1. ぎょこうは、だれの ばしょ?
1. 釣り人が竿を出す岸壁は、漁をする人の仕事場でもある
1. 漁港は漁業者の活動拠点であり、釣りは利用者の立場にある
あさの ぎょこうを おもいうかべて ください。ふねが もどって きて、あみや どうぐを おろし、さかなを はこびます。
ぎょこうは、りょうを する 人たちが はたらく ばしょです。ふねが 出入りし、どうぐも おかれて います[1]。
つりを する 人は、その ばしょを つかわせて もらって います。だから、はたらく 人の じゃまに ならない ルールが 大じに されます[1]。
朝の漁港では、戻ってきた船から魚や道具が降ろされ、漁をする人たちが忙しく動いています。釣り人が竿を出したくなる岸壁は、その人たちの仕事場でもあります。
福岡県の案内によると、漁港は漁業者が漁業活動をする拠点で、漁船の行き来や漁具の保管場所になっています。そのため、利用する人には、漁業や船をつなぐ作業のじゃまにならないよう、ルールとマナーを守ることが求められます[1]。
釣りをするときは、漁業者の作業や船の行き来を妨げないようにする必要があります。釣り禁止の話は、まずこの前提から始まります。
漁港は、釣り場として整えられた場所ではない。福岡県は、漁港を漁業者が漁業活動をする拠点と位置づけ、漁船の往来や漁具の保管場所になっていると説明する。そのうえで、利用者には漁業活動や漁船の係留の支障にならないよう、ルールとマナーを守ることを求めている[1]。
この前提に立つと、釣り禁止は釣り人への罰というより、仕事場の使い方の線引きとして読める。では、現場で具体的に何が困られているのか。
2. どんな つりかたが、こまるの?
2. 漁業者が困るのは、どんな釣り方なのか
2. 新潟県が挙げる問題行為は、作業・航路・ごみ・駐車に集まる
にいがた県は、こまる つりかたを いくつか あげて います[2]。
たとえば、はたらく 人の いる ばしょで つる。ふねが ちかづいても、つりざおを あげない。ふねの とおる みちに、つりいとを たらす。
ごみを おいて かえる。くるまを とめて、はたらく 人の いどうを じゃまする。こうした ことも あげられて います[2]。
新潟県が漁港の釣り来訪者に向けて挙げている問題行為は、仕事場の使い方に関わるものばかりです。
漁業者が作業する場所で釣る。漁船が近づいても竿を上げない。船の航路上に釣り糸を垂らす。ごみを置いて帰る。漁港に車を止めて、漁業者の移動や作業のじゃまになる。これらが挙げられています[2]。
どれも、漁港が仕事場であることを忘れたときに起きる問題です。では、こうした行為が重なったとき、釣り禁止はなぜ「増えた」と言われるのでしょうか。
新潟県が漁港の釣り来訪者に示す問題行為は、漁業者の作業場所での釣り、漁船が近づいても竿を上げないこと、航路上への釣り糸の垂らし、ごみの放置、漁港内への駐車による移動・作業の妨げである[2]。
共通するのは、漁業の作業・航行・動線のいずれかを妨げる点だ。この県の資料は個々の行為を示すもので、それが全国で何件起きたかまでは示さない。では、禁止が「増えた」と言われる背景には何があるのか。
3. つり きんしは、どうして ふえたの?
3. 釣り禁止が増えたのは、なぜか ── 釣り人の団体の見方
3. 禁止増加の説明は複数あり、釣り人側と管理側で見方が分かれる
つりを する 人たちの だんたい、日本つり しんこうかいは、2023ねんに ようぼう書を だしました[3]。
コロナの あとに、つりを はじめた 人が きゅうに ふえた。ごみを もちかえらない、ゆるされない ところに くるまを とめる、といった ことが ふえて、ぎょぎょうの 人との トラブルで、きんしの ばしょが ふえた。そう のべて います[3]。
もうひとつ、ちがう わけも あげて います。びょうきが ひろがる ことを おそれて、県を こえて くる つりびとを ふせぐ ために、立ち入りきんしに した しまや ぎょこうも ありました[3]。
ただし、これは つり人の だんたいの 見かたです。どれだけ ふえたかの かずは、この しりょうには ありません。
釣りをする人たちの団体、日本釣振興会は、2023年6月の要望書で、禁止が増えた理由を次のように説明しています。新型コロナのあと、人が密にならないレジャーとして釣りが注目され、新しい釣り人が急に増えた。ごみの持ち帰りや不法駐車など基本的なマナーが守られず、漁業者とのトラブルが起きて、漁港の釣り禁止場所が急増した、というものです[3]。
同じ要望書は、別の理由も挙げています。感染の広がりを防ぐため、県境をこえて来る釣り人を受け入れない離島や漁港で、立入禁止が急増したことです[3]。禁止の理由は、ひとつだけではなかったことになります。
ただし、これは釣り人側の団体の認識です。団体は、規則にもとづかない禁止が多いとも主張していて、管理する側とは見方が分かれています[3]。件数については、この資料に数字はありません。
4. きんしを きめるのは、だれ?
4. 禁止を決めるのはだれで、国は何を目ざしているのか
4. 漁港管理者は利用を決め、国は共存の指針と法改正を示した
ぎょこうの つかいかたは、ぎょこうを かんりする 町や 県などが きめます[4]。
国も、りょうを する 人と つりを する 人が いっしょに やって いける ように、2002ねんに 国の すいさんちょうが ほうしんを だしました[5]。
さらに 2023ねんには、ほうりつが かわりました。ぎょこうを、りょうだけで なく、ひとが あつまる ばしょとしても いかす 考えが、目てきに くわわりました[6]。
漁港の使い方を決める権限は、漁港を管理する地方公共団体にあり、管理者が漁港管理規程などで立入や利用を定める、と都道府県の案内にあります[4]。条文の番号までは、ここでは扱いません。
国は、漁業と釣りを対立させない方向も示してきました。2002年12月12日付で水産庁長官が出した「海面における遊漁と漁業の調整に関するガイドライン」は、漁業と遊漁(釣り)が共存できるよう調整するための指針です。ただし、これは漁港に限らず、海面での遊漁全般を対象にしています[5]。
さらに2023年の法改正で、法律の名前は「漁港及び漁場の整備等に関する法律」となり、目的に「漁港の活用促進」が加わりました。漁業上の利用を前提に、水産物の消費や交流のために漁港を活かす制度ができ、その例に遊漁や漁業体験が挙げられています[6]。
漁港の利用を制限する権限は、漁港管理者である地方公共団体にあり、管理者は漁港管理規程などで立入や利用を定める。京都府の案内がこの趣旨を説明している[4]。
一方、国は共存の方向を示してきた。水産庁長官が2002年(平成14年)12月12日付で出したガイドラインは、水産基本法を踏まえ、漁業と遊漁が共存できるよう調整する指針である。対象は漁港に限らず、海面の遊漁一般だ[5]。
さらに2023年の改正では、目的規定に「漁港の活用促進」が加わり、法律名も「漁港及び漁場の整備等に関する法律」となった。漁業上の利用を前提に、水産物の消費増進や交流促進に漁港を活かす制度(漁港施設等活用事業)が設けられ、遊漁・漁業体験が例に挙がる[6]。管理者が禁止を決められる一方、国の方向は「禁止か自由か」ではなく、「ルールをつくって活かす」に動いているとも読める。
5. きんしの あとに、また つれるように した まち
5. 西伊豆町は、釣り禁止のあとに何をしたのか
5. 田子漁港の釣り禁止から、条例改正と有料予約制へ
しずおか県の にしいず町では、2022ねんの 7月に、田子ぎょこうで ぎょぎょうの 人と つりびとの あいだに 大きな トラブルが ありました。それで、田子ぎょこうは つり きんしに なりました[7]。
町は、ごみを すてる こと、くるまの トラブルなどを なやんで いました。つりびとが はらう おかねも、まちには とどいて いませんでした[7]。
そこで 町は、ぎょこうの きまりを あらためました。アプリで、つりばと ちゅうしゃじょうを よやくする しくみです。つりばは 1じかん 300円、ちゅうしゃじょうは 1じかん 100円で、町の 人と 小学生いかは むりょうです[7]。
はじめた あとで、つりばの つかいかたが ととのい、つりびとと ぎょぎょうの 人、まちの 人との かんけいも よく なったと、町の 人は かいて います[7]。
2022年7月、西伊豆町の田子漁港で、漁業者と釣り人の間に大きなトラブルが起こり、田子漁港は釣り禁止になりました[7]。
町が抱えていた課題は、無秩序な釣り、ごみの不法投棄、駐車トラブルでした。しかも、釣り人が使うお金が地域に届いていなかった、と町の担当者は書いています。そこで町は漁港管理条例を改正し、アプリ「海釣りGO」で釣り場と駐車場を予約する有料の仕組みを導入しました[7]。
料金は、釣り場が1時間300円、駐車場が1時間100円で、町民と小学生以下は無料です。試験運用は2023年8月、本格運用は2024年4月に始まりました[7]。
導入後は、釣り場の適正な利用が進み、釣り人と漁業者、地元住民の関係も改善したと、同じ担当者は書いています[7]。禁止のあとに、釣りを続ける道をつくった例といえます。
西伊豆町の田子漁港は、2022年7月に漁業者と釣り人の間で大きなトラブルがあり、釣り禁止になった。町の担当者の寄稿によれば、背景には無秩序な釣り、不法投棄、駐車トラブルの深刻化があり、釣り人が支払うお金が地域に届いていない問題もあった[7]。
そのため町は漁港管理条例を改正し、アプリ「海釣りGO」による釣り場・駐車場の有料予約制を導入した。料金は釣り場が1時間300円、駐車場が1時間100円で、町民と小学生以下は無料である。試験運用は2023年8月、本格運用は2024年4月だ[7]。
町の担当者は、導入後に釣り場の適正利用が進み、釣り人と漁業者・地元住民の関係も改善したと述べる[7]。ただしこれは町の担当者自身の評価である。
町だけの例だろうか。国にも、釣りを続けるための仕組みがある。
6. ほかにも、きまりを つくって ひらく ばしょは ある?
6. 港で「ルールをつくって釣りを開く」国の取り組み
6. 釣り文化振興モデル港 ── 安全対策とルールを前提にした開放
国の こくどこうつうしょうは、「つり ぶんか しんこう モデルみなと」を えらんで います。あんぜんを たしかめ、ルールを つくり、いろいろな 人が たすけあって、ぼうはていなどを つりに つかえるように する とりくみです[8]。
この しりょうで あたらしく えらばれた みなとは、とまこまい、おまえざき、あおかたの 3つです。日本つり しんこうかいも、あんぜんの たいさくや マナーの べんきょうを たすけて います[8]。
ひらくから こそ、ルールが ひつようなのです。
国土交通省港湾局は、安全対策をしっかり行い、ルールをつくり、関係機関が連携しながら、防波堤などの港湾施設を釣りに使えるようにする「釣り文化振興モデル港」を指定しています。地域の活性化も目的のひとつです[8]。
この発表で追加指定された港は、苫小牧港、御前崎港、青方港の3港で、日本釣振興会が安全対策やマナー教育を支えています。指定港は、その後に増えている可能性があります[8]。
漁港の話とは管理する役所が違いますが、「安全とルールを整えたうえで、釣りに開く」という考え方は、西伊豆町の例と同じ方向を向いています。
国土交通省港湾局は、安全対策とルールづくり、関係機関の連携のもとで、防波堤など港湾施設の釣り利用を進める「釣り文化振興モデル港」を指定している。目的は地方創生にもある。この発表で追加指定された港は苫小牧港・御前崎港・青方港の3港で、日本釣振興会が安全対策やマナー教育を支援する[8]。指定港はその後に増えた可能性がある。
これは港湾施設の話で、漁港の釣り禁止とは管理の枠組みが異なる。ただし、安全対策とルールを前提に開放を進める点は、西伊豆町の例と共通する。複数の場所で、安全対策やルールを条件に釣り場を開く取り組みが進められている。
7. じぶんの ちかくの ぎょこうの ルールを よんで みよう
7. 近くの漁港の「掲示」と、自治体の案内を読んでみる
7. 出口 ── 現地の掲示と一次資料の読みどころ
おうちの 人と、近くの ぎょこうや つりばの 立て ふだを、よんで みましょう。「つり きんし」「立ち入り きんし」など、なにが かいて ありますか。
おうちの 人と いっしょに、県や 町の ホームページで「ぎょこう ルール」と しらべても よいでしょう。だれが きめて いるかが かいて あるかも、さがして みましょう。
ぎょこうでは、水ぎわの ちかくに 子どもだけで 行かない ように しましょう。
近くの漁港や釣り場に行く機会があれば、入口にある立て札や掲示を読んでみましょう。「釣り禁止」なのか「立入禁止」なのか、どこまでが禁止の範囲なのか、理由や連絡先が書かれているかを見ると、禁止にもいろいろな形があると気づきます。水際には、必ず大人と一緒に行ってください。
家で調べるなら、県や町のウェブサイトで、漁港のルールやマナーを探してみましょう。「だれが決めたルールなのか」が書かれているかどうかも、目の付けどころです。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:都道府県・水産庁・国土交通省の公開資料、日本釣振興会の要望書、笹川平和財団の機関誌に載った西伊豆町担当者の寄稿を使った。何に使ったかは、それぞれの後ろに書いた。
- 福岡県「漁港でのルール・マナー」。https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/rule-manners-fishingport.html (漁港の役割と利用者に求められること)
- 新潟県「漁港の釣り来訪者へ」。https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/gyoko/turi-raihousya.html (問題行為の例)
- 日本釣振興会 要望書(2023年6月15日)。https://jsafishing.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/documents_request_20240601_01.pdf (禁止増加の背景と釣り人側の主張)
- 京都府の漁港管理に関する案内。https://www.pref.kyoto.jp/suiji/12400024.html (漁港管理者の役割)
- 水産庁「海面における遊漁と漁業の調整に関するガイドライン」。https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/tuti/t0000488.html (漁業と遊漁の共存の指針)
- 水産庁「漁港漁場整備法の改正の概要」(2023年)。https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/attach/pdf/231221_33-2.pdf (漁港の活用促進)
- Ocean Newsletter 592号(笹川平和財団)、西伊豆町担当者の寄稿。https://www.spf.org/opri/newsletter/592_2.html (田子漁港の禁止と有料予約制)
- 国土交通省「釣り文化振興モデル港」。https://www.mlit.go.jp/report/press/port06_hh_000205.html (安全対策とルールを前提にした開放)
なおした ところ
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