1. おむつの こなは、どれくらい 水を すうの?
1. 紙おむつの中の粉は、自分の重さの何倍の水を吸うのか
1. 吸水量の見かけの差:純水での数百〜千倍と、尿での50〜100倍
紙おむつの 中には、わたのような ものに つつまれて、さらさらの こなが 入って います。「こうきゅうすいせい ポリマー」と いう ざいりょうです[5]。
この こなは、しおなどが とけて いない 水なら、自分の 重さの 数百ばいから 千ばいも 水を すうと いわれます[1]。1グラムで、1リットルに 近い 水です。かわいた ときは こなですが、水に ふれると すぐに ふくらんで、ぷるぷるの ゲルに なります。
ただし、おむつの 中で すうのは 水ではなく、おしっこです。おしっこには しおが とけて いるので、すえる りょうは ずっと 少なく なります。それでも 自分の 重さの 50〜100ばいの おしっこを すい、おしても しみだしにくいと せつめいされます[4]。
では、さらさらの こなは、どうやって 水を とじこめるのでしょう。こたえは、こなの つぶが、あみの 目のように なって いる ことです。
白い粉が、ゲルになる
紙おむつには、綿のようなパルプに包まれて、粉末の高吸水性ポリマー(SAP)が入っています[5]。乾いているときは粉ですが、水に触れるとすぐに膨らんで、ゲル状になります[1]。
水と尿で、吸う量がちがう
メーカーの説明では、SAPは自重の数百倍から千倍の水を吸収し、保持します[1]。これは塩を含まない水での、上限に近い数字です。尿を吸うおむつの中では、自重の50〜100倍ほどと説明され、押してもしみ出しにくいとされます[4]。
尿1mLを約1gとみなして計算すると、SAP1gが50〜100mLの尿を吸うことになります。500mLのペットボトル1本ぶんなら5〜10gで、1円玉5〜10枚ぶんの重さです。これは計算の目安で、実際のおむつに入っている量ではありません。
粉の1粒が、自分の重さの何十倍もの水を、どうやって閉じこめているのでしょうか。
SAPは親水性の高分子に架橋構造を持たせたもので、ほとんどはポリアクリル酸系である。乾燥状態では粉末で、水に触れると速やかに膨潤してゲル状になる[1]。吸収量は、同じ資料で自重の数百倍から千倍とされる。
ただし、この倍率は条件つきの数字である。別の資料によれば、塩を含まない水(純水)で約400倍と書かれる例もあり[3]、製品や条件で幅がある。そのため、千倍は「純水での上限に近い値」と読むのが妥当である。一方、おむつの中で尿を吸う場合は、自重の50〜100倍と説明される[4]。数字だけを見れば、純水での値よりかなり小さい。
尿1mLを約1gとみなす計算では、SAP1gは50〜100mLの尿を保持する。500mLなら5〜10gで、1円玉5〜10枚ぶんの重さになる。これは倍率からの検算であり、実際のおむつの中身の量ではない。
では、自重の数十倍の水を、粉はどのように保持するのか。
2. 水に とける こなが、どうして とけないの?
2. 水に溶ける材料が、溶けずに水を閉じこめる網目
2. 架橋した網目と浸透圧:溶ける高分子が、溶けずに水を抱える理由
この こなの ざいりょうは、もともと 水に とける せいしつを もって います。それなのに、水に 入れても とけずに、ゲルに なります[8]。
ひみつは、つくりかたです。ばらばらの ひもは 水に ながされますが、ところどころ むすんで あみに すれば、ながれません。こなも、とても 小さな ぶんしを ところどころ 橋かけの ように つないで、あみに して あります。ただし 本当は、目には 見えない 小ささです。
水が 入って くると、あみの 目が ひろがり、その 中に 水が とじこめられます。あみに なって いるから、水を すっても とけずに、ゲルとして ふくらむのです[8]。
水が 入って いく わけは、2つ 考えられて います。1つめは、あみの ひもに ならぶ マイナスの 電気の つぶどうしが、はなれようと して、あみを 広げる こと。2つめは、あみの 中と 外で、とけた つぶの こさが ちがう こと。この ちがいが、水を あみの 中へ うごかす ちからに なります。これを「しんとうあつ」と いいます[2][3]。
溶ける材料を、橋かけで溶けなくする
SAPの主な材料のポリアクリル酸ナトリウムは、本来は水に溶ける性質をもちます。それが溶けずにゲルになるのは、分子どうしを「橋かけ」(架橋)して、網目の形にしてあるからです。網目になっているから、水を吸っても溶けずに、ゲルとして膨らみます[8]。
ばらばらのひもは水に流されますが、ところどころ結べば網になります。粉の分子も、似た形で目に見えない網になっています。吸った水は、この網目の中に閉じこめられ、力を加えても出にくくなります。
水が入っていく2つの力
水が網目に入る駆動力は、2つ説明されています。1つ目は、網目の内と外のイオン濃度の差による浸透圧です。網目の内と外でイオンの濃度がちがうため、その差による浸透圧が、水を網目の内側へ動かします。2つ目は、電離したカルボキシル基どうしの反発です。マイナスの電気をもった部分が反発し合って、網目が広がります[2][3]。
この浸透圧は、網目の内と外の濃さの差で決まります。ということは、外の水が濃くなったら、どうなるのでしょうか。
ポリアクリル酸ナトリウムは水に溶ける高分子だが、SAPでは分子どうしを橋かけして網目にしているため、溶けずに膨潤してゲルになる[8]。吸った水は網目に閉じこめられ、力を加えても出にくい。
水が網目の中へ入る駆動力は、東亞合成の資料で次のように整理されている。第一に、樹脂の内外の電解質濃度差に起因する浸透圧。第二に、電離したカルボキシル基(−COO⁻)どうしのイオン反発力で、網目が広がる[2]。高校生の研究報告も同じ仕組みを書いており、網目の内と外のイオン濃度の差による浸透圧で水が入ると説明する[3]。水との親和力や網目のゴム弾性も関わるとされ、吸収量はこれらの釣り合いで決まる。
ここで重要なのは、浸透圧が「内外の濃度差」で決まる点である。つまり、外側の液が濃くなれば、駆動力は弱まる。尿は、まさにそういう液である。
3. おしっこだと、どうして 水より 少なく なるの?
3. 同じ粉でも、塩を含む尿では吸う量が減るわけ
3. 電解質水溶液での吸水低下:内外の濃度差がゆるむとき
あみの 中と 外の こさの ちがいが、水を ひきこむ ちからでした。ところが、外の 水にも しおが とけて いると、この ちがいが 小さく なります。すると、水を ひきこむ ちからも よわく なります[2]。
おしっこにも、しおが とけて います。だから 同じ こなでも、しおの ない 水より すえる りょうが 少なく なります。ある しりょうでは、しおの ない 水で やく500ばい すう せいひんでも、しおの こさが 上がる ほど すえる りょうが 下がると 書かれて います[2]。
おしっこで 50〜100ばいと いう 数字は、しおの ない 水の 数字より、ずっと 小さく 見えます。それでも、1円玉と 同じ 1グラムの こなが、50〜100ミリリットルを すう 計算です。500ミリリットルの ペットボトル 1本ぶんは、5〜10グラム。おしっこ 1ミリリットルを 1グラムと 考えた、計算の 目安です。
では、おむつは、この こなだけで できて いるのでしょうか。
外の液が濃いと、水を引きこむ力が弱まる
アクリル酸系のSAPは、もともと、尿のように塩を含む水溶液を吸うのは得意ではないとされます。外側の液の電解質濃度が高いと、網目の内と外の濃度差がゆるみ、吸う力が弱まるからです[2]。
同じ資料には、純水で約500倍を吸う製品でも、食塩の濃度が上がるにつれて吸収量が下がる様子が、図で示されています[2]。
千倍と50〜100倍を比べるときの注意
メーカー資料の「数百倍から千倍」と、業界団体の「50〜100倍」を並べると、1桁ほどの差に見えます。ただし、これは製品も測り方もちがう別々の資料の数字です。同じ製品を純水と尿で測った比較ではないので、「尿だと10分の1になる」とは言えません。言えるのは、塩を含む液では、純水より吸える量が大きく下がる、という方向までです。
吸う量が減るなら、おむつの中では、粉だけでなく別の材料の力も借りているはずです。
アクリル酸系SAPは、本来は電解質水溶液の吸収が得意ではない。高濃度の電解質水溶液では、樹脂の内外の濃度差が緩和され、吸水能力が極端に低下する。純水で約500倍を吸う製品でも、食塩濃度が増すほど吸収量は下がり、その様子は図で示される[2]。図の数値は読み取り値なので、ここでは方向だけを使う。
このため、メーカー資料の「数百倍から千倍」[1]と、日衛連の解説の「50〜100倍」[4]を、同じ製品の比較として直接つなぐことはできない。製品も測定条件も異なるからである。言えるのは、塩を含む尿では、純水より吸える量が大きく下がり、おむつの中の実際の吸収量は50〜100倍と説明される、という範囲までである。
吸収量が下がることを前提に、おむつはどのように設計されているのか。
4. こなだけで おむつは できて いるの?
4. パルプが広げ、高吸水性ポリマーがためる:おむつの役割分担
4. パルプとSAPの分担:拡散と保持、そして薄型化
おむつの 中には、こなの ほかに、わたのように ふわふわした パルプが 入って います。いちばん 上の ほうに 水を すう かみ、その 下に、パルプに つつまれた こなが あります[5]。
はたらきは わかれて います。パルプは、おしっこを まわりへ 広げるのが 主な しごとです。広がった おしっこを、こなが すって ためます[6]。
かわいた おむつの 重さで くらべると、4〜7わりが パルプで、3〜6わりが プラスチックと こなです[5]。ただし これは、おむつ 1まいぶんの 全体の 重さの わりあいで、こなだけの わりあいでは ありません。
パルプを へらして、うすくする くふうも あります。ある メーカーは 2013年、おしっこを よく 広げる こなを 発表しました。パルプを へらして うすく できて、すえる りょうも 1わり いじょう ふえると しています[6]。これは その せいひんの 数字で、すべての こなの 数字では ありません。
では、この 白い こなは、いつ、どこで 生まれたのでしょう。
広げる役と、ためる役
紙おむつの吸収材は、吸水紙の下に、綿状のパルプに包まれたSAPが入った構造です。尿を吸収し、保持します[5]。尿を広げる役は、主にパルプが担います。広がった尿を粉が吸ってゲルになり、多少の圧力でも離しにくくなります[6][4]。
乾いたときの重さの比では、パルプが40〜70%、プラスチックとSAPが30〜60%とされます。これはおむつ全体の重さに対する比で、SAPだけの割合ではありません[5]。
粉が広げ上手なら、パルプを減らせる
三洋化成工業は2013年に、尿の拡散性に優れる新しいグレードの高吸水性樹脂を発表しました。パルプの使用量を減らせるので、紙おむつを薄くでき、尿の有効吸収量も従来より1割以上増えるとしています[6]。ただし、これは同社の特定製品の性能であり、SAP一般の数字ではありません。
では、この粉はいつ、どこで作られたのでしょうか。
紙おむつの吸収材は、吸水紙の下に、綿状パルプに包まれたSAPがある構造で、尿を吸収し保持する。乾燥時の重量比は、パルプが40〜70%、プラスチック・高吸水性ポリマーが30〜60%とされる[5]。これは製品全体に対する比であり、SAP単体の比率ではない。
役割は分かれている。三洋化成工業の2013年の発表によれば、紙おむつでは主に拡散の役割をパルプが担う[6]。一方、粉は、尿を吸って膨潤し、ゲル状に固まって、多少の圧力でも離水しにくい[4]。
この分担を前提にすると、尿の拡散性に優れるSAPを使えば、拡散役のパルプの使用量を減らせる。発表では、そのため薄型化が可能で、尿の有効吸収量も従来より1割以上増えるとされる[6]。ただし、これは同社の製品(サンウェットSG)に固有の性能で、SAP全体には広げられない。
吸水・保持・拡散を、粉とパルプで分ける発想は、どのような開発の流れから生まれたのか。
5. この こなは、だれが 作りはじめたの?
5. でんぷんから始まった吸水材は、どうやって紙おむつに入ったのか
5. 1970年代の米国農務省の吸水材から、日本での紙おむつへ
はじまりは、アメリカの のうむしょうの けんきゅうしゃたちです。でんぷんに、べつの ざいりょうを つないで、数百ばいの 水を すう ざいりょうを 作りました。名前は「スーパー・スラーパー」です[7]。これは、こうほうの 人が つけたと つたえられて います。
この ざいりょうは 1970年代の 前半に 生まれ、そこから 世界で かいはつが ほんかくてきに 始まったと せつめいされます[2]。やく40の ところに、使っても よいと いう きょかが 出ました[7]。
1978年には、日本の 会社が こなの 商売としての せいさんを 始めたと 発表して います。同じ 年に 生理用品にも 使われました[1][2]。おむつに 使われたのは、1980年代の はじめです[2][4]。
こなの おかげで、おむつは 1日に 使う まいすうが へりました。1983年の 年表では、1日 7.7まいから 5.5まいに へったと あります[4]。やく3わり へった 計算です。
今の こなの 主な ざいりょうは、石油から 作る アクリルさんです[1]。でも、使い おわった あと、水を ふくんだ ままの こなは どうなるのでしょう。
でんぷんに合成高分子をつないだ「スーパー・スラーパー」
米国農務省の研究者たちは、でんぷんに合成高分子をつなぎ、数百倍の水を吸える吸水材を作りました。名前の「スーパー・スラーパー」は、同省の広報担当者がつけたと伝えられます[7]。約40件の非独占ライセンスが許諾され、さまざまな会社が使えるようになりました。
この研究の発表をきっかけに、1970年代の前半から、高吸水性樹脂の開発が本格的に始まったとされます。発表年は資料により1973年、1974年と食いちがうので、「1970年代前半」と書くのが安全です[2][7]。
日本で生理用品、そして紙おむつへ
1978年に、高吸水性樹脂が生理用品に初めて使われました[2]。同じ年に、三洋化成工業は世界で初めて商業生産を始めたと発表しています。ただし、「世界初」は同社自身の発表です[1]。
紙おむつへの採用は、東亞合成の資料では1981年に日本で発売されたとあり、日本衛生材料工業連合会の年表では1983年とあります。年が食いちがうので、「1980年代のはじめ」とまとめます[2][4]。
1日に使う枚数が、7.7枚から5.5枚へ
日衛連の年表には、高分子吸水材を採用した紙おむつが発売され、吸収性能が向上して、1日の使用枚数が7.7枚から5.5枚に減ったとあります[4]。5.5÷7.7は約0.71なので、およそ3割減った計算です。
2002年時点の東亞合成の記述では、高吸水性樹脂の需要の90%を大幅に超えるぶんが紙おむつ向けでした[2]。現在のSAPは、石油由来のプロピレンから作るアクリル酸が主原料です[1]。では、使い終わったあとの粉は、どうなるのでしょうか。
高吸水性樹脂の開発は、1974年の米国農務省北部研究所(NRRL)の発表を契機に本格化したと、東亞合成の資料は書く[2]。農務省(ARS)の研究者(Doane、Weaver、Bagley、Fantaら)は、でんぷんに合成高分子(アクリロニトリル系)をつないだ吸水材を作り、「Super Slurper」と名づけた。名前は広報室のMayberryが付け、約40件の非独占ライセンスが許諾された[7]。原料はでんぷんで、石油由来のポリアクリル酸ナトリウムは、のちに主流になる。発表年は、ARS誌が1973年、東亞合成が1974年と書くため、本稿は「1970年代前半」とした。
東亞合成の資料によれば、1978年に生理用品へ初めて応用され[2]、同じ年に三洋化成工業が世界初の商業生産を始めたと発表している[1]。「世界初」は三洋化成工業の発表による。
紙おむつへの採用は、東亞合成が1981年にムーニー(ユニ・チャーム)が世界で初めてSAPを応用した子供用紙おむつとして発売されたと書き[2]、日衛連の年表は1983年に高分子吸水材採用の乳幼児用紙おむつが発売されたとする[4]。年が食いちがうため、「1980年代はじめ」とまとめる。後者の年表では、1983年の発売で1日の使用枚数が7.7枚から5.5枚に減った。5.5÷7.7≒0.71で、約29%の減少である。さらに1984年には、SAPを使った製品で、大人でも1回の排尿を1枚で吸収できるようになったとある。
2002年時点で、高吸水性樹脂の需要に占める紙おむつ向けの比率は90%を大幅に超えていた[2]。現在のSAPの主原料は、石油由来のプロピレンから作るアクリル酸である[1]。水を抱えこんだ粉は、使用後にどう扱われるのか。
6. ふくらんだ ゲルに しおを かけると、どうなるの?
6. ふくらんだゲルに塩をかけると、水はどうなるのか
6. 塩による脱水と、使用済み紙おむつの回収という課題
水が 入る ちからは、あみの 中と 外の こさの ちがいでした。では、外を しおで こく したら どうなるでしょう。外の しおが こく なると、水を ひきこむ ちからが よわまり、水が 出て くる ことが あると せつめいされます。食しお水に 入れたり、しおを かけたりすると、水を はなす ことが あります[8]。すう ときの 反対の 向きの 動きです。
カルシウムのような つぶが ある ときも、あみが 広がりにくくなり、水を すいにくく なります[2]。
ある メーカーは 2020年に、えんかカルシウムで 5分ほどで 75%いじょう 水を 出す こなを 発表しました。使い おわった おむつを あつめて 使い直す とき、水を 出す ほうほうが かだいに なって いるからです[1]。
やってみよう 使って いない 紙おむつが あれば、おうちの 人と いっしょに 見て みましょう。はさみで 切って、中の わたの かたまりを 少し 取り、コップの 水に 入れます。ふくらんだ ゲルに、しおを ひとつまみ かけると、水が にじむ ことが あります。こなを すいこまない ように、そっと 取りあつかって ください。水も ゲルも 口には 入れません。
おむつの こなの ほかにも、スーパーの 魚の トレイの 下に ある 水を すう シートに、同じ なかまの ざいりょうを 使う ものが あります[2]。ならんでいる トレイを 見て みると、さがせるかもしれません。
やってみよう:ゲルに塩をかける
水を吸って膨らんだゲルに、外から塩をかけると、水が外へ出ることがあると説明されます[8]。網目の内外の濃度差で水が入ったのですから、外の濃度を上げれば、水を引きこむ力が弱まり、条件によっては水が出てきます。
使っていない紙おむつがあれば、おうちの人と一緒に、はさみで切って中の綿状の塊を少し取り出し、コップの水に入れます。膨らんだら、食塩をひとつまみかけて、様子を見てみましょう。粉を吸いこまないようにそっと扱い、水もゲルも口には入れません。
リサイクルの課題と、カルシウム
カルシウムのような2価の陽イオンは、SAPのカルボキシル基と強く結びつき、自由な膨潤をさまたげます[2]。三洋化成工業は2020年に、塩化カルシウム処理で5分ほどで75%以上脱水する新しいSAPを発表しました。従来品より、脱水性が約3割向上したとされます。使用済み紙おむつの回収・リサイクルの課題に対応する技術とされます[1]。ただし、これは新技術の発表で、普及状況までは分かりません。
次に見てみたいもの
スーパーの魚のトレイに敷いてある吸水シートにも、ポリアクリル酸ナトリウムを使う例があります[2]。今度、売り場でトレイの下を探してみると、どんな場所に、この粉の仲間が使われているかが見えてきます。
吸水の駆動力が内外の濃度差であるなら、外の液のイオン濃度を高めれば、吸水の駆動力は弱まり、条件によっては水が外へ出る。食塩水に入れたり、食塩をかけたりすると脱水できるという説明があり、吸水の逆向きの現象として理解できる[8]。
また、2価の陽イオン(カルシウムなど)は、SAPのカルボキシル基と強く結びついてイオン架橋を作り、自由な膨潤を妨げる。塩化カルシウムの濃度1%以上の水溶液では、従来品はわずかに湿る程度しか吸わない[2]。これは、おむつの中で起きる話ではなく、リサイクル処理や実験の条件の話である。
三洋化成工業は2020年に、膨潤後に塩化カルシウムなどで処理すると速やかに脱水する新しいSAPを発表した。生理食塩水中での吸水・保水機能を保ちつつ、塩化カルシウム処理で5分ほどで75%以上脱水し、従来品より脱水性が約3割向上する。使用済み紙おむつの回収・リサイクルの課題への対応として示されたもので、実用化の時期や普及状況は、資料からは分からない[1]。
確かめる道すじは、家でもつくれる。使っていない紙おむつを、おうちの人と切って、中の綿状の塊を少し取り、水に入れる。ふくらんだゲルに食塩をかけると、水がにじむことがある。粉を吸いこまないようにそっと扱い、口には入れない。資料を読むなら、三洋化成工業の2020年のプレスリリースと、東亞合成の研究年報(TREND 2002 第5号)がある。米国農務省の研究を知りたければ、ARS誌のStarchの記事(英語)が出典欄にある。
スーパーの魚のトレイの吸水シートにも、ポリアクリル酸ナトリウムを使う例がある[2]。身近なところで、この材料がどこに使われているかを探してみると、新しい疑問が生まれる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。倍率や割合は、製品や測り方で変わる目安です。メーカーの数字は、その製品の発表です。
- 三洋化成工業 プレスリリース(2020年9月17日)脱水性に優れる高吸水性樹脂 https://sanyo-chemical.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/09/k20200917.pdf (吸水量、1978年の商業生産、主原料、塩化カルシウムによる脱水)
- 東亞合成研究年報 TREND 2002 第5号(野村幸司) https://www.toagosei.co.jp/develop/item/no05_04.pdf (吸水の駆動力、塩による吸水低下、カルシウムの影響、開発の歴史、需要の構成)
- 大阪教育大学附属高校天王寺校舎 生徒研究報告 2022(SAPと土壌の保水) https://f.osaka-kyoiku.ac.jp/tennoji-h/wp-content/uploads/sites/5/2024/03/proof2seitohoukokusyo_2022-34-37.pdf (浸透圧とイオン反発による吸水の説明、純水での吸水倍率)
- 宮澤清「使い捨て紙おむつを知る」循環とくらし No.11(2023) https://jsmcwm.or.jp/journal/files/2023/08/014miyazawa.pdf (尿の吸収倍率、圧力下の保持、1日の使用枚数、年表)
- 循環とくらし No.11 特集冒頭 https://jsmcwm.or.jp/journal/files/2023/08/012tobira.pdf (紙おむつの構造、パルプとSAPの重量比)
- 三洋化成工業 プレスリリース(2013年11月27日) https://www.sanyo-chemical.co.jp/wp/wp-content/uploads/2013/11/k131127a.pdf (パルプの拡散役、薄型化、有効吸収量)
- USDA ARS, Agricultural Research magazine(1996年5月)Starch の記事 https://agresearchmag.ars.usda.gov/1996/may/starch (スーパー・スラーパーの由来、名づけ、ライセンス)
- ナゾロジー「高吸水性ポリマー」解説 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/166885 (架橋と網目、食塩による脱水。一般向けの解説)
なおした ところ
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