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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

すすぎが 1回でも、せんざいは おちるの?

すすぎを1回にしても洗剤は落ちるのか ── 水は半分にならない、洗剤側の工夫と条件

「すすぎ1回」の洗剤は何が違うのか ── 節水の実際の大きさと、「従来と同程度」の意味

分野:技術

洗濯機せんたくきの ボタンにも、洗剤せんざいの ふくろにも「すすぎ 1回」と 書いて あります。2回の すすぎが 1回に なるのなら、水も はんぶんに なりそうです。でも、ほんとうに そうなのでしょうか。それに、水が すくなくて、せんざいは ちゃんと おちるのでしょうか。

この メモでは、せんざいを つくる 会社や 団体だんたいが 出している 数字を もとに、せんざいの ほうに どんな くふうが あるのかを たどります。

洗濯機の設定にも、洗剤の容器にも「すすぎ1回」という表示があります。2回のすすぎが1回になるのなら、水も半分になりそうです。ところが、実際に測った数字を見ると、そうはなっていません。そもそも、水が少なくなっても、洗剤はきちんと落ちるのでしょうか。

このメモは、洗剤メーカーの技術解説、業界団体の資料、メーカーのよくある質問などを手がかりに、洗剤の側にどんな工夫があるのかをたどります。洗濯機の側の仕組みは別のメモが扱っているので、ここでは洗剤に絞ります。

洗濯機の設定にも、洗剤の容器にも「すすぎ1回」という表示がある。2回のすすぎが1回になるのなら、水も半分になりそうだが、実際に測った数字はそうなっていない。そもそも、すすぎの水が減っても洗剤は落ちるのか。

このメモは、花王の技術解説、日本石鹸洗剤工業会(JSDA)の資料、ライオンの研究員による解説、各社のよくある質問などをもとに、洗剤の側の設計と、「すすぎ1回でよい」と言える条件を整理する。洗濯機の側の仕組みは別のメモで扱っているので、ここでは洗剤に絞る。

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1. すすぎが へると、水は はんぶんに なる?

1. すすぎが半分になっても、水は半分にならない

1. 節水の実際の大きさ ── 約22%と、「すすぎ分だけなら半分」

じっさいに はかった 数字が あります。花王かおうという 会社が しめした れいでは、せんたくに つかう 水が、すすぎ 2回だと ぜんぶで 130リットル、すすぎ 1回だと 102リットルでした[1]。へったのは 28リットルで、バケツ 3ばい ぶんくらいです。はんぶんには なって いません。

なぜかと いうと、水を つかうのは、すすぎだけでは ないからです。せんたくの はじめの あらう ときにも 水を つかいます。この ぶんは、すすぎが へっても のこります。

せんざいの 会社が あつまる 団体だんたいは、べつの れいを 出して います。すすぎだけで 120リットル つかって いたなら、60リットルに なる、と いう れいです[2]。すすぎの ぶんだけなら はんぶん、せんたく ぜんたいなら 2わりほど。どこの 水の はなしかで、へりかたは ちがうのです。

2009年に花王が示した試算に、こんな数字があります。衣類4kg、水量設定47Lという条件で、水の使用量は、すすぎ2回で合計130L、すすぎ1回で102Lでした[1]。減ったのは28Lで、割合にすると約22%です。バケツ3杯ほどは減りますが、半分にはほど遠い数字です。電気の使用量も、同じくらいの割合で減ると示されています。

半分にならないのは、水を使う場面がすすぎだけではないからです。洗う工程で使う水は、すすぎの回数を変えても残ります。

一方、日本石鹸洗剤工業会は2011年に、すすぎだけを見た別の例を示しています。2回のすすぎで120Lを使っていた場合、「1回すすぎ」用の洗剤なら、すすぎの水は半分の60Lに抑えられ、電気も従来の2回すすぎより10〜30%ほど少なくできると期待される、という説明です(洗濯機や条件によって違うとも書かれています)[2]。

「半分」はすすぎの水だけの話で、洗濯全体では、花王の例のように2割強です。どちらも、一つの会社や団体が示した例だということは、頭に置いておきたいところです。

花王が2009年6月にまとめたLCA(製品の一生の環境負荷を見積もる方法)の例では、衣類4kg・水量設定47Lの条件で、水の使用量は、すすぎ2回で計130L、すすぎ1回で計102Lだった[1]。102÷130は約0.78なので、減ったのは約22%(28L)にとどまる。電気の使用量も、比にすると同じく約22%の減少と示されている(原文の電力の単位表記は不自然なので、ここでは比だけを使う)。

すすぎを半分にしても水が半分にならないのは、洗う工程の水が残るからだ。ここで、水の使用量の減り方は「どこを分母にするか」で変わる、という点が大事になる。

日本石鹸洗剤工業会(JSDA)は2011年、すすぎの水だけを取り出した例を示している。2回のすすぎで120Lを使っていた場合、「1回すすぎ」の洗剤を使えば、すすぎの水は半分の60Lに抑えられ、電力は従来の2回すすぎに比べて約10〜30%の節電が期待できるという(当工業会調べ。洗濯機や条件で異なる)[2]。

つまり、「半分」はすすぎ分だけの話、洗濯全体では約2割強、と読み分ける必要がある。ただし前者は工業会の例示、後者は一社の一つの条件での値で、機種や水量設定が変われば数字も変わる。

2. あらう ちからと、はなれやすさは、はんたい?

2. 「よく洗える」と「よく落ちる」は、ぶつかる性質

2. 洗浄力とすすぎやすさの二律背反 ── 2種類の界面活性剤の組み合わせ

では、水が へっても、せんざいは おちるのでしょうか。せんざいの おもな ざいりょうは 界面活性剤かいめんかっせいざいです。これには、二つの せいしつが あり、おたがい ぎゃくむきの ところが あります[1]。

ひとつは、よごれに なじんで くっつく ちから。もう ひとつは、ぬのから はなれやすい ちからです。ものを ぎゅっと つかむのが とくいな 手ほど、はなすのは にがてです。せんざいも、よごれを よく つかむ ものほど、ぬのから はなれにくく なります。ただし ほんとうは、手の はなしでは なく、とても 小さな つぶの せいしつの はなしです。

花王は、せいしつの ちがう 2しゅるいを くみあわせて、どちらも つよく したと せつめいして います。そして、おちかたも すすぎやすさも ふつうの せんざいと かわらない ことを、花王が じぶんで しけんして たしかめたと して います[1]。

洗剤の主な成分は界面活性剤かいめんかっせいざいです。花王の技術解説によると、この界面活性剤には、洗う力とすすぎやすさのどちらを高めたいかで、向いている性質が正反対になるという難しさがありました[1]。

すすぎやすさを高めたいなら、衣類の繊維に残りにくい、水になじみやすい(親水性しんすいせいの高い)ものが向いています。反対に洗う力を高めたいなら、油の汚れになじみやすい(親油性しんゆせいの高い)ものが向いています[1]。よく貼りつくテープほどはがしにくい、という関係に似ています。ただし本当は、テープではなく、とても小さな分子の性質の話です。

花王は、この二つを2種類の界面活性剤の組み合わせで両立させたと説明しています。組み合わせると分子が動きやすくなって汚れに素早く向かい、汚れを包んだ小さな粒(ミセル)は親水性が高いので布から離れやすい、というのです。洗浄もすすぎも従来の洗剤と変わらないことは、花王の実証試験で確かめたとされています[1]。

洗剤の主成分は界面活性剤かいめんかっせいざいである。花王の技術解説によると、開発では次の二律背反があった。すすぎ力を高めるには、衣類の繊維に残りにくい親水性の高い界面活性剤が向く。一方、洗浄力を高めるには、汚れになじみやすい親油性の高いものが向く[1]。片方を優先すれば、もう片方が弱くなる関係になる。

花王はこの両立を、性質の違う2種類の界面活性剤の組み合わせで実現したと説明する。組み合わせることで分子の運動性が増し、素早く汚れに向かう。汚れを包んで作るミセルは親水性が高いので、布から離れやすい、という筋道だ[1]。

「洗浄・すすぎとも従来洗剤と変わらない」ことは、花王が実証試験で確認したとされる[1]。これは同社自身の確認であり、第三者が測った値とは書かれていない点に注意したい。

3. せんざいを こく して、つかう りょうも へらす

3. 洗剤を濃くして、使う量も減らす

3. 濃縮と使用量 ── 1kgが400gに、洗濯1回分は約4割に

せんざいを こく する くふうも あります。えきたいの せんざいから 水を へらすと、小さな つぶが おなじ むきに かさなって、とけにくく なって しまいました[1]。花王は、つぶの かたちを かえて、これを なおしました。1キロ あった せんざいが、400グラムに なって います。

つかう りょうも へりました。ふく 4キロの せんたくに ひつような せんざいは、ふつうの ものが 41.8グラム、すすぎ 1回の こい ものが 16.8グラムと いう しりょうが あります[3]。およそ 4わりです。二つの せいひんを くらべた れいで、どの せんざいも こうとは かぎりません。せんざいが すくなければ、すすぐ ときに おとす ぶんも すくなくて すむと かんがえられます。

洗剤を濃くして小さくする工夫も、すすぎ1回とつながっています。液体洗剤から水を減らしていくと、界面活性剤の分子が同じ向きに積み重なって層になり、水に溶けにくくなるという問題が起きます。花王は、分子の水になじむ部分を大きくすることでこれを解決し、1kgあった液体洗剤を400gまで濃縮しました(2009年発売のアタックNeo)[1]。

使う量も変わります。日本化学工業協会に載っている花王提供のLCA事例では、衣類4kgの洗濯に必要な洗剤は、すすぎ1回の濃縮型液体洗剤で16.8g、従来型(すすぎ2回)で41.8gでした。16.8÷41.8は約0.4なので、約4割です[3]。

これは特定の2製品を比べた例で、洗剤全般に当てはまるわけではありません。ただ、洗剤の量が少なければ、すすぎで落とすべき量も少なくて済むと考えられます。

液体洗剤を濃縮するとき、水を減らすと界面活性剤の分子が同じ向きに積み重なって層構造になり、溶けにくくなるという問題があった。花王は分子の親水基の部分を大きくして溶けやすさを保ち、1kgあった液体洗剤を400gまで濃縮した(2009年発売のアタックNeo)[1]。

洗剤の量の違いは、日本化学工業協会のLCA事例(花王提供資料)に数字がある。衣類4kgの洗濯に必要な洗剤は、すすぎ1回の濃縮型液体洗剤で16.8g、従来型(すすぎ2回)で41.8gで、同等の洗浄力を発揮するとされる。16.8÷41.8は約0.40で、約4割だ。1本あたりの中身は、濃縮型が400g、従来型が1,000gである[3]。

これは特定の製品どうしの比較であって、濃縮型の洗剤すべてに一般化はできない。洗剤の量が減れば、すすぎで取り除く成分の量も減る、と考えるのは自然だが、その因果を直接測った値はここでは示されていない。

4. すすぎ 0回の せんざいは、界面活性剤かいめんかっせいざいを どれくらい へらしたの?

4. すすぎ0回の洗剤は、界面活性剤を約半分にした

4. すすぎ0回の洗剤 ── 界面活性剤を約半分にして、別の成分で補う

ライオンという 会社の、すすぎ 0回の せんざいは、界面活性剤かいめんかっせいざいを、ふつうの せんざいの はんぶんくらいに へらしました[4]。へった ぶんの あらう ちからは、おちた よごれが ぬのに もどるのを ふせぐ せいぶん などで おぎなって います。

ライオンの 人は、からだの あぶらの よごれで しらべて、すすぎ 0回の せんたくが、ふつうの せんざいの すすぎ 1回と おなじくらい きれいに なり、ぬのに のこる せいぶんの りょうも おなじくらいだった、と せつめいして います[4]。

ここで、ことばに ちゅうい です。「のこらない」では なく「ふつうと おなじくらい」と 書いて あります。0回の ときは、この せんざい だけで つかい、柔軟剤じゅうなんざいなどとは いっしょに つかえません[4]。

ライオンの「すすぎ0回」の洗剤(アクロン)は、別の道を選びました。開発を担当した研究員の説明では、界面活性剤を従来の洗剤の約半分まで減らし、洗う力が落ちる分を、落とした汚れが布に戻るのを防ぐポリマーなど、別の機能をもつ成分で補ったといいます[4]。

体の油(皮脂)の汚れで比べると、すすぎ0回の洗濯は、従来の洗剤のすすぎ1回と同じくらい汚れが落ち、衣類に残る成分の量も従来と同程度だった、という確認結果が紹介されています[4]。

言葉づかいに注目してください。「残らない」ではなく「従来と同程度」です。また、0回の設定で使うときは、この洗剤だけで使い、柔軟剤じゅうなんざいや漂白剤などとの併用はできないとされています[4]。

ライオンの「すすぎ0回」洗剤(アクロン)の開発では、界面活性剤の量を従来洗剤の約半分まで減らした。洗浄力の低下は、洗い落とした汚れが衣類に再び付く再付着さいふちゃくを防ぐポリマーなど、別の機能成分で補ったと、同社の研究員は説明する[4]。前章の花王が「界面活性剤の組み合わせ」で両立を図ったのに対し、こちらは「量を減らして、別の成分に役割を分ける」設計だ。

同社の確認では、皮脂ひし汚れについて、すすぎ0回の洗濯が従来洗剤のすすぎ1回の洗濯と同等の洗浄力を示し、衣類に残る成分の量も従来と同程度だったという[4]。

ここでも表現は「残らない」ではなく「従来と同程度」だ。0回の設定は本品単独で使うことが条件で、柔軟剤じゅうなんざい・漂白剤・部分ケア剤・ビーズ剤との併用はできないとされる[4]。これも自社の確認であり、第三者の測定とは書かれていない。

5. のこりゆを すすぎに つかうと、こまる わけ

5. すすぎに残り湯を使うと、汚れがつくことがある

5. 残り湯とすすぎ ── 洗浄成分がほとんど残らない水

おふろの のこりゆを、せんたくに つかう 家も あります。せんざいの 団体だんたいの 記事では、すすぎ 1回の せんざいの ばあい、すすぎの 水には せんざいの せいぶんが ほとんど のこって いない、と 書いて あります[2]。そこに のこりゆを つかうと、ゆの 中の よごれが、せんたくものに つく ことが あるそうです。

だから、のこりゆは あらう ときだけ。すすぎには、すいどうの きれいな 水を つかう、と 書いて あります[2]。のこりゆを あらうのに つかう ことまで、やめようと いう はなしでは ありません。

せんたくきに よっては、すすぎ 1回に できない ものも あります。

お風呂の残り湯を洗濯に使う家庭もあります。日本石鹸洗剤工業会の記事は、この場合の注意を書いています。「1回すすぎ」の洗剤を使うと、すすぎの水には洗浄成分がほとんど残っていません。そこに残り湯を使うと、湯に含まれる汚れが洗濯物につく可能性があるというのです[2]。

そのため、残り湯は洗うときだけに使い、すすぎには水道水などのきれいな水を使うよう勧めています。残り湯を洗いに使うこと自体を否定しているわけではありません。洗濯機によっては、1回すすぎの設定ができないものもあるとも書かれています[2]。

工業会は、「1回すすぎ」用の洗剤ではすすぎの水に洗浄成分がほとんど残らない、と説明しています。節水になる一方で、使う水には気をつける必要がある。ここに、すすぎ1回の裏返しの面が見えます。

風呂の残り湯を洗濯に使う家庭への注意が、JSDAの解説記事にある。「1回すすぎ」の洗剤では、すすぎ水に洗浄成分がほとんど残っていないため、残り湯を使うと、湯に含まれる汚れが洗濯物に付着する可能性がある[2]。

そのため、残り湯は洗うときだけに使い、すすぎには水道水などのきれいな水を使うよう求めている。禁じているのはすすぎ水への使用で、洗いに使うことまで否定してはいない。また、洗濯機によっては1回すすぎの設定ができない機種もあるという[2]。

JSDAは、1回すすぎ用洗剤ではすすぎ水に洗浄成分がほとんど残らないと説明している。節水の話とは別の、すすぎ1回の運用上の注意点である。

6. 「1回で いい」のは、どんな ときかな?

6. 「1回でよい」には条件がある

6. 1回で足りる条件 ── 表示・使用量・溶かし方

「すすぎ 1回で いい」は、どの せんざいでも いえる はなしでは ありません。花王の こたえには、「すすぎ 1回」と 書いて いない せんざいは、すすぎが たりなく なる ことが あるので、2回を すすめる、と あります[5]。まず、はこの ひょうじを 見ます。

りょうも だいじです。目やすの りょうを まもれば、1回で じゅうぶんに すすげる、と 花王は せつめいして います[6]。

日立の こたえでは、せんざいが ぬのに のこる わけとして、入れすぎ、せんたくきに ちょくせつ 入れる、水が つめたくて とけのこる、すすぎ ぶそく、が 出て います[7]。ちょうど いい りょうでも のこる ときは、すすぎを 2回に ふやすと よい そうです。

「1回でよい」は、どの洗剤でも言えることではありません。花王のよくある質問には、「すすぎ1回」の表示がない洗剤では、すすぎが不十分になる場合があるので2回すすぐことをすすめる、とあります。1回に対応した製品は、洗剤の成分が残りにくい処方だと説明されています。表示の回数は、水をためてすすぐ方法での回数です[5]。

量も条件です。液体ニュービーズについて花王は、使用量の目安に従って適量で使えば、成分が繊維に残りにくいので、1回のためすすぎで十分にすすげると説明しています[6]。

日立の質問集では、洗剤や柔軟剤が衣類に残る原因として、入れすぎ、洗剤を洗濯槽に直接入れること、水温が低いときの溶け残り、すすぎ不足があげられています。適量でも残るときは、すすぎを2回に増やすか、注水すすぎなどに変えるよう案内されています[7]。

花王のQ&Aは、「すすぎ1回」表示のない洗剤ではすすぎが不十分になる場合があるとして、2回(好みでそれ以上)を勧める。1回に対応した製品は、洗剤成分が残りにくい処方だという。表示の回数は「ためすすぎ」での回数で、注水すすぎでも使えるが、節水の点からはためすすぎを勧めている[5]。つまり、1回でよいかどうかは、洗剤ごとの表示で決まる。

使用量も前提になる。液体ニュービーズのQ&Aは、使用量の目安に従って適量で使えば、成分が繊維に残りにくく、ためすすぎ1回で十分にすすげると説明する[6]。

日立のQ&Aは、洗剤や柔軟剤が衣類に残る原因として、入れすぎ、洗剤の直接投入(水で溶かされないまま衣類に付く)、水温が低いときの溶け残り、すすぎ不足を挙げる。適量でも残るなら、すすぎを2回に増やすか、注水すすぎなどに変えるとしている[7]。洗剤の設計、使う量、溶かし方の三つがそろって、はじめて「1回でよい」が成り立つと読める。

7. 「のこらない」と「おなじくらい」は、ちがう

7. 「残らない」ではなく「従来と同程度」という言い方

7. 「従来と同程度」の意味 ── 残留を前提にした安全評価と、確認の限界

ここまでの せつめいを 見ると、どれも「おなじくらい」で、「ゼロ」とは 書いて いません。ふくに せんざいが すこしは のこる ことを、せんざいの 団体だんたいも かんがえに 入れて います[8]。

2025年に 団体だんたいが 国に 出した しりょうでは、せんたくの せんざいを つかう ばめんの ひとつに、「ふくに のこった せいぶんが はだに つく」ことを 入れて います。「のこっても あんぜん」と いう いみでは なく、その ばあいも しらべる ことに なって いる、と いう ことです[8]。

「おなじくらい」は、おもに 会社が じぶんで たしかめた はなしです。

ここまでの説明は、どれも「従来と変わらない」「従来と同程度」という言い方で、「残らない」とは書いていません。洗剤の成分が衣類に少し残ることは、業界団体も前提にしています。

日本石鹸洗剤工業会が2025年2月に厚生労働省向けに示した資料では、洗濯用洗剤についてのばく露(体に触れたり入ったりすること)の場面の一つに、「衣類に残った成分から皮膚に触れること」が入っています[8]。「残っても安全」という意味ではありません。衣類に残る場合も含めて、安全性を評価する枠組みがある、ということです。

その一方で、「同程度」の多くは、メーカーが自社の試験で確かめた結果です。すすぎ回数ごとの残りを大学や公的機関が比べた新しい測定や、洗剤の残りと肌の不調の関係を示す研究は、今回の下調べでは見つかりませんでした。洗剤の説明書きにある表示と使用量の目安が、いまのところ読み手が確かめられる手がかりです。

ここまでの説明は、いずれも「従来と変わらない」「従来と同程度」であって、「残らない」ではない。洗剤成分が衣類に残ることは、業界団体の安全評価でも前提にされている。JSDAが2025年2月に厚生労働省向けに示した資料は、洗濯用洗剤のばく露シナリオの一つに、「衣類に残留した成分からの経皮ばく露」を挙げる[8]。これは残留が安全だという意味ではなく、残留を想定して肌への影響を評価する枠組みがある、という意味だ。

同じ資料には、洗濯用・台所用の洗剤に使われる界面活性剤(AE)の例として、ヒトの耐容摂取量(TDI)が6mg/kg/日、推定最大摂取量が0.00952mg/kg/日と示されている。6÷0.00952で約630倍の開きがある。ただしこれは洗濯用と台所用の使用を想定した値で、衣類残留だけの値ではない。またAEは一例で、全洗剤の代表ではない[8]。

限界も押さえておく。「同程度」「変わらない」は、花王・ライオンの説明では自社の確認結果である。すすぎ回数ごとの残留を大学や公的機関が測定した最新の報告や、洗剤の残りと肌の不調の因果を示す査読つきの研究は、今回の調査では見つけられなかった。したがって「1回でも安全」とも「不安」とも断定はせず、洗剤ごとの表示と条件を確かめるのが現実的な読み方になる。

8. じぶんでも しらべて みたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

うちの せんざいの はこや ふくろを、おうちの 人と いっしょに 見て みましょう。「すすぎ 1回」と 書いて あるか、水の りょうごとの つかう りょうの 目やすが 書いて あるか、さがして みます。

  • 「すすぎ 1回」の ひょうじが ある せんざいと、ない せんざいで、書きかたが どう ちがうか 見くらべて みます。
  • 目やすの りょうが、せんたくものの 重さや 水の りょうで どう かわるか、見て みます。

おうちの せんたくきの ボタンで、すすぎの 回数を えらぶ ところが あるかも、見て みましょう。

やってみたいこと。家の洗剤の容器や袋の裏を見て、「すすぎ1回」という表示があるか、洗濯物の量や水の量に応じた使用量の目安が書かれているかを探してみましょう。

  • 「すすぎ1回」の表示がある洗剤とない洗剤があれば、書き方の違いを見比べます。
  • 使用量の目安が、洗濯物の量でどう変わるかを確かめます。
  • 洗濯機のすすぎの設定が、洗剤の表示と合っているかも見てみます。

資料を読んでみたい人には、次の二つをすすめます。

  • 日本化学会の解説ページ[1]。洗剤の分子の設計が、図つきで説明されています。
  • 日本石鹸洗剤工業会の記事[2]。1回すすぎの洗剤と節水・節電、残り湯の注意が書かれています。

やってみたいこと。家にある洗剤の容器や袋の裏を見て、「すすぎ1回」の表示の有無、洗濯物の量・水量ごとの使用量の目安を確かめる。洗剤が複数あれば、表示や目安の書き方を見比べる。洗濯機の設定(ためすすぎ・注水すすぎ、すすぎ回数)が洗剤の表示と合っているかも見ておく。

資料を読み比べてみたい。

  • 日本化学会「すすぎ1回で節水・節電」[1]。界面活性剤の性質と濃縮の工夫が、開発の側から書かれている。
  • JSDA「CLEAN AGE 227号」[2]。すすぎ分の節水量の例と、残り湯の注意がある。
  • JSDAの厚生労働省向け資料[8]。安全評価の枠組みとして、衣類残留がどう位置づけられているかが読める。

考えてみたい問い。「従来と同程度」を確かめる第三者の測定があるとしたら、何をどう測れば比べられるだろうか。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:洗剤メーカーの技術解説と製品Q&A、業界団体の資料を使った。メーカーの説明は自社の確認結果なので、本文ではそのつど「同社の」「〜とされる」と書いている。何に使ったかは、各項目の最後に示す。

  1. 日本化学会 グリーン・サステイナブルケミストリー「すすぎ1回で節水・節電|花王が開発した環境配慮型洗剤の秘密」。https://www.jaci.or.jp/gscn/GSCgs/j01/gsc_j01.php (水・電気の減り方、2種類の界面活性剤の組み合わせ、濃縮について)
  2. 日本石鹸洗剤工業会 CLEAN AGE 227号「節電・節水に役立つ『1回すすぎ』の洗濯用洗剤」(2011年)。https://jsda.org/w/06_clage/4clean_227-1.html (すすぎ分の節水の例、残り湯の注意について)
  3. 日本化学工業協会 CASE STUDY No.06「濃縮型液体衣料用洗剤」。https://www.nikkakyo.org/sites/default/files/2023-02/CaseStudy06_ConcentratedLiquidLaundryDetergent.pdf (洗濯1回あたりの洗剤の量について)
  4. ライオン R&D Station「洗濯を進化させる『すすぎ0回』は…」。https://www.lion.co.jp/ja/rd/station/articles/4452 (界面活性剤を減らした設計、同社の確認結果、併用できないものについて)
  5. 花王 製品Q&A「すすぎ1回」表示について。https://www.kao.com/jp/qa/detail/15869/ (表示のない洗剤と、表示の回数の意味について)
  6. 花王 製品Q&A(液体ニュービーズのすすぎ)。https://www.kao.com/jp/qa/detail/24815/ (適量ならためすすぎ1回で足りるという説明について)
  7. 日立の家電品 Q&A「衣類に洗剤や柔軟剤が残ってしまいます。」。https://kadenfan.hitachi.co.jp/support/wash/q_a/a134.html (洗剤が衣類に残る原因について)
  8. 日本石鹸洗剤工業会「家庭用製品の安全性についての活動」(厚生労働省掲載PDF、2025年2月)。https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001397096.pdf (衣類残留を想定した評価の場面、界面活性剤の安全性の数値の例について)

なおした ところ

更新履歴

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