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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きれいな あめでも すっぱい? もりの つちが さんせいに なる わけ

きれいな雨でも弱い酸性:日本の森の土が、酸性寄りになりやすいのはなぜか

大気汚染の酸がなくても森の土は酸性に傾く:降水・落葉の有機酸・樹種と土の種類から読む日本の森林土壌

分野:自然

よごれて いない きれいな あめでも、じつは ほんの すこし 酸性さんせいです。にほんでは、1ねんかんに ふる あめの りょうが、せかいの りくちの へいきんの 1.6ばいです。

もりの つちは、どうして 酸性さんせいの ほうへ かたむきやすいのでしょう。この メモでは、あめ、おちば、きの ねの はたらきと、きや つちの ちがいが わかります。

空気中の二酸化炭素が溶けこんだだけの、汚れのない雨でも、pHは約5.6で、すでに弱い酸性です。日本は、1年間に降る雨の量が、世界の陸地の平均の約1.6倍の国です。

では、大気汚染による酸性物質の影響を考えなくても、日本の森の土が酸性寄りになりやすいのはなぜでしょうか。この記事では、雨、落ち葉、木の根のはたらきと、木や土の種類による違いが分かります。

二酸化炭素が十分に溶けこんだ雨水のpHは約5.6で、大気汚染がなくても雨は弱い酸性を示す。しかも日本の年平均降水量は1,668mmで、世界の陸域の平均約1,065mmの約1.6倍にあたる(1668÷1065≒1.57)。

大気汚染による酸性物質を持ち出さなくても、日本の森林土壌の多くがpH4〜6の酸性側にあるのはなぜか。この記事では、雨による塩基の流出、落葉層の有機酸、植物の養分吸収の3つの経路と、樹種や土の種類による違いが分かる。

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1. あめが ふると、つちの なかの ものが ながされる?

1. 雨が降るたびに、土の中の「養分」が少しずつ流される

1. 降水は土から塩基を溶かし出し、酸性化の一因になる

あめの みずには、くうきの なかの 二酸化炭素にさんかたんそが すこし とけて います。そのため、あめは ふつうでも ほんの すこし 酸性さんせいだと されて います[1]。

つちの つぶには、カルシウムなどの 「えんきの なかま」が くっついて います。あめが しみこむと、この なかまが つちの つぶから はなれて みずに とけ、いっしょに ながれて いく ことが あります[8]。

ひとつぶの あめでは ほとんど かわりません。でも、にほんは あめが おおいので、えんきが ながれでる きかいも おおく なる ことが あります[2]。もりや つちの ようすによって、ちがいます。

ざるに すなを いれて みずを なんども かけると、すなの なかの こまかい ものが すこしずつ ながれて いきます。それに にた ことが、もりの つちでも おきて います。ただし、つちは ざるよりも ずっと ふくざつです。

汚れのない雨でも、空気中の二酸化炭素が十分に溶けこむとpHは約5.6になります。環境省の資料は、これより低い雨を一般に酸性雨と呼ぶと説明しています[1]。つまり、弱い酸性は雨のふつうの姿です。

日本の年平均降水量は1,668mm(1986〜2015年)で、世界の陸地の平均約1,065mmの約1.6倍です[2]。なお、「約2倍」という数字は古い資料の値で、新しい資料では1.6倍です。

この雨が土にしみこむと、雨水に含まれる水素イオンと、土の粒の表面にくっついているカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの「塩基」が入れ替わることがあります。入れ替わった塩基は土の水に溶け出し、水といっしょに移動します。その結果、土は少しずつ酸性になります。雨が多いと、塩基が流れ出る作用も強まりやすくなります[8]。新潟県の農業の資料も、日本の土が酸性になる理由の一つに、雨水による塩基の溶け出しをあげています[4]。

ただし、土は簡単には酸性になりません。そのわけは第5章に出てきます。

大気中の二酸化炭素が十分に溶けこんだ雨水のpHは約5.6であり、環境省はこれを境に、それ以下を一般に酸性雨と呼ぶと説明している[1]。したがって、汚染がなくても雨は弱い酸性である。

では、この弱酸性の雨は土に何をするのか。環境省の報告書によれば、土壌粒子の表面に保持された塩基(カリウム・カルシウム・マグネシウムなど)は、土壌溶液中の水素イオンとのイオン交換などで溶け出し、土壌水に溶けて移動することがある[8]。これが続くと土壌は徐々に酸性化する。降水が多いと、この溶脱は強まりやすい[3]。新潟県の転換畑の資料も、日本の土壌が酸性化する要因の一つとして、微酸性の雨水による塩基類の溶脱をあげている[4]。

日本の降水量は多い。国土交通省の水資源白書によれば、日本の年平均降水量は1,668mm(1986〜2015年、約1,300地点)で、世界の陸域の平均約1,065mmの約1.6倍にあたる。「約2倍」とする古い値があるが、最新の資料では1.6倍である[2]。ただし、この数字は降水量の比較であり、日本の森林土壌の酸性化の強さを直接示すものではない。雨は酸性化の一因にすぎず、森林土壌の酸性化で雨が最大の原因かどうかは、土や地域で異なると考えられている(第6章)。

2. おちばの したで、なにが おきて いるの?

2. 落ち葉の層の中で、酸が作られることがある

2. 分解されにくい落葉層が、下の土を酸性にする

もりの じめんには、おちばが つもって います。おちばは、ちいさな いきものに たべられて、すこしずつ くさって いきます。

ところが、あまり くさらずに あつく つもった おちばの そうでは、「有機酸ゆうきさん」と よばれる さんが できる ことが ある、と けんきゅうで いわれて います[5]。

この さんが した の つちに しみこんで、つちを さんせいに かたむけやすいと されます。おちばは かならず さんを だすのでは なく、あつく つもった ときの かたむきです。

森の地面には、落ち葉や落ちた枝が積もっています。その下に、鉱物でできた土があります。分解がうまく進まずに厚く積もった落ち葉の層では、いろいろな有機酸ができて、その下の土を酸性にする傾向が強いとされています[5]。

「落ち葉は必ず酸を出す」という意味ではありません。分解が進みにくく、厚く積もったときの傾向です。

環境省の長期モニタリングの報告書にも、似た結果があります。調べた地点では、土の表層は鉱物による酸への強さが弱く、有機物からできる有機酸の影響もあって、その下の層よりpHが低くなる傾向があったと考えられています[8]。

森林の地表には落葉・落枝が堆積し、その下に鉱質土壌がある。科研費の研究報告によれば、分解不良が主な原因で厚く堆積したAo層では各種の有機酸が生成され、鉱質土壌を酸性化する傾向が強いとされる[5]。つまり、落葉は一律に酸を出すのではなく、分解されにくく厚く積もった層で、この傾向が強い。

では、実際の森の土でもそうなっているのか。環境省の酸性雨長期モニタリング報告書(平成20〜22年度)は、調査地点の土壌で表層ほどpHが低くなる傾向があったことを、表層では鉱物による緩衝能が低いことに加え、有機物由来の有機酸の影響を受けたためと考察している。ただし、これはモニタリング地点の結果についての考察である[8]。

3. きの ねも、つちに さんを だすの?

3. 木が養分を吸うことも、土の酸性を進める

3. 植物の養分吸収と硝化も、酸性化に関わる

きは、ねから つちの なかの ようぶんを すいあげて そだちます。カルシウムなどを すいこむと、おかえしのように ねから さんが でる、と せつめいする しりょうが あります[3]。もりの つちで どれくらい きくかは、つちや ばしょで ちがうと かんがえられて います。

つちの なかの ちいさな いきものが はたらく ときにも、さんが できる ことが あります[6]。

つまり、もりの つちが さんせいに なる わけは、ひとつでは ありません。あめ、おちば、きの ねが、すこしずつ かさなって いるのです。

落ち葉の話は、地面の上だけの話ではありません。木は根から養分を吸って育ちます。国内の資料には、植物がカルシウムやマグネシウムを吸収するとき、根のほうからも酸が出て、土が酸性になっていくと説明するものがあります[3]。ただ、森の土でどのくらい効くかは、土や場所によって違うと考えられています。

もう一つは、土の中の窒素の変化です。土の中ではアンモニウムが硝酸に変わる「硝化」という反応が起こり、このとき酸が出ます。アメリカの木の植林実験の論文では、土の酸性度が、この硝化にかかわる成分と関係していたと報告されています[6]。

雨、落ち葉の有機酸、木の根の吸収、硝化。酸性への道は一本ではなく、いくつも重なっています。

酸性化の経路は、降水と落葉層だけではない。国内の肥料関係の資料は、植物が陽イオンを吸収するときに根から水素イオンを出す、という一般的な植物生理の説明を使い、土壌が酸性化する要因に加えている[3]。ただし、この根からの水素イオンの放出について、今回の資料の中に直接の測定値はなく、「そう考えられている」程度の位置づけである。

もう一つは窒素の循環である。アンモニウムが硝酸に変わる硝化では、水素イオンが生じる。Muellerらの2012年の研究は、同じ場所で14種の木を単一植林して比べた実験で、土壌のpHや酸性度の指標が、硝化など水素イオンを作る窒素循環の成分と相関していたと報告した[6]。

4. おなじ もりでも、きの しゅるいで ちがうの?

4. 針葉樹は酸性、と決めつけられるか

4. 樹種で土の酸性度は変わるが、針葉樹・広葉樹の二分では説明できない

じっけんようの はたけで、おなじ ばしょに 14しゅるいの きを それぞれ うえて くらべた じっけんが あります。きの しゅるいに よって、つちの さんの つよさが ちがって いました[6]。

にほんの もりでも、おちばの そうの 「さんに たえる ちから」を くらべた けんきゅうが あります。この ちょうさの ばしょでは、スギの はやしが いちばん つよく、ヒノキの はやしが いちばん よわい けっかでした[7]。

スギも ヒノキも、はの とがった きですが、おなじ あつかいには できません。ただし、これは その ばしょの けっかです。どこでも おなじとは かぎりません。

アメリカの実験では、同じ畑に14種の木をそれぞれ単一で植えて育てました。木の種類によって、土のpHや、取り出せる酸の総量が違い、土の炭素の量とも関係していました。土の酸性度は、そこに生える木の種類に左右される、という結果です[6]。

日本では、スギ林、ヒノキ人工林、広葉樹の林などの落ち葉の層について、酸への強さ(緩衝能)を比べた研究があります。調べた場所では、抽出した液のpHはスギ林でいちばん高く、広葉樹の天然林や広葉樹・モミの混交林がそれに続き、ヒノキ人工林でいちばん低くなりました[7]。

針葉樹だから酸性、とひとまとめにはできません。ただし、これは特定の調査地の結果です。日本全国どこでも同じ順になる、という意味ではありません。

同じ畑で14種の温帯性の樹木を単一植林し、鉱質土壌の炭素・窒素・酸性度の関係を比べたMuellerらの実験では、樹種によって土壌pHや抽出可能な酸の総量が異なり、土壌炭素とも関係していた。土壌の酸性度は、樹種が左右する要因の一つである[6]。

日本でも、スギ・ヒノキ・広葉樹林の落葉層の酸に対する緩衝能を比べた科研費の研究がある。抽出液のpHは、スギ林のAo層で最も高く、広葉樹天然林と広葉樹・モミ混交林がそれに次ぎ、ヒノキ人工林で最も低かった[7]。針葉樹と広葉樹で単純に分けられないことが分かる。なお、この順は特定の調査地での結果であり、全国に共通する一般則ではない。

5. つちの しゅるいでも、さんへの つよさが ちがうの?

5. 土の種類でも、酸への強さが違う

5. 土壌には酸への緩衝作用があり、種類によって強さが違う

にほんの もりに いちばん おおい つちは「褐色森林土かっしょくしんりんど」です。この つちの おおくは、さんせい よりと されて います[8]。

でも、つちは すぐに さんせいに ならない ように、ふんばる ちからを もって います。つちの つぶの ひょうめんで、さんの もとと えんきが いれかわり、えんきが みずに とけだす ことで、さんを うけとめます[8]。

この ふんばる ちからは、つちの しゅるいで ちがいます。かざんばいから できた「黒ぼく土くろぼくど」は つよく、にしにほんの おかなどに ある「赤黄色土あかきいろど」は よわい、と ほうこくされて います[8]。

日本の代表的な森林の土は「褐色森林土」で、全国に広がっています。その多くは、塩基の割合(塩基飽和度)が50%より低い酸性の土です。環境省のモニタリング報告書(19地域25地点50プロット)では、調べた森林土壌の多くがpH4〜6の間にありました[8]。

ただし、土は酸を受け止める力ももっています。土のpHが4〜6のあいだでは、土の粒の表面で水素イオンと塩基が入れ替わり、塩基が土の水に溶け出すことで、酸を受け止めています。pH4〜5では、アルミニウムが受け止める役目をして、酸がたくさん入ってきても土のpHは簡単には下がりません[8]。

この力は土の種類で違います。報告書は、酸に対する受け止める力が弱い順に、赤黄色土、ポドゾル性土、褐色森林土、黒ぼく土と整理しています。黒ぼく土は火山灰からできた土で、有機物が多いのが特徴です[8]。なお、この順は「酸を受け止める力」の順で、酸性度の強さの順ではありません。

日本の代表的な森林土壌である褐色森林土は全国に分布し、その多くは塩基飽和度が50%未満の酸性土壌である。環境省のモニタリング報告書(19地域25地点50プロット)で調べた森林土壌の多くはpH4〜6にある[8]。では、この酸性の土は、酸がさらに入ると、どこまでも下がり続けるのか。

そうはならない。環境省の報告書によれば、pH4〜6の範囲では主に交換性塩基による緩衝が働く。土壌溶液中の水素イオンが粘土の表面にある塩基とイオン交換し、その分の塩基が溶け出す。pH4〜5ではアルミニウムによる緩衝が働き、酸の負荷が大きくてもpHは容易に低下しない[8]。

この緩衝能は土壌の種類で異なる。報告書は、酸性沈着に対する緩衝能が弱い順に、赤黄色土(西南日本の丘陵・台地)、ポドゾル性土(湿潤寒冷な亜寒帯針葉樹林下や山地)、褐色森林土、黒ぼく土(火山灰由来で有機物に富む)と整理している。この順は緩衝能の強弱であり、現在のpHの高低ではない[8]。

さらに、酸性化に効く自然の酸の種類は、気候や土壌で違うとされる。1983年の世界の研究レビューは、寒冷地でポドゾル化が進む土壌では有機酸、熱帯・温帯の土壌では炭酸、窒素の多い土壌では硝酸の役割が大きい可能性を指摘している。ただし著者自身が、さらなる現地データでの確かめが必要だと述べており、一般則ではない[9]。

6. じぶんでも しらべて みたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

かんさつして みよう

ちかくの はやしと、こうえんの しばふを くらべて みましょう。はやしでは おちばを すこし どけて、おちばが どれくらい つもって いるか、した の つちの いろが どう ちがうか、みて みます。ぜんぶ もとに もどして、おわったら 手を あらいます。つちは もちかえらなくて だいじょうぶです。

しらべる とき

かんきょうしょうの ほうこく[8]が、おうちの ひとと いっしょに よめる しりょうです。

今日できること

近所の林と、公園の植えこみの土を見比べてみましょう。林では、落ち葉を少しどけて、落ち葉の層の厚さと、その下の土の色を比べます。見たあとは落ち葉を元に戻し、手を洗います。土は持ち帰らなくて構いません。

資料を読むなら

環境省の酸性雨長期モニタリング報告書[8]が、日本語で読めます。土の種類ごとの違いが、図や表で説明されています。

今日できること

近所の林で落ち葉の層の厚さと、その下の土の色を、公園などの別の場所と見比べるとよい。落ち葉は観察後に元へ戻す。落ち葉の厚さと土の色が場所でどう違うかを記録すると、本文の「分解されにくい層の厚さ」という条件を、自分の目で確かめる手がかりになる。

資料を読むなら

土の種類ごとの緩衝能は、環境省の酸性雨長期モニタリング報告書(平成20〜22年度)[8]、樹種の影響は、Muellerらの論文[6]が読める。後者は英語である。酸性化の自然の要因については、1983年のレビュー[9]が、研究の出発点になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. 環境省 酸性雨調査結果(EANET湿性沈着pH)の注記. https://www.env.go.jp/content/000174232.pdf (雨のpH5.6と酸性雨の定義)
  2. 国土交通省 水資源白書. https://www.mlit.go.jp/common/001316355.pdf (日本の降水量)
  3. JA全農えひめ「土壌の酸性化と肥料」. https://www.zennoh.or.jp/eh/topics/ (雨による塩基の溶け出し・養分吸収)
  4. 新潟県 転換畑大豆ほ場の土壌酸性化の解説. https://www.pref.niigata.lg.jp/site/nogyo-navi/soy-acid-soil.html (雨水による塩基の溶脱)
  5. 科研費研究成果報告(森林土壌の有機酸、課題07556099). https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-07556099/075560991995jisseki/ (落葉層の有機酸)
  6. Mueller et al. 2012, Biogeochemistry. https://ecosystems.psu.edu/research/labs/root-ecology/publications/mueller-et-al-2012-biogeochemistry (樹種と土の酸性度・硝化)
  7. 科研費研究成果報告(落葉層の緩衝能、課題07556099). https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-07556099/075560991996jisseki/ (スギ・ヒノキ林の落葉層)
  8. 環境省 酸性雨長期モニタリング報告書(平成20〜22年度). https://www.env.go.jp/air/acidrain/monitoring/rep2/04.pdf (森林土壌の種類・緩衝作用)
  9. Johnson et al. 1983, Contributions of Acid Deposition and Natural Processes to Cation Leaching from Forest Soils: A Review. https://digitalcommons.usu.edu/wats_facpub/36 (自然の酸の違い)

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