1. 「ワニザメ」を さがすと、だれに あえるの?
1. 「ワニザメ」を探すと、行き着くサメは「ミズワニ」
1. 標準和名の確認 ── 英名 crocodile shark と和名ミズワニ
「ワニザメ」を ずかんで さがすと、その 名前の サメは なかなか 見つかりません。ただし えいごでは、ある サメを「crocodile shark」、つまり「ワニの サメ」と よびます。
この サメの 日本での 名前は「ミズワニ」です[3]。ミズワニは、ミズワニ科の たった 1しゅ だけ の サメです[1]。
だから、「ワニザメ」を さがしている 人が 会いたいのは、たぶん この ミズワニです。ただし、「ワニザメ」と いう 名前の サメが ぜったいに いない、とまでは いえません。
英語の名前と、日本の名前
英語で crocodile shark と呼ばれるサメの、日本での名前(和名)はミズワニです[3]。ミズワニ科に残る、ただ1つの現生種とされます[1]。
一方、今回確認した資料では、「ワニザメ」を標準和名や別名として載せるものはありませんでした。標準和名全体で使われているかまでは調べていません。英名の訳として「ワニザメ」と書かれることはあるようです。ただし、これで「そういう名前のサメは存在しない」とまでは言えません。「標準和名としては載っていない」という言い方にとどめます。
ミズワニは、サメの仲間の中でも小さい
ミズワニはネズミザメ目の仲間で、その中では最小の種とされます[1]。サメと聞くと大きな姿を思い浮かべますが、このサメは、報告されている最大でも全長約1.1mです[2]。
英名 crocodile shark にあたるのはミズワニ(Pseudocarcharias kamoharai)で、ICCAT の種ガイドは日本名を Mizuwani と記す[3]。ミズワニ科の唯一の現生種で、1973年にコンパーニョが独立の科に置いた[1]。分類の位置は、ネズミザメ目に属する。
今回確認した資料では、英名 crocodile shark の日本名はミズワニで、「ワニザメ」を標準和名または別名として挙げるものはなかった。標準和名全体での使用の有無は未確認である。英名の訳語として「ワニザメ」と書く辞書サイトがある。標準和名の原典(日本魚類学会の目録や図鑑)は二次資料の突き合わせで、直接は読んでいない。このため「存在しない」ではなく「標準和名としては見当たらない」にとどめる。
ミズワニはネズミザメ目で最小の種とされ、報告されている最大でも全長約1.1m、多くは約1mで体重4〜6kg程度という[2]。ホホジロザメなど大型種のイメージとは異なる。
2. ミズワニって、どんな サメ?
2. 大きな目と口を持つ、1メートルの外洋のサメ
2. ミズワニの形態・生態 ── 大きな目、突き出る顎、卵を食べる胎仔
ミズワニの おおきさは、およそ 1メートルです。ものさし 1ぽん ぶんの サメですね。
めが とても 大きくて、口も 大きく ひらきます。水から 出すと、はげしく かみつく といわれます[2]。
すんで いるのは、広い 海の おきの ほうです。水の 中の ふかさ 590メートルほどまで、すがたが きろくされて います[2]。夜に あさい ところへ 上がって えさを とる のでは、と かんがえられて います。ただし これは すいそくで、まだ はっきり しません[2]。
赤ちゃんの そだち方も ふしぎです。おなかの 中で、お母さんの 体の 中に ある たまごを 食べて 大きく なります[2]。ふつう 4ひき うまれます。
大きな目と、突き出る口
ミズワニは、体に比べて目がとても大きく、まぶたの働きをする膜(瞬膜)を持ちません。口は大きく、突き出すことができます。水から上げると激しく噛みつく、とも報告されています[2]。
体の大きさはおよそ1mで、体重は4〜6kgほどです[2]。
どこで暮らし、どうやって育つのか
熱帯や亜熱帯の外洋に広く分布し、水深約590mまでの記録があります。東京スカイツリーの高さ(634m)より少し浅い深さです。昼は深く、夜は浅い所へ上がって餌をとるのではないか、と推測されています。ただし推測を含む話です[2]。
育ち方も変わっています。お腹の中の子(胎仔)は、母親の体内にある無精卵を食べて育ちます。これを卵食といい、通常は4尾が生まれます[2]。
ミズワニは、眼が非常に大きく瞬膜を欠く。口は大きく突き出すことができ、水揚げされると激しく噛みつくとされる[2]。外洋性で、亜熱帯〜熱帯に広く分布し、水深約590mまでの記録がある。日周鉛直移動(昼は深く夜は浅く)をする可能性が指摘されているが、これは推測を含む[2]。
繁殖様式は、卵食型の胎生である。母体内で胎仔が、卵黄のほか母親の体内にある無精卵を食べて育ち、1回の出産は通常4尾とされる[2]。目が大きい理由は、ここで挙げた資料からは分からない。
体長は多くが約1mで、報告されている最大は約1.1m[2]。590mという深さは、東京スカイツリーの634mの約93%にあたる(590÷634≒0.93)。
3. この サメの 名前を つけた 人は?
3. 学名に名前が残る、高知の学校の先生
3. 学名 kamoharai の由来 ── 蒲原稔治と松原喜代松
この サメの 学名には、日本人の 名前が 入って います。「かもはら」さんです。
かもはらさんは、高知の 学校で 教えて いました。高知の 魚市場で、このサメを 手に 入れました[1]。それを もとに、1936年に まつばらさんと いう 人が 新しい サメとして 書きのこしました[1]。
市場には、いろいろな 魚が 上がります。その 中に めずらしい サメが まじって いて、気が ついた 人が いたのです。ミズワニは、とさわんなど 日本の 近くで 知られた サメでした。
4. サメなのに、どうして「ワニ」と いうの?
4. サメの名前に「ワニ」が入るわけ ── 山陰と広島の呼び名
4. 「ワニ」はサメの別称 ── 和名の用法と地方名
サメの 名前に「ワニ」が 入る のは、ミズワニだけでは ありません。シロワニや オオワニザメ という サメも います[4]。
じつは、「ワニ」は むかしから 日本の 一部で、サメの ことを さす 言葉でした。さんいんの 一部では、サメの ことを ワニと よびます[5]。広島では、いまも サメの 肉の りょうりを「ワニりょうり」と よびます[6]。
「ワニザメ」の 由来は、はっきり わかって いません。ただ、「ワニ」と「サメ」を かさねた 言い方だと、考える ことも できます。
ミズワニだけではない「ワニ」
和名に「ワニ」が入る日本のサメは、ミズワニのほかにもシロワニ、オオワニザメなどがあります。これらは別々の科のサメです[4]。資料では、シロワニの説明の中で「ワニ(和邇)はサメの別称」とされています[4]。
いまも生きている呼び名
鳥取県の紹介ページには、山陰地方の一部ではサメをワニと呼ぶことから、「和邇=サメ」と考えられている、とあります[5]。広島でも、サメ肉を使った料理を「ワニ料理」と呼ぶ習慣が続くと、サメ研究者の対談で語られています[6]。
では「ワニザメ」は何なのか
「ワニザメ」の由来は、はっきりしていません。ただ、サメを「ワニ」と呼ぶ言葉に「サメ」を重ねた言い方だと考えることもできます。『古事記』の現代語訳では、因幡の白兎に出てくる和邇を「ワニザメ」と書くことがあります[7]。
和名に「ワニ」を含む日本のサメは、ミズワニ、シロワニ、オオワニザメなど複数あり、互いに別の科に属する。したがって、「ワニ」は分類上のまとまりを示す語ではない。シロワニの項は「ワニ(和邇)はサメの別称」と説明するが、その由来は書かれていない[4]。
地方名としては、鳥取県の資料が、山陰地方の一部でサメをワニと呼ぶことから和邇をサメと考えられている、と紹介する[5]。広島では、サメ肉の料理を「ワニ」と呼ぶ習慣が現在も続くと、サメジャーナリストの沼口麻子氏が述べる[6]。ただし後者は対談での発言で、公的資料での裏づけは別に要る。
『古事記』の因幡の白兎に出る和邇は、現代語訳で「ワニザメ」と書かれることがある。正体は、日本に野生のワニがいないことを根拠にサメ説が近年優勢とされるが、爬虫類のワニ説、ウミヘビ説なども唱えられ、決着していない[7]。「ワニザメ」の由来は未確定で、「ワニ」と「サメ」を重ねた言い方と解釈する余地がある。特定の種の標準和名として使われた例は、今回確認した資料にはない。
以上から、ミズワニの「ワニ」が、サメを指す古い言葉の名残なのか、見た目から来たのかは、今回の資料からは決められない。
5. 名前の なかに、むかしの ことばが 入って いる
5. 図鑑の名前を一つ、声に出して読んでみる
5. 名前から資料へ ── 標準和名と地方名を分けて読む
ミズワニの 名前には、むかしから つづく「ワニ」と いう ことばが 入って います。名前を 見るだけでも、ことばの 旅が できますね。
おうちに ずかんが あれば、さがして みましょう。「ワニ」が 名前に つく 魚を、いくつ 見つけられるでしょうか。つかうのは ずかんと えんぴつ だけです。
ずかんの 名前は、日本ぜんたいで つかう 名前です。町ごとの よび方は、ほかに あるかも しれません。その 土地の よび名を 知って いる 人が いたら、きいて みるのも いいですね。
ところで、むかしの 本に 出て くる「ワニ」は、うみの サメの こと だったのか、それとも ほかの ものか。この 話は、白うさぎの おはなしと いっしょに、調べて みたくなりますね。
家に魚類図鑑があれば、索引で「ワニ」の付く名前を探してみましょう。ミズワニ、シロワニ、オオワニザメのほか、いくつ見つかるでしょうか。図書館の図鑑でも同じようにできます。
図鑑に載る標準和名は、全国で通じるように定めた名前です。一方、地方での呼び名は別にあります。その土地の呼び名を知っている人がいたら、きいてみるのもいいですね。同じサメでも、図鑑の名前と土地の言葉を分けて読むと、名前の意味が見えやすくなります。
出典として挙げた資料のうち、鳥取県の紹介ページ[5]は、サメを「ワニ」と呼ぶ話の入口になります。『古事記』の和邇がサメなのか、爬虫類のワニなのかという問いは、まだ決着していません[7]。ミズワニの名前の由来も、これから誰かが調べる余地が残っています。
標準和名は、図鑑や目録で種を指すために定められた名前で、地方名は特定の地域で使われる呼び名である。「ワニ」は、前者では複数種の名前に含まれ、後者ではサメそのものを指す語として残る。この区別を押さえると、「ワニザメ」という語がどの層に属するかを考える手がかりになる。
確かめる手順としては、①日本魚類学会の目録や図鑑で標準和名を引く、②各地の方言辞典や自治体の資料で「ワニ」の用法を引く、③『古事記』の和邇について、注釈書や研究を読む、の3つが考えられる。標準和名の原典と広島の公的資料は、読み進める価値のある次の一歩である。
家庭で試すなら、魚類図鑑の索引で「ワニ」を含む名前を引き、種と科を書き出してみる。名前が同じ「ワニ」でも、分類上は別の系統であることが見えてくる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:日本語版Wikipedia、ICCATの種ガイド、Animal Diversity Web、鳥取県の紹介ページ、東洋経済オンラインの対談記事を使った。Wikipediaは二次資料で、種名と和名の原典は日本魚類学会の目録などで確かめるのが望ましい。
- ミズワニ(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/ミズワニ (分類、学名の由来、記載者について。二次資料)
- Animal Diversity Web「Pseudocarcharias kamoharai」。https://animaldiversity.org/accounts/Pseudocarcharias_kamoharai (大きさ、生息する深さ、目と口、卵食について。英語)
- ICCAT 種ガイド(Pseudocarcharias kamoharai)。https://www.iccat.int/Documents/SCRS/Manual/CH2/2_2_1_12_PSK_ENG.pdf (日本名ミズワニの表記について。英語)
- シロワニ(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/シロワニ (「ワニ(和邇)はサメの別称」という説明について。二次資料)
- 鳥取県「因幡の白うさぎ」紹介ページ。https://www.pref.tottori.lg.jp/311698.htm (山陰でサメをワニと呼ぶことについて)
- 東洋経済オンライン 沼口麻子氏の対談記事。https://toyokeizai.net/articles/-/232736?display=b (広島のワニ料理について。対談での発言)
- 和邇(神話)(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/和邇_(神話) (古事記の和邇の正体をめぐる諸説について。二次資料)
なおした ところ
更新履歴
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