1. 十がつに、そらを かぞえる ひとが いるの?
1. 毎年10月の2週間、空を数える人たちがいる
1. 伊良部島の飛来数調査:何をどの条件で数えているか
おきなわけんは、まいとし 10月8日から 21日までの 2しゅうかん、みやこじまの いらぶじまで、サシバを かぞえて います。時間は ひるの 12時から 6時までです[1]。
サシバは、夏に 日本の 里山(さとやま)で 子そだてを して、秋に 南の あたたかい ところへ わたる、小さな タカです[3]。体の 長さは 50センチ ぐらい、つばさを ひろげると 1メートルを こえます[3]。
2025ねんは 11,367わ でした。かぞえた 時間は 14日 かける 6時間で 84時間。わると、1時間あたり へいきん およそ 135わ に なります。
ただし、これは かぞえた かずです。わたる ぜんぶの かずでは ありません。では、この 鳥たちは、どこから みやこじまに 来るのでしょう。
宮古島の伊良部島では、沖縄県が毎年、10月8日から21日までの2週間、午後12時から18時まで、サシバの飛来数を数えています。調査は長く続けられ、2026年度で54回目になります[1]。
数えられているサシバは、夏に日本の里山で子育てをし、秋に南へ渡る小さなタカです。全長は47〜51cm、翼を広げると105〜115cmほどです[3]。
2025年度は2週間で11,367羽でした。数えた時間は、6時間×14日で84時間です。単純に割ると、1時間に平均しておよそ135羽が通った計算になります(11,367÷84≒135)。ただしこれは数えた延べ数で、渡る鳥の総数ではありません[1]。
数える人がいるほど、毎年ここを通る時期があるということです。では、サシバは日本のどこから宮古島へやって来るのでしょうか。
伊良部島では、沖縄県が毎年10月8〜21日の2週間、12〜18時にサシバの飛来数調査を行っている。2025年度の結果は11,367羽で、2026年度が54回目にあたる[1]。
この数字の読み方には注意がいる。数える時間は1日6時間、14日で計84時間に限られており、11,367を84で割ると1時間あたり約135羽になる。これは調査時間内に数えた延べ数の平均であって、その年に渡った個体の総数ではない。夜間や調査時間外の通過、数え漏れ、同じ個体の重複は、この数字には反映されない[1]。
数えられているのは、全長47〜51cm、翼開長105〜115cmほどの小型のタカである[3]。夏は日本の里山で繁殖し、秋には南西諸島や東南アジアへ渡る。同じ時期の同じ場所に、これだけの数が現れる以上、そこへ至る前の段階で、各地の鳥が合流しているはずだ。では、その合流はどこで起きるのか。
2. むれは、どこで あつまって、どこで わかれるの?
2. 各地の群れが合わさって大群になり、宮古列島から先で二手に分かれる
2. 集合地で群れが膨らみ、宮古列島から、サシバの群れは二手に分かれる
サシバは、9月ごろから、子そだてを おえた かぞくが 少しずつ あつまって、休みながら 何日も かけて わたります[3]。
あいちけんの いらごみさきや、かごしまけんの さたみさきで、あちこちの むれが ひとつに なって いく、と せつめい されて います。むれは だんだん 大きくなり、10月の なかごろ、みやこじまに 空が 黒く なるほどの 大ぐんで 来る そうです[2][3]。
みやこじまから さきの おもな みちとして、二つが しょうかい されて います。たいわんの ほうへ 行く むれと、フィリピンの 北の ばたんじまで 休む むれです。フィリピンの むれは、その あと 島を つたって、インドネシアの ほうまで 行くようです[2]。
ただし、ぜんぶの 鳥が この 二つの どちらかと いう わけでは ないようです。奄美大島で 休む なかまも いるようです。
サシバは9月ごろから、子育てを終えた家族が各地で少しずつ合流し、休みながら何日もかけて渡ります[3]。道すじの目印として、愛知県の伊良湖岬と鹿児島県の佐多岬がよく挙げられます。ここで各地の群れが合わさりながら南へ向かい、大群になって宮古島へ渡る、と説明されています[2]。
宮古島に大群が来るのは10月中旬ごろで、空が黒くなるほどだといわれます[3]。奄美大島でも、フィリピンへ向かうサシバが10月10日ごろから1週間ほど上空を通る、と野鳥写真家が話しています(一人の観察者の談話で、年や場所で前後します)[4]。
宮古列島から先の主なコースとして、二つが紹介されています。一つは台湾南部の満州郷から恒春鎮岬周辺で休むコース、もう一つはフィリピン北部のバタン島で休むコースです。フィリピンのコースは、その後フィリピンの島々を南下してインドネシア方面へ向かい、島に分かれて冬を過ごすようだと書かれています[2]。どちらも「とされる」「ようだ」という強さの説明で、全部の個体がこの2択とは限らず、奄美大島や徳之島などで休む群れもあるようです。
では、宮古島から台湾やバタン島までの海を、どうやって越えるのでしょうか。
サシバは9月ごろから、繁殖を終えた家族が各地で少しずつ合流し、休憩をはさみながら何日もかけて南下する[3]。道すじでは、愛知県の伊良湖岬と鹿児島県の佐多岬が集合地として挙げられ、そこで各地の群れが合わさって、大群で宮古島に渡るという[2]。
群れの合流が膨らむ結果として、宮古島には10月中旬ごろ、空が黒くなるほどの大群が来る[3]。奄美大島では、フィリピンへ向かう個体が10月10日ごろから1週間ほど通過するという野鳥写真家の談話がある。これは一人の観察者の話であり、年や場所によって前後する[4]。
宮古列島から先の主なコースとして、台湾南部の満州郷から恒春鎮岬周辺で休むものと、フィリピン北部のバタン島で休むものの二つが紹介されている。フィリピンのコースは、バタン島から島々を経てインドネシアへ南下し、さらに島ごとに分かれて越冬すると解説されている[2]。繁殖地は日本のほか朝鮮半島、中国東部、ロシアのウスリー地域に及び、越冬地は南西諸島、中国南部、東南アジアとされる。中国や韓国で繁殖した個体と、日本の個体の一部は、フィリピンなどで冬を過ごす[8]。ただし、この二手の説明は「とされる」の域を出ず、全個体に当てはまるとは限らない。途中の奄美大島や徳之島などで休む群れもあるという。
ではその海は、どれほど広いのか。そして、翼を広げて1mほどの鳥は、どうやって越えるのか。
3. 小さな 鳥は、どうやって うみを こえるの?
3. 羽ばたかずに、風を使って海を越える
3. 島づたいの外洋ルート:上昇気流と追い風が選ぶ道
サシバは、ずっと はばたいて いるのでは ありません。のぼる 風に のって ぐるぐる まわり、高く なったら、すべるように すすみます[2]。
はやさは だいたい 1時間に 40キロぐらい。1日に 480キロぐらい すすむ と いわれます[2]。40キロで 480キロ すすむには、ただ わると 12時間 かかる 計算です。もちろん、これは おおよその 数なので、風や てんきで かわります。
フィリピンで 冬を すごす サシバを、そらの うえの えいせいで おいかけた けんきゅうが あります。島と 島の あいだを、300キロ までの 海の 上を とぶ ことが ありました。みちを えらぶ ときには、島が 多い ことや、わたりに 合う 風が ふく ことが かんけいして いました[5]。
300キロを 時速40キロで とぶと、ただ わって 7時間半ぐらいです。
サシバの飛び方は、上昇気流を使います。上昇気流の中でぐるぐると旋回して高度をかせぎ、次は翼を広げたまま滑空して進みます。羽ばたく回数をなるべく減らして、エネルギーを節約するのです。平均時速は約40km、1日に約480km進むともいわれます[2]。
この二つの平均を単純に割ると、1日に約12時間(480÷40)飛ぶ計算になります。ただし平均値の紹介で、海の上では風や天気によって大きく変わります。
海を渡るルートは、衛星で追跡する研究が調べています。フィリピンで冬を過ごす個体を追ったところ、島づたいに飛び、島と島の間で最大300kmの外洋を飛ぶことがありました。ルートを選ぶ際には、島の多さや、渡りに適した風があるかどうかが関係していました[5]。
300kmを時速40kmで割ると、約7.5時間です(300÷40)。ただし、これはフィリピンで冬を過ごす個体の研究で、他の個体にそのまま当てはまるとは限りません。
では、そうして渡ったあと、春にもどる道は、行きとちがうのでしょうか。
サシバは上昇気流の中で旋回して高度をかせぎ、滑空で距離を稼ぐ。羽ばたきを減らす飛び方なので、陸の上では日射で暖まった地面から立ちのぼる空気が頼りになる。平均時速約40km、1日の平均移動距離約480kmと紹介されており、これを単純に割ると約12時間になるが、平均値どうしを割った計算上の値であり、実際の飛行時間ではない。海上では風向と風速が結果を大きく変える[2]。
ところが、島づたいに渡る個体は、上昇気流の少ない外洋を越えなければならない。フィリピンで越冬する個体を衛星で追跡した研究(Nourani ら、2018)では、島と島の間で最大300kmの外洋を飛ぶことがあった。ルート選びには、島の多さと、渡りに適した風が得られるかどうかが関係していた[5]。時速40kmで単純に割ると300kmは約7.5時間だが、これは追跡対象の個体群に限った結果である。
こうして、海上でも追い風を拾いながら島を渡り継ぐ。では、一度たどった道を、サシバは覚えているのか。
4. はるに もどる とき、おなじ みちを とおるの?
4. 季節や年がちがっても、似た道を通るのか
4. サシバは同じルートを使い続けるか:2羽の追跡と、奄美大島の春の北上
おとなの サシバ 2わに えいせいの そうちを つけて、2年いじょう おいかけた けんきゅうが あります。きせつや としが かわっても、にた みちを とおり、子そだての ばしょにも、冬を すごす ばしょにも、かえって きて いました。休む ばしょも、なんども つかって いました[6]。
ただし、おいかけた のは 2わだけです。「みんな おなじ」とは いえません。
春の 話も あります。2025ねんの 3月、あまみおおしまで そうちを つけた サシバの うち、さきがけの 1わは 3月21日ごろに 島を 出て、たねがしまを とおって 25日に しこくへ、27日に おおさかと ならの あたりへ つきました。島を 出てから 6日ほど です[7]。
成鳥2羽を2シーズン以上、衛星で追跡した研究があります。それによると、季節や年がちがっても似たルートを使い、繁殖地にも越冬地にも忠実でした。途中の休む場所も、何度も使っていました[6]。追跡は2羽だけなので、「どのサシバも同じ」とはいえません。
春の北上は、奄美大島で2024年に北部で11羽、2025年2月に宇検村で11羽へGPSタグをつけた調査が追っています。2025年3月、先頭の個体は21日ごろ奄美大島を出て、種子島を経由して25日に四国、27日に大阪・奈良の県境付近へ着きました。別の個体は23日に出発し、28日に京都府へ着いています[7]。日付から数えると、先頭の個体は島を出てからおよそ6日で、大阪・奈良の県境付近まで来たことになります。
これは春の話で、秋のルートとは別に扱うべきものです。海を渡って日本へ帰ってくる鳥が、数日で関西まで来ていることは分かります。
成鳥2羽を2シーズン以上、衛星追跡した研究(Shiu ら、2006)では、季節や年がちがっても似たルートを使い、繁殖地と越冬地にも高い忠実性を示した。中継地も何度も使い、長く滞在していた[6]。この追跡対象は2羽にすぎない。したがって、サシバ全体に共通する性質だと一般化するのは無理で、ルートへの忠実さを示す一例と見るのが妥当である。
春の北上は、奄美大島でGPSタグをつけた調査がたどっている。2024年に北部で11羽、2025年2月24日〜3月2日に宇検村で11羽へ装着した。2025年3月、先頭の個体は21日ごろ島を出て種子島を経由し、25日に四国、27日に大阪・奈良の県境付近へ着いた。別の個体は23日に出発し、28日に京都府へ着いた[7]。出発から到着までの日数は、先頭の個体で約6日、別の個体で約5日と、記事の日付から計算できる。
これは春の北上で、本記事で扱った秋の南下とは別である。ただし、2つを並べると、島を伝って海を渡る秋と、数日で本州まで達する春で、サシバが季節ごとに異なる条件で飛んでいることが読み取れる。
5. まだ わからない ことは?
5. まだ全体が分かっていないことと、数え続ける理由
5. 解明の途中:越冬地での暮らしと、数の変化
冬を すごす ばしょでの くらしは、まだ わからない ことが 多いと いわれます[8]。2025ねんの 秋には、サシバの ぜんぶの 鳥の みちを しらべて 見せようと する とりくみも ありました[8]。
みやこじまに 来る かずは、40年まえの 5ぶんの 1ぐらいに へった と、しぜんを まもる NACS-Jと いう 会が しょうかい して います[3]。すこし さびしい 話ですが、だからこそ かぞえる 人や しらべる 人が いるのです。
越冬地でのサシバの暮らしには、まだ分かっていないことが多いといわれます。2025年秋の全個体のルートを公開する調査プロジェクトもあり、ルートの全体像は解明の途中です[8]。
宮古島に来る数は、日本自然保護協会が、40年前の約5分の1まで減ったと紹介しています[3]。これは数え方がちがう調査どうしの比較なので、おおまかな目安です。それでも、毎年10月に空を見上げて数える調査が半世紀以上続いていることは、道すじを知るための土台になっています[1]。
越冬地での暮らしには、分かっていないことが多い。また、2025年秋の全個体のルートを公開する調査プロジェクトがあり、ルートの全体像はまだ解明の途中にある。個体別のGPS追跡で、秋の日本からフィリピン、インドネシアまでの全行程が明らかになったとはまだいえない。そのため、二手のルートの説明は「とされる」にとどめた[8][2]。
宮古島に来る数は、日本自然保護協会が、40年前の約5分の1に減ったと紹介している[3]。ただし数え方がちがう調査どうしの比較であり、減少の度合いは目安にとどまる。その一方で、同じ地点で同じ時期、毎年同じ時間帯に数える調査が長く続いているため、年ごとの変化を見る土台ができている[1]。
6. ちずで みちを なぞって みよう
6. 地図で道すじをなぞり、一次の資料を開く
6. 地図で距離を測り、原典に当たる
きょう できる こと
ちずちょうを ひらいて、あいちけんの いらごみさき、かごしまけんの さたみさき、みやこじま、たいわん、フィリピンの 北の ばたんじまを さがします。ひもを その じゅんに のせて ならべ、ひもの ながさを ものさしで はかります。ちずの 「1cmは 何km」と いう きまりを 見て、ほんとうの きょりに なおして みましょう。
よんで みる
おきなわけんの ホームページに、サシバを かぞえた ちょうさの ページが あります。おとなの 人と いっしょに 見て みましょう[1]。
地図でためす
地図帳を開き、伊良湖岬、佐多岬、宮古島、台湾、フィリピン北部のバタン島を探します。ひもをその順にのせてなぞり、ひもの長さを定規で測って、地図の縮尺で実際の距離に直してみてください。島と島の間のひもが、本文の「最大300km」と比べて長いか短いかも見られます。
資料を読むなら
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 沖縄県「伊良部島におけるサシバ飛来数調査」. https://www.pref.okinawa.lg.jp/kurashikankyo/shizenseibutsu/1018702/1004861.html (飛来数調査の条件と2025年度の結果)
- 宮古島キッズネット「サシバ」. https://miyakojima-kidsnet.org/ID-sashiba.html (集合地、二手に分かれるルート、飛び方の平均値)
- 日本自然保護協会 国際サシバサミット. https://www.nacsj.or.jp/GFB-SUMMIT/ (大きさ、秋の渡りの時期、数の変化)
- 奄美新聞「「サシバ」渡りの季節」(2024). https://amamishimbun.co.jp/2024/09/29/52439/ (奄美大島を通る時期の談話)
- Nourani, E. et al. 2018. PMC5882689. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5882689 (島づたいの海上ルートと追い風)
- Shiu, H.-J. et al. 2006. Ornithological Science 5(2). https://www.jstage.jst.go.jp/article/osj/5/2/5_2_151/_article/-char/ja/ (ルートへの忠実さ)
- 奄美新聞「GPSサシバ移動始まる」(2025). https://amamishimbun.co.jp/2025/04/03/55444/ (奄美大島からの春の北上)
- サシバの渡りルート全容解明プロジェクト. https://gfb-migration-project.com (越冬地と調査の現状)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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