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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

銅どうは なにから できて いるの? つぶを たどると、星の なかに つながる

銅の原子は何種類あり、どこで生まれたのか ── 星の中から鉱石まで

銅の組成と起源 ── 2種類の同位体、大質量星の弱いs過程、黄銅鉱CuFeS2

分野:宇宙・天文

ぴかぴかの 銅どうの 原子げんしの ほとんどは、太陽より ずっと おもい 星の なかで つくられた と かんがえられて います。

では、銅どうの つぶは、いくつの しゅるいが あるのでしょう。じめんの なかでは、なにと くっついて いるのでしょう。この ページで わかります。

私たちの身のまわりにある銅の原子は、その大部分が、太陽よりずっと重い星の中で作られたと考えられています。地球の上で銅を掘り出す前に、銅は星の中で生まれていたことになります。

では、銅はどんな原子でできていて、どんな星のどんなしくみで作られたのでしょうか。そして地面の下では、何と結びついているのでしょうか。このページで分かります。

太陽系の銅の大部分は、大質量星の中の二次的な弱いs過程(中性子をゆっくり捕獲する反応)で作られたと考えられている[2]。地上では、その銅は硫黄・鉄と結びついた硫化鉱物として産出する[6]。

では、銅の原子は何種類あり、どの星のどの反応で作られ、なぜ鉱石の中で金属の銅ではないのか。この記事で、論文と公的機関の資料から分かる範囲を示す。

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1. 銅どうの つぶは、いくつ ある?

1. 銅の原子は、たった2種類しかない

1. 銅の天然同位体は2種類 ── 銅63と銅65

銅どうは、ほかの ものに わけられない、ひとつの しゅるいの つぶ(原子げんし)で できて います。

その つぶには、すこしだけ ちがう ものが 2しゅるい あります。「銅どう63」と「銅どう65」です。ざっくり いうと、10こ あつめると 7こが 63、3こが 65 です[1]。

ちがいは、おもさ です。ただし 色も やくわりも、ほとんど おなじです。じぶんの まわりの 銅どうの ものは、この 2しゅるいの つぶが、7たい 3ぐらいで まざって できて います。

銅は「それ以上分けられない」ひとつの元素

銅は、元素の一つです。元素とは、化学的な方法ではそれ以上別のものに分けられない、材料の種類のことをいいます。銅の記号はCu、原子番号は29です[1]。

重さのちがう2種類

自然にある銅の原子には、重さが少しだけちがう2種類があります。銅63と銅65です。アメリカのエネルギー省の同位体プログラムの資料では、存在比はおよそ69.15%と30.85%とされています[1]。ざっくり言えば、約7割と約3割です。資料によって69.17%と30.83%など、少しだけ値がちがうこともあります。

2種類は、重さ(質量数)がちがうだけで、色や金属としての性質はほとんど変わりません。ここでいう「2種類」は、自然の中で安定して存在する原子の話です。

銅(Cu、原子番号29)の天然の安定同位体は、銅63と銅65の2種類である。存在比は米エネルギー省の同位体プログラムで69.15%と30.85%、すなわち約7:3となる[1]。資料により69.17/30.83などわずかに異なる。

陽子の数が29で同じなので化学的性質はほぼ同じだが、中性子の数が34と36で異なり、質量数が63と65になる。「2種類しかない」のは安定同位体についてであり、不安定な放射性同位体は別に存在する(後述のニッケル63もその一例である)。では、この2種類の原子は、いつ、どこで作られたのか。

2. その つぶは、どこで うまれたの?

2. 銅の原子は、重い星の中で「ゆっくり」作られた

2. 弱いs過程 ── 大質量星の中で中性子をゆっくり捕獲する

いま わかって いる かぎりでは、銅どうの つぶの おおくは、太陽より ずっと おもい 星の なかで できたと かんがえられて います[2]。

星の なかでは、ちいさな つぶが、ほかの ちいさな つぶを ゆっくり とりこんで、すこしずつ おもい つぶに かわって いきます。銅どうは、その ゆっくりした つくりかたの ものが おおいと されます。

この とりこみ かたを、はかせたちは「弱い エスかてい」と よびます。「弱い」は、この はたらきの なまえの 一ぶです。

ただし、これは いろいろな けんきゅうから みえて きた かんがえで、すべてが きまった わけでは ありません。

鉄より重い元素は、どう作られるのか

水素やヘリウムのような軽い元素は、星の中の核融合で作られます。しかし鉄より重い元素の多くは、星の中にある中性子を原子が取りこむことで作られます。銅は主に、その取りこむ速さが「ゆっくり」のタイプで作られたと考えられています。

この仕組みは、「弱いs過程」と呼ばれます。2020年の論文は、太陽系の銅の大部分が、大質量星の中での二次的な弱いs過程で作られたと述べています[2]。「二次的」とは、星の材料にもとから重い元素が多く含まれているほど、たくさん作られるという意味です。

決着がついたと言える?

銅が大質量星で作られるのか、Ia型超新星で作られるのかは、長く議論されてきました。化学進化のモデルを使った研究は、大質量星が主な供給源だと結論しています[3]。ただしこの研究は、ω Centauri(球状星団)の結果を主な根拠に、天の川銀河にも当てはまると示唆したものです。

鉄より重い元素の大半は中性子捕獲で作られる。中性子が少ないと、原子核は中性子を取りこんだあと、次の中性子が来る前にβ崩壊して安定に近づく。この「ゆっくり」のs過程のうち、大質量星で進むものを弱いs過程という[2]。

Ernandesらの論文(2020)は、太陽系の銅の大部分が、大質量星での二次的な弱いs過程に由来すると述べる[2]。二次的とは、星に最初から含まれる重い元素(種になる核)が多いほど生成量が増えるという意味で、金属量が低い星では銅が少なくなると読める。

一方、銅の主な供給源が大質量星なのかIa型超新星なのかは長く議論された。Romano & Matteucci(2007)は化学進化モデルから、ω Centauriでは大質量星が銅生成の主な担い手だと結論した[3]。ただし、これはω Centauriの結果で、天の川銀河の円盤への適用は「示唆」にとどまる。反応が起こる場所の詳細(質量の下限や中性子源の反応)は、ここで使った資料では確定的に示せなかったため、記事では「大質量星の中」までとする。

3. のこりの 銅どうは、どこから きたの?

3. 残りの銅は、星の最期の爆発から

3. 残る5〜10% ── 重力崩壊型超新星の一次的な寄与

のこりの すこしの 銅どうは、おもい 星が さいごに おこす 大きな ばくはつの、なかで つくられた と みつもられて います[2]。

太陽の 銅どうの やく 5〜10パーセントです。これは 10この うち 1こ いかの わりあいです。みつもりは はば が あって、もとに する モデルで かわります。

爆発で作られる「小さな分け前」

銅の残りは、重い星が最期に起こす重力崩壊型の超新星爆発の内側で、爆発的な元素合成によって作られると見積もられています。これは「一次的」な生成で、星の材料に重い元素がなくても作られます[2]。

この論文の見積もりでは、太陽の銅の約5〜10%がこのしくみに当たります。別の計算では約5%という値もあります。Ia型超新星や、小さめの星が年をとった姿であるAGB星の寄与は小さいとされています[2]。見積もりの幅は、使うモデルによって変わります。

弱いs過程でまかなえない残りの銅は、重力崩壊型超新星(SN II)の内側の爆発的元素合成による一次的な生成と見積もられている[2]。太陽の銅のうち、この一次的な寄与は、同論文の見積もりで約5〜10%、Bisterzo ら(2004)の計算では約5%で、幅はモデル依存だ。Ia型超新星とAGB星の寄与は小さい、と同論文は述べる[2]。

「二次的」と「一次的」の区別は、元の星に重い元素が必要かどうかである。大部分(約9割)は星の金属量に敏感な二次的成分で、少量が金属量によらない一次的成分という二層になっている。この二層構造が、銀河の歴史の中で銅の量がどう増えてきたかを調べる手がかりになる。

4. じめんの なかでは、銅どうは なにと くっついて いるの?

4. 地面の下の銅は、鉄と硫黄にくっついている

4. 黄銅鉱CuFeS2 ── 鉱石の銅は金属の銅ではない

銅どうの 鉱石こうせきに、「おうどうこう」と いう、きいろい いしが あります。金属きんぞくの かがやきが あり、いちばん だいじな 銅どうの 鉱石こうせきと いわれます[5]。

この 鉱石こうせきの なかの 銅どうは、鉄てつと 硫黄いおうと くっついて います。銅どうの つぶが 1こ なら、鉄てつが 1こ、硫黄いおうが 2こです。つまり 4こに 1この わりあいが 銅どうです。

だから この まま では、ぴかぴかの 銅どうでは ありません。ほかの ものを とりのぞいて、はじめて 銅どうが 取りだされます。

黄色い鉱石「黄銅鉱」

黄銅鉱は、銅と鉄の硫化鉱物で、化学式はCuFeS2です。金属の光沢があり、真鍮のような黄色をしていますが、しばしば変色して虹色に見えます。最も重要な銅鉱石とされ、日本では黒鉱鉱床や熱水鉱床などで見つかります[5]。

鉱石の銅は、そのままの銅ではない

化学式のCu:Fe:Sは1:1:2です。原子の数では、4つに1つが銅です。重さで見ても、銅の原子量が約63.5、全体が約183.5なので、約35%です。つまり黄銅鉱の中の銅は、鉄や硫黄と結びついていて、そのままでは金属の銅ではありません[6]。

アメリカ地質調査所によると、銅は硫黄と結びつきやすい性質があり、黄銅鉱などたくさんの硫化鉱物を作ります。上部大陸地殻の平均では1キログラムあたり約27ミリグラム、つまり1トンの岩石から約27グラムの見積もりです[6]。全地殻では50〜60ppmとする資料もあり、条件で幅があります。

黄銅鉱は銅と鉄の硫化鉱物で、化学式はCuFeS2である。金属光沢のある真鍮黄色だが、しばしば変色して虹色を呈する。最も重要な銅鉱石とされ、日本では黒鉱鉱床・熱水鉱床などに産する[5]。

USGSによれば、銅は硫黄との親和性が高く、黄銅鉱など多くの硫化鉱物を作る[6]。Cu:Fe:S=1:1:2なので、原子数では4分の1(25%)が銅だ。原子量で計算すると63.5÷183.5=約35%で、質量割合では約35%になる。鉱石の銅は鉄・硫黄と化合しており、そのまま金属の銅として使えるわけではない。精錬の詳細は別の話題なので、ここでは触れない。

地殻での存在量は、USGSの推定で上部大陸地殻の平均が約27mg/kg(27ppm)である[6]。1トン(1000kg)の岩石に約27gの計算だ。ただし上部大陸地殻の値で、全地殻では約50〜60ppmとする資料もあるなど、対象で幅がある。

5. 星の なかの 銅どうは、まだ しらべられて いる

5. 銅の「生まれ」は、いまも測り直されている

5. 63Niの中性子捕獲断面積 ── 銅63の見積もりを動かす測定

2013年、ふあんていな ニッケルの つぶが ちいさな つぶを とりこむ わりあいが、はじめて はかられました。この はかり かたで、銅どう63が どれくらい できるかの みつもりが、大きく かわる ことが わかりました[4]。

つまり 銅どうの うまれた はなしは、まだ すこしずつ なおされて います。

やってみよう:銅どういろの ものを さがして、「この つぶは、星の なかで うまれたのかも」と 1ぷん だけ かんがえて みましょう。どんな 星だったか、おうちの人に ききながら 想ぞうして みるのも たのしいです。

測るのが難しい原子を、初めて測った

弱いs過程で銅63ができる量を見積もるには、途中に現れる不安定なニッケル63が中性子を取りこむ割合を知る必要があります。ニッケル63は半減期が約100年で、扱いが難しい原子です。2013年に、この反応の割合が初めて測定されました。その結果、大質量星での銅63の生成量の見積もりに大きく影響することが示されました[4]。

星の中の話は、知るほど細かくなる

銅63と銅65のそれぞれの生成の詳細には、反応の確率の不確かさが残っています。「銅は主に大質量星の中で作られたと考えられている」という言い方は、いまの見積もりでの要点です。

家にある銅色のものを見て、この色の金属の原子が星の中で生まれたという話を、友だちや家族に1分で説明してみてください。説明しようとすると、どこが分かっていてどこが分かっていないのかが、自分にも見えてきます。

不安定核ニッケル63(半減期約100年)の中性子捕獲反応63Ni(n,γ)の断面積は、2013年に初めて測定された。この新しいデータは、大質量星における銅63のs過程での生成量に大きな影響を及ぼすと報告された[4]。弱いs過程では63Niが銅63への経路上にあり、中性子を捕獲して64Niに進むか、β崩壊して銅63になるかの分かれ目になるからだ。

残る不確かさも明確だ。銅63と銅65それぞれの生成割合の詳細は、核反応断面積の不確かさが大きく残る。本記事で「主に弱いs過程」「大質量星の中」としか言わないのは、そのためだ。

読者が確かめられる道すじは次のとおり。原典のarXiv:2007.00397(Ernandes ら 2020)と arXiv:1304.3310(63Niの測定)は、図や表を含めて公開されている。銅の存在比を述べる米エネルギー省の資料と読み比べると、「約7:3の2種類の原子」と「弱いs過程」と「鉱石の中の化合物」が、同じ銅の別の側面だと見えてくる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

天体物理の主張は英語の論文2〜3本の突き合わせである。日本語の一般向け公的資料で銅の起源を解説したものは確認できなかった。

  1. U.S. Department of Energy Isotope Program, "Copper" https://www.isotopes.gov/products/Copper (銅63・銅65の存在比)
  2. Ernandes et al. (2020), Cobalt and copper abundances in 56 Galactic bulge red giants, arXiv:2007.00397 https://arxiv.org/abs/2007.00397 (弱いs過程と一次的な寄与)
  3. Romano & Matteucci (2007), Contrasting copper evolution in ω Centauri and the Milky Way, arXiv:astro-ph/0703760 https://arxiv.org/abs/astro-ph/0703760 (大質量星が主な供給源かの議論)
  4. Neutron capture cross section of unstable 63Ni: implications for stellar nucleosynthesis, arXiv:1304.3310 https://arxiv.org/abs/1304.3310 (63Niの測定と銅63の見積もり)
  5. コトバンク「黄銅鉱」 https://kotobank.jp/word/%E9%BB%84%E9%8A%85%E9%89%B1 (黄銅鉱の性質)
  6. U.S. Geological Survey, Scientific Investigations Report 2017-5118, Copper https://pubs.usgs.gov/sir/2017/5118/elements/Copper/Cu_txt.html (硫化鉱物と地殻の存在量)

なおした ところ

更新履歴

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