1. 「ふじ」と「しらせ」は、どれくらい ちがうの?
1. 答えを先に ── 大きさも出力も、「しらせ」が上
1. 結論 ── 大きさ・出力・連続砕氷の厚さ、いずれも「しらせ」が上
まず「接岸」の ことばを せつめいします。昭和基地には、船が とまる 桟橋が ありません。だから、沖の 海に はりついた 分厚い 氷に、船を ぴったり よせます。そこから 基地へ、あぶらを おくる ホースを のばせると、「接岸できた」と いいます[1]。
この 「接岸」が できた 回数が、「ふじ」は 18回の うち 6回、先代の「しらせ」は 25回の うち 24回でした[1]。
おおきさを くらべると、「ふじ」は 長さ およそ 100メートル、「しらせ」は 134メートルです。エンジンの 力も、「ふじ」は 12000馬力、「しらせ」は 30000馬力です。つづけて 氷を わって すすめる 厚さも、「ふじ」は 80〜120センチ、「しらせ」は 1.5メートルです[2][4]。
ですから、こたえは「全体に、しらせの ほうが ずっと 大きくて、力も 強い」です。ただし、接岸の 回数の ちがいは、船の 力だけでは きまりません。それは あとの 章で はなします。
「接岸」は、昭和基地には桟橋がないため、基地の沖の定着氷(海岸にはりついて動かない海氷)に船をつけることです。基地の燃料タンクへパイプラインで燃料を送るホースを延ばせる距離(東オングル島の沖およそ1km以内)に着くと、「接岸」と数えます[1]。
国立極地研究所のまとめでは、接岸できた回数は、「ふじ」(第7〜24次隊)が18回中6回、先代「しらせ」(第25〜49次隊)が25回中24回でした[1]。
船の大きさは、「ふじ」が全長100m・基準排水量5,250t、先代「しらせ」が全長134m・基準排水量11,600tです。出力は12,000馬力と30,000馬力です。厚い氷で止まらずに連続して割れる氷の厚さは、「ふじ」が80〜120cm、「しらせ」が約1.5mです[2][4]。
題名の問いへの答えを短く言うと、「しらせ」は「ふじ」より大きく、力が強く、厚い氷を割れる船です。ただし、接岸回数の差が全部それで説明できるわけではありません。それは第4章で扱います。
接岸とは、昭和基地に桟橋がないため、沖の定着氷に船を寄せることをいう。昭和基地内の貯油タンクへパイプラインで燃料を送るホースを展張できる、東オングル島沖およそ1km以内の定着氷に到着すると、接岸と数える[1]。
国立極地研究所の集計では、接岸回数は「ふじ」(第7〜24次)が6/18、先代「しらせ」(第25〜49次)が24/25、現「しらせ」(第51〜60次)が8/10だった。先代は第35次、現「しらせ」は第53・54次で接岸を断念している[1]。
主な諸元は次のとおり(先代「しらせ」の値)。全長は「ふじ」100m、「しらせ」134.0m。基準排水量は5,250tと11,600t、出力は12,000馬力と30,000PS。連続砕氷できる氷の厚さは、「ふじ」が80〜120cm、「しらせ」が約1.5m(約3ノット)とされる[2][4]。自衛隊では砕氷「艦」と呼ぶが、この記事では観測の船として「船」と書く。
題名の問いへの答えは、「しらせ」は大きさ・出力・連続砕氷の厚さのどれも「ふじ」を上回る、ということになる。ただし、接岸回数の差を船の性能だけで説明するのは無理がある。その点は第4章で扱う。
2. 「ふじ」は、どんな 船だったの?
2. 日本初の本格的な砕氷船「ふじ」
2. 「ふじ」── 日本初の本格的砕氷船と、電気で回すスクリュー
日本が 南極観測を はじめた ころの 船は「宗谷」でした。もとは 海の パトロールを する 船を、氷に 強く 作りかえた ものです[3]。
そのあとの「ふじ」は、日本で はじめての 本格的な 砕氷船です。1965年から 1983年まで、18回 南極へ 行きました。はこべる 荷物の 量は 400トンで、「宗谷」の およそ 4ばいです[3]。
エンジンで 電気を 作り、その 電気で スクリューを 回す しくみも とり入れました。それに、自衛隊の 船としては はじめて、ヘリコプターを つんだ 船でも あります[2]。
いまは 名古屋の みなとに とまって、見学できます[2]。
日本の南極観測は、第1〜6次隊が「宗谷」を使いました。海上保安庁の巡視船を砕氷船に改造したものです[3]。
第7〜24次隊(1965〜1983年)の「ふじ」は、日本初の本格的な砕氷船です。積載量は400tで、「宗谷」の約4倍でした[3]。
ディーゼルエンジンで発電し、その電気でスクリューを回す電気推進を採用しました。また、自衛艦として初めてヘリコプターを搭載しました[2]。ヘリコプターは、氷の状態を上空から調べたり、船から基地へ人や物を運んだりするために使われます。「ふじ」は1984年に退役し、いまは名古屋港で記念館として公開されています[2]。
「宗谷」(第1〜6次)は、海上保安庁の巡視船を砕氷船に改造したものだった[3]。これに対して「ふじ」(第7〜24次、1965〜1983年)は、日本初の本格的な砕氷船で、積載量は「宗谷」の約4倍の400tとされる[3]。
諸元は、全長100m、最大幅22.0m、基準排水量5,250t(満載9,120t)、出力12,000馬力、速力17.2ノット。ディーゼル・エレクトリック方式の電気推進で、自衛艦として初めてヘリコプターを搭載した。1984年に退役し、1985年8月から名古屋港ガーデンふ頭で記念艦として公開されている[2]。
ここで使った諸元は、主にウィキペディアの記述による。砕氷能力の数値は資料によって差があり、連続砕氷できる厚さを「80〜120cm」とする記述に従った。
3. 「しらせ」は、どう 氷を わるの?
3. 「しらせ」は、助走をつけて氷に乗り上げる
3. 「しらせ」── 連続砕氷とラミング、そして先代と現行の違い
「しらせ」は、「ふじ」より ひとまわり 大きい 船です。はこべる 荷物の 量も 「ふじ」の 2ばいと いわれます[3]。
氷が 1.5メートルより うすければ、ゆっくり 止まらずに わって すすめます。それより 厚い 氷は、300メートルほど うしろへ さがって、勢いを つけて 船の 先を 氷の 上に のりあげ、船の おもさで わります。これを「ラミング」と いいます[5]。
船の 先が 氷に のりあげやすい かたちに なって いるので、ぶつかる ような 大きな しょうげきは ない、と いわれます[5]。
「しらせ」は 2つ あります。さいしょの「しらせ」は 1983年から 25回、いまの「しらせ」は 2009年から はたらいて います。いまの ほうが すこし 大きく、長さは 138メートルです[6]。
先代「しらせ」(1982年就役、2008年退役)は、全長134m、基準排水量11,600tで、出力は30,000馬力です。第25〜49次隊の25回、観測隊を運びました。輸送力は「ふじ」の約2倍とされています[4][3]。
氷が1.5m以内なら、約3ノットで止まらずに割り進む「連続砕氷」ができます。それより厚い氷では、約300m後退して助走をつけ、船首を氷に乗り上げて船の重さで割る「ラミング」を繰り返します。船首の角度は約19度で、乗り上げやすい形です[5]。第66次隊のラミングは約660回で、先代は南極圏でのラミング(チャージング)が合計36,650回にのぼります[5][4]。
現行の「しらせ」は2009年に就役した2代目で、全長138m、出力は先代と同じ30,000馬力、推進方式は電気推進です[6]。ふじを含めると、現行は日本の南極観測船として4代目です[3]。
先代「しらせ」(1982年就役、2008年退役)は、全長134.0m、最大幅28.0m、基準排水量11,600t、出力30,000PS、3軸、速力19ノット。第25〜49次の25回、観測隊の輸送を担い、輸送人員は1,498人、物資は約23,900tだった[4]。輸送力は「ふじ」の約2倍とされる[3]。
砕氷能力は、氷厚1.5m以内なら約3ノットの連続砕氷。それ以上の氷では、約300m後退して助走し、船首(約19度)を氷に乗せて重さで割るラミングになる。元艦長の話では、第66次隊で約660回、過去には5,000回以上の例もある[5]。先代の南極圏でのチャージング(ラミング)は計36,650回に及んだ[4]。
現行「しらせ」は2009年に就役した。全長138.0m、出力30,000PSで、先代の3軸ディーゼル・エレクトリックから、2軸の統合電気推進に変わった。排水量の資料値は12,500〜12,650tとばらつくので「1万2千トン台」としておく[6]。「宗谷」「ふじ」「先代しらせ」に続く4代目の観測船にあたる[3]。
電気推進は、前進と後進をすばやく切り替えられる。護衛艦の可変ピッチプロペラは氷に当たると弱くなるため使えない、と元艦長は説明している[5]。
4. 船が 強ければ、かならず つけるの?
4. 船が強くても、着けない年がある
4. 接岸回数の差は、船の性能だけでは説明できない
いいえ、そうでは ありません。「しらせ」でも、つけない ことが ありました。先代は 25回の うち 1回、いまの「しらせ」は 10回の うち 2回、接岸を あきらめて います[1]。
基地の ちかくの 氷は、5〜6メートルも 厚く なる ことが あります。それだと ラミングでも われず、ヘリコプターで 荷物を はこんだ ことも あります[5]。
さいきんは、夏に 氷が とけやすく、船が とおる 海の 氷が せまく なって います。わっても うしろから 氷が おしよせて、さがれなく なる ことも ある そうです[5]。
ですから「ふじ」の 6回は、船の 力だけの せいとは いえません。その 年の 氷の ようすも、おおきく かんけい して います。
先代「しらせ」でも、第35次隊は接岸を断念しました。現行「しらせ」も、第53次と第54次では接岸できませんでした[1]。
元艦長の話によると、昭和基地近くの定着氷は厚さ5〜6mになることがあり、ラミングでも割れず、ヘリコプターで物資を運んだこともあります。近年は夏に氷が融けやすく、流氷域が狭くなって、割っても後ろから氷が押し寄せて後退しにくくなる課題も出ています。第60次隊の帰りには、幅40kmに狭まった流氷域を抜けるのに12日かかりました[5]。
このように、接岸できるかどうかは、船の性能に加えて、その年の氷の状態に大きく左右されます。「ふじ」の6回についても、船の力だけが理由だと決めつけず、氷の状態もふくめて読む必要があります。船の性能と、その年の氷の状態が、接岸の成否にそれぞれどれだけ影響したのかは、今回あつめた資料では分けられませんでした。
接岸の成否には、船の性能に加えて、その年の氷の状態が効く。先代「しらせ」は第35次、現行は第53・54次で接岸を断念している[1]。
元艦長は、昭和基地近くの定着氷が5〜6mに達してラミングでも割れず、ヘリコプターで物資を運んだ例を挙げている。近年は夏の海氷の融解で流氷域が狭まり、割っても後ろから氷が寄せて後退が難しい。第60次隊の帰路は、幅40kmに狭まった流氷域の突破に12日かかった[5]。
したがって、「ふじ」の6/18と先代「しらせ」の24/25の差を、船の性能だけに帰すことはできない。船の性能による部分と、各年の氷の状態による部分は、今回の資料からは分けられない。数字の差は、そのまま性能の差ではない、と読むのが安全だ。
5. これから、南極の 船は どう なるの?
5. これから ── 「しらせ」の次の船と、運用する組織の見通し
5. 現行「しらせ」の退役と、後継船をめぐる動き
いまの「しらせ」は、2034年ごろに やくめを おえる よていと、つたえられて います。つぎの 船は、海洋研究開発機構が もち、うごかす ほうしんだと、ほうどうされて います[7]。
これまで 「ふじ」から「しらせ」まで、60年いじょう、海上自衛隊が 船を うごかして きました。その あり方が かわる、という ほうどうです。ほうどうの じてんでは、お金や くわしい 決まりは、これから 決める ところでした。
6. じぶんでも しらべて みたく なったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
「ふじ」は、名古屋の みなとで 見学できます。おうちの 人と 行く ときは、まず 船の 長さを 見て ください。「ふじ」は 25メートルプールを 4つ ならべた くらい、「しらせ」は 5つ 半くらいの 長さです。
行けなくても、校庭や 公園で、ふつうに 歩いて 100歩ぶんと 134歩ぶんを 数えて くらべる ことは できます。おおよその ちがいは わかります。
名古屋港のガーデンふ頭では、「ふじ」の中を見学できます。船内に入ったら、通路の幅や居室の広さを、自分の歩幅や両手を広げた長さで測ってみてください。
国立極地研究所の観測隊ブログには、毎年の接岸の様子が書かれています。「接岸」が決まる年の氷の様子を読み比べると、数字の裏にある事情が見えてきます。
出典[1]の接岸の定義と回数の表、[5]の元艦長の話を読み比べると、「船の性能」と「氷の年ごとの差」を分けて考える手がかりになる。観測隊ブログの毎年の接岸の記録を、[1]の表に自分で足していくのもよい。
後継船は動きの速い話題だ。続報が出たら、最初の報道から何が変わったかを読み比べてみよう。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:[1][3][5]は国立極地研究所の資料、[2][4][6]はウィキペディア、[7]は乗り物ニュースの報道です。諸元の数値は資料によって差があるため、記事ではおおよその値で書きました。船の大きさや出力の数値は、防衛省などの一次資料ではなくウィキペディアの記述にもとづきます。
- 国立極地研究所, "南極観測船「しらせ」の昭和基地沖への接岸について"(第61次隊)。 https://www.nipr.ac.jp/antarctic/info/20200106.html (接岸の意味、ふじ6/18・先代しらせ24/25・現しらせ8/10、接岸を断念した次)
- Wikipedia, "ふじ (砕氷艦)"。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B5%E3%81%98_(%E7%A0%95%E6%B0%B7%E8%89%A6) (諸元、電気推進、ヘリコプター搭載、名古屋での公開)
- 国立極地研究所 南極・北極科学館, "南極観測船"。 https://nipr-blog.nipr.ac.jp/science-museum/cat-4/post-c0e8-15.html (宗谷・ふじ・しらせの紹介、積載量400t、輸送力2倍、現行は4代目)
- Wikipedia, "しらせ (砕氷艦・初代)"。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%9B_(%E7%A0%95%E6%B0%B7%E8%89%A6%E3%83%BB%E5%88%9D%E4%BB%A3) (先代の諸元、連続砕氷1.5m、チャージング36,650回、25回の輸送)
- 国立極地研究所 極 -kyoku-, "氷を砕き、南極へ —— 砕氷艦「しらせ」元艦長が語る航海の記憶"。 https://kyoku.nipr.ac.jp/special/4694 (ラミングの方法、氷の厚さ5〜6m、第60次隊の12日、電気推進)
- Wikipedia, "しらせ (砕氷艦・2代)"。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%9B_(%E7%A0%95%E6%B0%B7%E8%89%A6%E3%83%BB2%E4%BB%A3) (現行の就役年、全長138m、30,000PS、2軸の統合電気推進)
- 乗りものニュース, "さよなら「海自の南極観測船」60年続いた“伝統の任務”から撤退へ 現行「しらせ」退役も具体的に"(2026年5月7日)。 https://trafficnews.jp/post/662301/2 (2034年頃の退役、運用主体の見直し。報道時点の内容)
なおした ところ
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