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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

土星の 小さな 月に、海が あると どうして わかったの?

小さな氷の月に、海があるとどうして分かるのか ── エンケラドゥスの噴出・塩・ゆれ

エンケラドゥスの氷の下に海があるとされる根拠 ── 噴出する塩の粒、自転のゆれ、水素

分野:宇宙・天文

土星の まわりを まわる 小さな 月、エンケラドゥス。その 南の はしから、水の つぶが ふき出して いました。しかも その つぶの ほとんどは、しおを たくさん ふくんで いたのです。

どうして 月の 下に 海が ある、と わかったのでしょう。しおの つぶ、月の ゆれ、水そ。ちがう 手がかりが かさなって、海の すがたが 見えて きた ことが わかります。

直径およそ500kmの小さな氷の月から、水蒸気と氷の粒が噴き出しています。土星の衛星エンケラドゥスで探査機カッシーニが見つけたのは、そんな光景でした。しかも、氷の粒の大半は塩を多く含んでいました。

小さな氷の月の下に、なぜ水があると言えるのでしょうか。噴き出した粒の塩、月のゆれ方、海の底の岩石と熱水の痕跡という別々の手がかりが重なって、氷の下の海の姿が描かれてきたことが分かります。生命がいるかどうかは、まだ分かっていません。

エンケラドゥスは直径約500kmの小さな氷の衛星だが、南極域の裂け目からは水蒸気と氷粒が噴き出している。その氷粒は、質量の99%以上が塩を多く含む粒だった(噴出する固体に占める質量比で、海水の塩分濃度ではない)[3]。

氷の殻の下に液体の海があるという結論は、一つの観測で決まったのではない。塩を含む噴出物、重力、自転のゆれ、シリカの微粒子、水素という手がかりが、どの疑問を順に片づけたのか、そして生命の有無について何が言えないのかが分かる。

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1. 小さな 月から、水が ふき出して いた

1. 直径500kmの小さな月から、水が噴き出していた

1. 南極の裂け目から噴き出していたもの ── 2005年のカッシーニの観測

エンケラドゥスは、土星の まわりを まわる 月の なかまです。大きさは、ちょっけいが およそ 500キロメートル。東京から 大阪おおさかまでより、すこし 長いくらいです[1]。地球の 月の、7分の 1ほどしか ありません。

2005年、土星を しらべる 探査機たんさきの「カッシーニ」が、この 月の 南の はしを 写しました。そこには「タイガーストライプ」と よばれる、トラの しまもように 見える さけ目が ありました[2]。

その さけ目から、水蒸気すいじょうきや 氷の つぶが、宇宙うちゅうへ むかって ふき出して いたのです[2]。月の 上に、水の ふんすいが あるような ものです。ただし ほんとうは、水が 流れ出て いるのではなく、ごく 細かい 氷の つぶと 水蒸気すいじょうきが とび出して います。

こんな 小さな 月から、なぜ 水が 出るのでしょう。その 水は、どこから 来て いるのでしょうか。手がかりは、ふき出した つぶの 中に ありました。

南極付近の「トラのしま模様」

エンケラドゥスは土星の衛星で、直径は約500kmです[1]。東京から大阪までの直線距離を少し超える程度で、地球の月の7分の1ほどしかありません。

2005年、土星を回っていた探査機カッシーニは、この月の南極付近を撮影しました。「タイガーストライプ」と呼ばれる裂け目のあたりから、水蒸気と微小な氷の粒が宇宙へ噴き出している様子が写っていました。裂け目を初めて撮ったのは5月20日で、7月14日の近接通過では、さらに詳しく写されました[2]。

水はどこから来るのか

噴き出す水は、月のどこから来ているのでしょうか。氷が裂け目で温まって蒸発しているだけなのか、液体の水が下にあるのか。この区別をつける手がかりが、噴き出した粒の中身でした。

エンケラドゥスは直径約500kmの土星の衛星で、小さな氷の天体にすぎない[1]。ところが2005年、探査機カッシーニのカメラが南極域の「タイガーストライプ」と呼ばれる裂け目を撮影すると、そこから水蒸気と微小な氷粒が宇宙空間へ延びていた。裂け目を最初に撮ったのは5月20日で、7月14日の近接通過ではさらに詳しく写されている[2]。

問題は、噴出物の供給源である。氷が裂け目で蒸発しているだけなのか、液体の水が下にあるのか。この問いには、噴出物の組成、重力、自転のゆれという別々の観測が、順に答えを重ねていった。本記事の以下の章は、その順序に沿っている。

2. ふき出した つぶには、しおが 入って いた

2. 噴き出した氷の粒には、塩がたくさん入っていた

2. 粒の中身が示したもの ── 質量の99%以上が塩を多く含む粒

カッシーニは、ふき出した つぶを しらべました。すると、つぶの ほとんどは、しおを たくさん ふくんで いました。ふき出した 氷の つぶの おもさの 99%いじょうが、しおを 多く ふくむ つぶでした[3]。

ただし この 99%は、ふき出した 氷の つぶの おもさの 中での わりあいです。海の 水の しおの こさでは ありません[3]。

しおを ふくむ 水は、海の 水に にて います。しらべた チームは、「ひろい 水めんを もつ しお水の ためいけが、ふき出す ものの ほとんどを 出して いる」と 考えました。2011年の ことです[3]。

氷の 下に、しお水が たまって いるらしい。でも それは、南の はしの 小さな みずうみなのか、月 ぜんたいを つつむ 海なのか。ここから、月の 重さと ゆれが 手がかりに なりました。

粒の99%以上が、塩を多く含む粒だった

カッシーニは、噴き出した氷の粒を調べました。その結果、噴き出す固体の質量の99%以上が、塩を多く含む粒だったと報告されています[3]。

ただし、この99%は噴き出す固体の質量に占める割合で、海水の塩分濃度ではありません[3]。

塩水が、噴出の大もとらしい

塩を多く含む粒が主役なら、出どころは塩水だと考えるのが自然です。2011年、研究チームは「蒸発する面の大きな塩水の貯水池が、プルーム(噴き出す水蒸気や粒の流れ)のほとんどの物質を供給している」と結論しました。ナトリウム塩の検出は、その前の2009年に報告されています[3]。

では、その塩水は南極の下の水たまりなのか、月全体を包む海なのか。次の手がかりは、月の重さとゆれでした。

決め手の一つは、氷粒の塩分だった。ESAがまとめるPostbergらの論文(2011年、Nature)は、噴出する固体の質量の99%以上を、塩を多く含む氷粒が占めると報告した[3]。この数字は噴出する固体の質量比であり、海水の塩分濃度ではない[3]。

塩を含む粒が主体なら、出どころは塩水と考えるのが自然だ。論文は「蒸発面の大きな塩水の貯水池が、プルームの物質のほとんどを供給している」と結論した。ナトリウム塩の検出自体は2009年に先に報告されており、2011年の論文は、それが噴出物の質量の大半に及ぶことを示した[3]。

ただし、これは「どこかに塩水がある」という結論にとどまる。南極の下の局所的な水たまりか、月全体を包む海か。この区別は、塩の分析からは出てこない。そこで観測は、噴出物の組成から、月そのものの重力と自転へ向かった。

3. 月の ゆれが、海の 大きさを おしえた

3. 月のゆれ方が、海の広さを教えた

3. 重力と自転のゆれ ── 地域的な海から全球の海へ

まず 2014年。カッシーニの 速さが ほんの すこし かわる ことから、月の 重力(じゅうりょく)が はかられました。すると、南の 方の 氷の 下、30〜40キロメートルあたりに 水が ありそうだと 考えられました[4]。ただし この 数は、海までの ふかさです。海の あつさでは ありません。

つぎに 2015年。7年 いじょうの カッシーニの 写真で、クレーター(くぼみ)など 目じるしの 場所を、1つずつ はかりました[5]。すると、エンケラドゥスは 自転(じてん)しながら、0.12度 ほど ゆれて いました[5]。

もし 氷の からが、中の かたい 部分と がっちり くっついて いたら、ゆれは もっと 小さいはずです。中身が 水なら、からだけが 動きやすく なります。ゆれは 大きすぎたので、からの 下に、月 ぜんたいを ぐるりと つつむ 海が あると 考えられました[5][6]。

ただし 氷の からの あつさは、見つもりに はばが あります。NASAは、ならすと 20〜26キロメートル、南の はしでは 1〜5キロメートルほどと 見つもって います[1]。ぴったりの 数は、ひとつに きまって いません。

重力が教えた「南の海」

2010年と2012年の3回の近接通過で、カッシーニの速度は毎秒0.2〜0.3mmほどだけ変わりました。この変化から月の重力を測ると、南極側の氷の下、深さ30〜40kmに液体の水があるとみられました(2014年)[4]。当時は、南極から南緯50度あたりまでの「地域的な海」が最もよく合うとされ、月全体の海も排除されていませんでした[4]。30〜40kmは海までの深さで、海の厚さではありません。

7年分の写真が測った「ゆれ」

2015年には、7年以上のカッシーニの画像でクレーターなど表面の目印の位置を測り、自転のゆれが0.120度ほどと求められました[5]。氷の殻が内部の核と固く結びついているなら、ゆれはもっと小さいはずです。ゆれが大きすぎたので、氷の殻の下に全球の海があると結論されました[5][6]。

殻の厚さには幅がある

氷の殻の厚さは、出典によって数字が違います。2014年の重力の解釈では、南極側で30〜40kmでした[4]。NASAの解説では、平均で約20〜26km、南極では1〜5kmほどです[1]。見積もりは研究で更新されるので、一つの数字に固定せず、「幅がある」と読むのが安全です。

重力の観測は、最初の足がかりになった。2010年と2012年の3回の近接通過で、探査機の速度は毎秒0.2〜0.3mm程度しか変化しないが、この微小な変化から重力場が推定され、南極側の深さ30〜40kmに液体の水があるとみられた(2014年)。当時は、南極から南緯50度付近までの「地域的な海」が最もよく合うとされ、全球の海は排除できないと述べられている[4]。なお30〜40kmは海までの深さで、海の厚さではない。

地域的な海か全球の海かを分けたのは、自転のゆれである。7年以上のカッシーニ画像で表面の目印の位置を測ると、強制的な秤動(ゆれ)は0.120±0.014度(2σ)と求められた[5]。氷の殻が核と固く結びついていれば、ゆれはずっと小さいはずで、観測値は大きすぎた。だから、殻は内部と切り離されている、つまり全球の海があると結論された[5][6]。

この論文は、海が液体のまま保たれる熱源を、多くの熱モデルでは説明しにくいとも述べている[5]。海があるという観測が先に固まり、理由の説明が追いかけている状態である。

氷殻の厚さも、見積もりが一定していない。2014年の重力の解釈では南極側で30〜40kmだが[4]、NASAの解説では平均で約20〜26km、南極で1〜5kmほどとされる[1]。解析が更新されたことが背景にあるとみられるが、数字は1つに固定せず、幅のある見積もりとして扱う。

4. 海の そこでは、なにが おきて いるの?

4. 海の底では、熱い水と岩石が出会っているらしい

4. シリカの微粒子と水素 ── 海底の熱水反応を示す手がかり

海が あると わかると、つぎの 問いが 出て きます。その 海の そこは、どう なって いるのでしょう。

2015年、土星の まわりの うすい わっか「Eの わっか」から、とても 小さな すなの つぶが 見つかりました。ガラスや すなの もとに なる「シリカ」です。大きさは、はんけいが 2〜8ナノメートル。1ナノメートルは、1メートルを 10おくに わけた 1つぶんです[7]。

この つぶは、90度より 高い 温度の 水が、岩と ふれあって できたと 考えられました[7]。あつい 水が つめたい 水と 出会うと できる、とも いわれて います[8]。海の そこで、あつい 水と 岩が 出会って いるらしいのです。

同じ 2015年の 10月28日、カッシーニは、ふき出す 水の 中を、およそ 49キロメートルの 高さで 通りぬけ、水素すいそを 見つけました[9]。論文ろんぶんは、水素すいその いちばん ありそうな 出どころは、海の そこの 岩と あつい 水の はんのうだと 考えました[9]。

水素すいそは、生きものの 「エネルギーの もと」に なりえます。ただし、水素すいそが あるから 生きものが いる、と いう ことでは ありません[9]。

E環で見つかった、砂のような微粒子

土星の薄い環の一つ、E環で、半径2〜8ナノメートルのシリカ(二酸化ケイ素。ガラスや砂の主成分)の超微粒子が見つかりました。1ナノメートルは、1mを10億に分けた1つ分です。この粒は、少なくとも90℃より高温の熱水反応でできたと解釈されました(2015年)[7]。

ハイデルベルク大学の発表では、熱い水が冷たい水と出会って粒ができると説明されています[8]。なお90℃は「少なくとも」の下限で、熱水の温度そのものではありません[7]。

噴出の中の水素

2015年10月28日、カッシーニは噴出するプルームの中を約49kmの高さで通り抜け、水素分子を検出しました[9]。2017年の論文(Science)は、水素の最も有力な供給源は、海底の岩石と熱水の反応だとしています[9]。

ここで大事なのは、水素は生命の「エネルギー源になりうる」というだけで、生命がいる証拠ではないことです[9]。

海底の様子を示す手がかりは、噴出物の微粒子と気体から来た。E環で見つかった半径2〜8nmのシリカ(二酸化ケイ素)粒子は、90℃より高温の熱水反応でできたと解釈され、Nature誌に報告された(2015年)[7]。ハイデルベルク大学の発表は、最大の粒が6〜9nmで、熱い水が冷たい水と出会うときに形成され、少なくとも90℃が必要としている[8]。90℃は下限の見積もりであり、熱水の温度そのものではない。

独立した手がかりが、同じ年の10月28日に得られた。カッシーニはプルームの中を約49kmの高さで通過し、イオン・中性質量分析器で水素分子を検出した[9]。Waiteらの論文(Science, 2017)は、水素の最も有力な供給源を、海底の岩石との熱水反応とした[9]。形成時に取りこまれた原始の水素なども検討されたが、可能性は低いとされた点は、「有力」までにとどめて読む必要がある。

シリカも水素も、海底に熱水と岩石の反応がある可能性を、別々の物質から示した。ただし、水素は「生命のエネルギー源になりうる」ことを示すにとどまり、生命がいる証拠ではない[9]。

5. 生きものは いるの? ── まだ わかって いません

5. 材料とエネルギーは見つかった。でも、生命がいるかは分かっていない

5. 有機物とリン酸塩 ── 「材料とエネルギー源」と「生命の証拠」のあいだ

地球には、水素すいそと 二さんかたんそから メタンを つくって 生きる、小さな 生きものが います[9]。エンケラドゥスの 海でも、にた ことが できるかもしれません。でも NASAは、「カッシーニは 生きものを 見つける 力が なく、いる という 証拠しょうこも 見つかって いない」と 書いて います[9]。

2018年には、氷の つぶから、大きくて こみいった 有機物ゆうきぶつの かけらが 見つかりました[10]。2023年には、リンを ふくむ しおが 見つかり、リンが 地球の 海の 少なくとも 100倍の こさで あると 見つもられました[11]。リンは、地球の 生きものの からだにも 使われて います。

けれども、有機物ゆうきぶつは 生きものだけが つくる ものでは ありません。どこから 来たのかは、カッシーニの データだけでは きめられません[10]。リンを 見つけた 人たちも、「生きものが いる 証拠しょうこは、いまの ところ ない」と 書いて います[11]。

いま 言えるのは、生きものが くらせるかもしれない もとや エネルギーが ありそうだ、という ところまでです。いるか いないかは、これからの 調べものです。

地球の「水素で生きる生きもの」

地球には、水素と二酸化炭素からメタンをつくって生きる微生物がいます[9]。エンケラドゥスの海でも似た化学反応が起こりうるかもしれませんが、NASAの研究者は「生命を見つけたことの証明ではない」と述べています。NASAは、カッシーニには生命を検出する力がなく、エンケラドゥスに生命がいる証拠も見つかっていない、と明記しています[9]。

有機物とリンも見つかった

2018年のNature論文は、氷の粒に大きくて複雑な有機分子の破片があることを報告しました。もとの分子は数千の質量をもつ可能性があります。ただし、起源が生命に関わる化学なのか、隕石のような原始の物質なのか、熱水活動なのかは、カッシーニのデータだけでは決められません[10]。

2023年には、氷の粒からリン酸ナトリウムが検出され、リンは地球の海の少なくとも100倍の濃度で海にあると見積もられました。地球の外の海でリンが見つかったのは初めてです。研究者は「海に生命がいる証拠は今のところない」としています[11]。

この研究には、東京工業大学の研究者を含む国際チームが加わり、リンが水に溶ける形で存在することを示す実験が行われました[12]。

「材料がそろう」と「生命がいる」は別のこと

水素はエネルギー源に、リンは材料になりえます。それでも、有機物は生命だけがつくるものではありません。いま言えるのは、生命が暮らせるかもしれない環境の条件が、一つずつ見つかってきた、というところまでです。

地球には、水素と二酸化炭素からメタンをつくって生きる微生物がいる。水素の検出は、同様の反応をエネルギー源とする生物が成り立ちうるという意味を持つ。しかしNASAのWaiteは「これは生命を見つけたことの証明ではない」と述べ、NASAも、カッシーニは生命を検出できず、エンケラドゥスに生命がいる証拠は見つかっていないと明記している[9]。

有機物も見つかったが、それだけで生命の証拠になるわけではない。2018年のNature論文は、氷粒に、質量200原子質量単位までの複雑な有機分子の破片があることを報告した。もとの分子は数千の質量をもつ可能性がある。地球外の水の世界から複雑な有機物が検出されたのは初めてだが、起源が生命に関わる化学か、原始的な物質か、熱水活動かは、カッシーニのデータだけでは決められない[10]。有機物は生命だけがつくるものではないからだ。

2023年には、E環の氷粒からリン酸ナトリウムが検出され、海のリン濃度は地球の海の少なくとも100倍と見積もられた。「100倍」は下限の見積もりで、比較の相手は地球の海である。地球以外の海でリンが見つかったのは初めてで、研究者は、海に生命がいる証拠は今のところないとしている[11]。この検出には、東京工業大学の地球生命研究所を含む国際チームが参加し、リンが水に溶ける形で存在することを示す実験に、共著者が取り組んだ[12]。

水素(エネルギー源)、リン(材料の候補)、有機物の三つがそろっても、結論は「生命が暮らせる環境の条件が見つかってきた」にとどまる。生命の有無を決める観測は、カッシーニの能力の外にある。

6. たまごを まわして、中が かたまりか ながれる ものか あてて みよう

6. 卵を回して中身の違いに気づく ── 次に計画されている探査

6. 殻の下を見分ける発想と、これからの探査計画

おうちに ある たまご 2こで、「中が かたまって いるか、ながれる ものの ままか」を 見分ける あそびが できます。なまたまご 1こと、ゆでて ひやした ゆでたまご 1こを つかいます。ゆでる ときは、おうちの 人と 一しょに しましょう。

2つを つくえの 上で、同じ ように くるくる まわします。まわって いる たまごを 手で ぴたっと 止め、すぐ 手を はなして みてください。ゆでたまごは 止まったまま。なまたまごは、また すこし 動きだします。中の 水が、まだ 動いて いるからです。

中身が かたまって いると からと 一しょに 動き、ながれる ものだと ちがう 動きを します。氷の からの ゆれが 海を おしえた 考え方と にて います。ただし 本当の ゆれは、目に 見えないほど 小さな 角度で、たまごあそびと 同じでは ありません。なまたまごに さわった あとは、手を よく あらいましょう。

これから、どうなるのでしょう。ヨーロッパの 宇宙うちゅうの チーム「ESA」は、エンケラドゥスに おりる きかいを 送る 計画を 考えて います。ふき出す 水を とって、生きものの もとや あとを さがす ことが 目ざされて います。打ち上げは 2042年の 予定と されて いますが、まだ これから 決める ところで、決まった わけでは ありません[13]。

家にある卵で、「中が固まっているか、液体のままか」を見分けられます。生卵1個と、ゆでて冷ましたゆで卵1個を、机の上で同じように回してみてください。回っている卵を手で一瞬止めて、すぐに放します。ゆで卵は止まったままですが、生卵は少し動き出します。中の液体がまだ動いているからです。ゆでるときは大人と一緒に行い、生卵に触れたあとは手を洗ってください。

殻と中身が一体なら一緒に動き、中が液体なら違う動きをする。エンケラドゥスのゆれから海を見抜いた考え方と、似たところがあります。ただし、本当のゆれは0.12度ほどの小さな角度で、卵の実験と同じものではありません[5]。

これから先も、調べは続きます。ESAは次の大型ミッション(L4)の候補として、エンケラドゥスへの着陸機を研究しています。目標は、噴出するプルームの試料を採り、生命の材料や痕跡を探すことです。打ち上げは2042年の予定とされていますが、まだ研究段階で、時期も内容も決まっていません[13]。

氷殻の厚さの幅や、海を温かく保つ熱源の説明など、まだ決着していない問いも残っています。原典のうち、NASAのページ[1]や、ESAのカッシーニ関連の論文紹介[3]は、英語ですが、数字の出どころをたどれます。

ゆで卵と生卵を回して、固まった中身と液体の中身で動きが違うことを見分ける遊びは、殻と内部の結びつきの強さが動きに現れるという発想の入口になる。ただしエンケラドゥスのゆれは0.12度ほどの角度で、卵とは別のものであり、あくまで類推にとどまる[5]。ゆでるときは大人と行い、生卵に触れたあとは手を洗うこと。

次の探査について、ESAは次の大型ミッション(L4)の候補として、エンケラドゥスへの着陸機を研究している。目標は、プルームの試料採取と、生命の材料や痕跡の探索である。打ち上げは2042年の予定とされるが、研究段階であり、時期も内容も未確定だ[13]。

残る問いとしては、海を液体に保つ熱源の説明(Thomasらも多くの熱モデルでは説明しにくいとする[5])と、氷殻の厚さの見積もりの幅がある。この記事で使った数字の出どころは、ESAのカッシーニ関連の論文紹介[3][7]と、NASAのページ[9]から、英語ではあるが、たどることができる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:NASA・ESAの公開資料と、論文の紹介ページ、大学・研究機関の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. NASA Science「Enceladus」。https://science.nasa.gov/saturn/moons/enceladus/ (直径、噴出の供給源、氷の殻の厚さの見積もりについて)
  2. NASA Science「Cassini at Enceladus」。https://science.nasa.gov/mission/cassini/science/enceladus/ (2005年の噴出の発見について)
  3. ESA「Postberg et al. 2011 (Nature 474, 620)」。https://sci.esa.int/web/cassini-huygens/-/48835-postberg-f-et-al-2011 (噴出する粒の塩について)
  4. ESA「Icy moon Enceladus has underground sea」(2014年)。https://sci.esa.int/web/cassini-huygens/-/53938-icy-moon-enceladus-has-underground-sea (重力の観測と地域的な海について)
  5. Thomas et al.「Enceladus's measured physical libration requires a global subsurface ocean」(Icarus, 2016)。https://arxiv.org/abs/1509.07555 (自転のゆれの測定について)
  6. NASA「Cassini Finds Global Ocean in Saturn's Moon Enceladus」(2015年)。https://www.nasa.gov/news-release/cassini-finds-global-ocean-in-saturns-moon-enceladus/ (全球の海の発表について)
  7. ESA「Hsu et al. 2015 (Nature 519, 207)」。https://sci.esa.int/web/cassini-huygens/-/55568-hsu-et-al-2015 (シリカの微粒子と熱水反応について)
  8. ハイデルベルク大学 プレスリリース(2015年3月11日)。https://uni-heidelberg.de/presse/news2015/pm20150311_saturn-moons-ocean-may-have-hydrothermal-activity.html (微粒子のできかたと大きさについて)
  9. NASA Science「Cassini hydrogen finding」(2017年4月13日)/Waite et al., Science 356, 155。https://science.nasa.gov/?p=154218 (水素の検出と、生命の証拠ではないことについて)
  10. ESA「Complex organics bubble from the depths of Enceladus」(2018年)。https://sci.esa.int/web/cassini-huygens/-/60460-complex-organics-bubble-from-the-depths-of-ocean-world-enceladus (複雑な有機分子について)
  11. ベルリン自由大学 Postberg et al. 2023 の紹介ページ。https://geo.fu-berlin.de/en/geol/fachrichtungen/planet/news/Postberg_Phosphates_Enceladus.html (リン酸塩の検出について)
  12. 東京工業大学ニュース(2023年)。https://www.titech.ac.jp/english/news/2023/067021 (リン酸塩の研究への日本の研究者の参加について)
  13. ESA「L4 to Enceladus」。https://www.science.esa.int/web/cm25/l4-to-enceladus (着陸機の計画について)

なおした ところ

更新履歴

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