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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

さむさに なれると、ふるえは どう なる?

毎日少し寒いと、ふるえはどう変わる? 熱の量がほぼ同じだった研究

寒冷順化でふるえはどう変わるか ── 熱産生は同程度のまま、筋肉から褐色脂肪へ担当が移るという解釈と、その限界

分野:からだ

まいにち すこしずつ さむい ところに いると、ふるえが へる 人が います。ふるえが へっても、からだの ねつの つくりかたは、おなじくらいだった という けんきゅうが あります。

ふるえは ねつを 出す しくみなのに、へって だいじょうぶなのでしょうか。ねつは どこで 出て いるのか、ふるえなくなる ことと、さむさを かんじなく なる ことは おなじなのかが わかります。

毎日少しずつ寒さにあたる実験で、ふるえの強さが約21%下がったのに、体全体の熱づくりは同じ程度だった、という報告があります。ふるえは熱を出すための動きなのに、減っても熱が足りなくなったわけではないようです。

では、熱はどこで出ていたのでしょうか。「担当の交代」と、「寒さの感じ方の慣れ」という、似ているけれど別々の話を通して、人の体が寒さに合わせて変われる範囲が分かります。

4週間の寒冷順化の前後で、ふるえの強さは約21%低下したが、18℃前後の弱い寒さでの熱産生量は1623 kJと1590 kJで、ほぼ同じだった[3]。ふるえが減ったのに熱が減らないなら、熱はどこで出ているのか。

この問いに、褐色脂肪の増加と、「慣れ」の2つの種類を分けて答える。さらに、研究どうしで結果が分かれる部分や、人の適応の限界も含めて、何が言えて何が言えないのかが分かる。

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1. ふるえは、なんの ために あるの?

1. ふるえは「熱をつくる動き」だった

1. シバリングは、筋肉が外へ動かずに熱を出す仕組み

さむい 朝、ぶるぶると ふるえた ことは ありませんか。あれは、筋肉きんにくが ちいさく ちぢんで いる のです。

ふつう、筋肉きんにくが ちぢむと、うでや あしが うごきます。でも ふるえの ときは、からだが うごかない まま、筋肉きんにくが ちぢみます。つかった エネルギーが、そのまま ねつに なります[1]。

ふるえは、からだを あたためる ための ストーブの ような もの です。ただし ほんとうの ストーブと ちがって、筋肉きんにくは つかれて しまいます。

では、まいにち さむさに あたって いると、この ふるえは どう なるのでしょうか。

寒い朝に体がぶるぶるふるえるのは、筋肉が小刻みに縮んでいるからです。ふつう、筋肉が縮むと腕や脚が動きます。ふるえのときは、曲げる側と伸ばす側の筋肉が同時に縮むので、体は動かないまま、使ったエネルギーがほぼ全部熱になります[1]。

つまりふるえは、動かずに熱だけを出す、体の暖房のようなものです。ただし筋肉を使い続けるので、長くは続けにくい暖房でもあります。

ここで一つ、不思議な話があります。毎日少しずつ寒さにあたる実験を続けると、ふるえが弱くなる人たちがいたのです。暖房を弱めたのに、体は寒さに耐えられるのでしょうか。

シバリング(ふるえ)は、拮抗する筋肉が同時に収縮し、外への仕事をしない筋収縮として起こる。使われたATPのエネルギーは仕事にならず、そのまま熱になる[1]。これを、ふるえによる熱産生という。

ふるえには、遅筋線維が担当する弱く続くふるえと、速筋線維が担当する強い断続的なふるえがあり、燃料も、弱いふるえでは脂質が中心、強い寒さでは筋グリコーゲンなどの炭水化物が中心になるとされる。ただし筋肉を使い続けるため、持続には向かない。

一方、繰り返し寒冷にさらす実験(寒冷順化)では、ふるえが弱まる例が報告されている。熱づくりの暖房が弱まったのに、体温を保つ力はどうなるのか。これが、この記事の最初の問いだ。

2. ふるえが へったのに、ねつは へらなかった

2. ふるえが約21%減っても、熱の量はほぼ同じ

2. 4週間の順化で、ふるえ強度21%減・総熱産生はほぼ不変

カナダの けんきゅうで、男の人 9人が 実験じっけんに きょうりょく しました。つめたい 水を ながす スーツを きて、1日 2時間、1しゅうかんに 5日、4しゅうかん つづけました[3]。

すると、ふるえの つよさは、およそ 21% へりました。ただし、これは「ふるえの つよさ」が へった という こと です[3]。

のこる もんだいは、ねつです。すこし さむい へやで はかると、からだ ぜんたいが つくる ねつは、まえも あとも おなじくらい でした[3]。ふるえが へっても、ねつは へって いません。

では、ふるえの かわりに、だれが ねつを 出して いるの でしょうか。

9人が協力した、4週間の実験

カナダの研究チームは、成人男性9人に協力してもらい、10℃の水を流すスーツを着て、1日2時間、週5日、4週間続けてもらう実験をしました[3]。

実験の前と後で、ふるえの強さを比べると、全身でも太ももの筋肉でも、およそ21%下がっていました[3]。ただしこれは「ふるえの強さ」の変化で、熱の量の変化ではありません。

熱の量は、ほとんど変わらなかった

約18℃の弱い寒さに、体全体がどれだけ熱をつくるかを測ると、順化の前は1623 kJ、後は1590 kJでした[3]。差は33 kJで、およそ2%です。ふるえの強さは約2割下がったのに、熱の量はほぼそのまま。研究チームは、熱を出す担当が筋肉から別の場所に移ったと解釈しています[3]。

ただし、9人だけの小さな研究で、全員が男性です。この一つの結果だけで、人の体全体について言い切ることはできません[3]。

カナダの研究グループは、男性9人に10℃の水を循環させるスーツを着せ、1日2時間・週5日・4週間の寒冷順化を行った。順化の前後で、全身および外側広筋のふるえ強度は約21%(P < 0.05)低下した[3]。

ここで注意するのは、低下したのが「ふるえの強度」で、熱の量ではない点だ。約18℃の弱い寒さでの全身の熱産生量は、順化前が1623 ± 42 kJ、後が1590 ± 69 kJで有意差がなく(P = 0.67)、差は33 kJ、約2%にとどまる。しかも、寒さにさらされたとき筋肉でプロトンリーク(エネルギーが熱として漏れること)が増える急性の反応は、順化後には消えていた[3]。

筋肉はふるえも熱の漏れも減ったのに、全身の熱は変わらない。そのため、熱をつくる担当が筋肉から別の組織に移ったと解釈されている[3]。ただし対象は9人の男性で、一般化には慎重さが要る。

3. あたらしい たんとうは「褐色脂肪かっしょくしぼう」

3. 新しい担当の候補は、ふるえない熱づくり──褐色脂肪

3. 褐色脂肪と非ふるえ熱産生 ── 活動体積45%増の意味

おとなの からだには、褐色脂肪かっしょくしぼうと いう、ねつを 出す ための あぶらが あります。ふつうの あぶらは ためる もの ですが、この あぶらは エネルギーを ねつに かえます[2]。

おなじ 4しゅうかんの けんきゅうで、はたらいて いる 褐色脂肪かっしょくしぼうの 大きさが 45%ふえて いました[3]。ふるえが へった ぶん、ふるえない ねつづくりが ふえた のかも しれません。

この あぶらは、赤ちゃんだけの ものでは ありません。日本の 研究では、17℃の へやで 毎日 2時間、6しゅうかん すごして もらった ところ、さむい ときに 出す ねつが ふえました[8]。

ところで、この 毎日の さむさで、からだだけで なく、「さむい」と いう きもちも かわる のでしょうか。

ふるえずに熱を出す仕組み

褐色脂肪は、脂肪をためるのではなく、エネルギーを熱に変える特別な脂肪です。ふるえを伴わない熱づくり(非ふるえ熱産生)の中心とされます[2]。ふるえは寒さへの短期的な対応で、褐色脂肪を使う方式は、長く続く寒さへの対応と整理されています[2]。

先の4週間の実験でも、活動している褐色脂肪の体積は45%増え、その酸化代謝はおよそ2.8倍(182%増)になっていました[3]。同じ研究グループの先行研究(男性6人)でも、褐色脂肪の活動体積は66 mLから95 mLに増えています[4]。

大人にも、日本の研究にも

褐色脂肪は赤ちゃんのものと思われがちですが、大人にもあります。男性24人が16℃の軽い寒さにあたったとき、23人で活動が見られました[7]。北海道大学などの研究では、17℃の部屋で毎日2時間、6週間過ごすと、寒さでの熱産生が1日あたり108 kcalから289 kcalに増えました[8]。

筋肉も、ふるえずに熱を出す場所の一つだとされています。マウスでは、褐色脂肪を取り除くと、長く寒さにさらされたときに体温を保てなくなりました。人にそのまま当てはめることはできませんが、褐色脂肪と筋肉の両方が大切だと示す実験です[2]。

体の中の熱の担当は分かってきました。では、寒さを感じる「気持ち」の方は、体の変化と同じ速さで変わるのでしょうか。

ふるえを伴わない熱産生(非ふるえ熱産生)は、褐色脂肪などで、酸化的リン酸化を脱共役させ、エネルギーをATPにためずに熱にする仕組みだ。ふるえが短期の適応であるのに対し、褐色脂肪を使う方式は長期の適応とされる[2]。

先の4週間の順化では、代謝的に活動する褐色脂肪の体積が45%増え、褐色脂肪の酸化代謝の合計は182%増(約2.8倍)になった[3]。同じ研究グループの先行研究(男性6人・同じ条件)でも、活動体積が66 mLから95 mL(45%増)になり、寒さでの酸化代謝が2.2倍に増えている[4]。

成人にも褐色脂肪があることは、16℃の軽い寒さで男性24人中23人(96%)に活動が見られ、22℃では見られなかった2009年の研究が示した[7]。北海道大学の米代武司らは、17℃の部屋で毎日2時間・6週間の寒冷刺激を行い、寒さでの熱産生が108.4から289.0 kcal/日に増え、褐色脂肪の活動も上がったと報告した(寒冷群12人)[8]。

筋肉自身も非ふるえ熱産生の場になる。マウスで褐色脂肪を外科的に除くと長い寒冷曝露で体温を保てず、褐色脂肪と筋肉の両方が重要だと示された[2]。ただし、これはマウスの結果だ。次の問いは、熱づくりが変わるとき、寒さの「感じ方」も同じように変わるのかである。

4. 「あたたかく かんじる」のは、べつの はなし

4. 10日間で、寒さが「楽」に感じられた

4. 10日間の順化で変わったのは、熱産生と感覚の両方

オランダの 実験じっけんでは、15〜16℃の へやで、1日 6じかん、10日かん すごして もらいました[5]。

10日あとの 人たちは、おなじ さむさを、まえより あたたかく、らくに かんじた そうです。「ふるえて いる」と かんじる ことも へりました[5]。

ところが、ふるえが はじまる までの 時間は、まえも あとも 50ぷんくらいで かわりませんでした[5]。「さむく ない きがする」ことと、からだが ふるえる ことは、べつの ことの ようです。

ほかの けんきゅうの まとめでは、つめたい 水に 何度も はいって なれる ときは、「いやな きもち」は よわく なっても、からだの ねつづくりは ふえず、むしろ 20%ほど さがった れいも ありました[6]。

そう すると、「なれる」には しゅるいが ありそうです。

寒さの感じ方は、体と別に変わる

オランダの研究チームは、15〜16℃の部屋で1日6時間、10日間過ごしてもらう実験をしました[5]。褐色脂肪の体積は665 ccから913 ccに増え、ふるえない熱づくりは、安静にしているときの代謝の10.8%から17.8%に上がっています[5]。

参加者の話も同じ方向でした。順化の後は、寒さを前より暖かく、楽に感じ、ふるえているという自己評価も減りました[5]。ところが、ふるえ始めるまでの時間は約50分で、前後で変わりませんでした[5]。

「慣れ」は一種類ではない

別の研究をまとめた論文によると、強い寒さ(冷水への繰り返しの浸水など)に慣れる場合は、不快感は弱まりますが、体の熱づくりの大きな変化は少なく、代謝が約20%下がった例もあります[6]。弱めの寒さを繰り返す場合には、ふるえない熱づくりが11%から18%に増えています[6]。

感じ方の慣れと、熱づくりの増加は、別の話です。同じ「寒さに慣れた」という言葉でも、中身が違うことがあるのです。

ところで、ここまでの実験では、結果が研究ごとに少しずつちがいます。それはどういうことなのでしょうか。

オランダの研究では、15〜16℃の室内で1日6時間・10日間の順化を行った。検出可能な褐色脂肪の体積は665 ± 451 ccから913 ± 458 ccに拡大し、非ふるえ熱産生は安静時代謝の10.8%から17.8%に上昇した[5]。

感覚の面では、寒さの感覚の累積評点が57%、自覚するふるえが61%、快適さの評点が72%変化した(出典の言い方による。72%が熱の量の72%増という意味ではない)[5]。ところが、ふるえが始まるまでの時間は約50分のまま(50 ± 11分と51 ± 12分)だった[5]。

レビュー論文は、この点を整理している。強い寒さへの繰り返し曝露(冷水への繰り返し浸水など)では、不快感は弱まるが大きな生理的変化は少なく、代謝が約20%低下した例もある。一方、弱めの寒さの反復(15℃・6時間・10日)では、非ふるえ熱産生が11%から18%へ有意に増える[6]。

つまり、「寒さに慣れる」には、感じ方の慣れ(馴化)と、熱づくりの増加(代謝的適応)という別の過程が含まれ、混ぜて読むと誤る。そして実験を並べるほど、結果が研究ごとに分かれる点が見えてくる。

5. けっかは、けんきゅうに よって ちがう

5. 研究によって、ふるえの変化は「減った」「変わらない」に分かれる

5. 同じグループでも、ふるえの結果は研究で分かれた

さいしょの 4しゅうかんの 実験じっけんの ひとたちは、ふるえが 21% へりました。ところが、おなじ 研究グループの すこし まえの 実験じっけん(男の人 6人)では、ふるえの つよさは、まえと あとで ほとんど かわりませんでした[4]。

どちらも 10℃の 水で、1日 2時間、4しゅうかん つづけた 実験じっけんです。それでも、ふるえの けっかが ちがいました。なぜ ちがうのか、りゆうは まだ はっきり しません。

わかって いるのは、人が 9人や 6人 ほどの ちいさな けんきゅうで、しかも みんな 男の 人 だった という ことです。

だから、「かならず ふるえが へる」とは いえません。

同じチーム、同じ条件でも

最初の実験を行ったカナダの研究グループは、少し前に、男性6人で同じ条件(10℃・1日2時間・4週間)の実験もしていました。そちらでは、褐色脂肪の活動体積が66 mLから95 mLに増え(45%増)、寒さでの酸化代謝が2.2倍になりましたが、ふるえの強さには、前後でほとんど差がありませんでした[4]。

褐色脂肪は、どちらでも増えています。ふるえだけが、「約21%減った」研究と「変わらなかった」研究に分かれました。

ここまでで言えること

理由について、資料は「寒さの強さが違うから」「測り方が違うから」などの説明を示していません。人数が少なく全員が男性なので、女性や子ども、高齢者にも同じことが起きるかは分かりません。

「毎日寒さにさらされると、ふるえが減って褐色脂肪が増える」と言い切るより、「そういう結果が出た研究がある一方、ふるえは変わらなかった研究もある」と言うほうが、資料に近い言い方です。

では、体を寒さに合わせて変える力には、どこまで期待できるのでしょうか。

ふるえの結果は、同じグループの研究でも一致しない。先行研究(男性6人、10℃・1日2時間・4週間)では、褐色脂肪の活動体積が66±30 mLから95±28 mL(45%増)に、寒さでの酸化代謝が2.2倍になったが、ふるえの強度は最大随意収縮の約2.1%と2.0%で、前後に有意差がなかった[4]。

9人の研究では、ふるえ強度が約21%下がった[3]。褐色脂肪が増える点は共通するのに、ふるえは「減った」と「変わらない」に分かれる。資料には、この違いが寒さの強さや測定方法によるのかを示す記述がないので、理由は断定しない。

この2つの研究は人数が6人と9人で、全員男性だ。ふるえが減るかどうかは条件しだいで、「順化すればふるえは必ず減る」とは書けない。次に、レビュー論文が人の適応の限界をどう整理したかを見る。

6. からだの かわる ちからには、かぎりが ある

6. 結局、人は寒さを何で乗り切っているのか

6. 適応の限界と、褐色脂肪を「ダイエット法」にしにくい理由

けんきゅうを まとめた 人たちは、人の からだが さむさに あわせて かわれる ところは かぎられる と かいて います。わたしたちは、おもに ふくや だんぼうで、さむさを のりきって いる のです[6]。

17℃の へやで 6しゅうかん すごして 褐色脂肪かっしょくしぼうが ふえた 研究を した 北海道大学の 人たちも、「さむさを ふだんの くらしに とりいれて やせようと するのは むずかしい」と のべて います[9]。

さむい 日に あたたかい ふくを きるのは、かしこい ことです。からだの しくみと、くらしの くふうが、いっしょに はたらいて います。

寒さへの適応について整理したレビュー論文は、人の体が一生のうちに寒さに合わせて作り変えられる部分は限られていて、おもに服や暖房などの行動で寒さを乗り切っている、とまとめています[6]。

つまり、ふるえが減ることも、褐色脂肪が増えることも、体の中の小さな調整です。「寒さに強くなる体になる」と言うより、服・暖房・食事など、くらしの工夫がそばで働いているからこそ、調整が助けになると考えるほうが、資料の言い方に近いです。

褐色脂肪が増えたのだからダイエットに使えないか、と思うかもしれません。17℃で2時間の寒冷刺激を6週間続けた研究では、体脂肪が約5%減りました(寒冷群12人、対照10人)[8]。ところが研究者自身が、肥満対策として寒冷刺激を日常に取り入れることは難しいと述べています[9]。

人の寒冷適応の全体像について、レビュー論文は、人が一生のうちに生理的に作れる適応は限られており、主に行動(服・暖房など)に頼って寒さの中で生きていると結論している[6]。ふるえの減少も褐色脂肪の増加も、この限られた範囲の中の調整だ。

なお、感じ方の慣れが体の熱づくりの変化と同時に起きる保証はない(前章)。2017年の研究では、ふるえの測定は4℃・150分の強い寒さ、熱産生量の比較は約18℃の弱い寒さと、条件が違っていた[3]。弱い寒さで熱の量が同じだったことは、強い寒さでも体温を保てることを意味しない。ふるえが減ったことだけから、体温をよりよく保てるようになったとはいえないので、「寒さに強くなった」とは書かない。

褐色脂肪を肥満対策に使えるかについて、北海道大学の米代らは、17℃・2時間・6週間の寒冷刺激で体脂肪が約5%減ったと報告したが(寒冷群12人・対照10人)[8]、研究者自身が、寒冷刺激を日常に取り入れることは困難と述べている[9]。冷水や薄着を我慢する形の「実践」は、低体温の危険もあり、勧められない。

7. じぶんの「さむい」を、てんすうに してみよう

7. 自分の「寒い」を、点数でつけてみる

7. 自分の「寒さの感じ方」を記録し、原典の数字と見比べる

さむさに あたる がまんは、しなくて いいです。かわりに、いつもの くらしの なかで、「さむい」を かんじた とき、1〜5の てんすうを つけて みましょう。

あさ そとへ 出た ときの さいしょの 1ぷんで、「1が ぜんぜん さむくない、5が とても さむい」の よう にです。おなじ ふくで、数日 つづけます。その日の きおんや かぜでも てんすうは かわるので、きおんも メモして おきましょう。

てんすうが かわれば、「かんじかた」が かわった かもしれません。でも ふるえや ねつの ことは、これだけでは わかりません。あたたかい ふくを きて、むりを しない ことが だいじです。

寒さに無理にあたる必要はありません。かわりに、いつもの暮らしの中で、寒さの感じ方を記録できます。たとえば朝、家の外に出た最初の1分で感じた寒さを、「1:ぜんぜん寒くない」〜「5:とても寒い」の点数でつけます。同じ服装で、数日続けます。点数だけでは、気温や風、服装の違いによる変化と、感じ方の変化を分けられません。

点数が下がっても、ふるえや熱づくりが変わったとはいえません。感じ方の慣れは、体の熱づくりとは別の話だからです。逆に点数が変わらなくても、体の中で小さな調整が進んでいる可能性は残ります。

この記事の数字は、小さな研究のものです。気になる数字があれば、出典欄の論文(英語)を、図や表のところから見てみると、「ふるえの強さ」と「熱の量」が別々に測られていることが分かります。実験は専門の人が管理して行っています。冷水に入る、薄着で長く過ごすといった実験を、まねしてはいけません。

寒さに自分を慣らそうとして、冷水や薄着を我慢するのは危険だ。代わりに、日常の中で感じ方を記録できる。朝、屋外に出た最初の1分の寒さを1〜5点で数日つけ、「感じ方の慣れ」の目安にする。ただし、点数の変化は熱づくりの変化を示さない(本記事の4章)。

原典を読むなら、Blondinらの2017年の論文(出典[3])で、ふるえ強度と全身熱産生が別の指標として測られている点、2014年の論文(出典[4])でふるえの結果が分かれた点を、表と図から確かめられる。van der Lansらの論文(出典[5])には、感覚の評点とふるえ開始時間の両方が載っている。ここで示した「約2%」は、1623 kJと1590 kJから著者が計算した値で、論文の記載ではない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事で使った資料です。英語の論文は、図や表だけでも確かめられます。

  1. 看護roo!「体温調節」の解説。https://www.kango-roo.com/learning/2299/ (ふるえで熱が出る仕組みについて。二次資料)
  2. Nature Asia 日本語ハイライト。https://www.natureasia.com/ja-jp/life-sci/research/1874 (ふるえない熱づくりと、長期の適応について。二次資料)
  3. Blondin et al. (2017) J Physiol. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5350439 (4週間の寒冷順化でふるえ強度が下がった研究。男性9人)
  4. Blondin et al. (2014) J Clin Endocrinol Metab. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4213359/ (先行研究。ふるえに有意差がなかった。男性6人)
  5. van der Lans et al. (2013) J Clin Invest. https://www.jci.org/articles/view/68993 (10日間の順化と、寒さの感じ方の変化について)
  6. Daanen & Van Marken Lichtenbelt (2016) Temperature. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4861193 (人の寒冷適応のレビュー。慣れの種類と限界について)
  7. van Marken Lichtenbelt et al. (2009) NEJM. https://cris.maastrichtuniversity.nl/en/publications/cold-activated-brown-adipose-tissue-in-healthy-men/ (大人の褐色脂肪について。男性24人。要旨のみ確認した二次的な情報)
  8. Yoneshiro et al. (2013) J Clin Invest. https://www.jci.org/articles/view/67803 (17℃・6週間の寒冷刺激で褐色脂肪の活動が上がった日本の研究)
  9. 北海道大学プレスリリース(2013年8月5日)。https://www.hokudai.ac.jp/news/130805_pr_med.pdf (研究者自身が、肥満対策への応用は難しいと述べた点について)

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