1. しろい ところも みどりの ところも 葉なの?
1. 白い部分も緑の部分も、同じ葉だった
1. 白い部分は根ではなく葉:色の差に関わるのは光
ねぎの しろい ところは、ねっこだと おもって いませんか。じつは、ねっこでは ありません。ねっこは、ひげのように べつに あります。
しろい ところは、葉の もとの ほうです。みどりの ところも、おなじ 葉です。つちから 出て 日の 光を あびた ところは みどりに なり、つちに うまって 光が あたらなかった ところは しろく そだちます。
ねぎの白い部分を根だと思っている人は、案外多いかもしれません。でも根は、根元から出ているひげのような部分で、白い部分とは別にあります。
白い部分は、葉の根元が何枚も重なって筒のようになったところです。この部分は「葉鞘(ようしょう)」とも呼ばれ、関東でよく出回る根深ねぎ(長ねぎ)は、土を寄せて育てたこの白い部分を主に食べます[1]。
では、白と緑のちがいは何でしょうか。青果売り場で働く人の解説では、日が当たったか当たらなかったかのちがいで、もとは同じ部位だ、とされています。土から出た部分は光を受けて緑になり、土に埋もれた部分は光が当たらず白く育つ、という説明です[2]。
ねぎの白い部分を根と考える人もいるが、食べているのは根ではない。根は株の下にひげ状に別にあり、白い部分は葉の根元が幾重にも重なって筒状になった部分、すなわち葉鞘である。根深ねぎ(長ねぎ)は、土寄せして育てたこの白い部分を主に食べる品目だ[1]。
緑の部分も同じ葉なら、色の差はどこから来るのか。青果の売り場に立つ書き手の解説は、白と緑のちがいは日が当たったか当たらなかったかのちがいで、もとは同じ部位だとしている。土から出た部分は光を受けて緑に、土に埋もれた部分は光が届かず白く育つ、という説明である[2]。この解説は一般向けの記事であり、色の違いを生む植物の内部の仕組みまでは示していない。したがって、ここで言えるのは「光の当たり方が色を分ける」という現象の次元までである。
この理解が正しければ、農家は土をかけるだけで、白い部分の長さを調節できるはずだ。実際にはどう育てているのか。
2. のうかさんは、どうして つちを かけるの?
2. 農家が株のまわりに土を寄せる理由
2. 土寄せは「光を遮る作業」:白い部分を太く長くする
のうかさんは、ねぎの もとに つちを もって、日の 光を さえぎります。つちを よせる、と いう しごとです。
ちば県の しりょうには、しろい ところを ふとく 長くするために、そだつ とちゅうで 日光に あてないよう つちを もる、と かいて あります[3]。
にいがた県の しりょうでは、20日ごとに 4〜5かい、ねぎの もとに つちを よせます。しろい ところが 30センチほどに なったら、しゅうかくの じゅんびです[4]。
20日ごとに 4〜5かいなら、つちを かけるだけでも 80日から 100日。かなり 気の 長い しごとです。これは にいがた県の 一つの れいで、ところや しゅるいで かわります。
光を当てないなら、光をさえぎればよい。農家がしているのが「土寄せ」です。千葉県の資料は、白い部分を太く長くするために、生長の途中で日光に当てないよう盛り土をする、と説明しています[3]。
回数の目安として、新潟県の資料には、約20日おきに4〜5回、株元に土を寄せるとあります。白い部分(軟白)が30cmほどになったら収穫です[4]。20日おきに4〜5回なら、土寄せだけで80〜100日かかる計算です。
ただし、これは新潟県の一例で、地域や品種、作る時期で変わります。土を何回かに分けて足していくことで、光の届かない部分がのびていく、と読めます。
光を当てないために農家が行う作業が土寄せである。千葉県の資料は、白い部分を太く長くするため、生長の過程で日光に当てないよう盛り土をする、と説明している[3]。先の資料にある数字を見ると、一度に埋めるのではなく、何回かに分けて土を足していく作業だと分かる。
回数と間隔の目安として、新潟県の資料は、約20日おきに4〜5回、株元に土を寄せるとし、軟白部が30cm程度になったら収穫するとしている[4]。20日×4〜5回で80〜100日となり、後述の約180日のうち、土寄せだけで半分前後を占める計算になる。ただしこれは新潟県の資料にある一例で、地域・品種・作型で異なる。千葉県の夏ねぎ栽培の例とも、後で見るように時期の取り方が違う。
では、土は深く寄せるほどよいのか。そうでもないらしい。
3. たねから しゅうかくまで、どれくらい かかるの?
3. 種まきから収穫まで、約半年かかる
3. 種まきから収穫まで約180日:夏ねぎ栽培で見る時期
にいがた県の しりょうでは、たねを まいてから しゅうかくまで、180日ほど かかります[4]。およそ 半年です。
ちば県の なつに とる ねぎの れいでは、たねまきは 10月の おわりから 12月の はじめ。なえを はたけに うつす「ていしょく」は、1月から 3月の はじめです。まだ さむい 時期に、ちいさな なえが そだって います[5]。
たねまきを はやく しすぎるのは、よく ないそうです。そのわけは、あとの しょうで 出て きます。
新潟県の資料では、種をまいてから収穫までに約180日、およそ半年かかります[4]。
では、いつ種をまくのでしょうか。千葉県の夏ねぎ栽培の一例では、種まきは10月下旬から12月上旬、苗を畑に植えかえる定植は1月上旬から3月上旬とされています[5]。冬のあいだに苗が育ち、6月中旬から7月下旬ごろに出荷するという流れです。ただしこれは夏どりの一例で、秋や冬に収穫する作型では時期がちがいます。
同じ資料は、無理な早まきは避けるように、とも書いています。早くまきすぎると、花の茎が立つ「抽台(ちゅうだい)」が起きる可能性があるためです[5]。花の茎が立つ時期を外すのも、農家の腕の見せどころになります。
種まきから収穫までの期間は、新潟県の資料で約180日である[4]。収穫の約半年前には、すでに種をまいていることになる。
では、その半年はどんな暦で進むのか。千葉県の資料にある夏ねぎ栽培の一例では、播種は10月下旬〜12月上旬、苗を畑に植える定植は1月上旬〜3月上旬とされる。ここでも、種まきを急ぐ理由はなく、無理な早まきは抽台、つまり花の茎が立つ現象を招く可能性があるため避ける、と注意されている[5]。ただしこれは夏どりの作型の例であり、秋冬どりでは種まきの時期が異なる。
早く育てたいのに、早すぎるとかえって困る。ねぎ栽培の難しさは、この「抽台との駆け引き」にあるといえそうだ。この点は、後の章であらためて見る。
4. つちは、どこまで よせて いいの?
4. 土寄せには「首まで」という限界がある
4. 止め土はなぜ「首の下まで」か:寄せすぎのリスク
つちを たくさん よせれば いい、とは かぎりません。ちば県の なつに とる ねぎの しりょうでは、さいごに よせる つちを「とめつち」と いい、ねぎの「くび」(葉が わかれる ところ)の したまでに します。この しりょうでは、あきや ふゆの ねぎのように くびまで うめると、びょうきで かれやすく なると いわれます[5]。
とめつちは、しゅうかくの 14日まえが めやすです。ここも なつどりの れいで、あきや ふゆに とる ねぎでは、あつかいが ちがいます。
土は深く寄せるほどいいわけではありません。千葉県の夏ねぎ栽培の資料は、最後の土寄せ(止め土)を、ねぎの首の下までにするよう書いています。この資料では、秋冬ねぎのように首まで埋めると、白絹病という病気で枯れる可能性が高まるとされています。止め土は収穫の約14日前が目安とされています[5]。
光をさえぎって白くしたいけれど、首まで埋めると病気が心配になる。農家は、その手前の高さで土を止めています。これも夏どりの作型での目安で、秋冬どりのねぎでは扱いがちがいます。
光を遮るなら土を深く寄せるほどよいと考えがちだが、千葉県の夏ねぎ栽培の資料は、止め土を土寄せと同じく首下までにするよう定めている。この資料では、秋冬ねぎのように首まで埋めると白絹病で枯死する可能性が高まるとされ、止め土は収穫の約14日前が目安である[5]。
ここには条件の釣り合いが見える。土を寄せなければ白い部分は伸びないが、寄せすぎれば病気で株が弱る。そのため農家は、白い部分を最大限に伸ばしつつ、首の下で止めるという限られた幅の中で作業していることになる。ただし、これは夏どり作型での目安であり、秋冬どりの扱いは別である。
半年かけて手をかけても、ねぎが勝手に別の方向へ進むことがある。春に出る、ねぎ坊主である。
5. はるに ねぎぼうずが 出るのは なぜ?
5. 春に出る「ねぎ坊主」を、農家はどう避けるのか
5. 花を咲かせない工夫:ねぎ坊主(抽台)と品種選び
ねぎを そのまま はたけに おいて おくと、はるに くきの さきに まるい 花が つきます。これが「ねぎぼうず」です。
花が つく ことを「ちゅうだい」と いいます。ちば県では、ねぎぼうずが おおく なるので、4月の なかごろから おわりごろは、出荷できる ねぎが すくない じきに なります[6]。
そこで、ねぎぼうずが 出るのが おそい しゅるいを えらぶ くふうが あります。この しゅるいを つかった ちば県の しけんでは、4月の おわりまでに ねぎぼうずが 出る かぶは、0〜15%に おさえられました[6]。5月から あとは、なつどりの そだてかたに かえます。
ぼうず知らずねぎと いう、ぶんけつする しゅるいも あります。あきに 1ぽん うえると、5月ごろには 7〜8ぽんに ふえます。この しゅるいは、はるに なっても ねぎぼうずが ほとんど 出ません[3]。
収穫せずに畑に置いておくと、ねぎは春に茎の先へ丸い花をつけます。これが「ねぎ坊主」で、花の茎が立つことを抽台といいます。農家にとっては、できれば避けたい出来事です。
千葉県の資料によると、春どりのねぎでは、ねぎ坊主が多くなる4月中旬〜下旬が「端境期(はざかいき)」、つまり出荷できるねぎが少ない時期になります[6]。
そこで使われるのが、ねぎ坊主の出るのが遅い品種です。千葉県の試験では、この品種を使うことで4月末までに抽台する株を0〜15%に抑えられ、5月以降は夏どり栽培に切りかえる方法が示されました[6]。
もう一つ、変わった例があります。「坊主不知(ぼうずしらず)ねぎ」は分げつする品種で、秋に1本で植えると、5月ごろには7〜8本に分かれます。春になってもねぎ坊主がほとんど出ません[3]。ただし、すべてのねぎが分げつするわけではありません。
収穫せずに畑に残したねぎは、春に茎の先へ小さな花を多数つけ、これがねぎ坊主である。花の茎が立つ抽台は、産地にとって出荷計画に響く現象である。千葉県の資料は、春どりでは抽台が多くなる4月中下旬が端境期になるとしている[6]。
では、どう抑えるのか。同じ千葉県の成果では、ねぎ坊主の発生が遅い品種を使うと、4月末までに抽台する株を0〜15%に抑えられたとされる。4月末より先の5月以降は夏どり栽培へ切りかえて、出荷の空白を埋める[6]。さきに見た「無理な早まきを避ける」という注意[5]と合わせると、品種の選択と種まきの時期の二つで、抽台のリスクを調整していることが分かる。なお、この0〜15%は特定の試験条件での値であり、どの畑でも保証される数字ではない。
別の対処としては、分げつする品種もある。坊主不知ねぎは栄養繁殖で栽培され、秋に1本で植えたものが5月ごろに7〜8本に分かれて出荷される。この品種は春になってもねぎ坊主がほとんど出ない[3]。ただし、すべてのねぎが分げつ・栄養繁殖ではない。
6. しろい ねぎと みどりの ねぎ、どちらが ふつう?
6. 土を寄せないねぎもある:関東と関西のちがい
6. 土寄せをしないねぎ:根深ねぎと葉ねぎ、そして原産地
ここまでの しろい ねぎは、つちを よせて そだてた「長ねぎ」です。ところが、つちを よせず、みどりの 葉を 食べる ねぎも あります。「葉ねぎ」とか「あおねぎ」と よばれます。
関東では しろい ねぎが、関西では みどりの ねぎが このまれると いわれて きました。いまは、れいぞうで はこぶので、どちらも ぜんこくで 買えます[7]。
ねぎは、中国の にしの ほうや 中おうアジアが ふるさとだと されます。中国では 2000年いじょう まえから 作られ、日本には、ちょうせん半とうを とおって つたわりました。ならじだいの 木かんや、にほんしょきという ふるい 本にも、ねぎの ことが 出て きます[7]。
ここまで見てきた白いねぎは、土寄せして育てる根深ねぎ(長ねぎ、白ねぎ)です。一方、土寄せをせず、緑の葉を食べる葉ねぎ(青ねぎ)もあります。
根深ねぎは関東に多く、葉ねぎは関西で好まれてきたといわれます。今は冷蔵して運べるので、どちらも全国に出回っています[7]。同じ「ねぎ」でも、光を遮って育てるかどうかで、食べる部分が変わるのです。
ねぎの故郷は、中国西部から中央アジア北部あたりとされ、中国では2000年以上前から栽培されていたといいます。日本には朝鮮半島を経由して伝わり、奈良時代の木簡や『日本書紀』にもねぎが出てきます[7]。
以上は土寄せをして白い部分を食べる根深ねぎ(長ねぎ・白ねぎ)の栽培だが、ねぎには土寄せをせず緑の葉を食べる葉ねぎ(青ねぎ)もある。前者は関東に多く、後者は関西で好まれてきたとされ、冷蔵輸送が発達した現在は、両方が全国に出回っている[7]。同じ作物が、光を遮る栽培を選ぶかどうかで、食べる部位まで分かれたことになる。
ねぎの原産は中国西部や中央アジア北部とされ、中国では2000年以上前から栽培されていた。日本へは朝鮮半島経由で伝わり、奈良時代の木簡や『日本書紀』にも記述が見られる[7]。起源については「とされる」の範囲を出ず、この記事の資料から、いつ誰がどのように白ねぎの栽培法を確立したかまでは言えない。
7. あなたの 家の ねぎで、さかいめを さがして みよう
7. 台所のねぎで、白と緑の境目を探してみる
7. 白と緑の境目を観察し、栽培の資料に当たる
おうちに 長ねぎが あれば、おとなと いっしょに 見て みましょう。しろい ところと みどりの ところの さかいめは、どんな ふうに なって いますか。ふたつの ところは、べつの ものでしょうか。それとも つながって いるでしょうか。
ほうちょうを つかう ときは、かならず おとなに おねがいして ください。見るだけでも、ふしぎな ことが みつかるかも しれません。
スーパーや はたけで、ねぎぼうずを 見かけたら、どんな かたちか よく 見て みましょう。ちば県や にいがた県の ホームページには、のうかさんの しごとを しょうかいした ページが あります。
家に長ねぎがあれば、白と緑の境目を観察してみてください。色が変わるのはどのあたりか、そこで葉の形や重なり方は変わるのか。もとは同じ葉だという説明が、見た目と合うかどうかを確かめられます。包丁を使うときは、必ず大人といっしょにしてください。
売り場に並ぶ長ねぎの白い部分の長さにも、目を向けてみましょう。土を何回寄せたのか、どこで止め土をしたのか、想像すると見え方が変わります。
もっと知りたいときは、千葉県の「ちば食材図鑑」や新潟県の食品・旬のページ、千葉県農林総合研究センターの成果公表など、自治体や研究機関の資料が読めます。同じ土寄せでも、地域や作型で数字がちがうのは、どんな事情からなのか。それを読み比べるのが、次の楽しみになります。
手元の長ねぎで、白と緑の境目を観察できる。境目で葉が別のものに切り替わるのか、それとも連続した一枚の葉の色が変わるだけなのか。本文で見た「同じ葉で、光の当たり方が色に関わる」という説明が、実物の形と一致するかを確かめる素材になる。刃物を使うときは大人に頼むこと。
観察のあとは、栽培の資料を読み比べるとよい。本文で引いた土寄せの回数(新潟県の約20日おき4〜5回)と、止め土の位置・時期(千葉県の首下・収穫約14日前)は、地域も作型も異なる別の資料の数字である。同じ「土寄せ」でも、条件が違えば数字が変わることを、資料に当たって確かめることができる。
残る問いは、ねぎの葉がなぜ中が空洞の筒になっているのか、また低温と花芽の関係など、この記事の資料では扱えなかった部分である。気になった人は、農研機構や各県の農業試験場の公開資料を探してみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
自治体・研究機関の資料と、解説記事を組み合わせて書きました。数字は地域や作型で変わる一例を含みます。
- All About「小ネギ・万能ネギ・わけぎ・あさつきの違い」 https://news.allabout.co.jp/articles/o/52760/ (白い部分が葉鞘であること、根深ねぎの食べる部分)
- ヨムーノ「ねぎの白い部分と緑の部分」 https://yomuno.jp/posts/112336 (白と緑のちがいは日が当たったかどうか)
- 千葉県「ちば食材図鑑 ねぎ」 https://www.pref.chiba.lg.jp/ryuhan/pbmgm/zukan/yasai/negi.html (盛り土の目的、分げつする品種)
- 新潟県「食品・旬のねぎ」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syokuhin/shun10-negi.html (土寄せの回数、収穫までの日数)
- 千葉県「ろじ屋」ねぎ栽培の資料 https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/network/field-r5/rojiya-2023-10.html (種まき・定植の時期、止め土の目安)
- 千葉県農林総合研究センター「成果の公表」 https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/seikanokouhyou/h29/tousouyasai12-5.html (ねぎ坊主と端境期、品種の工夫)
- nippon.com「にっぽん食べ物図鑑」 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c15336/ (根深ねぎと葉ねぎ、原産と伝来)
なおした ところ
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