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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あたまの シラミと ふくの シラミは、どこが ちがうの?

頭ジラミとコロモジラミは、遺伝子でほとんど区別できないのに、なぜ別の名前で呼ばれるのか

頭ジラミとコロモジラミ:遺伝子でほぼ見分けのつかない二つは、何で区別され、服の始まりの何を語るのか

分野:生きもの

シラミの なかまには、髪かみの 毛に すむ ものと、ふくに すむ ものが います。ところが 遺伝子いでんしを しらべても、この ふたつは ほとんど くべつが つきません。

それなのに、なぜ ちがう なまえで よばれるのでしょう。ふくの シラミは、人が ふくを きはじめた じきの ヒントにも なります。この ページを 読むと、ふたつの ちがいと、そのわけが わかります。

髪の毛にすむシラミと、衣服にすむシラミは、遺伝子を調べてもほとんど区別がつきません[1]。それでも、頭ジラミとコロモジラミという別の名前で呼ばれています。

しかもコロモジラミは、服がなければ生まれなかったはずだと考えられ、そのDNAは人が服を着はじめた時期の手がかりとして研究されてきました。この記事を読むと、二つのシラミのちがいと、名前を分ける理由、そして服の始まりとの関わりが分かります。

頭ジラミとコロモジラミは、ミトコンドリアと核の遺伝子データの多くで、はっきり分けられない[2]。それでも日本語でも英語でも別の名で呼ばれ、片方だけが病気を運ぶ[3]。しかも後者の出現時期は、人が服を着はじめた時期の手がかりとして推定されてきた[6]。

では、ほとんど同じものを何が分けているのか。この記事を読むと、区別の根拠となる生態と病気の違い、1種か2種かという議論の現状、そして推定年代が研究によって異なる理由が分かる。

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1. 髪かみに いるのと ふくに いるのと、なにが ちがうの?

1. 髪の毛にいるか、服にいるか:二つのシラミを分けているもの

1. 住む場所と産卵場所:二つを分ける生態の違い

あたまジラミは、かみの毛に すんで、そこで 血を すいます。おとなの 大きさは、ごまつぶ くらいの 2〜3ミリです。

コロモジラミは、ふくの ぬいめなどに すんで います。血を すう ときだけ、ひふに あらわれます。

たまごを うむ ばしょも ちがいます。あたまジラミは かみの 毛の ねもと、コロモジラミは ふくの せんいです。ふたつは、すんでいる ばしょや、たまごを うむ ばしょで わけられて います。遺伝子いでんしでは、はっきり わかれない ことが 多いのです。

では、この ちがいで、からだに おこる ことも かわるのでしょうか。

頭ジラミは、頭髪に付いて暮らします。成虫は2〜3mm、ごま粒ほどの大きさで[4]、卵は髪の毛の根元近くに産みつけられます。耳のまわりやえりあしに多いと説明されています。

コロモジラミは、衣類の繊維、とくに縫い目に卵を産みます[3]。ふだんは衣服の中にいて、血を吸うときだけ皮膚に出てきます。血は1日に何度も必要で、人から離れると1〜2日で死ぬとされます[3]。

つまり二つは、同じ人の体にすみながら、住みかと卵を産む場所が分かれています。日本の解説では、この二つは同胞種として扱われ、頭に付くか衣服に潜むかという生態の違いで区別しています[1]。

では、すむ場所が少し違うだけで、人への影響も同じなのでしょうか。

二つを分ける最も目に見える違いは、すむ場所と卵を産む場所である。頭ジラミは頭髪に付き、卵を髪の根元近くに産む。成虫は約2〜3mmで、ごま粒ほどの大きさだ[4]。

一方、コロモジラミは衣類にすみ、血を吸うときだけ皮膚へ出る。卵は衣類の繊維、とくに縫い目に産む[3]。成虫は1日に何度も吸血が必要で、人から離れると1〜2日で死ぬ。

では、この生態の違いが、そのまま「別種」であることを意味するのか。日本の解説は、両者は同胞種として扱われ、頭に付くか衣服に潜むかという生態の違いで区別されているにすぎないと述べる[1]。遺伝子レベルでもほとんど区別がつかない。ただし、この区別がなぜ実際の暮らしで重要になるのか。それは、次の章の病気の話につながる。

2. びょうきを はこぶ のは、どちらの シラミ?

2. 病気を運ぶのは、どちらのシラミか

2. 病気を媒介するのはどちらか:名前を分ける実用上の理由

あたまジラミが びょうきを はこんだ れいは、しぜんの なかでは 知られて いないと されて います。からだの びょうきを うつす しんぱいは、小さいと 考えられて います。

コロモジラミは ちがいます。びょうきを、はこぶ ことが あります。ほっしんチフスなどが、その れいです。

いまの 日本では、コロモジラミに 出会う ことは ほとんど ないと いわれます。ですから、ふつうは あたまジラミの ほうが 身近です。

ここで ふしぎなのは、遺伝子いでんしでは ほとんど おなじなのに、はたらきが ちがうことです。

では、このふたつは、いつ、どうやって わかれたのでしょう。

二つの違いが、とくに大きく表れるのは、病気を運ぶかどうかです。アメリカのCDC(疾病対策センター)は、頭ジラミが病気を伝えた例は知られておらず、健康上の危険とは考えられていないと説明しています[4]。

これに対してコロモジラミは、発疹チフス、回帰熱、塹壕熱(バルトネラ菌による病気)などを媒介しうるとされます[3]。

ただし、遺伝子では1種か2種かの議論が決着していません。論文の総説では、実験室では頭ジラミも発疹チフスの病原体を伝えうるとされる一方、自然界で検出された例は知られていないと書かれています[2]。ですから「絶対に運ばない」ではなく、「自然の中ではまだ運んだ例が見つかっていない」と読むのが正確です。

では、二つのシラミは、いつごろ別のタイプになったのでしょうか。

名前を分ける実用上の理由は、病気の媒介である。CDCは、頭ジラミが病気を伝えた例は知られておらず、健康上の危険とは見なされないとする[4]。対してコロモジラミは、発疹チフス、回帰熱、塹壕熱(バルトネラ属菌による)を媒介しうる[3]。被害の詳細は、この記事の主題ではないので省く。

ところが、遺伝子の側は事情が違う。総説は、ミトコンドリアと核の遺伝子データの多くで両者をはっきり分けられず、同じ種を示すと整理する。ただし、一部のミトコンドリア遺伝子では、体ジラミはクレードAだけに入る。そのため「1種に2つのタイプがあるのか、2種なのか」という議論は、完全には決着していない[2]。

病気の運びやすさも、単純な白黒ではない。同じ総説は、実験室では頭ジラミも発疹チフスの病原体を伝えうるが、自然界で検出された例は見つかっていないと記す[2]。だから「頭ジラミは絶対に運ばない」とは書けない。資料が支えるのは、自然界での差が大きい、というところまでである。

では視点を変えて、二つのシラミは、いつ、どのように分かれたのか。

3. コロモジラミは、ふくが できて から うまれた の?

3. 服にすむシラミの出現時期から、服の始まりを探る

3. コロモジラミのDNAから、服を着はじめた時期を推定する

コロモジラミは、ふくが なければ、すむ ところが ありません。そこで、けんきゅうしゃは 考えました。コロモジラミが うまれた じきを しらべれば、人が ふくを きはじめた じきが わかるかも しれない、と。

体ジラミは、あたまジラミの なかまから、くりかえし 生まれたと いう 考えが あります。ふくを きる 人の くらしに あう タイプが、できたのです。

2011年の けんきゅうでは、コロモジラミが 頭ジラミから わかれたのは、少なくとも 8万3000年ほど 前、早ければ 17万年ほど 前と 考えられました。

ふくが できた 時期は、はっきり わかって いません。けんきゅうしゃに よって、数字は ちがいます。

では、いま 日本では、シラミは どうなって いるのでしょう。

コロモジラミは服がなければ生きられないので、その誕生は服の使用と結びつけて考えられてきました。総説は、体ジラミは頭ジラミの集団から繰り返し生じたという仮説を紹介しています[2]。衣服を着る人間の環境に適応したタイプだと考えられている、という見方です。

この考えを使って、2011年にToups(トゥープス)らは、コロモジラミが頭ジラミの祖先から分かれた時期を推定しました。少なくとも約8万3000年前、早ければ約17万年前という幅で、衣服の使用は、現生人類がまだアフリカにいた頃に始まったと考えました[6]。共同研究者のReed(リード)は、コロモジラミは服が登場するまで、ほぼ確実に存在しなかっただろうと述べています。

2003年のKittler(キトラー)らの研究では、体ジラミの出現は約7万2000年前(±4万2000年)より新しくはないと推定されました[7]。同じシラミのDNAでも、研究によって数字は動きます。

ここで注意したいのは、二つの数字が別々の研究の推定だということです。約17万年前はToupsらの中央値、約7万2000年前はKittlerらの推定で、「この間のどこか」と決まったわけではありません。服の始まりは、数字が動く推定として受け止めるのが安全です。

では、この古い話から、身近な頭ジラミへ視点を戻してみましょう。

服がいつ始まったかを知りたい。そのとき、服にすむシラミのDNAを、服の登場を示す時計に使う試みがある。

前提となる仮説は、体ジラミが頭ジラミの集団から繰り返し生じたというものだ。衣服を着る人間の環境に適応したタイプだと考えられている[2]。コロモジラミは服がなければ存在できないから、分岐の時期は服の使用開始の下限になる、という論理である。

この論理で、Toupsら(2011)は、コロモジラミが頭ジラミの祖先から分かれたのは少なくとも約8万3000年前、早ければ約17万年前と推定し、衣服の使用は現生人類がアフリカにいた頃に始まったと考えた[6]。共同研究者のReedは、コロモジラミは衣服が登場するまでほぼ確実に存在しなかったと述べている。

ところが、研究が違えば数字も違う。Kittlerら(2003)は、体ジラミの出現は約7万2000年(±4万2000年)より新しくはないと推定し、人類のアフリカ起源と整合する多様性も示した[7]。約17万年前はToupsらの中央値、約7万2000年前はKittlerらの点推定であり、別々の推定である。両者を連続した確定区間のように扱わず、研究ごとに数字が動くものとして読むのが適切だ。

こうして、遠い昔の服の話が、身近な虫のDNAから語られた。では、いま私たちの身近にいるのは、どちらなのか。

4. いまの 日本では、どちらの シラミが いるの?

4. 日本で今も見られるのは、どちらのシラミか

4. 日本の現状と、うつり方についてのよくある誤解

日本では、1970年から1980年ごろ、あたまジラミが 全国で ふえました。1981年に くすりが でて、ぐっと へりました。それでも いまも、ほいくえんや ようちえんで、少しだけ ひろがる ことが あります。

コロモジラミは、日本では ほとんど 見られません。

あたまジラミは、あたまと あたまが くっついたり、くし・ぼうし・タオルなどを いっしょに つかったりして うつります。おふろや プールでは うつりません。きたないから つく、という ことでも ありません。

たまごは、ふけに にて いますが、かみの 毛に しっかり くっついて います。ゆびで つまんで おちるのは、ふけです。

では、この ふしぎを、じぶんでも たしかめるには どうしたら いいでしょう。

日本では、1970〜80年代に頭ジラミが全国的に流行しました。1981年に駆除薬が登場してから、被害は大きく減りました[1]。それでも今は、保育園や幼稚園などで小さな流行が見られます。コロモジラミは、ふつうの暮らしで出会うことはほとんどないといわれます。

頭ジラミは、頭と頭の接触や、くし・帽子・タオル・寝具の共用でうつります[5]。入浴やプールでうつることはありません。清潔にしているだけでは防げない、と書く自治体資料もあります。つまり「不潔だから」という見方は、当てはまりません。

卵とフケは見分けがつきにくいのですが、卵は髪に固く付いていて、簡単には取れません。指でつまんで落ちるのはフケ、というのが目安です[5]。

身近な頭ジラミから、遠い昔の服の話まで、ひとつの虫からつながりました。最後に、自分でできる確かめ方を考えてみましょう。

日本の現状は、二つのシラミで大きく異なる。頭ジラミは1970〜80年代に全国で流行し、1981年に駆除薬が登場して大きく減った。現在も、保育園や幼稚園などで小規模な流行がある[1]。コロモジラミは、ふつうの暮らしで出会うことはほとんどないといわれる。

頭ジラミの伝わり方には、よくある誤解がある。自治体資料によれば、感染は直接触れることで起こる。具体的には、頭同士の接触や、くし・帽子・タオル・寝具の共用だ。入浴や遊泳ではうつらない[5]。また「不潔だから」という見方も正しくない。ある区の資料は清潔にしているだけでは防げないと述べ、自治体資料には不潔さとの関係は薄いとする説明もある。

卵とフケの見分けも、実用上の問いだ。フケに似ていても、卵は髪にしっかり付いていて簡単には取れない。指でつまんで落ちるのは、フケやヘアキャストである[5]。成虫は頭の上で約30日生きるが、落ちて吸血できないと約2日で死ぬ(CDC)[4]。自治体資料には7〜72時間という記述もあり、「1〜3日ほど」と幅で受け止めるのがよい。

こうして、一匹のシラミが、遺伝子・病気・古い時代・身近な暮らしの四つの話をつないでいた。残るのは、自分の手で何を確かめるかだ。

5. ひもで 17万年を はかって みよう

5. 紙テープで、服の始まりの幅を目で見てみる

5. ひもの縮尺で、年代の幅を目で確かめる

きょう できる こと

ひもと じょうぎを ようい します。100年を 1ミリに して、ひもに しるしを つけて いきましょう。

17万年は、1700ミリ。つまり 1メートル 70センチです。8万3000年は、83センチ。7万2000年は、72センチ。ひもに ならべると、けんきゅうに よって、かなり ちがうのが わかります。

はさみを つかう ときは、おうちの 人に 見て もらって ください。

おうちの 人と

くしや ぼうし、タオルを みんなで わけて つかう わけを、おうちの 人に 聞いて みましょう。

ひもと定規で幅を測る

100年を1mmとして、ひもか紙テープに目盛りをつけます。約17万年前は1700mm、つまり1.7mです。約8万3000年前は83cm、約7万2000年前は72cmです。計算するだけでも、研究で出た数字がどれだけ幅広いか、実感できます。はさみを使うときは、おうちの人に見てもらってください。

資料を読む

二つのシラミの区別は[1]、遺伝子と1種か2種かの議論は[2]、病気と暮らし方は[3][4]、うつり方は[5]、服の始まりの推定は[6][7]にあります。

縮尺で幅を見る

100年を1mmとして、ひもに印をつける。約17万年前は1700mm(1.7m)、約8万3000年前は83cm、約7万2000年前は72cmになる。同じシラミのDNAでも、研究ごとに数字が動くことが、長さの差として見える。はさみを使うときは、おうちの人に見てもらう。

数字の動きを区別する

家にあるひもや紙テープで年代の幅を縮尺にしてみると、数字の動きが目で分かる。長さの差を見ながら、「分かっていること」と「推定にすぎないこと」を、自分のことばで並べて区別してみてほしい。出典は下の一覧にある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. imidas 時事用語「アタマジラミ・コロモジラミ」. https://imidas.jp/jijikaitai/K-40-112-18-05-G503 (二つの区別、日本の状況)
  2. The Biology and Taxonomy of Head and Body Lice (PMC). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3828170/ (遺伝子の議論、体ジラミの由来)
  3. CDC「Body Lice」. https://www.cdc.gov/lice/about/body-lice.html (コロモジラミの暮らし、病気)
  4. CDC「Head Lice」. https://www.cdc.gov/lice/about/head-lice.html (頭ジラミの大きさ、寿命)
  5. 板橋区「アタマジラミ」. https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/eisei/doubutsu/shirami/1004033.html (うつり方、卵とフケ)
  6. ScienceDaily「Toups et al. 2011」. https://www.sciencedaily.com/releases/2011/01/110106164616.htm (分岐年代の推定)
  7. Kittler et al. 2003, Current Biology. https://utsouthwestern.elsevierpure.com/en/publications/molecular-evolution-of-pediculus-humanus-and-the-origin-of-clothi (別の推定年代)

なおした ところ

更新履歴

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