1. ハムも ベーコンも ソーセージも、おなじ ぶたの にくなの?
1. 朝食の皿の三つは、何を基準に分けられているのか
1. 三つの加工品は、どの基準で分けられるのか
あさごはんの おさらに、ハムと、ベーコンと、ウインナーが のっています。どれも ぶたの にくで つくった ものが おおいです。
わかれめは、まず にくの かたちです。ハムは、にくを かたまりの まま つかいます。ソーセージは、にくを ひきにくに して、ちょうなどの ふくろに つめます。ベーコンは、ぶたの ばらにくが もとに なります。
この ほかに、つかう ぶぶんと、けむりで いぶすかどうかも めやすに なります。つくる 人たちは、しおに つけたり、けむりや ねつを かけたり して、日もちと あじを つくって います。
では、ハムの なまえは、どこから きたのでしょう。
朝食の皿に、ハムエッグ、ベーコン、ウインナーが並んでいます。見た目も味もちがいますが、どれも豚肉から作られたものが多い加工品です。
分かれ目の一つめは、肉の形です。大山ハムの説明では、ハムは原料を肉塊のまま加工する商品で、ソーセージはひき肉を香辛料や調味料と混ぜ、ケーシングなどに詰めてスモークやボイルをした商品です。ベーコンは、豚のばら肉が原料である点でちがいます[1]。
二つめは使う部位の目安、三つめはくん煙をするかどうかです。厚生労働省の「ものづくりの技」は、三つに共通することとして、原料肉を塩漬けし、乾燥・くん煙・加熱などを組み合わせて仕上げる食品としています。分類は、原料肉の部位や製造方法によるとされています[4]。
まず「ハム」から見ていきます。この言葉は、もともと何を指していたのでしょうか。
朝食に並ぶハム、ベーコン、ウインナーは、いずれも豚肉を原料にすることが多いが、名前は別々である。大山ハムの説明では、ハムは原料を肉塊のまま加工する商品、ソーセージはひき肉を香辛料や調味料と混ぜてケーシングなどに詰め、スモークやボイルをした商品とされ、ベーコンは豚のばら肉が原料である点が異なる[1]。ここに、肉の形、部位、くん煙という三つの軸が見える。
ただし、三つに共通点もある。厚生労働省の「ものづくりの技」は、ハム・ソーセージ・ベーコンを、原料肉を塩せき・配合した後、ケーシングへの充てんの有無にかかわらず、乾燥・くん煙・加熱などを単独または組み合わせて行い、包装などをした食品と説明する。その分類は、原料肉の部位や製造方法によるとされる[4]。つまり、使う肉の形や部位、加工のしかたで名前が分かれる。
全国食肉事業協同組合連合会の資料を参照した整理でも、ハムは原料肉のブロックを塩せきして加熱し、ソーセージは肉をひき肉にしてケーシングに詰め、ベーコンは豚肉を塩せきしてくん煙するものとされている[5]。三つの軸のうち、まず「ハム」という名前の由来から見ていく。
2. 「ハム」は、むかし ぶたの「もも」の なまえだった?
2. 「ハム」はもともと豚のももを指す言葉だった
2. ハムは部位の名前だった:ももとロースとボンレス
えいごの ham(ハム)は、ふるい えいごの hamm(ハム)に さかのぼります。ひざの うらがわや、ももを あらわす ことばでした[6]。
いまの ハムも、おもに ぶたの もも肉と ロース肉で つくられます[2]。ほねを ぬいた もも肉で つくると ボンレスハム、ロース肉で つくると ロースハムです。ことばの はじまりと、つかう ぶぶんが つながって います。
ハムは、にくを かたまりの まま しおに つけて、ねつを とおします。ひきにくに しないので、切ると、にくの かたまりの 切り口が 見えます。
ひきにくに すると、どうなるのでしょう。
英語の ham は、古英語の hamm(ひざの裏側やもも)にさかのぼるとされます[6]。ハムは最初、加工品ではなく部位の名前でした。
この由来は、今のハムの原料とも重なります。ニッポンハムの説明では、ハムは主にモモ肉とロース肉で作られます。骨を抜いたモモ肉を使ったものがボンレスハム、ロース肉を使ったものがロースハムです[2]。
ハムの特徴は、肉を塊のまま扱うことです。ひき肉にしないので、切り口には肉のかたまりの断面が現れます。形が分かれ目になるのは、このためです。
では、同じ豚肉をひき肉にして詰めると、何と呼ばれるのでしょうか。
ham の語源は、ひざの内側や後ろ側、もも(hamm)を意味する古英語で、さらにさかのぼると「脚」を意味する印欧祖語の語根につながる[6]。これは語源辞典的な説明で、日本のハムの規格とは別の話だが、ハムが本来「もも」の名前だったという点は、現在の原料と対応する。
ニッポンハムの説明では、ハムは主にモモ肉とロース肉でつくられ、骨を抜いたモモ肉がボンレスハム、ロース肉がロースハムである[2]。もも肉が元の意味で、そこにロース肉の製品が加わった、という関係が読み取れる。ただし、現在の商品名の由来が、すべて語源から説明できるわけではない。
ハムの特徴は、原料を肉塊のまま塩漬けして加熱する点である[1]。ひき肉にしないため、形と食感が肉の組織を保つ。では、肉をいったんほぐして、味を混ぜてから詰めるとどうなるか。次の章で見る。
3. ひきにくに して つめると、ソーセージに なるの?
3. ひき肉にして詰めると、ソーセージになる
3. 肉をひき肉にして詰める:ソーセージと「ウインナー」の分け方
ソーセージは、にくを ひきにくに して、こうしんりょうや ちょうみりょうを まぜます。それを ちょうなどの ふくろ(ケーシング)に つめて、けむりを かけたり、ゆでたり します[1]。
つかう ぶぶんは、かたの にくが おおいと いわれます[2]。ただし、かならず かたの にくと きまって いる わけでは ありません。「おおい」という めやすです。
ウインナーは、ひつじの ちょうを つかった ものです。ほそいから ウインナー、と いうわけでは ありません。ひつじの ちょうを つかえば、ふとくなっても、ウインナーソーセージと ひょうじします[3]。
では、かたまりの まま けむりを かけたら、なんでしょう。
ソーセージは、ひき肉を香辛料や調味料と混ぜ、ケーシングなどに詰めて、スモークやボイルをした商品です[1]。肉をいったん細かくするので、混ぜた味が全体に行きわたります。
使う部位は、肩肉が多いと説明されています[2]。ただし「多い」という目安で、肩肉でなければソーセージと呼べないわけではありません。
さらに細かい名前もあります。食肉科学技術研究所の解説では、ウインナーソーセージは羊腸を使ったものです。羊腸が太くて20mmを超えても、ウインナーソーセージと表示します[3]。細いからウインナー、という覚え方は目安にすぎず、腸の種類のほうが優先される場合があります。
ここまでの二つは、肉の形で分かれました。では、かたまりのままなのにハムと呼ばれないものは何でしょうか。
ソーセージは、ひき肉を香辛料や調味料と混ぜ、ケーシングなどに詰めて、スモークやボイルをした商品である[1]。ひき肉にすることで、混ぜた味や塩分を全体に均一にしやすくなる、と考えられるが、これは製法の性質からの推測であり、資料が直接そう述べているわけではない。
使う部位について、ニッポンハムは肩肉が使われることが多いとしている[2]。「多い」であって固定ではなく、ソーセージの定義を部位で決めているわけではない。
ウインナーとフランクフルトの区別にも注意がいる。食肉科学技術研究所の解説では、ウインナーソーセージは羊腸を使ったものとされ、羊腸の太さが20mmを超えてもウインナーソーセージと表示する[3]。細さが決め手に見えて、実際には使う腸の種類が優先される場合がある。
ハムは肉塊、ソーセージはひき肉と、ここまでは形で説明できた。では、ハムと同じく塊のまま使いながら、別の名前をもらうものは何か。
4. かたまりの まま けむりで いぶすと、ベーコンに なるの?
4. ベーコンはばら肉を塩漬けにして、煙でいぶしたもの
4. ベーコンはどんな肉から作られるのか:部位とくん煙の条件
ベーコンも、にくを かたまりの まま つかいます。ところが、ハムとは よばれません。ベーコンの もとは、おもに ぶたの ばらにくだからです[2]。
きまりでは、ベーコンは「ぶたの ばらにくを ととのえて、しおに つけて、けむりで いぶしたもの」です[3]。きまりでいうベーコンは、むしたり、ゆでたりしたものでは ありません。
ことばも おもしろい ところです。えいごの bacon(ベーコン)は、むかし、ぶたの せなかや わきばらの にくを あらわしました。ふるい フランスの ことばでは、ハムや あぶらみの 切れも さしました[7]。むかしは、ハムと ベーコンの ことばの さかいが、いまほど はっきりしていなかったのかもしれません。
では、お店の「なまハム」は、ハムの なかまなのでしょうか。
ベーコンも、肉をかたまりのまま扱います。それでもハムではなくベーコンと呼ぶのは、部位とくん煙で決まるからです。ニッポンハムの説明では、ベーコンは主にバラ肉が原料です[2]。
食肉科学技術研究所の解説によれば、規格上のベーコンは「豚ばら肉を整形し、塩漬し、及びくん煙したもの」で、発色剤の使用が必須です。蒸煮や湯煮をしたものはベーコンと言えません。ロースベーコンやショルダーベーコンは原料が異なるため、別の名称です[3]。
言葉の面でも、ベーコンとハムは近い関係にありました。Wiktionary によると、英語の bacon は中英語の bacoun(豚の背や脇腹の肉)から来ています。古フランス語などでは、ハムや脂身の切れも指しました[7]。昔の言葉では、二つの境目が今ほど明確でなかった可能性があります。
こうして三つの名前が見えてきました。では、店で見かける「生ハム」は、このうちのどれなのでしょうか。
ベーコンもハムと同じく肉塊を扱うが、部位がちがう。ニッポンハムの説明では、ベーコンは主にバラ肉を原料とする[2]。さらに食肉科学技術研究所の解説によれば、規格上のベーコンは「豚ばら肉を整形し、塩漬し、及びくん煙したもの」であり、発色剤の使用が必須で、蒸煮・湯煮をしたものはベーコンと言えない[3]。部位に加えて、くん煙するという工程が定義に入っている。
ロースベーコンやショルダーベーコンは、原料が豚ばら肉ではないため、別名称になる[3]。「ベーコン」という言葉が名札として使われるには、原料の条件が先に立つわけである。
言葉の来歴を見ると、境目は昔から固定されていたわけではない。Wiktionary によれば、英語 bacon は中英語の bacoun(豚の背や脇腹の肉)に由来し、アングロ・ノルマン語や古フランス語ではハムや脂身の切れも指した[7]。部位の名前が先にあり、加工品の名前が後から整理されたと読めるが、これは語源辞典の記述からの推測であり、規格の成立過程を直接示すものではない。
ここまでで、肉の形と部位と、くん煙で三つが分かれることが分かった。では、規格の外側に置かれている言葉があるのか。
5. 「なまハム」は、ふつうの ハムと おなじ きまりなの?
5. 「生ハム」は、規格のハムとは別枠だった
5. 「生ハム」には法律上の定義がない:ロースハムとのちがい
おみせで 見かける「なまハム」は、ちょっと とくべつです。にくの けんきゅうを する ところの せつめいでは、「生ハム」には ほうりつ上の ていぎが ありません[3]。
ふつうの ボンレスハムや ロースハムは、ケーシングなどで つつむと きめられて います。ロース肉を しおに つけて、あみに のせて ねつを とおしただけの ものは、ロースハムと なのれません。
「なまハム」は、つつんで いなくても なのれます[3]。おなじ「ハム」でも、きまりの そとと うちが あるのです。
ここまでの ちがいを、台所で 見つけて みましょう。
食肉科学技術研究所の解説では、「生ハム」には法律上の定義がありません。一方、ボンレスハム・ロースハム・ショルダーハムは、ケーシングなどで包装することが規定されています。豚のロース肉を塩漬けして網に載せ、加熱しただけの製品は、ロースハムと名乗れません[3]。
「生ハム」は、包装がなくても名乗れます。つまり「ハム」という二文字は同じでも、規格に決められたハムと、法律上の定義がない「生ハム」は、別の枠で扱われています。
この記事でいう「別枠」は、生ハムの作り方や味の優劣を言うものではありません。名前を使うときの決まりの有無を指しています。
三つの違いが見えたところで、家にある食品で確かめてみましょう。
「ハム」と名のつく食品のなかに、規格上のハムとは別枠のものがある。食肉科学技術研究所の解説は、「生ハム」には法律上の定義がないと述べる。これに対し、ボンレスハム・ロースハム・ショルダーハムは、ケーシング等で包装することが規定されている。豚ロース肉を塩漬けして網に載せ、加熱しただけの製品は、ロースハムと名乗れない[3]。
一方、「生ハム」は包装がなくても名乗れる。したがって、同じ「ハム」の二文字でも、規格の言葉としてのハムと、定義のない呼び名としての生ハムとでは、名前の背後にある決まりの有無がちがう。ただし、定義がないことは、生ハムの品質や作り方を直接評価するものではなく、あくまで名称の使い方に関する話である。
名前に関わる決まりは、国の資料や専門機関の解説で一次的に確かめられる。
では、家にある食品のパッケージから、ここまでの手がかりを実際に見つけることはできるだろうか。
6. だいどころで、パッケージと 切り口を 見くらべてみよう
6. 台所のパッケージと切り口で、名前の決まり方を探す
6. 手がかりを現物で確かめる:包装表示と切り口の観察
おうちの 人と いっしょに、ハム、ベーコン、ソーセージの パッケージを 見てみましょう。「めいしょう」や「げんざいりょうめい」の ところに、なまえが かいて あります。
つぎに、おうちの 人に 切って もらった 切り口を 見くらべます。ハムは にくの かたまりが 見え、ソーセージは ひきにくを まとめた ような 面に なっているはずです。ほうちょうは 大人に まかせましょう。
ベーコンは、ばらにくらしい しまもようが 見えるでしょうか。ロースベーコンと 書いた ものが あれば、ふつうの ベーコンと くらべてみましょう。
もっと 知りたく なったら、くにの「ものづくりの わざ」という ページを のぞいて みてください。
冷蔵庫に、ハム、ベーコン、ウインナーがあれば、パッケージの「名称」と「原材料名」を見比べてみましょう。ロースハムやロースベーコンなど、部位の名前が付いたものが見つかるかもしれません。
切り口も手がかりの一つです。ハムは肉のかたまりを切った面、ソーセージはひき肉を練って固めた面になっているはずです。ベーコンは、ばら肉らしい赤身と脂の層が見えるでしょうか。包丁は大人にお願いしてください。
「生ハム」のパッケージがあれば、名称の欄にどう書かれているか、規格上のハムとは別の扱いの食品か、見てみてください。
もっと詳しく知りたくなったら、厚生労働省「ものづくりの技」や食肉科学技術研究所の解説に、定義や製造方法が書かれています。
三つの手がかり(肉の形・部位・くん煙)は、家のパッケージで確かめられる。冷蔵庫にあるハム、ベーコン、ウインナーの名称欄と原材料名を読み、ロースハムやロースベーコンのように、部位名が付いた製品があるかを探す。
切り口の観察もできる。ハムは肉塊の断面、ソーセージはひき肉を練って固めた面、ベーコンはばら肉に特徴的な赤身と脂の層が見えるはずである。包丁を使うときは大人に頼む。観察結果が三つの定義の説明と一致するかを見ることで、資料の言葉と実物をつなげられる。
「生ハム」のパッケージが見つかれば、名称の欄にどう書かれているか、規格上のハムとは別の扱いの食品かを見てみる。
資料としては、厚生労働省「ものづくりの技」(ハム・ソーセージ・ベーコン製造)と、食肉科学技術研究所「ハム・ソーセージの定義について」(2015)が、定義と製造の考え方を示している。細かい数値や区分は、条文や規格の原文に当たると確実である。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の参照番号は、下の資料の番号に対応しています。メーカー資料は製品の説明、研究所と省庁の資料は定義と規格の説明、辞書は語源の説明に使いました。
- 大山ハム「よくあるご質問」 https://www.daisenham.co.jp/7/ (ハム・ソーセージ・ベーコンの原料と製法の説明)
- ニッポンハム「よくあるご質問」 https://faq-nipponham.dga.jp/faq_detail.html?id=96 (使う部位の目安)
- 食肉科学技術研究所「ハム・ソーセージの定義について」(2015) https://www.shokunikukaken.jp/1374/ (ベーコン・ハム・生ハム・ウインナーの規格上の扱い)
- 厚生労働省「ものづくりの技」ハム・ソーセージ・ベーコン製造 https://waza.mhlw.go.jp/shokushu/list/ham.html (三つに共通する製造の考え方)
- 飲食店ドットコム「ハム・ソーセージ・ベーコンの違い」 https://www.inshokuten.com/foodist/article/7037/ (三つの違いの整理)
- Wiktionary "ham" https://en.wiktionary.org/wiki/ham (hamの語源)
- Wiktionary "bacon" https://en.wiktionary.org/wiki/bacon (baconの語源)
なおした ところ
更新履歴
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