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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

キジと ウサギの あしの なぞなぞは、ずに かくと とけるの?

「頭35・足94」は、なぜ足を半分にするだけで解けるのか ── 文章題を長方形の図にかく

『孫子算経』の雉兎同籠から面積図へ ── 頭35・足94の問題で考える、文章題を図に翻訳する意味と限界

分野:歴史・文化

いまから 1600ねんほど まえの 中国の 本に、こんな もんだいが あります。「かごに きじと うさぎが はいって いる。あたまは ぜんぶで 35、あしは ぜんぶで 94。きじと うさぎは なんびきずつ?」[1]。この もんだいは、あしを 半分に して あたまを ひくだけで とけます。

どうして それで こたえが 出るのでしょう。ずに かくと、その わけが 見えて きます。このメモを 読むと、ずの かきかたと、小学校しょうがっこうで ならう ずの なかまが わかります。

およそ1600年前の中国の数学書に、「かごの中にキジとウサギがいる。頭は全部で35、足は全部で94。それぞれ何匹か」という問題があります[1]。答えを出す術は、足の数を半分にして、頭の数を引くだけ。計算は2行で終わります。

なぜそれでウサギの数が出るのでしょうか。長方形にして面積で考えると、理由が目に見えます。文章題を図にかくと式が立てやすくなる仕組みと、小学校で習う図の種類、世界の算数教室での図の使われ方が分かります。

約1600年前の中国の数学書『孫子算経』(著者不詳、400年ごろとされる)に、「雉と兎が同じかごにいて、頭は35、足は94。それぞれ何匹か」という問題がある。足を半分にして頭を引けば兎の数が出る、という術まで添えられている[1]。

なぜその手順で答えが出るのか。縦を1匹の足、横を頭数にした長方形の面積に置き換えると理由が見える。同じ「図にして考える」発想は、小学校の線分図、シンガポールのバーモデル、数学者ポリアの助言にもつながる。この記事では、図が式の意味を見せてくれる理由と、図にも限界があることが分かる。

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1. かごの なかの きじと うさぎ、なんびき?

1. 「頭35・足94」── 1600年前の問題と、2行で終わる術

1. 『孫子算経』の「雉兎同籠」── 頭35・足94から兎の数を出す術

かごの なかに、きじと うさぎが います。あたまを 数えると 35。あしを 数えると 94 です。きじの あしは 2本、うさぎの あしは 4本。さて、きじと うさぎは なんびきずつ でしょう。

この もんだいは、むかしの 中国の 数の 本に のって います[1]。こたえは、きじが 23ひき、うさぎが 12ひきです。

とき方も 書いて あります。「あしを 半分に する。そこから あたまを ひく。それが うさぎの 数」。94の 半分は 47。47から 35を ひくと 12 です。あたま 35から 12を ひくと、きじの 23が 出ます[1]。

たしかめて みましょう。23×2+12×4=46+48=94。23+12=35。ぴったりです。でも、なぜ あしを 半分に すると いいのか、ふしぎです。つぎで 考えて みましょう。

かごの中にキジとウサギがいます。頭を数えると全部で35、足を数えると全部で94。キジの足は2本、ウサギの足は4本です。それぞれ何匹いるでしょうか。

これは、著者のわからない中国の数学書『孫子算経』(400年ごろとされる)の巻下にある「雉兎同籠」という問題です。答えはキジ23匹、ウサギ12匹と書かれています[1]。

本には解き方も短く添えられています。足の数を半分にして47を作り、そこから頭の数35を引くとウサギの数12が出ます。頭35からウサギ12を引けば、キジの23が出ます[1]。確かめると、23×2+12×4=46+48=94、23+12=35で、どちらも合います。

この手順を覚えれば解けます。けれども、なぜ「足を半分にして頭を引く」とウサギが出るのかは、式だけを見ていても分かりにくいところです。ここを図で見てみましょう。

『孫子算経』巻下の「雉兎同籠」は、頭35、足94のとき、雉と兎が何匹ずつかを問う。答えは雉23、兎12とされる。添えられた術は、足の数を半分にして47とし、そこから頭の数35を引くと兎の数12が出る、というものだ。さらに頭35から兎12を引くと雉23になる[1]。検算は、23×2+12×4=94、23+12=35である。

この術は、使えば2行で終わる。ところが式を眺めるだけでは、なぜ足を半分にするのか、なぜ頭を引くと兎が残るのか、理由は見えない。手順を覚えることと、手順が成り立つ理由を説明できることは別である。理由を見せてくれる道具が、図だ。

2. あしの 数を 長方形に すると どうなるの?

2. 足の数を長方形の面積にすると、術の理由が見えてくる

2. 鶴亀算の面積図 ── 縦を足、横を頭、面積を足の総数にする

ずに かく 方ほうが あります。たての 長さを「1ぴきの あしの 数」、よこの 長さを「あたまの 数」に した 長方形を かきます。すると、長方形の 面積めんせきが「あしの 数ぜんぶ」に なります[2]。

まず、ぜんぶ きじだと 考えます。たては 2、よこは 35。面積めんせきは 2×35=70。でも ほんとうの あしは 94 ですから、24 たりません。

きじを 1ぴき うさぎに かえると、たてが 2から 4に のびて、あしが 2本 ふえます。たりない 24を 2ずつ うめて いけば いいので、24÷2=12。うさぎは 12ひきです。きじは 35−12=23ひき。

「あしを 半分に すると、きじの あしは 1、うさぎの あしは 2として 数えられます。あたまの 数だけ たて 1を しくと、うさぎの ところだけ 1ずつ はみ出します。47から 35を ひいた 12は、その はみ出した 数。つまり うさぎの 数です。

あしの 数を、長方形の 面積めんせきで 考えました。では、こういう ずは、学校で いつ ならうのでしょう。

鶴亀算では、長方形を使った解き方も知られています。縦を「1匹の足の数」、横を「頭の数」にして長方形をかくと、面積が足の数を表す、という見方です[2]。全員がキジだった場合の長方形を基準にして、ウサギに入れかえた分だけ増える面積を数えていきます。

頭35・足94で試します。まず全部がキジだったことにします。縦2、横35の長方形をかくと、面積は2×35=70。本当の足の数は94なので、24足りません。

ここでキジを1匹ウサギに入れかえると、縦が2から4へ伸び、足は2本増えます。足りない24を2本ずつ埋めていけばよいので、24÷2=12。ウサギは12匹で、キジは35−12=23匹です。

この図を見ると、「足を半分にして頭を引く」術の理由も読めます。足を半分にすると、キジの足は1、ウサギの足は2として数えられます。だから、頭の数を引いた余りがウサギの数になります。頭の数だけ縦1の長方形を敷くと、はみ出すのはウサギの分の縦1だけ。半分にした足47から頭35を引いた12は、そのはみ出した分の数、つまりウサギの数です。

足し算の話が、長方形の面積の話に化けました。なお、この問題が鶴亀算と呼ばれるのは、江戸時代の坂部広胖の本『算法点竄指南録』が、雉と兎をおめでたい鶴と亀に置き換えたことによる、とされています[2]。

では、こうした図は、小学校ではいつ、どんな順に習うのでしょうか。

面積図による解法は、縦を1匹あたりの足の数、横を頭数、面積を足の総数とおく[2]。この置き方なら、全員が同じ種類だと仮定したときの足の総数は、1匹の足×頭数というかけ算、つまり長方形の面積=縦×横になる。実際の足との差は、雉を兎に替えた分だけ増える面積として数える。

頭35・足94で試す。全部が雉だとすれば、縦2・横35で面積は70になる。実際の足は94だから、24足りない。雉1匹を兎に入れかえると縦が2から4に伸び、面積は2だけ増える。足りない24を2ずつ埋めるので、24÷2=12が兎の数、35−12=23が雉の数になる。参照した解説の別の例(8匹・足26本)でも、全部が鶴なら2×8=16、差の10を足の差2で割ってカメ5匹、ツル3匹となり、3×2+5×4=26で検算が合う[2]。

この図は、『孫子算経』の術がなぜ成り立つかも教えてくれる。足を半分にすると、雉の足は1、兎の足は2に縮む。頭の数だけ縦1の長方形を敷くと、はみ出すのは兎のところの縦1だけである。だから、半分にした足47から頭35を引いた12が兎の数になる。8匹・足26本の例でも、13−8=5で、面積図と同じ答えが出る。

なお、鶴亀算という名は、江戸時代の坂部広胖『算法点竄指南録』が雉と兎をおめでたい鶴と亀に置き換えたことに由来するとされる。この由来は1つの解説に拠る話なので、「とされる」の範囲にとどめる[2]。では、この発想は、いまの学校の算数にどう受けつがれているのか。

3. 小学校では、どんな ずを ならうの?

3. 小学校で習う図 ── テープ図から線分図、数直線、面積図へ

3. 小学校の図の種類と、線分図を初めて学ぶ学年

きじと うさぎの 長方形は、小学校しょうがっこうで ならう 「面積めんせきず」の なかまです。ほかにも いろいろな ずが あります[3]。

テープ図は、数を テープの 長さに して、1本の テープに あらわします。線分図は、テープ図を 線で 表した ずです。

数直線は、1年生から「かずのせん」として ならいます。あとで、小すうや 分数にも つかいます。面積めんせきずは、長方形で 数の 大きさを あらわします。0.5 と 1/2 が おなじ 大きさだと、おなじ ずに なる ことで わかります。

線分図を はじめて ならうのは、3年生です。2年生までは テープ図です。ある 県の じゅぎょうの 計画には、線分図は テープ図より かんたんに 数の つながりを あらわせて、3年生より あとも もんだいを とく ときの だいじな てだてだ、と 書かれて います[4]。

そんなに べんりなら、みんな ずを かいて いるのでしょうか。

頭と足の長方形は、小学校で習う「面積図」の仲間です。算数の授業では、数量の関係を表す図がほかにもあります。東京都教職員研修センターの研究報告は、テープ図、線分図、数直線、面積図を挙げて整理しています[3]。

テープ図は、数量をテープの長さに置き換えて、1本のテープに表した図です。線分図はそのテープ図の幅をなくして線にしたもので、足し算・引き算のほか、かけ算・わり算や、混ざった問題に使われることもあります。数直線は第1学年から「かずのせん」として整数の順序を学び、のちに小数や分数にも使います。面積図は長方形やその組み合わせで数量の関係を表し、0.5と1/2が同じ図になることから、同じ大きさだと分かります。

線分図を初めて習うのは第3学年です。鳥取県の算数の指導案によると、第2学年まではテープ図を使い、線分図はテープ図より簡単に数量関係を表せるもので、第3学年以降も問題を解く大切な手立てになる、とされています[4]。

便利な図なら、子どもたちはよく使っているのでしょうか。ある小学校の研究が、その問いに向き合っています。

東京都教職員研修センターの研究報告は、小学校で用いる図として、テープ図、線分図、数直線、面積図を整理している[3]。テープ図は数量をテープの長さに置き換えて1本のテープに表したもの、線分図はそのテープ図の幅をなくしたもので、加減に限らず乗除や混合の問題にも使われる。数直線は第1学年の「かずのせん」で整数の順序を学び、数と実線が対応する性質を活かして、のちに小数・分数にも使う。面積図は長方形(正方形)やその組み合わせで数量の関係を表し、0.5と1/2が同じ図になることで同じ大きさだと示せる。

線分図を初めて学ぶのは第3学年である。鳥取県の算数3年の指導案は、第2学年まではテープ図を使い、線分図はテープ図より簡単に数量関係を表せるうえ、第3学年以降も問題解決の大切な手立てになる、と述べる。ただしこれは学習指導要領解説を踏まえた県の指導案の記述である[4]。

そうだとすれば、図は教室で十分に使われているはずだ。ところが実践の側からは、別の課題も報告されている。

4. 「ひき算の おはなし」なのに、こたえは たし算?

4. 引き算の文章なのに答えは足し算 ── 逆から考える問題と、図を使う子の少なさ

4. 逆思考の問題と線分図 ── 式は書けても理由を説明できない子という課題

こんな もんだいを 考えて みましょう。「あめを いくつか もって いました。3こ 食べたら、のこりが 7こに なりました。はじめは いくつ?」

「食べた」「のこり」と 聞くと、ひき算を したく なります。でも テープに かいて みると、テープ ぜんぶが「はじめの 数」。その 一ぶが 食べた 3こ、のこりが 7こです。ぜんたいを 出すので、7+3=10。ひき算の おはなしなのに、こたえは たし算で 出ます。

2年生では、こういう「のこりから はじめの 数を 出す」もんだいを、テープ図で ならいます[4]。

ところが、ある 小学校の 研究では、線分図は べんりなのに、もんだいを とく ときに 使おうと する子は 少ない、と 書かれて います。しきは かけても、わけを 話せない子も いる、という 心配です[5]。

広島県の ある 小学校の じゅぎょうでは、線分図を かいた 6年生が、しきの 意味を わかるように なった、と ほうこく されて います[6]。

ずは こたえを 出すだけでなく、わけを 話す ときにも 力に なりそうです。

こんな問題を考えてみます。「あめを何個か持っていました。3個食べたら、残りは7個になりました。はじめは何個でしょう」。

「食べた」「残り」という言葉が出てくるので、引き算をしたくなります。でもテープ図にすると、1本のテープ全体が「はじめの数」で、その一部が食べた3個、もう一方が残りの7個です。全体を求めるので、7+3=10個。文章は引き算の場面なのに、答えの計算は足し算になります。

「10個あって、何個か食べたら残りが4個」なら、□がテープの一部になるので、10−4=6個と引き算で出ます。同じ「食べた」でも、図の上で□がどこにあるかで、使う計算が変わります。

第2学年では、□−a=b や a−□=b のように、結果から元の数を求める逆思考の問題をテープ図で学び、第3学年後半のかけ算・わり算の逆思考につながるとされています[4]。

ところが、岡山大学附属小学校の研究(2000年)は、線分図にはよさがあるのに、問題場面で使おうとする子は少ないと述べます。そのため解く糸口をつかめない子や、式は書けても理由を説明できない子がいるのではないか、という問題意識です[5]。1つの学校の実践での問題意識なので、全国の様子を表すものではありません。

一方、広島県の研究では、東広島市立西条小学校の第6学年「文字の式」の授業で、線分図をかいて式の意味を読み取る活動を行ったところ、図をもとに式の意味を理解できるようになった、と報告されています[6]。これも1校の授業の報告です。

図は、答えを出す近道であると同時に、式の意味を人に説明するための道具にもなるようです。この考え方は、日本の外でも使われています。

身近な例で、逆思考の問題を確かめる。「あめを何個か持っていて、3個食べたら残りが7個」という問題は、□−3=7の形である。文章には「食べた」「残り」とあるので引き算をしたくなるが、線分図に描くと、線全体がはじめの数、その一部が食べた3個、残りが7個になる。全体を求めるので、7+3=10と加法で解ける。一方「10個あって、食べたら残りが4個」はa−□=bの形で、□は全体の一部だから、10−4=6と減法になる。文の言い回しではなく、図の中で未知数がどこにあるかが、計算を決めている。

鳥取県の指導案によれば、第2学年では□−a=b、a−□=bの加減の逆思考をテープ図で学ぶ。これが第3学年後半の乗除の逆思考につながる[4]。岡山大学附属小学校の杉能道明による研究(2000年)は、初めて線分図を学ぶ第3学年の「かくれた数はいくつ」の授業実践を扱う[5]。

この研究が出発点に置いた課題は、図のよさがあっても問題場面で線分図を使おうとする子どもは少ないこと、そのため解決の糸口をつかめない子や、式は書けても理由をうまく説明できない子がいるのではないか、という点である。ただし一校の実践の問題意識であり、全国の実態を示すものではない[5]。

図の効果についての報告もある。広島県の研究では、東広島市立西条小学校の第6学年「文字の式」の授業で、児童が線分図をかき、それをもとに式の意味を読み取る活動を行った。その結果、図をもとに式の意味を理解できるようになり、図から式を読み取る活動は式の意味を理解する力を育てるうえで有効だと結論している[6]。これも一校の授業実践の報告で、一般化はできない。

2つを並べると、図は答えを得る手段であるだけでなく、式の理由を説明する手段としても期待されている、という像が浮かぶ。では、この発想は日本の外ではどう扱われているのか。

5. 世界の 子も ずを かいて いるの?

5. シンガポールの「バーモデル」と、ポリアの「図をかく」

5. バーモデルの背景と、ポリアの第1段階「図をかく」

シンガポールという 国には、文しょうだいを 長方形の ぼうで あらわす 方ほうが あります。「バーモデル」と よばれます[7]。国ごとの 算数の 力を くらべる 調さ(TIMSS)で、シンガポールが 1995年、1999年、2003年に 1いに なって から、この 方ほうに 目が あつまりました。ただし、バーモデルが 1いの りゆう、と 書かれて いるわけでは ありません。

この 国では、1979年ごろから 算数の 本づくりの 計画が はじまり、1981年に 新しい 算数の 本が 出ました。ものを 見る→絵に かく→しきで 書く、という じゅんを 大切に した 本です[8]。ずは、ものと しきの あいだの 「絵」の だんかいに 当たりそうです。

数学者の ポリアも、『いかにして もんだいを とくか』という 本で、もんだいを 読んだら「ずを かく」ように すすめて います。この 本は 100万さつ いじょう 売れ、15いじょうの ことばで 読めるように なりました[9]。

つるかめざんの 長方形も、線分図も、バーモデルも、文しょうを 見える 形に して から 考える、という ところで つながって います。

国際的な算数・数学の学力調査TIMSSで、シンガポールは1995年、1999年、2003年に1位になりました。そのシンガポールの算数の特徴として注目を集めたのが「バーモデル」で、文章題の数量を長方形の棒で表す方法です[7]。日本の線分図やテープ図と通じるところがあります。ただし、バーモデルが1位の原因だと資料に書かれているわけではありません。

この方法の背景には、教材づくりがあります。シンガポールでは1979〜80年に算数の教材開発プロジェクトが始まり、1981年に出た初版の教材では「具体物→絵→抽象的な式」の順で教える方法(CPAアプローチ)が強調されました[8]。図が、実物と式のあいだを渡す「絵」の段階にあたる、と見ることもできます。

図をかく助言は、もっと前にもあります。数学者ジョージ・ポリアの『いかにして問題をとくか』(英題 How to Solve It、1945年、プリンストン大学出版局)は、解く第一段階「問題を理解する」の中で、「図をかく」ことを勧めています。主に数学の教師と生徒のために書かれた本で、100万部以上売れ、15以上の言語に訳されました[9]。

鶴亀算の長方形、日本の線分図、シンガポールのバーモデル。呼び名は違っても、「文章を見える形にしてから考える」という点で、同じ方向を向いています。

シンガポールは、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で1995年、1999年、2003年に1位となった。その算数の特徴として注目されたのが、文章題を長方形の棒で表すバーモデルである[7]。資料はこの方法を注目の対象として紹介しているが、バーモデルが1位の原因だとは述べていない。因果にしないよう注意が要る。

この方法の出どころは、教材づくりにある。シンガポールでは1979〜80年に算数の教材開発プロジェクトが始まり、1981年から『Primary Mathematics』が出版された。初版の教材では、具体物から絵、抽象へと進む順(CPAアプローチ)が強調された[8]。バーモデルがいつ生まれたかは、この資料の範囲では言えない。実物と式のあいだの「絵」の段階に図を置いた構成だと読める。

図を勧める声は、さらに古くからある。ジョージ・ポリアの『いかにして問題をとくか』(How to Solve It、1945年、プリンストン大学出版局)は、解く手順の第1段階「問題を理解する」で、「図をかく」「適切な記号を導入する」ことを挙げる。主に数学の教師と生徒に向けて書かれ、100万部以上が売れ、15以上の言語に訳された[9]。

こうして並べると、鶴亀算の面積図、日本の線分図、シンガポールのバーモデル、ポリアの助言が、どれも、文章題の数の関係を図に表してから考える方法だ。ただし、これらが歴史的に互いを受けついだという資料はなく、そこまでは言えない。

6. 自分で もんだいを つくって、ずで といて みよう

6. 頭と足の問題を自分で作って、長方形で解いてみる

6. 自作の問題で検算する ── 図の力と限界、原典に当たる道すじ

ノートに、きじと うさぎの 数を 1つずつ きめます。たとえば きじ 4ひきと うさぎ 6ぴきなら、あたまは 10、あしは 8+24=32 です。この 数は かくして、「あたま 10、あし 32」とだけ 書いた もんだいを つくります。

ます目の ノートに、たて 2、よこ 10の 長方形を かきます。面積めんせきは 20。あしは 32だから、12 たりません。12÷2=6。うさぎは 6ぴき、きじは 4ひき。きめた 数と あえば、できあがりです。

あなたは べつの 数で、ほかの 人に 出しても いいですね。ずを かくと、どこで まちがえたか、見つけやすく なります。

ノートに、キジとウサギの数を、相手に見せずに決めてみましょう。たとえばキジ4匹、ウサギ6匹なら、頭は10、足は8+24=32です。「頭10・足32」とだけ書いた問題が出来上がります。実際には、別の数で作ってみてください。

方眼のノートに、縦2、横10の長方形をかきます。面積は20。足は32なので12足りません。12÷2=6がウサギで、キジは10−6=4匹。最初に決めた数と合えば成功です。半分にした足16から頭10を引いても、同じ6になります。

図をかく手間は、数が小さいうちは面倒に見えます。それでも、「どこで間違えたか」が図の上に残るので、あとで見直しやすくなります。

原典を読みたくなったら、『孫子算経』の原文と日本語の説明が筑波大学の数学ミュージアムの資料[1]に載っています。ポリアの本は、日本語の題『いかにして問題をとくか』と著者名で探せます。

自分で問題を作って検算する道すじを示す。雉と兎の数を伏せて決める。たとえば雉4・兎6なら頭10、足は4×2+6×4=32になる。「頭10・足32」を面積図に置くと、縦2・横10で面積20、差12、足の差2で割って兎6、雉10−6=4。決めた数と一致する。『孫子算経』の術でも、32÷2=16、16−10=6で同じ答えが出る。実際には、別の数で作って確かめるとよい。

図には限界もある。この記事で扱った報告のうち、図を使う子の少なさ[5]と、線分図で式の意味が分かるようになったこと[6]は、どちらも1校の実践であり、図を使えば必ず分かるとは言えない。図は式の意味を見せる手がかりであって、答えを自動で出す装置ではない。

原典に当たるなら、『孫子算経』の原文と読み方は、筑波大学数学ミュージアムの資料[1]に載る。小学校の図の整理は東京都教職員研修センターの報告[3]、シンガポールの教材開発の経緯はNIEの論文[8]にあたる。ポリアの How to Solve It は、日本語の題『いかにして問題をとくか』と著者名で探せる[9]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:大学・公的機関・学校の研究報告と、海外の教育機関の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 筑波大学 数学ミュージアム資料(城地茂)。https://math-info.criced.tsukuba.ac.jp/museum/wisdom_of_math/copy_of_ppt_Jochi20151116.pdf (『孫子算経』の雉兎同籠の問題と術について)
  2. Wikipedia「鶴亀算」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B6%B4%E4%BA%80%E7%AE%97 (面積図の置き方と名前の由来について。百科事典の解説なので、計算は自分で検算した)
  3. 東京都教職員研修センター 研究報告(近藤牧子)。https://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/09seika/reports/files/kenkyusei/h25/k-8.pdf (小学校で使う図の種類について)
  4. 鳥取県 算数3年 指導案。https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1113570/e-sansuu3-1.pdf (線分図を初めて学ぶ学年と、逆思考の問題について)
  5. 杉能道明「パピルス」第7号(岡山大学、2000年)。https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/51727/20160528110231908435/papyrus_007_035_038.pdf (線分図を使う子が少ないという問題意識について)
  6. 広島県 授業研究(田川至孝)。https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/637461.pdf (第6学年で線分図をかいて式の意味を読み取る授業について)
  7. Pacific Institute for the Mathematical Sciences「bar model」。https://www.pims.math.ca/files/bar_model.pdf (シンガポールのバーモデルとTIMSSについて)
  8. シンガポール国立教育学院(NIE)の論文、CPA approach の理論的根拠。https://repository.nie.edu.sg/server/api/core/bitstreams/700a4f49-3cdd-4365-9802-92b8634b39eb/content (シンガポールの算数教材開発と、具体→絵→抽象の順について)
  9. G. Polya, How to Solve It(要約PDF)。https://math.ucr.edu/~res/math133/polya.pdf (「図をかく」という助言について。部数と翻訳数は Wikipedia の記述による)

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