1. 木の したの 光は、なぜ ぜんぶ まるいの?
1. 光の丸は、すき間の形ではなく太陽の形
1. 木漏れ日の丸 ── 映っているのは太陽の像
木の 葉と 葉の あいだの すきまを、光が 通りぬけて、地面に おちます。この 光を 木漏れ日と いいます。
小さな すきまを 通った 地面の 光は、すきまの かたちでは なく、太陽の まるい かたちに なって います[1]。すきまが 小さな あなの やくめを して、太陽の すがたを 地面に うつして いるのです。これは、ピンホールカメラと 同じ しくみです[2]。
だから、1つ 1つの まるは、小さな 太陽の しゃしんの ような ものです。ここで 話して いるのは、すきまが 小さい ときの ことです。
夏の木の下で、地面に落ちる光の水玉をよく見てみます。葉の小さなすき間は四角だったり、ぎざぎざだったりするのに、水玉はどれも太陽と同じ丸い形をしています[1]。
映っているのは、すき間の形ではなく、太陽の形です。小さなすき間が穴の役目をして、太陽の像を地面に結んでいます。穴を通った光が像を作る、ピンホールカメラと同じ原理だと説明されています[1]。
ピンホールカメラは、ものの各点から出た光のうち、穴の1点に届く光だけを通して像を作ります。はっきりした像を得るには、穴をかなり小さくする必要があるとされます[2]。木漏れ日でいえば、すき間が十分に小さいときは、すき間の形の影響が小さくなって、太陽の丸い像が見えやすくなる、ということです。ここで話すのは、すき間が小さい場合です。
では、この丸の縁は、どうなっているのでしょうか。じっと見ると、くっきりとは切れていません。影の縁と同じ事情が隠れています。
木の下の地面に落ちる木漏れ日は、葉の小さなすき間を通ると、すき間の形によらず、太陽と同じ丸い形をしている[1]。すき間が小さな穴として働き、地面に太陽の像を映しているためで、原理はピンホールカメラと同じだと説明される。
ピンホールカメラは、被写体の各点から出る光のうち、穴の1点に届く光だけを通すことで像を作る。像がはっきりするには穴をかなり小さくする必要があり、小さくしすぎると今度は回折のために解像度に限界が出る[2]。木漏れ日の丸が太陽の形に見えるのは、すき間が十分小さい場合の話である。すき間が大きい場合や地面までの距離による形の変化は、ここでは扱わない。
丸の縁をよく見ると、境目がくっきりしていない。この縁のにじみは、手の影の縁がぼやけることと、同じ原因から来ている。
2. かげは、どうやって できるの?
2. 影は、光がさえぎられた後ろにできる
2. 影の成り立ち ── 光の直進と、その条件
かげは、光が まっすぐ 進む ことから できます[3]。手で 光を さえぎると、手の うしろには 光が とどきません。そこが かげです。
かげの かたちは、さえぎる ものの ふちを、地面や かべに うつした かたちです[3]。太陽は、かげの はんたいがわに あります。
光は、空気の ような 同じ ものの 中では、まっすぐ 進みます[4]。ただし、ものの かげに すこしだけ まわりこむ ことも あります。くわしくは、あとの 章で ふれます。
影は、光がまっすぐ進むために生まれます[3]。光をさえぎる物があると、その後ろには光の届かない場所ができます。そこが影です。影の形は、さえぎる物の輪郭を、地面や壁の面に投影した形になります[3]。太陽は、影の反対側にあります。
「光はまっすぐ進む」には条件がつきます。光が同じ性質の物質の中を進むときは直進する、と説明されます[4]。障害物の後ろへ少し回り込む現象は回折と呼ばれ、厳密には重力が強い場所で光の道すじが曲がることもあります[4]。ふだんの影を考えるときは、まっすぐ進む、と考えてかまいません。
ところが、実際の影の縁を見ると、定規で引いた線のようにはなっていません。手を地面から離すほど、縁がぼんやりします。この縁のぼやけは、光の直進だけで説明できます。理由は次の章で見ます。
3. かげの ふちは、どうして ぼんやりするの?
3. 影の縁がぼやけるのは、太陽が点ではないから
3. 本影と半影 ── 光源に大きさがあるとき
手の かげを、地面から はなして みると、ふちが ぼんやりします。それは、太陽が 小さな 点では なく、大きさを もって いるからです[6]。
太陽の 右はしからの 光と、左はしからの 光は、すこし ちがう むきから 手に あたります。そのため、ぜんぶの 光が さえぎられる ところ(こい かげ)と、一部の 光だけ さえぎられる ところ(うすい かげ)が できます[5]。この うすい ところが、ふちの ぼやけです。
手を 地面から はなす ほど、太陽の はしからの 光が 手の うしろに 入りこんで、うすい ところが 広がります[6]。
へやの ライトが 2つ ある ときも 同じです。どちらの 光も とどかない ところは こい かげ、かたほうの 光だけ とどく ところは うすい かげに なります[3]。
理由は、太陽が点ではなく、大きさをもつ光源だからです[6]。太陽の右端から来る光と左端から来る光は、少しちがう向きから物に当たります。
光源に大きさがあるとき、光源を物体が完全にさえぎる領域を本影、一部だけさえぎる領域を半影といいます[5]。半影は、本影に近いほど暗くなります[5]。点のような光源なら半影はできず、影はすべて本影になります[5]。
物と、影を映す面とが離れるほど、太陽の端から来たわずかな光が物の後ろへ入りこみ、縁が淡い半影になります[6]。これは光の直進だけで説明でき、回折のせいではありません[6]。
光源が複数のときも考え方は同じです。どの光源からも光が来ない領域が本来の影、一部の光源から来る領域が半影です[3]。部屋の照明が2つあれば、濃い影と薄い影が重なって見えます。
ぼやけの幅は、太陽の見かけの大きさから、数字で見積もれます。
影の縁がぼやけるのは、光源である太陽が点ではなく、大きさをもつためである[6]。太陽の左右の端から来る光は、物体の縁に少しちがう角度で当たる。
大きさのある光源を物体が完全にさえぎる領域が本影、一部だけさえぎる領域が半影で、半影は本影に近づくほど暗い。点光源なら半影はなく、影はすべて本影になる[5]。複数の光源がある場合も、すべての光源から光が来ない領域が本影、一部から来る領域が半影と考えられる[3]。
物体と影を映す面の距離が大きくなるほど、太陽の端からの光が物体の後ろへ入りこむ量が増え、縁が淡い半影として広がる。この説明は幾何学、つまり光の直進だけで成り立つ。回折の効果ではない[6]。直進の限界として前章で触れた回折は、ここでは主役ではない。
半影の幅は、距離と太陽の大きさから見積もれる。次の章で、実際に数字を出す。
4. ぼやける はばは、どのくらい?
4. ぼやけ幅は、面までの距離のおよそ107分の1
4. 半影の幅を見積もる ── 太陽の視直径から
太陽の 見かけの 大きさは、およそ0.5度です[7]。これを 計算して みると、かげの ふちの ぼやけは、かげを うつす 面までの きょりの、およそ107分の1に なります。
面までの きょりが 1メートルなら、ぼやけは およそ9ミリ。5メートルなら、およそ5センチです。これは 計算で 出した、およその 数です[6]。
木漏れ日の まるも、同じです。5メートル 上の すきまが うつす 太陽の すがたは、およそ 5センチの まるに なります。これに、すきまの 大きさが 足されます。高い えだの すきまほど、大きな まるに なります。
やってみよう。晴れた 日に、手を 地面の すぐ 上に おいて、かげの ふちを 見ます。つぎに 手を、1メートルぐらいの 高さまで もちあげます。ふちの ぼやけが、1センチぐらいの はばに なります。ゆびで はかって みましょう。見るのは かげだけで、太陽は 見ません。
太陽の見かけの大きさ(視直径)は約32分、およそ0.5度です[7]。正確には約0.53度で、ラジアンに直すと約0.0093、つまり約107分の1になります。
影を映す面が物から d の距離にあるとき、半影の幅はおよそ d×0.0093、つまり d の107分の1です[6]。面までが1メートルなら約9〜10ミリ、5メートルなら約5センチです。これは計算で出した目安で、実際には物の縁の形で変わります。
この計算は、木漏れ日にも使えます。地面から5メートルの高さにある小さなすき間が地面に映す太陽の像は、およそ5センチの丸になります。実際の丸には、すき間自身の大きさが足されます。高い枝の間を抜けた光ほど、大きな丸になるわけです。
手を地面のすぐ上に置くと、影の縁はくっきりしています。1メートルほどに持ち上げると、縁が1センチ前後ぼやけます。この数字は、およそ107分の1という計算と合っています。
やってみよう。晴れた日に、手の影の縁を地面で見ます。手を地面のすぐ上、30センチ、1メートルと上げて、ぼやけの幅の変わり方を見ます。幅は指で測ってみましょう。見るのは影だけで、太陽は直接見ません。
太陽の視直径は約32分、およそ0.5度である。国立天文台の資料では、1天文単位での視半径を約15分59.63秒とし、そこから太陽の半径が約696000kmと求められている[7]。32分は約0.53度なので、「0.5度」は概算である。
0.53度をラジアンに直すと約0.0093で、これは約1/107にあたる。視角が十分に小さいので、半影の幅 w は、影を映す面までの距離 d を使って w ≒ d×0.0093 と近似できる[6]。計算すると、d=1mでおよそ9〜10mm、d=5mでおよそ5cmになる。
これは直進だけの幾何学から出る目安である。実際には物体の縁の形や、穴の大きさが影響する。たとえば小さなすき間が映す太陽の像は、おおまかに「d×0.0093+穴の大きさ」程度になる。5mの高さで、穴の直径1cmなら、約5.6cmである。5m上の枝の間の光が、ほぼ5〜6cmの丸になるのはこのためだ。枝が高いほど丸が大きくなるのは、同じ式の d が大きくなるからである。
手を地面のすぐ上に置くとき、縁はほぼくっきりしているが、1mほどに持ち上げると縁が1cm近くぼやける。ものさしで実際に測れる大きさなので、式の見積もりと比べてみるとよい。測るのは影だけで、太陽は直接見ない。
5. 日食の とき、木漏れ日は どうなるの?
5. 日食のとき、木漏れ日は三日月になる
5. 日食 ── 木漏れ日は欠けた太陽の像になる
日食では、月が 太陽の 一部を かくして、太陽が かけて 見えます。すると、木漏れ日の まるも、かけた 太陽と 同じ、三日月の かたちに なります[9]。
地球の 外から 見ると、日食は、月の かげが 地球に とどく こと です[8]。月にも、こい かげと うすい かげが あります。うすい かげの 中では、太陽の 一部が かくれる 部分日食、こい かげや、その さきの のびた ところでは、皆既日食か 金環日食が 見られます[9]。
こい かげが とどく ところは、とても せまい はんいです[8]。太陽は、ぜったいに じかに 見ては いけません。日食の ときは、日食を 見る ために つくられた 道具を 使います。
日食で太陽が月に欠けると、木漏れ日の丸は、欠けた太陽と同じ三日月や欠けた円の形になります[9]。木漏れ日が太陽の像だから、そうなります。
日食という現象も、影の話です。地球の外から見ると、日食とは月の影が地球に届く現象です[8]。月の影の中にいる人には、太陽が月に隠されて見えます。
月の影にも、本影と半影があります。月の半影が地球を横切り始めると部分日食が始まり、本影が横切ると皆既日食、本影の先の延長(反本影)が横切ると金環日食になります[9]。皆既日食が見られるのは非常に狭い範囲で、部分日食は広い範囲で見られます[8]。
太陽は、直接見てはいけません。日食を見るときは、専用の遮光板を使います。地面の木漏れ日を見るのに、空を見上げる必要はありません。
部分日食や金環日食のとき、木漏れ日の1つ1つは、欠けた太陽と同じ三日月や欠けた円の形になる[9]。木漏れ日が太陽の像だという第1章の見方と一致する。
日食そのものも、影の現象である。地球の外から見ると、日食は月の影が地球に届く現象で、影の中の観測者には月が太陽を隠して見える[8]。月の影にも本影と半影があり、半影が地球を横切り始めると部分食、本影が横切ると皆既食、後述の反本影が横切ると金環食になる[9]。皆既食が見られる範囲は非常に狭く、部分食の範囲は広い[8]。
金環食は、月の本影の先の延長(反本影)の中で、月のまわりに太陽の光の輪が見える現象である[9]。影の構造としては、本影・半影に、この反本影が加わる。
太陽は直接見てはならない。日食を観察するときは、専用の遮光板を使う。
6. 次の 日食の とき、足もとで たしかめたい こと
6. 次の日食の日、地面の丸を確かめるには
6. 次の日食の日に、足もとで確かめられること
木漏れ日の まるは、太陽の すがたです。かげの ふちの ぼやけは、太陽の 大きさが つくって いる。この 2つは、ふだんの 昼間でも たしかめられます。
日食が 見られる ところで、晴れて いて 木の かげが できる ときは、地面の 木漏れ日を 見て みましょう。ふだんの 日は、木の 下の まるを 見たり、紙に あけた 小さな あなから 光を 通して 地面に うつしたり して みます。日食の ときに まるが 三日月に なって いたら、それは 太陽の かたちが うつって いる しょうこです。太陽は じかに 見ず、日食を 見る ために つくられた 道具を 使います。
もっと 知りたい 人は、むかしの 人が かげを 使って 何を はかったかを、調べて みてください。
確かめられることは、2つあります。1つは、手を地面から離したときの影の縁のぼやけです。距離を2倍にすれば、ぼやけの幅もおよそ2倍になるはずです。もう1つは、次の日食の日の木漏れ日の形です。
日食が見える場所で、晴れて木漏れ日ができる日に地面の丸が三日月になっていたら、木漏れ日が太陽の像だという説明の、自然な確かめになります。日食に出会えないときは、ふだんの木漏れ日や、紙に小さな穴をあけて通した光の形で、同じ見方を試せます。空を見上げる必要はありません。太陽を見るときは、専用の遮光板を使います。
影は、太陽の傾きを知る手がかりにもなりました。ある資料では、紀元前3世紀ごろのエラトステネスが、夏至の正午に太陽が真上に来る場所と、約900km北の場所とで、太陽が約7度ずれることから、地球の1周を約46,000kmと見積もったと紹介されています[10]。現在知られる約40,000kmとは約15%の差です。数値は資料によって異なります。
木漏れ日の丸の大きさを、枝の高さごとに測って、式と合うかを調べてみると、おもしろいかもしれません。
確かめられることは、2つある。1つ目は、距離と半影の幅の関係である。手と地面の距離を、30cm、1m、2mと変えて縁のぼやけを測ると、幅は距離に比例して広がるはずだ。式 w ≒ d×0.0093 が合うかを、ものさしで確かめられる。
2つ目は、日食が見える場所で、晴れて木漏れ日ができるときの、木漏れ日の形である。日食に出会えないときは、ふだんの木漏れ日や、穴を通した光の丸さで代わりに試せる。三日月形になっていれば、木漏れ日が太陽の像だという説明を、自分の目で確かめたことになる。日食の太陽は直接見ない。
影の幾何学は、天文学の古い道具でもある。同志社中学校の博物館資料によれば、エラトステネス(紀元前276年頃〜195年頃)は、夏至の正午にシエネでは太陽が真上に来るのに、約900km北のアレクサンドリアでは約7度ずれていることから、地球の1周を約46,000kmと見積もった。現在の約40,000kmとは約15%の差である[10]。数値は資料によって異なり、単一の出典に基づくため、原典や他の資料で確かめたい。
ここで使われたのは、影の長さではなく、場所による太陽の傾きの差である。同じ「光は直進する」でも、道具の使い方が変わる。木漏れ日の丸の大きさが、枝の高さごとに式と合うかどうかを測ってみるのも、同じ流れの続きになる。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:光と影、本影・半影の定義はWikipediaの記事、太陽の見かけの大きさと日食は国立天文台の資料、影の縁のぼやけの幾何学は大学の解説、エラトステネスの話は中学校博物館の資料を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Wikipedia日本語版「木漏れ日」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%BC%8F%E3%82%8C%E6%97%A5 (木漏れ日が太陽の像になる理由について)
- Wikipedia日本語版「ピンホールカメラ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9 (穴の大きさと像の関係について)
- Wikipedia日本語版「影」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%B1 (影ができる理由、影の形、複数の光源のときの影について)
- Wikipedia日本語版「光」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89 (光の直進とその条件、回折について)
- Wikipedia日本語版「本影」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E5%BD%B1 (本影と半影の定義について)
- Stony Brook University "The Geometry of Sunlight". https://www.stonybrook.edu/laser/_mar/spring12/report/index.html (影の縁のぼやけが幾何学で説明できること、半影の幅の見積もりについて)
- 国立天文台 暦Wiki「視半径」。 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BBEBC8BEB7C2.html (太陽の視直径・視半径の値について)
- 国立天文台「日食とは」。 https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse.html (日食が月の影が地球に届く現象であることについて)
- Wikipedia日本語版「日食」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%A3%9F (日食のときの木漏れ日の形、半影・本影と部分食・皆既食について)
- 同志社中学校 博物館 vol.29。 https://jhs.js.doshisha.ac.jp/museum/vol29/ (エラトステネスの地球の大きさの見積もりについて)
なおした ところ
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