1. おなじ 百万円なのに、10年で なぜ ちがうの?
1. 同じ100万円なのに、10年で約28万円も差がつくのはなぜか
1. 単利と複利 ── 年7.2%・10年で約28万円の差
百万円を ぎんこうに あずけた ところを そうぞうして みましょう。1年 たつと、おかねに「りそく」が つきます。ここでは、1年で 7.2パーセント つく ことに します。
りそくの つけ方は 2しゅるい あります。「たんり」は、はじめの 百万円にだけ りそくが つきます。「ふくり」は、ふえた ぶんも ふくめた 合計に、つぎの りそくが つきます[1]。
10年 たつと、たんりは 172まん円です。ふくりは やく 200まん円に なります。ちがいは やく 28まん円です[2]。
りそくに、りそくが つく。これが ふくりです。たとえば、ゆきだるまを ころがすと、まわりの ゆきが くっついて どんどん 大きく なります。ふくりも、大きく なった ぶんに また ふえる ところが にて います。ただし ほんとうの おかねは、ゆきだるまのように かならず ふえる わけでは ありません。
100万円を、1年で7.2%の利息がつく預け先に10年預けたとします。利息のつけ方には、単利と複利の2通りがあります。
利息に利息がつくかどうか
単利は、最初に預けた元本だけに利息がつく方式です。複利は、できた利息を元本に組み入れ、その合計に次の利息をつけます。つまり利息が利息を生みます[1]。
単利では、毎年7.2万円ずつ増えるので、10年後は100万円+7.2万円×10=172万円です。複利では、1年目が107.2万円、2年目が約114.9万円と増え、10年後は約200万円になります。差は約28万円です[2]。
200万円は、1.072を10回かけた約2.004倍から出した値で、ちょうど200万円ではありません。金額も年7.2%も、解説に出てくる例の数字で、いつも手に入る利率ではありません。
単利は元本のみに利息がつく方式、複利は利息を元本に組み入れて次の利息を計算する方式である。複利では利息が利息を生む[1]。では、両者の差は実際にどのくらいになるのか。
民間の金融解説の例では、100万円を年7.2%で10年運用すると、単利は100万円+7.2万円×10=172万円、複利は初年度107.2万円、2年目約114.9万円と増えて約200万円になる。差は約28万円だ[2]。複利の10年後は1.072の10乗で約2.004倍となり、ちょうど200万円ではない。この数字は例示用の前提で、実在の商品の利回りを示すものではない。
単利は毎年同じ7.2万円しか増えないのに対し、複利は増えた分にも7.2%がかかるため、増え方そのものが年ごとに大きくなる。なお、複利の効果は金利が高いほど、運用期間が長いほど大きい[1]。
2. 元手が 2ばいに なるのは、何年 あとなの?
2. 元手が2倍になるまで、何年かかるのか
2. 倍増年数と72の法則 ── 単利との比較と近似の限界
1年目は、たんりと ふくりで ほとんど かわりません。ちがいが はっきり 出るのは、年数が たってからです。
では、元手が 2ばいに なるまで 何年 かかるのでしょう。かんたんな 目安が あります。「72」を、1年の りそくの パーセントで わります。3パーセントなら 72÷3で 24年です。10年で だいたい 2ばいに するには、7.2パーセントほどが めやすです[2]。
これは「72の ほうそく」と よばれる 目安で、ぴったり 2ばいを やくそくする 式では ありません。
最初の1年は、単利でも複利でも利息は同じです。差が出るのは2年目からで、年数がたつほど開きます。
倍になる年数の目安:72の法則
複利で元手が2倍になるまでの年数は、72を年利(%)で割ると、おおまかに分かります。3%なら72÷3で24年、10年でおよそ2倍にするには、年7.2%ほどが目安です[2]。
これは近似で、ちょうど2倍になることを保証する式ではありません。
単利だと、さらに遅い
年5%の場合で、自分で計算して比べてみます。単利は毎年元本の5%、つまり5万円ずつ増えるので、100万円が2倍になるのに20年かかります。複利は、1.05を15回かけると約2.08倍になるので、15年で2倍を超えます。金融の解説にも、単利は20年、複利は15年で2倍になるという比較があります[3]。
複利で資産が2倍になる年数は、72を年利(%)で割った値が目安になる。3%なら72÷3で24年、10年でおよそ2倍にするには年7.2%ほどが目安だ[2]。この「72」は近似で、倍増を保証するものではない。たとえば7.2%なら1.072の10乗が約2.004で、ほぼ2倍だが、計算上は誤差がある。
単利との差も年数とともに広がる。年5%という前提で考えると、単利では毎年5万円ずつ増えるので100万円が2倍になるのに20年、複利では1.05の15乗が約2.08なので15年で2倍を超える。金融の解説にも、単利20年・複利15年で2倍になるという同じ型の比較がある[3]。5%という前提と計算は、ここでは筆者が置いたものだ。
金利が高いほど、運用期間が長いほど複利の効果が大きい[1]という性質は、倍増年数の式からも分かる。では、この性質を、人はもっとずっと長い時間で使えないだろうか。そう考えた人物がいる。
3. フランクリンは、先の わかい 人に 千ポンドを のこした
3. フランクリンは、遠い未来の若者のために1000ポンドを残した
3. 1789年の遺言補足 ── 若い職人への貸付と、100年・200年の計画
アメリカの フランクリンは、1790年に なくなりました。その まえの 年、ゆいごんに ことばを たしました。ボストンと フィラデルフィアの 町に、千ポンドずつを のこす、と いう ものです[5]。
このおかねは、しごとを はじめる わかい 職人に かすための ものでした。かりた 人は りそくを つけて かえします。その りそくで、おかねは また ふえて いきます[5]。
フランクリンは、百年で およそ十三まんポンドに なると かんがえた と いわれます[6]。ふくりの 力を、百年、二百年の 長さで ためそうと したのです。
1789年6月23日、フランクリンは遺言に補足(コデシル)を加えました。ボストンとフィラデルフィアに、それぞれ1000ポンドを残すという内容です。翌1790年に亡くなりました[5]。
若い職人に貸すお金
お金の使い道は、修業を終えた若い職人にお金を貸すことでした[5]。返された利息が基金に加わり、基金がだんだん大きくなる、という考えです。
フランクリンは、年5%で100年たつと約13万ポンドになると見込み、その一部を公共の事業に使い、残りをさらに100年運用する計画を立てたと伝えられています[6]。1000×1.05の100乗は約13万1500で、この見込みは複利の計算と合います。ただし、これは見込みであって、実際の額ではありません。
フランクリンは1789年6月23日付の遺言補足で、ボストンとフィラデルフィアにそれぞれ1000ポンドを残した。用途は、修業を終えた若い既婚の職人への貸付である。翌1790年に没した[5]。返済に利息がつくため、基金は貸し付けるたびに複利で成長するはずだった。
では、どれほどの成長を見込んでいたのか。年5%で100年後に約13万1000ポンドになると計算し、その一部を公共事業に使い、残りをさらに100年運用させる計画を立てたと伝えられる[6]。1000×1.05の100乗は約13万1500で、数値は複利の計算と合う。ただし、この13万ポンドは遺言原文で照合したものではなく、紹介記事による伝聞である。見込みの額と実際の運用結果の比較は、次章で見る。
4. 二百年 あとの 千ポンドは、どう なったの?
4. 200年後、1000ポンドはどうなったのか
4. 1890年・1908年・1990年 ── ボストンとフィラデルフィアの基金の経過
百年 たった ころ、ボストンの おかねは、1890年に 三十二まんドルほどに なりました。フィラデルフィアは、1887年に 七まんドルほどです[5]。
ボストンは この おかねと、おかねもちの カーネギーが よせた おかねを あわせて、技術を まなぶ 学校を 作りました。1908年に できあがりました[5]。
そして 二百年 あとの 1990年。ボストンは 四百五十まんドルほど、フィラデルフィアは 五十二まんドルほどに なって いました[4]。わかい 人の しごとや べんきょうに 使う ほうこうで、使い道が かんがえられました。
ドルと ポンドは べつの お金なので、フランクリンの 十三まんポンドと、ドルの 数字は、そのまま くらべられません。
最初の100年が過ぎたころ、ボストンの基金は1890年に約32万8000ドル、フィラデルフィアの基金は1887年に約7万900ドルになっていました[5]。
技術学校ができた
ボストンは、この基金に、実業家カーネギーが同じ額を上乗せすると申し出た寄付も合わせて、技術を学ぶ学校を建てました。フランクリン・ユニオンと呼ばれ、1908年9月25日に開校式が開かれました[5]。現在のベンジャミン・フランクリン技術研究所の前身です。
200年後の1990年
期限の1990年、ボストンの基金は約450万ドル、フィラデルフィアは約52万ドルになっていました[4]。使い道は、若者の職業訓練など、フランクリンの意図に沿う方向で検討されたと報じられています[4]。
なお、フランクリンが見込んだ約13万ポンドと、ここで挙げたドルの金額は通貨が違うため、そのままは比べられません。
見込みどおりに増えたのか。ボストンの基金は、1890年に約32.8万ドル($327,799.45)、フィラデルフィアは1887年に$70,800だった[5]。ボストンはカーネギーの上乗せ寄付と合わせて技術学校フランクリン・ユニオン(現Benjamin Franklin Institute of Technology)を建て、1908年9月25日に開校式を行った。つまり、最初の100年の成果は、基金そのものの増加に加えて、学校という形でも現れた。
では、200年後はどうか。1990年に期限が来たとき、ボストンは約450万ドル、フィラデルフィアは約52万ドルだった[4]。使い道は若者の職業訓練など、フランクリンの意図に沿う方向で検討された[4]。
ポンドとドルは通貨が違うので、フランクリンの見込み(約13万ポンド)と実際の額は単純には比べられない。それでも、利息が利息を生む仕組みを使って、1000ポンドが2つの都市で長く役に立ち続けたことは、記録から読み取れる。
5. 「ふくりは せかいの ふしぎ」と 言ったのは だれ?
5. 「複利は世界8番目の不思議」と言ったのは、だれなのか
5. 「複利は世界8番目の不思議」── アインシュタインの名言とされる言葉の出どころ
「ふくりは せかいで 八ばん目の ふしぎ」。この ことばは、アインシュタインが 言ったと いわれる ことが あります。ふくりの 話では、よく 出て きます。
でも、アインシュタイン本人が 言ったと 分かる もとは 見つかって いません。いちばん 古い にた 文は、1916年の 広告に ある 作り話の 会話です。「八ばん目の ふしぎ」の 形は、1925年の 広告で 見つかって います[7]。
広告の ことばが、あとから 有名な 人の 名前と むすびついた のかも しれません。
複利の話には、必ずと言っていいほど、アインシュタインの言葉として「複利は世界8番目の不思議」「人類最大の発明」が出てきます。ところが、本人が言った証拠は見つかっていません。
広告にあった言葉
名言の由来を調べた記事によると、いちばん古い似た文は1916年の広告にあります。複利を発明した人が特許を取っていたら、世界最大の発明になっただろう、という内容でした。「8番目の不思議」の形は、1925年のオハイオ州の広告に出てきます[7]。アインシュタインと結びつけた最初の例は、1976年のウォール・ストリート・ジャーナルだとされます[7]。
広告の言葉が、あとから有名人の名前と結びついたと推定されています。複利を「発明」「不思議」と呼びたくなる感覚は、広告を書いた人たちにもあったようです。
複利の解説には、アインシュタインの言葉として「複利は世界8番目の不思議」「人類最大の発明」がよく引かれる。しかし、本人の発言の証拠は見つかっていない。名言の調査では、最古の類似文は1916年の広告中の架空の会話で、複利の発明者が特許を取っていれば世界最大の発明になっただろう、という趣旨だった。「8番目の不思議」型は1925年のオハイオ州の広告に現れ、アインシュタインに結びつけたのは1976年のウォール・ストリート・ジャーナルが最初とされる[7]。
この調査は、広告コピーが後から有名人に結びついたと推定する。「言っていない」と断定せず、証拠がないという範囲にとどめて読むのが適切だ。引用を見たときは、誰が、いつ、何で言ったかをたどれるか、という習慣は、複利の計算と同じくらい役に立つ。
6. 紙と えんぴつで、ふくりを けいさんして みよう
6. 10%の複利を、紙と電卓で自分の手で確かめる
6. 出口 ── 自分で複利を計算し、一次資料と解説の読みどころを知る
100円が、1年で 10パーセント ふえる 場合を、紙に 書いて みましょう。
たんりは、毎年 10円ずつ ふえて、100、110、120、130、140、150円。ふくりは、110、121、133、146、161円と なります(小数は 切りすてました)。5年で、10円ほどの ちがいが 出ます。年数を 10年、20年と のばすと、ちがいは どう なるでしょう。電たくが あれば、1.1を かけて みても よいです。
もし、毎年 10パーセントふえるなら 72÷10で 7.2年で 2ばいの はずです。計算で たしかめて みましょう。ほんとうの 銀行の りそくは これより ずっと 小さい ことが ふつうです。
100円が年10%で増えるとして、紙に書いて比べてみましょう。単利は100、110、120、130、140、150円と、毎年10円ずつ増えます。複利は100、110、121、133.1、146.41、161.051円です(円未満は端数)。5年で約11円の差です。年数を10年、20年と延ばしたとき、差がどう広がるか、電卓に1.1をかけ続けて見てみましょう。
72の法則では、72÷10=7.2年で2倍の見込みです。1.1を7回かけると約1.95、8回かけると約2.14になるので、7年と8年の間で2倍になります。近似が合っているかを、手元で確かめられます。実際の預金や運用の利率は、この例よりずっと低いことが多く、元本が減る商品もあります。
資料を読むなら、複利の仕組みは財務省の解説[1]が短くまとまっています。フランクリン基金の経過は、ボストンの歴史協会の記事[5]と、1990年の新聞記事[4]が読めます。
自分で複利を計算する。たとえば、100円を年10%で5年運用する場合、単利は150円、複利は100×1.1の5乗で約161円となる。1.1を電卓でかけ続け、10年・20年後を比べると、差が加速度的に広がるのが分かる。また、72÷10=7.2年が実際の倍増年数(1.1の7乗≒1.95、8乗≒2.14)とどの程度合うか、検算できる。実際の預金や運用の利率は例より低いことが多く、元本が割れる商品もあるため、数字は計算の練習として読む。
資料を読むなら、定義と複利の効果は財務省中国財務局の解説[1]、年7.2%の計算例と72の法則は民間の解説[2]、フランクリン基金の経過はSouth End Historical Society[5]と1990年のEducation Week[4]、名言の出どころはQuote Investigator[7]が読める。いずれも英語や日本語の二次資料を含むため、金額は資料により幅があることを念頭に置く。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:財務省の解説、金融機関の解説、歴史協会と新聞の記録、名言の調査記事を使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。
- 財務省 中国財務局「複利効果」。https://lfb.mof.go.jp/chugoku/kinyusyouken/kin3/fukurikouka.html (単利と複利の定義、複利の効果が金利と期間で大きくなること)
- 松井証券「複利とは」(コラム)。https://www.matsui.co.jp/fund/column/compound/index.html (年7.2%の計算例と72の法則。民間の解説)
- フィナンシャル・フィールド「複利効果」。https://financial-field.com/assets/entry-153902 (単利で2倍になるのに20年、複利で15年という比較。年5%は筆者が置いた前提で、計算し直した)
- Education Week, "Benjamin Franklin's Penny Saved Means Training Dollars for 2 Cities", 1990年4月。https://www.edweek.org/education/benjamin-franklins-penny-saved-means-training-dollars-for-2-cities/1990/04 (1990年のボストン・フィラデルフィアの基金の額)
- South End Historical Society(ボストン)のフランクリン基金の解説。https://www.southendhistoricalsociety.org/?p=2213 (遺言補足の日付、1890年の額、技術学校の開校)
- The Philanthropy Roundtable の記事(フランクリン基金)。https://www.philanthropyroundtable.org/magazine/what-miracle-of-compound-interest/ (フランクリンの100年後の見込み。伝聞として使った)
- Quote Investigator「複利に関する名言」。https://quoteinvestigator.com/2011/10/31/compound-interest/、および同「The Eighth Wonder of the World Is Compound Interest」。https://quoteinvestigator.com/2019/09/09/interest/ (1916年の広告、1925年のオハイオ州の広告、「8番目の不思議」の出どころ)
なおした ところ
更新履歴
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