1. ふだんの 丸い ひかりは、なんの 形?
1. 木漏れ日の丸い光は、何の形なのか
1. 木漏れ日の丸い光は、すきまの形ではなく太陽の像である
夏の 木の したで、じめんを 見て ください。ゆれる ひかりの つぶは、たいてい まるく 見えます。
はっぱの すきまは、まるい とは かぎりません。ほそ長い すきまも、ギザギザの すきまも あります。それでも ひかりは まるいのです。
その わけは、ひかりの つぶが 太陽の すがたを 写して いるからだと 考えられて います。ふだんの 太陽は まるいので、つぶも まるく なります。日食の ときは、太陽が 月に かくされて、三日月のように かけます。すると、じめんの つぶも、ぜんぶ 三日月に なります。
国立天文台でも、小さな すきまが ある ものの かげの 中で、かけた 太陽の 形の ひかりが 見えると 書いて います。
夏の木の下に立つと、地面にゆれる光の粒が見えます。たいてい丸い形をしています。
ところが、葉と葉のすきまの形は丸いとは限りません。細長いものも、ぎざぎざのものもあります。それでも光の粒は丸く見えます。説明のかぎは、光の粒が「すきまの形」ではなく「太陽の姿」を写している点にあります。
ふだんの太陽は丸いので、写る像も丸くなります。日食の部分食では、太陽が月に隠されて欠けます。欠けた太陽の像が写るので、地面の粒が三日月になるのです。国立天文台は、細かいすきまがあるものの影の中に映る光が、欠けた太陽の形になると説明しています[1]。NASAの天文画像解説も、葉のすきまが三日月形の太陽の像を日陰の歩道に投影すると述べています[2]。
では、ただの小さなすきまが、どうして太陽の形を写せるのでしょうか。
夏の木陰の地面に見える光の斑点は、ほとんどが丸い。しかし葉のすきまは細長かったり不規則だったりして、丸いとは限らない。斑点が丸いのは、すきまの形ではなく、太陽の形が写っているからである。
国立天文台は、麦わら帽子や木漏れ日のように細かいすきまがあるものの影の中に、欠けた太陽の形が映ると説明し、これをピンホールカメラの原理だとしている[1]。NASAのAPODも、葉のあいだの小さなすきまが、三日月形の太陽の像を地面に投影すると述べる[2]。
したがって、日食のときに現れる三日月は特別な現象ではない。いつも地面に写っている太陽の像が、そのとき欠けているだけである。残る問いは、不規則なすきまが、なぜ太陽の形をそろえて写せるのかという点だ。
2. ちいさな あなで、どうして 形が 写るの?
2. 小さな穴が太陽の形を写す理由
2. 光は直進し、穴が重なりを分ける:ピンホールカメラの原理
太陽の ひかりは、まっすぐ すすみます。太陽の うえの ほうから 来た ひかりは、あなを 通ると、したの ほうに とどきます。したの ほうから 来た ひかりは、うえの ほうに とどきます。
あなが 大きいと、いろいろな ほうこうの ひかりが ごちゃごちゃに まざります。あなが 小さければ、ひかりは ならんだ まま とどくので、太陽の 形が じめんに 写ります。
この しくみを、ピンホールカメラと いいます。むかしから、かべに 小さな あなを あけた くらい へやで、そとの けしきを 反対がわの かべに 写す そうちが ありました。「カメラ・オブスキュラ」と よばれ、「くらい へや」と いう いみだそうです。
木の はっぱの すきまは、小さな あなの かわりを して います。
太陽の光はまっすぐ進みます。太陽の上のふちから出た光は、小さな穴を通ると、地面の下側に届きます。下のふちから出た光は、上側に届きます。つまり、上下も左右もひっくり返った太陽の絵が、穴の向こうに並びます。
穴が大きいと、太陽のあちこちから来た光が同じ場所に重なり、ぼんやりします。穴が小さいと、重なりが少なくなり、太陽の形がそのまま分かれて現れます。米国の科学館エクスプロラトリアムは、穴は絵を作るのではなく、ごちゃまぜの光の中から小さな一部を取り出し、ひとつの像として並べ分けるのだと説明しています[4]。
この仕組みがピンホールカメラです。壁に小さな穴を開けた暗い部屋で、外の景色を反対側の壁に映す装置は、カメラ・オブスキュラ(ラテン語で「暗い部屋」)と呼ばれます[4]。葉のすきまは、自然にできたピンホールの役目をします。
ただし、小さければいつでも鮮明に写るわけではありません。像の大きさと鮮明さには、取り引きがあります。
太陽は点ではなく、広がりをもつ光源である。太陽の上の端から出た光は、穴を通って直進し、投影面の下側に届く。下の端から出た光は上側に届く。穴が十分小さければ、太陽の各部分から来た光が面上で別々の場所に分かれ、上下左右が反転した太陽の像ができる。
穴が大きいと、各部分の光が重なって像がぼやける。Exploratoriumの解説は、穴は像を作るのではなく、入り乱れた光のごく一部を取り出して、ひとつの像として仕分けるものだと表現している[4]。壁の小さな穴から入った光で反対の壁に外の景色を映す部屋は、カメラ・オブスキュラ(暗い部屋)と呼ばれる[4]。葉のすきまは、これを自然に作っている。
ここでは、すきまが十分小さければ、像の形は主に太陽の形で決まる。像の形のもとになるのは、光を出している太陽の形だからだ。ただし、穴を大きくすれば穴の形が像に混ざってくると考えられる。では、像はどのくらいの大きさになり、どこまで鮮明になるのか。
3. 大きな かげは、どこで できるの?
3. 像の大きさとぼやけは、穴からの距離で変わる
3. 像の大きさとぼやけに関わる距離と穴の大きさ
あなと じめんが 近いと、太陽の すがたは 小さくて、くっきり 明るく 写ります。あなと じめんが 遠いと、すがたは 大きく なります。おなじ あななら、ぼんやりも しやすく なります。
太陽の 形を 大きく 写したいなら、あなから 1メートルより とおく はなれた ところに 白い かみを おくと よいと、NASAの ページに 書かれて います。
高い 木だと、はっぱの すきまは 高い ところに あります。ですから、じめんの 三日月は 大きく なりやすいのです。
計算すると、太陽の 大きさは、あなから 太陽までの 長さの 108分の 1 くらいに あたります。あなから 2メートルの ところなら、三日月は 2センチ より ちょっと 小さい くらいです。これは 目安です。
像は、穴から投影面までの距離が長いほど大きくなります。その代わり、同じ量の光が広い範囲に散るので、暗くぼやけます。逆に、穴が地面に近いと、像は小さくて鮮明で明るくなります[7]。
NASAの安全情報は、ピンホール方式の欠点として、見やすい大きさの像を得るには、投影面を穴から少なくとも1メートル後ろに置く必要がある、と述べています[5]。高い木の葉の下ほど距離が長く、像が大きくなるので、NASAの画像解説も、木の高さと葉の多さが大きさと数を決めると書いています[2]。
太陽の見かけの幅は、約0.5度、つまり太陽までの距離のおよそ108分の1です(太陽の見かけの大きさをもとにした、筆者の概算です)。穴から2.5メートルの地面なら、像の幅は約2.3センチ。穴から1メートルなら約1センチです。木の下でよく見る数センチの光の粒は、この大きさに合います。
インドの数理科学研究所の解説では、ピンホールの最適な穴の大きさは、投影距離と光の波長で決まり、数メートル先に像を作るなら約2ミリとされています[6]。穴は、小さければよいというものでもありません。
像の大きさは、穴から投影面までの距離に比例する。太陽の角直径を約0.5度(太陽までの距離の約108分の1)とすれば、像の直径は距離のおよそ108分の1である。この値は資料からの引用ではなく、筆者の概算に使った前提である。それによれば、距離1メートルで約0.9センチ、2.5メートルで約2.3センチになる。NASAが、像を見やすい大きさにするには投影面を穴から少なくとも1メートル離す必要がある、と書く理由とも合う[5]。
高い木の下で大きな三日月が多数できるのは、すきまが高い位置にあって距離が長いからである。APODも、木の高さと葉の多さが像の大きさと数を決めたと述べる[2]。インドの研究者の解説は、葉のすきまが地面から2〜3メートルほどの高さにあるとき、明るい三日月形の像ができるとしている[6]。
一方で、距離が長くなれば像は大きくなるが、同じ光が広がって暗くぼやける。穴が地面に近いと、像は小さいが鮮明で明るい[7]。穴の大きさにも最適値がある。IMSCの解説は、穴の直径を d、穴から像までの距離を f、光の波長を l とすると、最適な d は 2√(fl) に近く、f が数メートルなら約2ミリになると述べる[6]。可視光の波長を約0.5マイクロメートルとして f=3 m を入れると約2.4ミリで、これと合う(筆者の検算)。
葉のすきまは、数ミリより大きいことも多い。穴が大きいと像はぼやけやすい。
4. 三日月が 何十こも 見えるのは どうして?
4. 地面に三日月が何十も並ぶのはなぜか
4. 重なった葉が作るピンホールと、月の縁の谷
広い はっぱの 木では、はっぱが かさなって、たくさんの 小さな すきまが できます。すきまが ひとつ あるたびに、じめんに 三日月が ひとつ できます。ですから、何十こも ならぶのです。
NASAの ページには、ひろい はっぱの 木の したで、かさなった はっぱが つくる たくさんの 「あな」が、何百もの 三日月を つくると 書いて あります。
さらに ふしぎな ことが あります。月の ふちには、でこぼこの たにが あります。この たにが 小さな あなの 役を して、太陽の すがたを 地球の じめんに 写すと、NASAは 書いて います。
広い葉をもつ木の下では、葉が何枚も重なり、小さなすきまがたくさんできます。すきまがひとつあるたびに、地面にひとつ像ができます。NASAは、重なった葉が作る多数の「ピンホール」が、何百もの三日月形の像を作ると書いています[5]。
この性質は、木の葉だけのものではありません。NASAは、台所のザルの丸い穴も、部分食のあいだ、地面に三日月の形を投影すると紹介しています[3]。
月のほうにも、似た話があります。NASAは、日食の地図を精密に作る方法の説明のなかで、月の縁にある谷がピンホールの役目をして、太陽の像を地球の表面に投影すると述べています[9]。地面の三日月は、葉のすきまだけでなく、月の縁の凹凸ともつながっているのです。
広葉樹の下では、重なった葉が無数の小さな隙間を作り、それぞれが独立したピンホールとして働く。NASAのGSFCの解説は、この多数のピンホールが、何百もの三日月形の像を作ると述べる[5]。
同じ原理は、葉に限らない。NASAは、ザルの円い穴も、部分食のあいだ、地面に三日月形を投影すると説明する[3]。穴の形が丸であっても、写るのは太陽の形だという点が、ここでも確かめられる。
月の側にも、同じ働きが指摘されている。NASAの日食地図作成の解説は、月の縁の谷がピンホールのように働き、太陽の像を地球の表面に投影すると述べる[9]。これは月の地形が日食の光の見え方に関わるという話で、葉のすきまの三日月とは別のスケールの現象である。両者の関係を数値で比べた資料は、今回の材料にはない。
月の縁の谷は、すきまにくらべてずっと小さな細部にあたる。すきまの大きさでぼやけ方がどう変わるかは、最後の章の方法で自分でも比べられる。
5. あなを のぞかずに、日食を 写して みよう
5. 穴をのぞかずに、太陽の形を写してみる
5. 直接見ない観察:ピンホール投影の安全な使い方
日食の ときは、ぜったいに 太陽を 直せつ 見ては いけません。目を いためます。そこで、かわりに 小さな あなで かげに 写して 見ます。
ためして みましょう。
- おうちの 人に、あなが ひとつ あいた かみを よういして もらいます。
- 太陽を せなかに して たち、かみを 太陽の ひかりに かざします。
- あなの 下に 白い かみを 少し はなして おくと、まるい ひかりが 写ります。
あなを 通して 太陽を のぞいては いけません。NASAは、ピンホールで 見る ときも、あなを のぞかず、太陽を せなかに して 写った すがたを 見るように 言って います。
日食の ひは、同じ やりかたで、三日月が 写ります。ふだんの ひにも、ざるを じめんに かざして、まるい ひかりの つぶが ならぶのを 見る ことが できます。
日食を観察するときは、太陽を直接見ないことが基本です。国立天文台は、ピンホールの原理を使えば、太陽を直接見ないので安全に観察できると説明しています[1]。
NASAは、ピンホールプロジェクターとして、厚紙などに開けた小さな穴から、近くの面に太陽の像を投影する方法を挙げています[3]。使うときは、太陽に背を向けて、映った像を見ます。穴を通して太陽を見るのは禁止です[3]。段ボール箱とアルミホイルで作る箱型の方法も紹介されています[8]。
ふだんの日でも、試せます。晴れた日に、木の下か、ザルを日なたに持っていって、地面の光を見てください。穴の形が丸でなくても、光が丸に近いことに気づくかもしれません。日食の日は、同じ光が三日月になります。
観察では、太陽を直接見ないこと、穴の向こうに太陽を探さないことを守ります。
日食の観察でピンホールを使う利点は、太陽を直接見ないことにある。国立天文台は、木漏れ日の原理がピンホールカメラの原理であり、太陽を直接見ないので安全に観察できると述べる[1]。
NASAは、ピンホールプロジェクターを、小さな穴(例:カードに開けた穴)を通して、近くの面に太陽の像を投影する装置と定義する[3]。使うときは太陽を背にして、投影された像を見る。「穴を通して太陽を見てはならない」と明記されている[3]。箱とアルミホイルで作る箱型のプロジェクターも、部分食の三日月形を映す方法として紹介されている[8]。
ここまでの式で、検算できることがある。像の直径は距離のおよそ108分の1だから、1メートルの箱で約1センチ、2メートルで約2センチの像になる。市販の観察用ではなく手作りの穴で試す場合、穴の大きさだけを変え、距離と場所はそろえて、ぼやけ方を比べてみるとよい。穴が大きいほどぼやけるかどうかは、IMSCの最適な穴の式[6]とも照らし合わせられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事実は次の資料にもとづきます。海外の資料は英語です。
- 国立天文台「観察のしかた」 https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse-obs.html (木漏れ日とピンホールの原理、安全な観察)
- NASA「APOD: 1999 August 13 - Eclipse In The Shade」 https://science.nasa.gov/image-article/apod-1999-august-13-eclipse-in-the-shade/ (葉のすきまと像の大きさ・数)
- NASA「Eclipse Viewing Safety」 https://science.nasa.gov/eclipses/safety/ (ザル、ピンホールプロジェクター、安全)
- Exploratorium「Pringles Pinhole: Make a Camera From a Potato Chip Can」 https://annex.exploratorium.edu/science-explorer/pringles_pinhole.html (穴が光を仕分ける、カメラ・オブスキュラ)
- NASA GSFC「Eye Safety During Solar Eclipses」 https://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEhelp/safety2.html (投影距離、多数の三日月)
- Institute of Mathematical Sciences, Chennai「Pinhole」 https://www.imsc.res.in/~indu/JM/2010/JanFeb/Vl/pinhole.txt (穴の最適な大きさ)
- Astronomy.com(木の葉による太陽のピンホール投影の解説) https://www.astronomy.com/?p=136821 (距離と鮮明さの関係)
- NASA「What to Expect: A Solar Eclipse Guide」 https://science.nasa.gov/feature/solar-eclipse-guide/ (箱型プロジェクター)
- NASA「NASA Develops Process to Create Very Accurate Eclipse Maps」 https://science.nasa.gov/solar-system/skywatching/eclipses/solar-eclipses/nasa-develops-process-to-create-very-accurate-eclipse-maps/ (月の縁の谷)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。