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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

キリンの くびは ながいのに、ほねの かずは 人と おなじ?

長い首なのに、骨は人と同じ7個 ── キリンの首の数え方

キリンの頸椎はなぜ7個か ── ほ乳類の「7の規則」と例外、第一胸椎の謎

分野:生きもの

キリンの くびは、人の くびより ずっと ながく 見えます。ところが、くびの ほねの かずを かぞえると、人と おなじ 7こ だと いわれています。

かずが おなじなら、どうして あんなに ながいのでしょう。ほかの どうぶつは どうなのかも、いっしょに 見て いきましょう。

キリンの首は、高い木の葉に届くほど長く見えます。骨がたくさん並んでいるように思えますが、首の骨の数は人と同じ7個だと報告されています。

数が同じなのに、なぜあの長さになるのか。そして、ほ乳類の首の骨の数はなぜほとんど変わらないのか。例外の動物と、「8番目の首の骨」といわれる骨の話までたどります。

キリンの頸椎は、ヒトと同じ7個である[1]。首が長いのは数が多いからではなく、1個ずつが長いためで、成熟したキリンでは1個が30cmに及ぶこともある[1]。

このメモでは、鳥のように数を増やさなかった長い首[2]、ほ乳類で頸椎の数が変わりにくい理由についての仮説[3][4]、例外のナマケモノ、そしてキリンの第一胸椎が首のように動くという2016年の報告[6]を、複数の資料でつき合わせる。

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1. くびの ほねは、いくつ あるの?

1. 数えてみると、人と同じ7個

1. 頸椎の数 ── ヒトと同じ7個、1個は最大30cm級

くびの ほねは、むずかしい ことばで「けいつい」と いいます。キリンの けいついは、人と おなじ 7こ です[1]。

ちがうのは、ほね 1こ 1この ながさです。大きく そだった キリンでは、1こが 30センチに なる ことも あります[1]。

30センチは、学校の ものさし 1本ぶんです。ただし、ぜんぶの ほねが 30センチ という わけでは ありません。

骨の数は変わらない

首の骨は頸椎(けいつい)と呼ばれます。東京大学の研究者による2016年の発表では、キリンの頸椎は人と同じ7個とされています[1]。

変わるのは1個の長さ

同じ発表によると、成熟したキリンでは頸椎1個が30cmにもなることがあります[1]。学校の30cm定規を、首の骨1個ぶんの長さとして思い浮かべることができます。ただし「こともある」という書き方なので、7個すべてが30cmあるとは言えません。

東京大学の郡司・遠藤らの研究(2016年)は、キリンの頸椎数がヒトと同じ7個であり、成熟個体では1個の頸椎が30cmに及ぶこともあると述べる[1]。「及ぶこともある」という表現であり、全頸椎が30cmという意味ではない。

キリンのゲノムを解析した研究も、長い首は鳥のように頸椎を増やした結果ではなく、ほ乳類に共通する7個の頸椎それぞれが縦に伸びた結果だと述べる[2]。オカピとの比較研究でも、キリンの頸椎は7個で、長さが大きく伸びていると報告されている[7]。

2. ふやさずに、1こ 1こを のばした

2. 数を増やさず、1個ずつを伸ばした

2. 伸長の仕組み ── 体節・Hox遺伝子と、残る推定

電車を ながく したい とき、しゃりょうを ふやす 方ほうが あります。でも キリンは、しゃりょうの 数は そのままで、1りょうずつを ながく した ような ものです。ただし 本当の ほねは、電車と ちがって、つながって うごく ほねです。

どうやって のびたのかは、まだ すべては わかって いません。ちいさい ときの 体の もとが のびた ためでは ないか、と かんがえられて います[2]。

鳥は数を増やした

首の長い鳥は、頸椎の数を増やしています。キリンはその逆で、ほ乳類がもつ7個をそのまま使い、1個ずつを縦に伸ばしたと考えられています[2]。

胎児のころの「もと」が伸びた?

キリンのゲノムを調べた研究では、頸椎のもとになる胚の「体節」が伸びたことが原因だろうと推定されています。首だけに限られるのは、複数の遺伝子の組み合わせのはたらきによるらしい、とも書かれています[2]。どちらも「おそらく」の段階で、首の長さを決める遺伝子が特定された、という話ではありません。

キリンのゲノム解析論文は、頸椎伸長の原因を胚の体節の伸長によるものと推定(probably)し、それが頸部に限られるのはホメオボックス遺伝子の組み合わせ的なはたらきによると述べる[2]。HOXB3、CDX4、NOTOなどでキリンに特有の変化が見つかったとされるが、これらが長さを決めたと示されたわけではなく、推測を含む[2]。

ここで確かなのは頸椎数が7で保たれていること、推定なのは伸長の発生上の仕組みである。両者を区別して読む必要がある。

3. どうして 7こ から かわらないの?

3. 7個から動かない理由の有力な仮説

3. 「7の規則」── 発生上の制約という仮説

ほにゅうるいの くびの ほねは、ほとんどの どうぶつで 7こ です。この かずは、とても かわりに くいと いわれます[3]。

ある 研究者は、かずが かわると 体の ほかの ところに ぐあいの わるい ことが おきやすく、生まれる まえに 弱って しまう ことが おおい からでは、と かんがえました[3][4]。

これは 「ゆうりょくな かんがえ」で、まだ かくじつな こたえでは ありません。

ほとんどのほ乳類は7個

ほ乳類の頸椎の数は、ごくわずかな例外を除いて7個で、驚くほど変わらないことが知られています[3]。首が長いキリンも、人も、この点では同じです。

数を変えると困るのかもしれない

1999年、生物学者のガリスは、この変わりにくさは発生の制約によるのではないかと提案しました。頸椎の数が変わるのは、体をつくる遺伝子のはたらきの変化と結びついていて、その変化が神経の問題や小児がん、死産などと関係しやすいため、数が変わった個体は生き残りにくく、数が7で保たれてきた、という考えです[3][4]。

これは有力な仮説であり、証明された結論ではありません。人の首の骨の数が変わることを、誰かの病気の原因のように受け取るのも誤りです。

ほ乳類の頸椎数は、ナマケモノとマナティーを除いて原則7個で、著しく一定である。ガリス(Galis, 1999)は、この変異の乏しさを発生上の制約で説明できるとした[3]。頸椎数の変化はHox遺伝子の発現変化と関連し、その変化が神経系の異常・小児がんの罹りやすさ・死産などと結びつくため、淘汰で除かれてきたという仮説である[3][4]。

後続の総説(Varela-Lasheras ら, 2011)は、ヒトでは頸椎数の変化が受胎のうちで非常に多く見られるが強く淘汰されていること、頸肋のある個体で小児がんの増加が報告されていることを紹介している[4]。ただし数値は二次的な引用を経ており、ここでは扱わない。あくまで仮説であり、「頸椎数の変化が病気の原因だと証明された」とは読めない。

4. れいがいの どうぶつが いる

4. 例外のナマケモノとマナティー

4. 例外 ── ナマケモノ・マナティーと、低代謝仮説

7こ でない どうぶつも います。ナマケモノは、しゅるいに よって 6こから 9こくらいと いわれます[4]。マナティーも、へって いる こが います。

この どうぶつたちは、あまり いそがしく うごかない くらしです。それで、かずが かわって も こまりにくかった のでは、と いう 考えが あります[4]。

これも 「かもしれない」の はなしです。

数が7でないほ乳類

ナマケモノは、種類によって首の骨が6個から9個ほどあるとされます[4]。資料によって属ごとの数に幅があるので、ここでは範囲だけを書きます。マナティーやジュゴンでも、首の骨が減った個体が報告されています[4]。

ゆっくり暮らす動物だから?

この2種は体の活動が低いため、数が変わったことによる不利が現れにくく、淘汰が弱まって数の制約が破れたのではないか、という説明があります[4]。「おそらく」という書き方の仮説です。

ナマケモノでは、数が違っても首の骨のまとまり(3つのグループ)の形は保たれ、境目のほうがずれていると解釈する研究もあります[5]。

頸椎数7の例外はナマケモノとマナティーである[4]。ナマケモノの頸椎数は属で異なり、フタユビ属で6、ミユビ属で8〜9とする総説がある一方[4]、別の解析の要約はフタユビ属5〜8、ミユビ属8〜10とし、資料間で幅がある[5]。ここでは「6〜9個」程度の幅にとどめる。

例外が許された理由として、低い代謝率が酸化的DNA損傷とがん罹患の低さに関連するとみられ、淘汰が弱まったとする仮説が紹介されている[4]。「presumably」を伴う推定で、断定はできない。また、ナマケモノでは頸椎が3つのモジュール構造を保ち、数の違いは境界のずれとして解釈されている[5]。

5. 「8ばんめの くびの ほね」って なに?

5. 首のように動く8番目の骨

5. 第一胸椎 ── 「数」ではなく「動き」の境目

キリンには、7この あとに つづく、むねの ほねの 1ばんめ(だいいちきょうつい)が あります。この ほねは、くびの ほねの ように よく うごく、と 2016ねんに ほうこく されました[6]。

この ほねの おかげで、あたまを うごかせる はんいが、50センチほど ひろがる、とも いわれます[6]。

だから「くびの ほねは 8こ」と 言う 人も います。でも、ふつうの かぞえかたでは 7こで、8ばんめは むねの ほねです。ここは ほんとうに ぎろんが あります。

胸の骨なのに、首のように曲がる

東京大学の研究では、キリンの第一胸椎(頸椎のすぐ後ろの骨)は、ふつうの反すう動物の第7頸椎に似た形で、首の骨のように高い可動性をもつと報告されました。これで頭と首が届く範囲が約50cm広がるとされます[6]。

8個と数える人もいた

過去には、キリンの頸椎を8個とみなす主張もありました。これに対し、後の研究では、キリンの頸椎を7個として扱っています[7]。数え方をめぐる議論があるので、ここでは「頸椎は7個、8番目は首のように動く胸椎」と、数と動きを分けて書きます。

Gunji & Endo(2016)は、キリンの第一胸椎が頸椎に似た高い可動性を示し、頭頸部の到達範囲を約50cm広げると報告した[6]。頸椎数は7のまま、動きの面では境目が1個ぶん後ろにずれていることになる。

かつて、首の途中に骨が1個加わったとして頸椎8個とみなす主張があったが、その後の研究では、キリンの頸椎を7個として扱っている[7]。「8個だった」とも「7個で決まり」とも言い切らず、数(骨の分類)と動き(機能)を分けて読むのが安全である。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

ずかんや どうぶつえんの しゃしんで、どうぶつの くびの つけねを 見て みましょう。どこから くびで、どこから むねなのか、さがして みると おもしろいです。

キリンと ほかの どうぶつで、くびと むねの さかいめが おなじか ちがうか、見くらべて みましょう。

今日できること:図鑑や動物園の写真で、首から胸への境目を動物ごとに探してみてください。「どこからが首か」に違いがあるか、見比べてみましょう。

もう少し知りたいときは、東京大学のプレスリリースやUTokyo FOCUSの記事を、日本語で読めます。

キリンの頸椎・胸椎の研究は、東京大学の発表とUTokyo FOCUSの記事[1][6]が日本語で読める。7の規則の議論は、ガリスの1999年の論文[3]と、Varela-Lasherasら2011年の総説[4]が出発点になる(いずれも英語)。

自分で確かめるなら、図鑑や動物園の写真で、動物ごとに首から胸への境目を見比べてみるとよい。「どこからが首か」に違いがあるか探してみてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:東京大学の発表、論文・総説の抄録や本文、大学の紹介記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いた。

  1. 東京大学「キリンの首の骨(頸椎)に関する研究」プレスリリース(2016年)。https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2016/20160203-1.html (頸椎7個・1個30cmの記述)
  2. Agaba et al. “Giraffe genome sequence reveals clues to its unique morphology and physiology.” Nature Communications, 2016. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4873664 (数を増やさず伸びた点、体節・Hoxの推定)
  3. Galis, F. “Why do almost all mammals have seven cervical vertebrae?” Journal of Experimental Zoology 285, 1999. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10327647/ (7の規則と発生上の制約の提案)
  4. Varela-Lasheras et al. “Breaking evolutionary and pleiotropic constraints in mammals.” EvoDevo 2:11, 2011. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3120709/ (制約の仮説、ナマケモノ・マナティーの例外)
  5. Böhmer et al. 2018, BMC Evolutionary Biology. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5992679/ (ナマケモノの頸椎のまとまりと境目)
  6. UTokyo FOCUS「キリンの第一胸椎」の紹介記事(Gunji & Endo 2016 の報告)。https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/articles/a_00458.html (第一胸椎の可動性・約50cm)
  7. “The Cervical Osteology of Okapia johnstoni and Giraffa camelopardalis.” PLOS ONE, 2015. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0136552 (オカピとの比較、7個説の支持)

なおした ところ

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