1. ソーセージの なまえに、しおが はいって いるの?
1. 「ソーセージ」という名前の中に、作り方のヒントがある
1. sausageの語源は「塩漬けにした」── 名前に残る製法
ソーセージの なまえには、つくりかたの ヒントが かくれて います。えいごの「sausage」の もとを たどると、ラテン語の「しおで あじを つけた」「しおづけに した」という ことばに つながります[1][2]。
なまえの なかに、しおが はいって いるのです。
つくりかたの ながれは、こうです。まず、にくに しおを して、あじを つけます。つぎに、それを かわに つめます。そのあと、けむりで いぶしたり、あたためたり、かわかしたり します。ただし、ぜんぶの ソーセージが ぜんぶの ステップを とおる わけでは ありません[4]。
では、どうして しおが そんなに だいじなのでしょう。
英語のsausageをさかのぼると、古いフランス語、俗ラテン語を経て、ラテン語の「塩で味をつけた」「塩漬けにした」という意味の言葉にたどりつきます[1]。日本語版のWikipediaも、ラテン語で「塩漬けにした」を意味する語が由来だと述べています[2]。ソーセージは、名前の中に「塩」がある食べ物です。
では、作り方はどうなっているのでしょうか。県の認証基準にある定義では、原料の肉を塩漬けにするか、しないでひき肉にして、調味料と香辛料で味つけし、練り合わせてケーシング(皮になるもの)に詰め、燻煙してもしなくても、加熱または乾燥したものとされています[3]。
工業的には、整形、塩漬け、味つけ、充填、乾燥・燻煙、冷却、包装の順に進むと説明されていますが、すべての製品が全部の工程を通るわけではありません[4]。肉に塩をなじませる工程が、流れの最初のほうにあるのが目を引きます。それは、塩にただ味をつける以上の役目があるからではないか。次の章で、その手がかりを探します。
英語のsausageは、古フランス語のsaussiche、俗ラテン語のsalsicaを経て、ラテン語のsalsicus(塩で味つけした)にさかのぼり、さらにsalsus(塩漬けにした)に行きつく[1]。日本語版Wikipediaも、中世ラテン語のsalsiciaを経てsalsusに由来すると記す[2]。この二つは別々の資料なので、「塩」が語源に入っていること自体は、かなり確かだと言ってよい。
製法の定義を見ると、この語源が理にかなっていることが分かる。県の認証基準が引く定義では、ソーセージとは、原料の畜肉を塩漬けにするかどうかを問わずひき肉にし、調味料と香辛料で味つけして練り合わせ、ケーシング等に充てんしたのち、燻煙するかどうかを問わず加熱または乾燥したものである[3]。注意したいのは、「塩漬けにするか、しないか」の両方が定義に含まれる点で、塩漬けは必須条件ではない。
工程の側から見ると、ハム・ソーセージ製造は、原料肉の塩せき・配合のあと、ケーシング等に充てんし(あるいは充てんせず)、乾燥・燻煙・加熱を単独または組み合わせて行い、包装する流れで説明される。工業的には整形、塩せき、味付け、充填、乾燥燻煙、冷却、包装の順だが、製品ごとに順序も有無も異なり、全工程を必ず通るわけではない[4]。では、塩は味つけのためだけの材料なのか。肉をまとめる働きがあるのではないか。次の章で、実験の数字から確かめる。
2. しおを いれると、ばらばらの にくが くっつくのは どうして?
2. 挽き肉に塩を混ぜると、肉どうしがまとまりやすくなる理由
2. 塩2%で保水性と溶け出す筋たんぱく質が増える ── 結びつきを助ける理由の一つ
ひきにくに しおを いれて こねると、ばらばらの にくが、ひとかたまりに なりやすく なります。これには わけが あると かんがえられて います。
ひろしまだいがくの けんきゅうでは、ぶたにくに しおを 2%くわえて、しらべました。100グラムの にくなら、しおは 2グラムです。すると、にくが みずを ためこむ ちからが ふえました。にくの たんぱくしつが、みずに とけたように ひろがる りょうも、ふえました[5]。
たんぱくしつは、にくを つくって いる たいせつな ざいりょうです。しおが それを ひきだして、にくどうしが つながりやすく なる。これが、しおが ソーセージで はたらく りゆうの ひとつと されて います。
ただし これは、ぶたにくで しらべた けんきゅうです。ソーセージ ぜんぶに かならず あてはまる、という ことでは ありません。
では、ソーセージの あかい いろは、どこから くるのでしょう。
ばらばらの挽き肉を、なぜ塩といっしょに練るのでしょうか。広島大学の研究に、手がかりがあります。豚肉に食塩を2%加えて調べたところ、肉が水分を保つ力と、肉の中に溶け出すように広がる筋肉のたんぱく質(ミオシンなど)の量が、塩を入れない場合より大きく増えたと報告されています[5]。
2%というのは、肉100gなら塩2gです。たんぱく質が肉の中に広がりやすくなれば、肉の粒どうしがつながりやすくなる、と考えられます。このことが、塩がソーセージの結びつきを助ける理由の一つだと見られています。
ただし、この研究は豚肉に食塩を加えた実験の結果です。すべてのソーセージで同じことが同じ程度に起きる、という意味ではありません。それでも、名前の由来になった「塩」が、味つけだけでなく、肉をまとめる働きにも関わっていそうだ、という手がかりにはなります。
塩の役目がもう一つあるなら、ソーセージのあの色にも、関わりがあるのかもしれません。次の章では、色の話に進みます。
挽き肉をただ詰めただけでは、粒がばらばらで、切ると崩れる。そこで製造では塩を加えて練るが、塩は味つけだけの材料ではなさそうだ。その根拠の一つが、広島大学水畜産学部の研究である。
この研究では、豚肉に食塩(NaCl)を2%加えると、肉の保水性と、肉の中でゾル状(液に分散した状態)になる筋たんぱく質のうち、全たんぱく質・ミオシン・アクトミオシンが、無添加のものに比べて著しく増加した[5]。ミオシンやアクトミオシンは、筋肉を構成するたんぱく質の名前である。たんぱく質が溶け出せば、肉の粒どうしがつながりやすくなると考えられるので、塩は結びつきを助ける理由の一つになる。
ただし、結論を広げすぎてはいけない。実験は豚肉に食塩2%という条件のものであり、ソーセージ全般で必ず同じ数字になるとは言えない。さらに、論文要旨が直接示すのは保水性とたんぱく質の量の増加であって、「粘りが強くなった」といった見た目の変化ではない。塩が結着に関わる、という言い方は、この範囲を踏まえた推論である。
とはいえ、塩が語源にも製法にも出てくる理由が、ここで少し見えてくる。味、保水、結着という複数の役目を、塩が一つで担っているらしい。では、ソーセージのもう一つの特徴である、あの赤い色には、どんな仕組みが関わっているのか。
3. ソーセージの あかい いろは、どうやって たもつの?
3. 肉の赤色は空気にふれると暗くなる ── 亜硝酸塩が使われてきた理由
3. 血色素の鉄の酸化と亜硝酸塩 ── 空気に触れた肉が暗くなる仕組みと、色を保つ工夫
おいしそうな ソーセージは、きれいな あかい いろを して います。にくは、くうきに ふれると、あかい いろが くらく かわって しまいます。にくの あかい いろの もとには、てつが ふくまれて いて、それが くうきで かわるからです[6]。
そこで、むかしから「あしょうさんえん」という ざいりょうが、あざやかな あかい いろを たもつ ために つかわれて きました[6]。あさぶだいがくの じっけんでは、ひきにくに たった 0.003%の あしょうさんえんを まぜて、いろの でかたを しらべて います[7]。100グラムの にくなら、0.003グラムです。とても すこしです。
肉は、空気に触れると、赤い色が暗い赤に変わります。肉の赤い色のもとになる血色素に含まれる鉄が、空気で酸化されるためです。この変化を抑えて、安定した赤い色を肉製品に持たせるために、亜硝酸塩が古くから使われてきました[6]。
東京家政大学の1987年の報告は、市販のハム・ソーセージ・ベーコンの亜硝酸を調べたもので、色のために使われてきた材料として亜硝酸塩を紹介しています[6]。
麻布大学の研究要旨にも、亜硝酸塩が加熱した食肉製品の肉の色を出すことが前提として出てきます。そこでは、豚のももの挽き肉に食塩2%と亜硝酸塩30ppmを混ぜた「モデルソーセージ」を、75℃で40分加熱して、色の出方を調べています[7]。ppmは100万分の1という割合の単位で、30ppmは0.003%、肉100gなら0.003gというごくわずかな量です。
この数字は、特定の研究の実験条件です。現在の使用量の決まりとは別のものなので、混同しないでください。
こうして、塩で味をつけ、肉をまとめ、色を整えたソーセージの種は、できあがりました。次の問いは、それをどうやって包むのか、です。
ソーセージの赤い色は、ただ肉が赤いからではない。生の肉は、空気に触れると、血色素の中のFe2+が酸化されてFe3+になり、暗赤色になる。そのため亜硝酸塩は、古くから安定した赤い色を肉製品に持たせるために使われてきた[6]。
では、どれだけ使うのか。麻布大学の研究要旨では、豚モモ挽肉にNaCl 2%と亜硝酸塩30ppmを混ぜたモデルソーセージを75℃で40分加熱して、色の出方(a*値と発色率)を評価している[7]。30ppmは0.003%で、肉1kgあたり0.03g、100kgでも3gという少なさである。これは発色の促進を調べた実験で、一般則ではなく、条件の紹介としてだけ読むのがよい。
限界も押さえておく。この数字は特定の研究の実験条件であり、現行の使用基準ではない。「ピンク色」は加熱後の見え方の言い方で、報告の原文は「赤色」である。色の仕組みが分かったところで、次は、できあがった肉の生地を包む「皮」に目を向ける。
4. ソーセージの かわは、なにで できて いるの?
4. 皮になるのは動物の腸 ── 若い羊の腸と、育った羊の腸
4. 天然ケーシングはコラーゲンのシート ── ラムとシープで硬さが違う
ソーセージの かわを「ケーシング」と いいます。むかしからの ケーシングは、どうぶつの ちょうです。ちょうの おもな ざいりょうは、コラーゲンという たんぱくしつで、うすい シートが なんまいも かさなって できて います[8]。
うすい かみが なんまいも かさなった ような ものです。ただし ほんとうは、かみでは なく、たんぱくしつの せんいの シートです。
おなじ ひつじの ちょうでも、わかい ひつじ(ラム)の ちょうは やわらかく、おおきく そだった ひつじ(シープ)の ちょうは、はっきり かたいと いう しらべが あります。そだつほど、かたく なります[8]。
ケーシングには、コラーゲンや セルロース、プラスチックで つくった ものも あります[2]。
ところで、この「かわの しゅるい」が、ウインナーと フランクフルトの なまえに かかわって きます。
ソーセージの皮にあたるものを、ケーシングといいます。伝統的には動物の腸が使われ、コラーゲン、セルロース、合成樹脂でできたケーシングも使われます[2]。
新潟大学の博士論文の要旨によると、天然ケーシングの主な成分はコラーゲンで、何層ものコラーゲン線維のシートからできています。しかも同じ羊でも、ラム(若い羊)よりシープ(成長した羊)の腸のほうが明らかに硬く、家畜が育つほど硬くなったそうです。その硬さは、コラーゲンが熱や構造の面で安定しやすくなるためだと説明されています[8]。
同じ「羊腸」という名前でも、若いか成長したかで、手ざわりや歯ごたえが変わるわけです。この違いが、ソーセージの「パリッ」とした食感にどうつながるかは、資料の範囲では分かりません。
ここまでで、塩、色、皮の順に見てきました。皮の種類がソーセージの名前に関わる、というところが、このメモの一番の見せ場です。次の章で、いよいよその理由を見ます。
ケーシングは、伝統的には動物の腸で、コラーゲン、セルロース、合成樹脂製のものも使われる[2]。天然のものについて、新潟大学の博士論文の要旨は、主成分がコラーゲンで、幾層ものコラーゲン線維のシートから構築されていたと述べる[8]。コラーゲンはたんぱく質の一種である。
同じ要旨には、ラム(子羊)のケーシングに比べてシープ(成長した羊)のケーシングが明らかに硬く、家畜の成長に伴って硬くなる、とある。硬さの上昇は、コラーゲンの熱的・構造的な安定性が高まることによる、と説明されている[8]。つまり、同じ「羊腸」でも、材料の年齢によって性質が違う。
つまり、皮の素材は一つではなく、天然の腸でも材料の年齢で性質が変わる。ウインナーのJAS定義は、「羊腸」だけでなく「太さ20mm未満」でも決まる。定義は腸の種類だけでなく、太さという測れる数字も区別に使っている。その中身は、次の章で規格そのものを読んで確かめる。
5. ウインナーと フランクフルトは、なにが ちがうの?
5. 規格では、ウインナーとフランクフルトは腸の種類と太さで分けられる
5. JASの3区分 ── ウインナー・フランクフルト・ボロニアの境目は20mmと36mm
にほんの きまり(JAS)の ていぎを ひいた けんの しりょうには、こう あります[3]。
ウインナーは、ひつじの ちょうを つかった もの、または ふとさが 2センチ みまんの もの。フランクフルトは、ぶたの ちょうを つかった もの、または ふとさが 2センチ いじょう 3.6センチ みまんの もの。ボロニアは、うしの ちょうを つかった もの、または ふとさが 3.6センチ いじょうの ものです。
つまり、ちょうの しゅるいや ふとさが、なまえを わける めやすに なって います。ちょうど 3.6センチは、ボロニアです。
のうりんすいさんしょうの おしらせにも、ボロニア、フランクフルト、ウインナーの 3つが、なまえとして きめられて います[10]。ぶたにくと ぶたの あぶらだけを つかった ものは、「ポークソーセージ」と ひょうじできます。
こんど スーパーで、ソーセージの ふくろを みるのが たのしみに なります。
県の認証基準が引くJASの定義では、三つの区分は次のようになっています[3]。ウインナーは、羊腸を使ったもの、または製品の太さが20mm未満のもの。フランクフルトは、豚腸を使ったもの、または20mm以上36mm未満のもの。ボロニアは、牛腸を使ったもの、または36mm以上のものです。
つまり、腸の種類や太さが、区分の目安になっています。境目の数字は「未満」と「以上」で決まっているので、ちょうど36mmのものはボロニアです。
農林水産省の告示にも、ボロニア、フランクフルト、ウインナーの3区分が、名称として定められています。豚肉と豚の脂肪層だけを使ったものは、「ポークソーセージ」と表示できます[10]。ただし、この告示は「熟成」ソーセージ類の規格についての文書で、太さの数値は県の資料のほうで確かめました。
ウインナーとフランクフルトの区別が、肉の種類ではなく腸と太さを中心にしている、というのが、このメモのいちばん意外なところでしょう。名前に気を取られず、規格の言葉を見ると、ソーセージの区別は、手で触れて測れるものを基準にしているとわかります。
では、こんなふうに腸に詰める食べ物は、いつごろからあるのでしょうか。最後の章の前に、昔の話を見てみます。
規格の読み方を、県の認証基準が引用するJAS定義で確かめる[3]。ウインナーソーセージは、羊腸を使用したもの、または製品の太さが20mm未満のもの。フランクフルトは、豚腸を使用したもの、または20mm以上36mm未満のもの。ボロニアは、牛腸を使用したもの、または36mm以上のものである。
この表現には、読むときの注意が三つある。第一に、境目は「未満」と「以上」で決まるので、36mmちょうどはボロニアになる。第二に、これはJAS本文ではなく県の基準による引用である。第三に、文面だけ読むと、豚腸に詰めた細い製品は、「フランクフルト(豚腸)」と「ウインナー(20mm未満)」の両方の条件に当てはまりそうに見える。実際の表示の運用でどう整理されるかは、この資料だけでは分からない。
農林水産省の告示にも、熟成ボロニアソーセージ、熟成フランクフルトソーセージ、熟成ウインナーソーセージの規格が、名称として定められている[10]。この文書は「熟成」ソーセージ類の規格なので、太さの数値は県の資料側で確認した。同じ文書には、豚肉と豚の脂肪層だけを使うものは「ポークソーセージ」と表示できる、という趣旨の定めもある。
ここで、前の章までとつながる。皮の素材が何であれ、太さの数値は、製品を実際に測れば分かる。言いかえれば、規格は「中身の配合」よりも、外から確かめやすいもの(腸の種類、太さ)で区別する形になっている。ただし、この設計の意図まで、資料から言い切れるわけではない。では、腸に肉を詰める食べ物は、いつごろから存在したのか。
6. ソーセージに にた たべものは、いつごろから あるの?
6. 山羊の胃袋の賞品から、日本の「腸詰」まで
6. 古代ギリシアの血と脂の詰め物から、1877年の「腸詰」まで
ずっと むかしの ギリシアの ものがたり『オデュッセイア』に、ソーセージに ちかい たべものが でて きます。いまから 2700ねん いじょう まえの おはなしです。
ものがたりの なかで、あるひと が、たたかいの しょうひんとして、ひの そばに ある「ちと あぶらを つめた やぎの いぶくろ」を みせます[9]。これは ソーセージそのものとは かぎらないので、「ちかい もの」と いう ことにして おきます。
ドイツの ニュルンベルクでは、1313ねんに、ソーセージを つくる ときの にくの しなを きめた、と いう きろくが あります[2]。
にほんでは、1877ねんの はくらんかいの もくろくに「ちょうづめ」が のって います[11]。
いま、にほんで つくられる にくの かこうひんの うち、ソーセージの なかまが 57.6%と いちばん おおく、ハムや ベーコンより おおく なって います。2015ねんの すうじです[12]。
古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』(紀元前8世紀ごろの成立とされます)の第18巻に、ソーセージに近い食べ物が出てきます。求婚者の一人が、乞食の男とオデュッセウスを戦わせる賭けの賞品として、火のそばにある、血と脂を詰めた山羊の胃袋を示す場面です[9]。原文は胃袋なので、「ソーセージそのもの」とは書かず、「近い」食べ物としておきます。
日本語版Wikipediaによると、アリストパネスの喜劇『騎士』にはソーセージ売りが登場し、古代ローマの料理書『アピキウス』には、肉を香辛料で味つけし、脂肪やナッツを加えて腸に詰め、燻煙する「ルカニカ」の作り方が載っています[2]。
中世のドイツでは、ニュルンベルクで1313年に市の評議会がソーセージの製造について定め、使う肉の質などを規制していた記録があります。また、テューリンゲンのブラートヴルストは1404年の記録に出てきます[2]。どちらも二次資料にある記述なので、「記録がある」という程度に読んでください。
日本の場合、国産ハムの製造は1872年(明治5年)に長崎で始まったとされます。ソーセージについては、1877年(明治10年)の第1回内国勧業博覧会の出品目録に「腸詰」の名が見え、1910年(明治43年)には農商務省の講習会で、アメリカで学んだ人がソーセージの製法を講義した、と伝えられています[11]。ハムとソーセージの記録は、別のものとして分けて読む必要があります。
いまの日本では、食肉加工品の生産量は2015年に532,793トンで、そのうちソーセージ類が57.6%を占めました[12]。計算すると約30万トンです。最新の数字ではありませんが、ソーセージが、ハムやベーコンよりも多く作られる身近な食品になっていることは分かります。
『オデュッセイア』(紀元前8世紀ごろの成立とされる)第18巻では、求婚者アンティノオスが、乞食のイロスとオデュッセウスを戦わせる賞品として、火のそばにある「血と脂を詰めた山羊の胃袋」を示す[9]。原文は「胃袋」なので、ソーセージそのものと断定せず、「ソーセージに近い食べ物の古い例」とするのが妥当である。
ほかにも、日本語版Wikipediaは、アリストパネスの喜劇『騎士』にソーセージ売りが登場することと、古代ローマの料理書『アピキウス』(Apicius)にルカニア(Lucania)にちなむ「ルカニカ」(lucanica)の作り方があることを挙げる。肉を香辛料で調味し、脂肪やナッツを加えて腸に詰め、燻煙するものである[2]。ここまでの古代の例は、いずれも二次資料や翻訳を通した記述であり、「約5000年前のメソポタミアで始まった」といった説は、原典が確認できないので、このメモでは扱わない。
中世になると、ソーセージは規制の対象になる。ドイツのニュルンベルクでは1313年に市の評議会がソーセージの製造について定め、使う肉の品質などを規制していたとされ、テューリンゲンのブラートヴルストは1404年の記録に現れる[2]。これも二次資料の記述にとどまるため、「記録がある」という強さで受け止めたい。
日本では、国産ハムの製造が1872年に長崎で始まったとされる一方、ソーセージについては別の記録がある。1877年の第1回内国勧業博覧会の出品目録に「腸詰」の名が見え、1910年にはアメリカで学んだ人物が、農商務省の講習会でソーセージの製法を講義した[11]。ハム(1872年)とソーセージ(1877年・1910年)の記録を混ぜてはいけないし、これらを「日本で最初のソーセージ」と断定する資料も示されていない。
現在の規模にも触れておく。日本の食肉加工品の2015年の生産量は532,793トンで、種類別の比率はソーセージ類57.6%、ハム類19.7%、ベーコン類16.6%である[12]。532,793×0.576で、ソーセージ類は約30万6900トンになる。これは2015年の重量ベースの数字で、最新値ではない。
7. ふくろの うらと ものさしで、しらべて みよう
7. 袋の表示と定規で、自分のソーセージを調べてみる
7. 表示と実測で確かめる ── 規格の数字を手元の製品に当てはめる
おうちに ソーセージが あれば、ふくろの うらを みて みましょう。しゅるいの なまえ(ウインナーソーセージ、など)が かいて あれば、みつけて ください。かいて なければ、それでも だいじょうぶです。
つぎに、ものさしで、ソーセージの ふとさを はかって みます。2センチ(20ミリ)より ほそいか、ふといか。3.6センチ(36ミリ)より ふといか。ふくろの なまえと くらべて みましょう。
はかる ときは、まだ たべない ように しましょう。たべる ときは、てを あらって から。あたためる ときは、おうちの ひとと いっしょに します。
はかりかたに よって、きまりの くぶんを たしかめきれない ことが あります。
家にソーセージがあれば、まず包装の裏の表示を見てみましょう。ウインナーソーセージなどの種類名が書かれていれば、探してみてください。書かれていなくても大丈夫です。
次に、定規でソーセージの太さを測ります。20mmより細いか、太いか。36mmよりは太いか。袋の表示と、実際に測った太さを比べてみましょう。測るときは手を洗ってからにして、加熱するときは大人といっしょに行います。
規格の言葉が「製品の太さ」としか書いていないので、加熱前と後で値が変わるかどうかは、資料からは分かりません。そこが気になった人は、同じソーセージを加熱前と加熱後で測って、太さが変わるかを確かめる、という調べ方もあります。
原典に当たりたい人は、県のPDF(出典欄の[3])で、ウインナー・フランクフルト・ボロニアの定義を日本語で読めます。表示と太さが合わない製品を見つけたら、それが新しい問いの始まりです。
手元に製品があれば、規格の数字を当てはめてみられる。まず、包装の表示から種類名を探す。次に、定規で太さを測り、20mm未満、20mm以上36mm未満、36mm以上のどれにあたるかを調べる。測る際は手を洗ってからにし、加熱は大人と行う。
注意点がある。規格の文言は「製品の太さ」とだけ書いており、加熱前の値なのか、できあがりの値なのかは、使った資料からは読み取れない。そこで、同じソーセージを加熱の前後で測って、太さの違いを確かめるという方法がある。
確かめられる範囲を意識すると、読み方の幅が広がる。包装の表示は、種類名を書く場合も書かない場合もあるので、「書いていない」こと自体は、規格違反を意味しない。原典に当たるなら、県のPDF(出典欄の[3])で定義を読み、農林水産省の告示[10]で名称の定めを見るのがよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:語源の辞典、国や県の資料、大学の研究、古典の英訳、新聞記事、百科事典を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Online Etymology Dictionary「sausage」。https://www.etymonline.com/word/sausage (語源がラテン語の「塩漬けにした」にさかのぼることについて。英語の辞典)
- ソーセージ(Wikipedia日本語版)。https://ja.wikipedia.org/wiki/ソーセージ (語源、古代・中世の例、ケーシングの種類について。二次資料)
- 埼玉県ふるさと認証食品「ソーセージの認証基準」。https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/12868/17so-se-ji.pdf (ソーセージの定義と、JASの3区分の引用について)
- 厚生労働省 ハム・ソーセージ・ベーコン製造技能士。https://waza.mhlw.go.jp/shokushu/list/ham.html (ハム・ソーセージ製造の工程の流れについて)
- 朴・上米・世良「豚肉の保水性に関する研究 第1報」広島大学水畜産学部紀要。https://hiroshima.repo.nii.ac.jp/records/2038158 (豚肉に食塩2%を加えた実験の結果について)
- 舘野つや子「市販ハム、ソーセージ、ベーコン中の亜硝酸の定量」東京家政大学研究紀要27集(1987)。https://tokyo-kasei.repo.nii.ac.jp/record/10989/files/2011_k_0614.pdf (肉の色と亜硝酸塩について。1987年の報告)
- 竹田志郎「乳清タンパク質酵素分解物による亜硝酸塩の食肉発色促進作用に関する研究」(麻布大学)。https://www.ffcr.or.jp/webupload/24-25.pdf (モデルソーセージの実験条件について。研究の要旨)
- Liu Wenjun「天然ケーシングの品質改善に関する研究」(新潟大学、2023)。https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/2001029/files/r4fak232_a.pdf (天然ケーシングの成分と、ラムとシープの硬さの違いについて。博士論文の要旨)
- Homer, The Odyssey, Book XVIII(Samuel Butler訳, LibreTexts)。https://human.libretexts.org/Bookshelves/Literature_and_Literacy/Classics/The_Odyssey_(Homer)/01%3A_Books/1.18%3A_Book_XVIII (血と脂を詰めた山羊の胃袋の場面について。英語の翻訳)
- 農林水産省告示第489号 新旧対照表(熟成ソーセージ類の日本農林規格)。https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/kokujikaisei-297.pdf (3区分の名称と、ポークソーセージの表示について)
- 日本食糧新聞。https://news.nissyoku.co.jp/?p=581099 (日本のハム・ソーセージの歴史について。業界紙の記事)
- 日本食肉加工協会 HACCP導入等の状況(2016)。https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000130480.pdf (食肉加工品の生産量と、ソーセージ類の割合について。2015年の数字)
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