのに、なぜ貼りつけるのか
1. 接着剤なしの密着:公式説明とメディア解説は何を言っているか
おさらの うえに ラップを のせて、ふちの ところを ゆびで おさえて みましょう。ラップは おさらの ふちに ぴたっと くっつき、はなしても はがれません。
ラップの くっつく もとは、ねばねばした ものでは ありません。ラップが たいらで やわらかいので、おさらに ぴったり ちかづけます。ちかづくと、ものを つくっている ちいさな つぶ(ぶんし)どうしが、ひっぱり合う ちからが はたらきます[1]。
この ちからは、ラップの メーカーの せつめいでは「ひょうめんが とても たいらで、おさらとの あいだに すきまが できにくい」と 書かれて います[3]。
では、「やわらかい」と、どうして くっつくのでしょうか。
ラップの端をお皿のふちに当てて、指で軽くなでてみましょう。手を離しても、ラップは皿の形に沿って貼りついたままです。
メーカーの旭化成ホームプロダクツは、サランラップの表面を「とても平滑で、お皿などとフィルムの間に隙間ができにくく、しっかり密着する」と説明しています[3]。接着剤の話は出てきません。
メディアの解説では、ここに「分子間力(ファンデルワールス力)」という名前がつきます。ラップの表面がとても滑らかなので、貼りつくのに十分な大きさの力が働く、という説明です[1]。
つまり、のりのような「つなぐ物質」がなくても、ラップが器に十分近づけば、貼りつく力は生まれるということです。では、ラップはなぜ器に近づけるのでしょうか。
食品用ラップが器に貼りつくとき、接着剤は介在しない。旭化成ホームプロダクツ(サランラップ)の公式説明は、「表面がとても平滑で、お皿などとフィルムに隙間ができにくく、しっかり密着する」という点にとどまる[3]。
一方、メディアの解説は、密着の原因の一つに分子間力、特にファンデルワールス力を挙げる。ラップの表面が滑らかなので、吸着するのに十分な大きさの力が働くという[1]。メーカーが力の名前を挙げていないことは押さえておきたい。力の名前と仕組みは、メディアの解説に依拠している。
この二つは対立しない。「隙間ができにくい」という事実がまずあり、その結果としてどんな力が働くか、を説明しているのが分子間力だと読める。では、隙間ができにくいのは、素材がどういう性質だからか。
2. ラップが「たいら」で「やわらかい」と、なにが おきるの?
2. 「平らで柔らかい」と、器とラップの間で何が起きるのか
2. 平らで柔らかいことの意味:空気が押し出され、外の空気に押される
テレビの ばんぐみ『チコちゃんに しかられる!』では、ラップが くっつく わけは「まっ たいらだから、そして やわらかいから」と こたえて いました[2]。メーカーの ぎじゅつの たんとうの 人も、「たいら」と「やわらかい」を 2つの とくちょうと して あげて います[2]。
やわらかい ラップは、おさらの かたちに そって ぴったり まがります。そのとき、ラップと おさらの あいだの 空気が、はしの ほうへ おし出されます。
あいだの 空気が へると、まわりの 空気が、ラップを おさらに おしつけます[2]。きゅうばんが ものに くっつくのと、おなじ かんがえ方です[1]。
ただし、ふくろで 空気を ぬく ほど ぎゅっと すいつく わけでは ありません。ほんの すこし、まわりの 空気が おす 力が たすけて いる、と いう はなしです。
もう 1つ、ぶんしの 力は、どのくらい ちかづけば はたらくのでしょうか。
やわらかいから、器に沿える
テレビ番組『チコちゃんに叱られる!』では、ラップがくっつく理由の答えは「真っ平らだから、そして柔らかいから」でした[2]。メーカーの技術部の担当者も、「平ら」と「柔らかい」の2つがラップの特徴だと話しています[2]。
ラップが柔らかいと、器の形に沿ってぴったり曲がります。すると、ラップと器の間にあった空気が外へ押し出されます。
空気の押す力も手伝っている
間の空気が減ると、周りの空気が外からラップを器へ押しつけます。この仕組みは「減圧吸着」と呼ばれ、吸盤がものにくっつく原因と同じです[1]。
このほか、静電気も一部関わると紹介されていますが、主役だとは説明されていません[2]。ラップが貼りつく理由は、一つの力ではなく、いくつかの力が重なったものと考えられています。
ところで、分子の間に働く力は、どのくらい近づければ強くなるのでしょうか。
番組『チコちゃんに叱られる!』が示した答えは、「真っ平らだから、そして柔らかいから」だった。解説記事によれば、メーカーの技術部の担当者も、平らさと柔らかさを二つの特徴としている[2]。柔らかいと、器の形に沿って密着し、間の空気が押し出される。空気が減れば、外の空気の圧力が、ラップを器へ押しつける方向に働く[2]。
この現象は「減圧吸着」と呼ばれ、圧力の差で物をくっつける仕組みで、吸盤と同じ原理とされる[1]。ただし、解説記事は減圧吸着を、分子間力と並ぶ原因の一つとして挙げているにすぎない。それぞれの大きさや主因までは、解説記事は示していない。
静電気も、一部関わると紹介される[2]。ここから、ラップの密着は、①分子間力、②周囲の空気の圧力、③静電気、の複数の寄与の合計と見るのが無理のない読み方になる。では、①の分子間力は、器とどれほど近づけば働くのか。
3. ぶんしの 力は、どのくらい ちかく ないと はたらかないの?
3. 分子の力は、どれくらい近づくと強くなるのか
3. 距離が少し変わるだけで、ファンデルワールス力はどう変わるか
ぶんしどうしが ひっぱり合う 力は、ぶんしかんりょくと いいます。その なかの 1つが、ファンデルワールス力です[1]。
この力の とくちょうは、ちょっと はなれただけで、きゅうに よわく なる ことです[4]。ですから、ラップが おさらに「ぴったり」ふれて いることが たいせつです。
もう 1つ、ふれて いる ひろさが ひろいほど、力は つよく なります[1]。ひとつぶ ひとつぶの 力は とても よわくても、ひろい ところで たくさん あつまれば、ぺたっと くっつく、と いう わけです。
では、どんな ラップでも おなじように くっつくのでしょうか。
少し離れただけで急に弱くなる
分子間力の一種であるファンデルワールス力は、原子や分子の間に働く力です。百科事典的な解説では、狭い意味のものは、原子どうしの距離の7乗に反比例する、とされています[4]。
7乗に反比例とは、距離が2倍になると、力が128分の1になるということです(2の7乗が128。原子1対の間の話で、ラップのような広い面の合計ではこのとおりにならない点には注意が要ります)。それほど、近くでないと働かない力なのです。
広く触れるほど強い
この力は、接触面積が広いほど強く働きます[1]。ラップが平らで柔らかいと、器に広く、近く触れます。小さな力が広い範囲で足し合わされて、手を離しても貼りついたままになる、と読めます。
では、ラップの種類が変わると、くっつき方は変わるのでしょうか。
ファンデルワールス力は、原子・イオン・分子の間に働く分子間力の一種である。百科事典的な解説では、狭義のものは原子間距離の7乗に反比例するとされる[4]。距離が2倍になれば力は2の7乗、つまり128分の1になる計算だが、これは原子1対の間の話であり、ラップのように広い面全体では、足し合わせの結果が単純な7乗則とは一致しない。
それでも、この距離への強い依存から、一つの帰結が導かれる。分子間力が実際に働くのは、表面どうしが十分に近づいた場合だけだ。ラップが器の表面に平らに沿い、間の空気が押し出されるという前章の過程は、距離を縮めるための仕組みと位置づけられる。
もう一つの条件は面積である。この力は接触面積が広いほど強く働く[1]。以上から、「平らで柔らかい」とは、器との距離を縮め、かつ触れる面積を広げる、という二つの役割をまとめた言い方になる。では、この条件は素材によってどう変わるのか。
4. ラップの しゅるいで、くっつきやすさは ちがうの?
4. ラップの素材によって、くっつきやすさは変わるのか
4. 素材と添加剤:PVDC・ポリエチレンで密着性はどう違うか
おうちで つかう ラップは、おもに 2しゅるいの ざいりょうで できて います。ポリ塩化ビニリデンと、ポリエチレンです[6]。
ざいりょうに よって、くっつきやすさは ちがいます。ポリエチレンの ラップの なかには、ねばりを もつ ざいりょうを くわえて、くっつきを おぎなって いる ものも あります[7]。
メーカーは、サランラップは ほかの ざいりょうの ラップに くらべて くっつきやすさが すぐれて いる、と せつめい して います[8]。
では、ラップの ほうでは なく、のせる がわの おさらは どうでしょう。
家庭用は二つの素材が中心
家庭用のラップは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)製かポリエチレン製が主です[6]。業務用は、以前は塩化ビニル(PVC)製が使われ、現在は多層のフィルムが使われます[6]。
素材と添加物で変わる密着
ポリエチレン製の中には、粘着剤にあたる添加物を加えて密着を補うものもあります[7]。サランラップの業務用の公式説明は、他の素材のラップより密着性に優れる、としています[8]。つまり、くっつきやすさは、素材だけでなく、添加物や構造でも調整されているようです。
ラップの側が同じでも、器が変わったら、どうなるのでしょうか。
家庭用ラップは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)製またはポリエチレン製が主で、業務用は以前PVC製が使われたが、現在は多層フィルムが使われる[6]。日本の家庭用の主流はPVDCとポリエチレンであり、PVC製を前提とした一般向けの説明を、そのまま家庭用に当てはめないよう注意したい。
素材によって密着のしやすさは調整されている。ポリエチレン製の一部には粘着剤の添加で密着を補うものがある[7]。メーカー公式には、サランラップが他の素材より密着性に優れるという説明もある[8]。
なお、PVDC・PVCでは樹脂を柔らかくするために可塑剤が使われる[7]。ただし、可塑剤が密着の原因だと明記した資料はなく、柔らかさに関わる添加物、という位置づけにとどまる。ここまでをまとめると、密着性には、①素材の平滑さ・柔らかさ、②添加物による調整、の二層がある、と見るのが無理のない読み方だ。では、受け手の器の側には条件はないのか。
5. おさらの ほうが かわると、どう なるの?
5. 器の材質によって、貼りつき方は変わるのか
5. 受け手側の条件:ガラスの器と木製の器での差
ガラスの おさらや コップには、ラップは くっつきやすい と いわれます[1]。ガラスの ひょうめんは、なめらかで、ラップが ぴったり ふれやすい からだと 考えられます。
いっぽう、木で できた おわんや おさらには、ラップが くっつきにくい ものが あります[1]。木の ほうが くっつきにくい わけまでは、しりょうでは はっきり 書かれて いません。ひょうめんの ようすの ちがいが かかわって いるかも しれませんが、わかって いない ところです。
もちろん、おなじ ガラスでも、よごれて いたり、水が ついて いたりすれば、ようすは かわる かもしれません。ここは、自分で ためして みると おもしろい ところです。
ガラスなどの食器にはラップが吸着しやすく、木製のものなど吸着しにくいものがあります[1]。
ガラスの表面は滑らかで、ラップが広く、近くまで触れやすいのでしょう。それなら、分子間力が働く条件に合います。ただし、これは本文でここまで説明してきた条件からの推測です。
木製の器が貼りつきにくい理由は、元の解説では図で示されているだけで、表面の粗さなどと断定はできません[1]。器の側にも、くっつきやすさを決める条件があること、そしてその中身には、まだ細かく言えないことがあること、までが確かです。
受け手の器については、ガラスなどはラップが吸着しやすく、木製のものなどは吸着しにくいとされる[1]。これを前章までの条件に当てはめると、ガラスのように表面が滑らかな器は、ラップが近く・広く触れる条件を満たしやすい、という推論が成り立つ。
ただし、この推論は記事の読み方であり、資料が明言したものではない。木製の器が貼りつきにくい理由は、元の解説では図示にとどまり、表面の凹凸や吸水性などを原因と断定する根拠は、資料の範囲には見当たらない[1]。
以上をまとめると、確かなのは二点だ。ラップの貼りつきは、ラップ側の平らさ・柔らかさと素材だけでなく、器の材質にも左右される。そして、材質ごとの差が生じる詳しい仕組みは、資料からは言えない。この先は、各自が器を変えて観察できる領域になる。
6. ラップを おさらに かぶせて、くらべて みよう
6. 家の器にラップをかけて、くっつき方を比べてみる
6. 家の器で条件を変えて、貼りつき方を観察する
おうちの人に ことわって、ちがう ざいりょうの 入れものを 3つ ならべて みましょう。ガラスの コップ、プラスチックの いれもの、木の おわんなど、いろいろな ざいりょうの ものです。
どれにも おなじ ラップを かぶせて、ふちを やさしく なでます。ラップの はしを そっと ひっぱって、どれが はがれやすいか くらべます。
ラップの はこの はは ゆびを きる ことが あるので、おうちの人と いっしょに つかいましょう。わるく なった ものや われやすい ものは つかいません。
くっつき方に ちがいが あったら、「なぜだろう」と かんがえて みましょう。こたえが 1つとは かぎりません。
器を変えて比べる
家にある器を3つ選びます。ガラス、プラスチック、木のように材質が違うものです。同じラップを、同じように、ふちに沿って軽く貼ります。
ラップの端をそっと引っぱって、どの器がいちばん外れにくいか、手ごたえで比べます。器の内側が濡れているときと乾いているときで、結果がどう変わるかも見ると、条件の違いが分かります。
ラップの箱の刃で手を切らないよう、家の人と一緒に使いましょう。欠けた器や割れやすい器は使いません。
もっと知りたくなったら
メーカーの公式ページは、ラップの表面や密着性について、短い言葉で説明しています。参考にした情報源にある、メーカーの公式ページとメディアの解説を見比べると、「どこまでがメーカーの説明で、どこからが解説者の説明か」が見えてきます。
家庭で行える観察は、ラップを固定して器の材質だけを変える方法である。ガラス・プラスチック・木製の器に、同じラップを同じ向きでかけ、端を同じくらいの強さで引いて外れやすさを比べる。濡れているかどうかなどの条件を一つずつ変えれば、条件ごとの違いを観察して記録できる。結果は目安として扱う。ただし、箱の刃で怪我をしないよう、家の人と行うこと。
原典に当たるなら、メーカーの公式説明[3]と、メディアの解説[1][2]を並べ、力の名前がどこから出てくるかを比べる。ファンデルワールス力そのものは辞典的な解説がある[4]。ラップの密着性が素材ごとにどう測られているかは、公的な試験法を調べると、さらに詳しいことが分かるはずだ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。資料によって細部の説明が異なることがあります。
- ねとらぼ(QuizKnock)「『食品用ラップ』はなぜくっつくのか?」 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1904/28/news007.html (分子間力・接触面積・減圧吸着・器による差)
- TBS系の番組解説記事「チコちゃんに叱られる! ラップがくっつく原理」 https://tmbi-joho.com/2021/12/11/chiko155-wrap/ (平らで柔らかい理由・静電気の位置づけ)
- 旭化成ホームプロダクツ「サランラップ 商品紹介」 https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/saranwrap/ (メーカーによる密着の説明)
- Wikipedia「ファンデルワールス力」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%8A%9B (距離と力の関係・ヤモリの例)
- Wikipedia「食品用ラップフィルム」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E5%93%81%E7%94%A8%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0 (素材ごとの密着性の違い)
- サニパック「ラップフィルムとは?」 https://www.sanipak.jp/faq/words/film.html (家庭用・業務用の素材)
- パックタイムス https://packtimes.net/useful/0808/ (可塑剤・添加物による調整)
- 旭化成ホームプロダクツ「プロに使われる理由|サランラップ(業務用)」 https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/business/saranwrap/reason.html (メーカーによる密着性の説明)
なおした ところ
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