1. ひげを 引っぱると、どこに つながるの?
1. ひげは、粒1つにつき1本つながっている
1. 絹糸は粒(胚珠)1つにつき1本つながる
ゆでた とうもろこしの かわを むくと、ひげが もじゃもじゃと 出て きます。たべる ときは じゃまに 見えますが、この ひげには ちゃんと 役めが あります。
ひげは、「めしべ」と いう 花の 一ぶです。そして、かわの 中の つぶの 1つ1つに、1本ずつ つながって いるそうです[1]。
つぶが 1つ できる ために、ひげが 1本 つかわれる。そう 考えると、ひげは つぶへ 行く 道の 入り口の ようです。
もじゃもじゃの正体はめしべ
皮つきのとうもろこしの先には、たくさんのひげがついています。日本の食育の資料では、このひげの数だけ実がついていて、ひげはめしべにあたると説明されています[1]。
アメリカの大学の資料も、ひげ(絹糸)は雌花の先の部分で、1本ずつが将来の粒になる胚珠につながっていると書いています[3]。胚珠は、受粉して育てば粒になる部分です。
「必ず」ではなく「受粉できれば」
ただし、ひげの数と粒の数がいつも同じとは限りません。千葉県の資料は「正常に受粉すれば、絹糸の数だけ実が付く」と、条件をつけて書いています[2]。
では、花粉はどうやってひげまで届くのでしょうか。
日本の食育資料は、ひげの数だけ実がつき、ひげはめしべにあたると説明する[1]。Purdue大学の普及資料も、絹糸は雌花の柱頭(めしべの先)にあたり、それぞれが1つの胚珠(将来の粒)につながると記す[3]。胚珠は、受粉と受精を経れば粒になる部分である。
ここで注意したいのは、「ひげの数=粒の数」が、受粉が正常に進んだ場合の話だという点だ。千葉県の資料も「正常に受粉すれば絹糸の数だけ実が付く」と条件をつけている[2]。受粉しなかった胚珠は、粒にならない[3]。したがって、ひげは「粒の予約票」ではなく、「花粉が届けば粒になる入口」と読むほうが正確である。
では、その入口に、花粉はどのようにして届くのか。
2. 花粉は、どうやって ひげに とどくの?
2. 風にのった花粉を、ひげはどうつかまえるのか
2. 絹糸の毛は、花粉をどうつかまえるのか
とうもろこしの いちばん 上には、花粉を 出す 花が あります。下の 方に ある ひげは、その 花粉を うけとる がわです。
花粉は、かぜや 虫が はこぶと されます[4]。上の 花は、1本で 200万から 500万つぶも 出すそうです。
ひげの 表面には、細かい 毛が あります。この 毛は、はっぱの 毛より ねばりが 強く、花粉を つかまえて はなさないと いわれます[6]。
上の花から、下のひげへ
とうもろこしは、てっぺんの雄穂に花粉を出す花があり、下の雌穂にひげがあります。雄穂1つが出す花粉は、200万〜500万粒ほどとされます[4]。花粉を運ぶのは、風や虫です[4]。
粒の数が約1000とすると、粒1つぶんに回せる花粉は、単純な割り算で2000〜5000粒になります。これは企業の解説にある計算上の目安で[5]、実際にひげに届く数ではありません。
ひげの表面は、ねばる
ひげの表面には毛が生えていて、葉などほかの部分の毛よりも粘りが強いと説明されています[6]。風に流れてきた花粉が、この毛にくっつくと、そのまま離れにくくなります。
花粉がつくと、そのあとはどうなるのでしょうか。
雄穂1本から放出される花粉は、200万〜500万粒と見積もられ、運搬は風や虫による[4]。これを、1つの穂に最大約1000できる胚珠で割ると、胚珠1つあたり2000〜5000粒になる。ただしこの数字は企業の解説にある計算上の目安であり[5]、実際に絹糸に届く花粉の数ではない。
花粉をつかまえる側の仕組みとして、絹糸の表面の毛(トリコーム)は、葉など他の部位の毛よりも粘りが強いという[6]。風まかせで届く花粉を、粘る毛で受けとめるわけだ。絹糸が長い理由については、花粉を待つあいだ伸び続けるから、という説明が企業の解説にある(4章)。
花粉が絹糸にくっついた後、粒までは、どれくらいの時間と距離があるのか。
3. 花粉は、ひげの 中を 1日 かけて すすむ
3. 花粉が粒に届くまで、およそ1日かかる
3. 花粉管が胚珠に届くまで約24時間
花粉が ひげに くっつくと、花粉から ほそい くだが のびて、ひげの 中を すすんで いきます[3]。
この くだが、つぶの もとまで 着くのに、およそ 1日 かかると いわれます。
ひげは、ただの 毛では ありません。花粉の ための、長い 通り道なのです。とちゅうで ひげが かわいて しまうと、くだが 着けない ことも あるそうです[6]。
4. 花粉が こないと、ひげは どうなる?
4. 花粉をつかまえられないひげは、のび続ける
4. 受粉しない絹糸は伸び続け、受容は約10日で低下する
おもしろい ことに、花粉を つかまえられなかった ひげは、つぶから はなれません。そして、のび つづけます[5]。
ひげは、出はじめの 1日か 2日は、1日に 3.8センチくらい(さいだい)のびると いわれます[5]。その あとは、のびかたが ゆっくりに なります。
花粉が ついた ひげは、のびるのを やめます。花粉を まって いる あいだ、ひげは どんどん 長く なるのです。
ただし、ひげが 花粉を うけとれるのは、出てから 10日くらいまでです。その あいだにも、だんだん うけとりにくく なって いきます[3]。
花粉を待つあいだ、ひげはのび続ける
企業の解説によると、花粉をつかまえられなかったひげは、粒から外れることなく、成長を続けます[5]。ひげが長いのは、花粉を待ちながらのび続けるからだと、この資料は説明しています。花粉を受けるとのびるのは止まります。
出はじめの1〜2日は、1日に最大で約1.5インチ(約3.8センチ)のびるとされ、その後はゆるやかになります[5]。これは「1日の最大」の値で、毎日この長さがのびるという意味ではありません。
待てる時間には期限がある
ひげが花粉を受けとれる期間は、出てからおよそ10日です。ただし、日がたつほど受けとりにくくなります[3]。ひげは花粉がつくまでのび続けますが、花粉を受けとれる期間はおよそ10日です。
では、ひげの出る順番は、粒の欠け方に関わるのでしょうか。
5. つぶが ぬけて いるのは、なぜ?
5. 約1000の胚珠から、収穫時の粒が400〜600になる理由
5. 胚珠約1000個に対し、収穫時の粒は400〜600個
ひげが つぶの 数だけ ある、と いう 話には、つづきが あります。
1本の ほには、さいだい 1000こくらいの 「つぶの もと」が できると いわれます。でも、しゅうかくの ときに のこって いる つぶは、400から 600こほどです[4]。
ひげが 出る じゅんばんも、かんけいします。ほの 下の ほうの ひげが 先に 出て、さきの ほうの ひげは、1しゅうかんほど おくれて 出ます[7]。
花粉が とぶ じきと、ひげが 花粉を うけとれる じきが あわないと、その 場所の つぶは できない ことが あります。つぶが ぬける 理由の 一つです。
ひげの数と収穫時の粒の数は、同じではない
アメリカの大学の資料によると、1つの穂には最大約1000の胚珠ができますが、収穫まで粒として残るのは、ふつう400〜600です[4]。約1000は上限に近い値で、すべての穂がそうなるわけではありません。ひげの数が粒の数になるのは、すべてが受粉に成功した理想の場合の話です。
ひげの出る順番が、欠け方に関わる
ひげは、穂のもと(下側)のものから先に出て、先端側のものは約1週間かけて遅れて出てきます[7]。もと側のひげが、花粉の飛ぶ時期より早く弱ってしまうと、もと側の粒が欠けることがあると、この資料は説明しています。
買ってきたとうもろこしに粒の抜けた場所があるとき、それは受粉できなかった胚珠だった可能性があります。ただし、欠けた理由は穂によって違い、この説明がすべてに当てはまるわけではありません。
ところで、このひげは、昔から人の暮らしの中でも使われてきたようです。
Purdue大学の資料は、1つの穂に最大約1000の胚珠ができるが、収穫時に残る粒は一般に400〜600だと述べる[4]。約1000は最大に近い値で、固定値ではない。日本の資料の「ひげの数だけ実がつく」[1]は、受粉が成功した理想の場合の単純化と読むのが妥当である。割合にすると、400〜600は約1000の4〜6割にあたる(約1000を上限とした計算)。
欠け方には、絹糸の出る順序が関わる。最初に殻から出る絹糸は穂の下部のもので、先端側の絹糸は約1週間かけて遅れて出る[7]。そのため、下部の絹糸が花粉の飛ぶ時期より前に弱ると、下部(もと側)の粒が欠けることがある。
ただし、欠けの原因は受粉の時期の食いちがいだけではなく、穂ごとに事情が違う。資料の説明は、あくまで「その一例」と読む。では、この絹糸は、受粉の道具にとどまらず、人の暮らしにも使われてきたのか。
6. ひげは むかしから、くすりにも なったの?
6. ひげは昔から、漢方薬としても使われてきた
6. とうもろこしのひげは、漢方薬としてどう呼ばれるのか
ひげは、とうもろこしの 外でも 名前が あります。中国では 「ぎょくべいしゅ」や 「なんばんもう」と よばれる ことが あります[8]。
むかしから、漢方薬として つかわれて きたと いわれます。おしっこを 出しやすく する くすりとして、あつかわれて きたそうです。
ただし、この ページでは、「きく」とか「きかない」とかは 言いません。つかわれて きた、と いう ところまでです。
呼び名がたくさんある
ひげは、中国では玉米鬚や南蛮毛、欧米ではコーンシルクと呼ばれます。昔から、利尿やむくみの改善のための漢方薬として使われてきた、と沖縄の新聞記事が紹介しています[8]。
この記事では、効き目があるかどうかは扱いません。「使われてきた」という歴史のところまでです。ひげは、花粉の通り道であると同時に、人にとっても身近な植物の一部でした。
絹糸は、中国では玉米鬚や南蛮毛、欧米ではコーンシルクと呼ばれ、利尿やむくみの改善を目的とした漢方薬として使われてきたと、新聞記事は伝える[8]。ただし、この記述は新聞記事に依るもので、効能そのものを検証した一次資料ではない。したがって本稿は「使われてきた」という事実にとどめ、「効く」とは書かない。
受粉の通り道としての機能と、人による利用は、別々の観点である。植物学の資料は受粉のしくみを説明し、新聞記事は、ひげが漢方薬として使われてきたと伝えている。どちらの話も、絹糸という同じ器官に関わっている。
7. かわを むいて、ひげを たどって みよう
7. 皮をむいて、ひげの行き先を探す
7. 手元の穂で確かめる/原典
かわつきの とうもろこしを 見つけたら、てを あらってから、かわを そっと むいて みましょう。
ひげを 1本 つまんで、つぶの ほうへ たどって みます。つぶの どこに つながって いるでしょうか。つぶが ぬけた ところが あれば、ほの 下の ほうか、さきの ほうか、見て みましょう。
家で確かめるなら
皮つきのとうもろこしを見つけたら、手を洗ってから、皮をそっとむいてみてください。ひげを1本つまみ、粒の側へたどっていきます。ひげがつながる場所を見て、欠けた粒があれば、それが穂のもと側か先端側かを確かめます。
ひげの数と粒の数を全部数えるのは大変なので、一部を数えて比べるだけでも、「数が合うところ」と「合わないところ」が見えてきます。
見るところを決めておく
ひげがつながる位置と、欠けた粒の位置を、紙にかんたんな絵で書いておくと、別の穂と比べられます。穂のもと側にかたよるか、ばらばらかを見ると、この記事の説明が当てはまるかを考えられます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。年・数値・名称は、資料によって細部が異なることがあります。
- 明治 食育 とうもろこしコラム https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/column/08/ (ひげはめしべで、数だけ実がつくという説明)
- 千葉県 野菜図鑑 とうもろこし https://www.pref.chiba.lg.jp/ryuhan/pbmgm/zukan/yasai/tomorokoshi.html (受粉すれば絹糸の数だけ実が付くという条件つきの説明)
- Purdue University Extension, Silk Development and Emergence in Corn https://www.agry.purdue.edu/ext/corn/news/timeless/Silks.html (絹糸と胚珠、花粉管の時間、受容期間)
- Purdue University Extension, Corn Pollination https://www.agry.purdue.edu/ext/corn/pubs/corn-02.htm (花粉の量、胚珠と収穫時の粒の数)
- Bayer Crop Science (Channel), Hey Ear, Why the Long Silks? https://www.cropscience.bayer.us/articles/channel/hey-ear-why-the-long-silks (絹糸ののび方と、粒あたりの花粉の目安。企業の解説)
- University of Missouri IPM, Corn Pollination: the Good, the Bad and the Ugly Pt. 3 https://ipm.missouri.edu/croppest/2012/7/Corn-Pollination-the-Good-the-Bad-and-the-Ugly-Pt-3/index.cfm (ひげの毛の粘りと、水分が失われたときの花粉管)
- Purdue University Extension, Silk emergence, silk length, and missing butt kernels https://extension.entm.purdue.edu/newsletters/pestandcrop/article/silk-emergence-silk-length-and-missing-butt-kernels/ (ひげの出る順番と、もと側の粒の欠け)
- 琉球新報 コーンのひげ https://ryukyushimpo.jp/living-style/entry-1113832.html (玉米鬚・南蛮毛と、漢方薬として使われてきたという紹介)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。
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