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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

けしゴムは、どうして 字を けせるの?

消しゴムは字を「消す」のではなく「持っていく」 ── 黒鉛の粒と消しかすの受け渡し

消しゴムは黒鉛の粒をどう取り除くのか ── 消しかすと素材の変化

分野:技術

けしゴムで こすると、鉛筆えんぴつで 書いた 字が、すーっと なくなります。まるで まほうの ようです。

でも、字は ほんとうに 「なくなった」のでしょうか。けしゴムの まわりに 出る ちいさな かすが、ヒントに なりそうです。

消しゴムでこすると、鉛筆の字がすっと消えます。けれど、字はどこかへ消滅したわけではなさそうです。こすったあとに出る細かい消しかすが、その手がかりになります。

消しゴムは字を消しているのか、それとも黒い粒をどこかへ運んでいるのか。粒のくっつきやすさ、消しかすの役目、素材の移り変わりまで見ていきます。

鉛筆の字は、黒鉛の粒が紙の表面にのっているものである。消しゴムで消えるのは、粒が紙より消しゴムにくっつきやすく、その粒が消しかすに包まれて紙面から取り除かれるためと、メーカーは説明している[1]。

この記事では、メーカー2社と解説記事を突き合わせて、消える仕組み、こする力の役割、天然ゴムから塩化ビニール樹脂へ移った素材の変化を整理する。分かっていることと、一般向けの説明にとどまることを分けて書く。

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1. けした 字は、どこへ いったの?

1. 字は「なくなる」のか、「移る」のか

1. 鉛筆の字は、紙にのった黒鉛の粒

鉛筆えんぴつで 字を 書くとは、黒鉛こくえんという 黒い ものの つぶを、紙の 表面に くっつける ことです[2]。

つまり、字は 紙の 上に ちいさな つぶが ならんで できています。けしゴムは、その つぶを どこかへ もって いく のでしょう。

鉛筆で字を書くというのは、紙の表面に黒鉛の粒をくっつけていくことだと説明されています[2]。紙に色がしみこむインクとちがい、粒が表面にのっているイメージです。

そうだとすると、消えた字は「なくなった」のではなく、粒がどこかへ移ったことになります。消しゴムのすることは、粒の引っ越しの手伝いなのかもしれません。

鉛筆で書くとは、紙の表面に黒鉛の粒をくっつけることだ、と解説されている[2]。三菱鉛筆も、紙に「乗っている」黒鉛の粒という言い方をしており[1]、字は粒の集まりとして紙面にのっている状態と考えられる。

この見方に立てば、消字とは粒を消滅させる作用ではなく、粒を紙面から移動させる作用になる。次章で、なぜ移動が起きるのかを見る。

2. くっつきやすさの くらべっこ

2. 紙と消しゴム、粒はどちらにくっつきやすいか

2. 付着力の差 ── 紙より消しゴムに粒がつく

鉛筆えんぴつを 作る 会社の せつめいでは、黒鉛こくえんの つぶは、紙より けしゴムの ほうが くっつきやすいのだそうです[1]。

ふたつの ものが 「つぶを うばいあう」と 思って みましょう。けしゴムの ほうが つよいので、こすると つぶが けしゴムに うつります。ただし、ほんとうの ようすは もっと ふくざつです。

くっつく 力の 正体は、ものの ちいさな ちいさな ぶぶんが ひきあう 力だと、せつめいされる ことが あります[3]。

三菱鉛筆は、消せる理由を「紙よりも消しゴムのほうが、黒鉛の粒がくっつきやすいから」と説明しています[1]。粒にとっては、紙の上より消しゴムの表面のほうが居心地がよい、というわけです。

アメリカの科学解説記事でも、化学者の話として、粒は紙より消しゴムの素材にくっつきやすく、こすればはがれて移ると紹介されています[3]。くっつく力の正体は、物質の分子どうしが引き合う力(分子間力)だと説明されることがあります。

ただ、これは一般向けの説明です。分子レベルの理由は、一般向けにはこのように説明されています。

三菱鉛筆は、消せる理由を、紙よりも消しゴムのほうが黒鉛の粒がくっつきやすいからだとしている[1]。粒は初め消しゴム表面にくっつくという順序である。

Popular Science の記事では、マギル大学の化学者 Schwarcz 氏の談話として、粒はゴムのほうが紙より付着(adhesion)が大きく、そのため擦ると除去される、と紹介されている[3]。付着の背景に分子間力(ファンデルワールス力)が挙げられるが、これは一般向けの説明として紹介されているものである。

3. けしかすは、つぶを つつんで はこぶ

3. 消しかすは、粒を包んで新しい面を出す

3. 消しかすによる包接と表面の更新

けしゴムに くっついた つぶは、そのあと、けしかすに つつまれて、紙からも けしゴムからも はなれて いくと いわれます[1]。

こすると けしゴムの 表面が すこし けずれて、かすに なります。すると、あたらしい 面が 出て きて、また つぶを あつめられます[2]。

たとえば、ガムテープを 思い出して ください。ほこりが つくと、ねばりが へって、つかなく なります。けしゴムは、よごれた 面を かすと して すてて、かすに なって 表面が とれ、あたらしい 面が 出て くる ようです。ただし ほんとうは、ガムテープと 同じ しくみとは かぎりません。

くっついた粒は、次に消しかすに包み込まれて、紙と消しゴム表面の両方から取り除かれる、と三菱鉛筆は説明しています[1]。

三井化学の解説では、こすると消しゴムの表面が削れて消しかすになり、そこに新しい面が出て、また黒鉛を集めるという流れが描かれています[2]。

粘着テープにたとえると分かりやすいかもしれません。ほこりがたまったテープは、くっつく力が落ちます。消しゴムは、黒い粒でいっぱいになった表面をかすとして手放し、くっつきやすい面を出しながら使えるのだ、と考えられます。消しかすが粒を包むという過程は、メーカーの説明として紹介されています。

三菱鉛筆の説明では、消しゴム表面にくっついた粒が、次に消しかすに包み込まれ、紙と消しゴム表面の双方から除かれる[1]。三井化学の解説は、こするたびに消しゴムの表面が削れて消しかすとなり、新しい面が現れて再び黒鉛を集める、と循環を述べている[2]。

この「表面が更新される」点が、粘着テープのようにほこりで表面が埋まって効きが落ちる状態を避ける、と読める。ただしこれは筆者の解釈であり、消しかすが黒鉛を包む過程はメーカーの説明に基づく。

4. こする 力も、やくに たつ

4. 「くっつく」だけではない ── こする力のはたらき

4. 摩擦による剥離の寄与

けしゴムを こする 力にも、やくめが あると いわれます。こすった ときの まさつで、つぶが 紙から はずれる ことも あるのだそうです[3]。

けしゴムに よっては、紙の 表面を ほんの すこし けずる はたらきも あると 書かれて います。だから、つよく こすりすぎると 紙が やぶれる ことが あるのでしょう。

「くっつきやすさ」だけで、すべてが説明できるわけではないようです。Popular Science の記事では、こすったときの摩擦で粒がはがれる、わずかな研磨のはたらきもあるとされています[3]。

つまり、消える仕組みは1本ではなく、くっつきやすさとこする力が重なっていると考えられます。強くこすると紙をいためやすいのも、この研磨のはたらきと関係があるのかもしれません。

同じ Popular Science の記事は、付着力の差に加え、消しゴムの種類によっては摩擦で粒を引きはがす、ごくわずかな研磨作用(abrasion effect)もあるとする[3]。消字は付着力の差だけの現象ではなく、複数の作用の重なりとして説明されている。

ただし、両者の寄与の大きさの比は、今回確認できた資料には示されていない。強く擦ると紙が傷むことの説明として研磨作用が紙を傷めることに関係する可能性がある。

5. パンで けして いた ころ

5. パンから天然ゴムへ ── 1770年の発見

5. 小麦パン、プリーストリーの天然ゴム(1770年)、日本への輸入

むかし、黒鉛こくえんが つかわれ はじめた 400年 いじょう 前には、よい けすものが なくて、小麦の パンで けして いたと いわれます[4]。

1770ねんに、イギリスの 化学者かがくしゃ プリーストリーが、天然てんねんゴムで 字が けせると 発見はっけんしました。これが けしゴムの はじまりと いわれます[4]。

日本には、明治めいじ23ねん(1890ねん)に 輸入ゆにゅうされたと いわれ、日本で 作られた さいしょの ものは、大正の はじめの 三田土ゴムです[5]。

黒鉛が筆記に使われはじめた16世紀ごろは、よい消し具がなく、小麦のパンで消していたとされています[4]。

転機は1770年です。イギリスの化学者プリーストリーが、天然ゴムで鉛筆の字が消せることに気づきました。これが消しゴムの起源とされています[4]。

日本に消しゴムが輸入されたのは明治23年(1890年)といわれ、最初の国産品は大正の初めに三田土ゴムから作られたと紹介されています[5]。輸入年は伝聞の形の記述なので、確かな年としては扱いません。

トンボ鉛筆の解説では、16世紀ごろ黒鉛が使われだした当時は良い消し具がなく、小麦パンで消していたとされる。1770年にイギリスの化学者プリーストリーが天然ゴムで鉛筆の字が消せることを発見したのが、消しゴムの起源である[4]。

ヒノデワシの社史的な解説によれば、日本への輸入は明治23年(1890年)といわれ、最初の国産品は大正初期に三田土ゴムから製造された[5]。輸入年は「といわれ」という伝聞であり、断定を避ける。

6. プラスチックの けしゴムが 出て きた

6. 1952年、プラスチック消しゴムの登場

6. 塩化ビニール樹脂と可塑剤 ── 1952年のプラスチック消しゴム

いまの けしゴムは、昭和しょうわ27ねん(1952ねん)に 出た プラスチックの けしゴムが もとに なって います[5]。ゴムより 字を きれいに けせると いわれました。

原料げんりょうの 中心は、塩化えんかビニールという 樹脂じゅしです。そこへ、やわらかくする ざいりょうなどを まぜて、けしゴムに します[2]。

昭和27年(1952年)に、塩化ビニール樹脂を原料にした「プラスチック消しゴム」が登場したと、ヒノデワシは紹介しています。それまでのゴムの消しゴムより、字をきれいに消せると説明されています[5]。ゴムの発見から、およそ180年後のことです。

今の主流の主原料は、この塩化ビニール樹脂です。そこに、樹脂をやわらかくする可塑剤や、炭酸カルシウム、安定剤などを混ぜると説明されています[2]。

三井化学の解説には、可塑剤と黒鉛は分子の形が似ていて、引き合う力がはたらき、それが黒鉛のくっつきやすさを助ける、という説明もあります[2]。

ヒノデワシによれば、昭和27年(1952年)に、字をより綺麗に消せる塩化ビニール樹脂原料の「プラスチック消しゴム」が現れた[5]。1770年の天然ゴムからは182年後である。トンボ鉛筆は登場を1950年代と記しており、年の表し方に幅がある[4]。

三井化学の解説では、現在主流の消しゴムは塩化ビニール樹脂を主原料とし、可塑剤で軟らかくして作る。ヒノデワシは、炭酸カルシウムは消しかすを出やすくし、安定剤は樹脂を熱や紫外線から守る役割をもつと説明している[5]。

同解説は、可塑剤と黒鉛の分子構造が似るため分子間力が働き、黒鉛の付着を助けると説明している[2]。

7. じぶんでも たしかめて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。鉛筆えんぴつで 紙に こい 線を 書いて、けしゴムで こすって みましょう。白い 紙の 上に 出た けしかすを、よく 見て みてください。かすは、どんな 色を して いますか。

もう 1つ。よごれた 面と、あたらしい 面で、同じように けして みましょう。けしやすさは、ちがう でしょうか。

次のようなことを、試したり調べたりできそうです。

  • 鉛筆で紙に濃い線を書き、消しゴムでこすります。白い紙の上に落ちた消しかすの色や、消しゴムの表面のよごれ方を見てみましょう。
  • 使い古してよごれた面と、角の新しい面で同じ線を消し、消えやすさを比べます。紙をやぶらない力加減で行いましょう。
  • 三菱鉛筆やトンボ鉛筆、ヒノデワシのページを読み、消しゴムの説明のしかたのちがいを見つけてみましょう[1][4][5]。

確かめられることが、資料の側にも手元にもある。

  1. メーカー3社の解説を読み比べ、消える理由の説明(付着力・消しかす・素材)の書き方の差を見る[1][2][4]。
  2. 鉛筆で書いた線を消し、消しかすの色と消しゴム表面のよごれ方を記録する。数回使ったあとの変化も比べる。
  3. よごれた面と新しい面で同じ線を消し、消えやすさを見比べる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料の一覧です。用途は各項目の末尾に書きました。

  1. 三菱鉛筆「えんぴつなんでもQ&A 消しゴムで消せる原理」。https://www.mpuni.co.jp/customer/pencil/qa_03.html (付着力の差と消しかすによる除去の説明)
  2. 三井化学 MOLp「なぜ消しゴムで字を消せるの?」。https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/article/detail_20210930/index.htm (表面の更新の流れ、塩化ビニール樹脂と可塑剤。要約で確認した部分あり)
  3. Popular Science「How do erasers actually work?」。https://www.popsci.com/science/how-do-erasers-work/ (化学者の談話による付着と研磨作用の紹介。英語)
  4. トンボ鉛筆「消しゴムの歴史」。https://www.tombow.com/mamechishiki/e83/ (パンで消していた話、1770年のプリーストリー、1950年代)
  5. ヒノデワシ「消しゴムの歴史」。https://www.hinodewashi.co.jp/history/ (日本への輸入、国産品、1952年のプラスチック消しゴム)

なおした ところ

更新履歴

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