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かくれんぼは、いつから どんな なまえで あそばれて きたの?

かくれんぼはいつからある遊び? ギリシャの辞書と江戸の本に残る名前

かくれんぼは、いつから、どう呼ばれてきたのか ── 2世紀のギリシャ語辞書と江戸の文献

分野:歴史・文化

いまから 1800年 ほど まえの ギリシャの 辞書じしょに、「ひとり いがいは にげる あそび」と せつめいされた あそびが のって います[1]。かくれんぼに、とても よく にて います。

では、かくれんぼは、いつ はじまった あそびなのでしょう。日本では、なんと よばれて きたのでしょう。この メモを 読むと、ギリシャの 本と 江戸えどの 本から、かくれんぼの 名前の でどころが 分かります。

約1800年前のギリシャの辞書に、「ひとりだけを残して、みんなが逃げる遊び」と説明された子どもの遊びが載っています[1]。ルールを聞くと、かくれんぼにそっくりです。

では、かくれんぼはいつ、どこで始まったのでしょうか。日本では、昔はどう呼ばれていたのでしょうか。このメモを読むと、古い本に書かれたことから、遊びの記録の古さと、「かくれんぼ」という名前の出どころ、土地ごとの呼び名のちがいが分かります。

2世紀ごろのギリシャの学者ポルックスの辞書に、「ひとり以外が逃げる遊び」と説明される子どもの遊びが載っている[1]。現在のかくれんぼと同じ種類の遊びだ。しかし、これは文字に残った古い記録の一つであって、遊びの始まりの年ではない。

日本では、「かくれんぼ」の名はいつ、どこから来たのか。江戸時代の文献に残る語源の説と、1775年の方言辞書にある土地ごとの呼び名を読むと、遊びの記録が古いことと、名前の由来が1つに決まらないことの両方が分かる。

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1. 1800ねん まえの 本に、どんな あそびが のって いたの?

1. 辞書に載った「ひとり以外が逃げる遊び」

1. ポルックスの辞書『オノマスティコン』が載せた遊び

2世紀せいきごろの ギリシャに、ポルックスと いう 学者がくしゃが いました。ポルックスは、ことばを あつめた 大きな 辞書じしょを 作り、その 中に 子どもの あそびも 書きました。

その ひとつが「アポディドラスキンダ」です。ことばの 本では、「ひとり いがいが にげる あそび」と 書かれて います[1]。

ポルックスは、かくれんぼに にた あそびの 名前を、ほかにも いくつか ならべました[2]。ルールが どうだったかは、くわしく 分かって いません。ただ、ギリシャの あそびは、ひとりが 目を とじて、ほかの 子が にげ、かくれた 子が スタートの ばしょへ 走って もどると、つぎの おにに なる やりかただった、と せつめいされる ことが あります[3]。

ここまで 読むと、かくれんぼは 1800年 まえに はじまった ように 思えます。でも、本当に そう 言って いいのでしょうか。

2世紀ごろのギリシャに、ポルックス(ギリシャ語でポリュデウケス)という学者がいました。ポルックスは『オノマスティコン』という、ことばを集めた辞書をつくり、その中に子どもの遊びの名前も載せています。そのひとつが「アポディドラスキンダ」で、古代ギリシャ語の辞典には「ひとり以外が逃げる遊び」と説明されています(出典の箇所は、辞書の9巻117)[1]。

ポルックスは、ほかにも「ミュインダ」「ハルケー・ミュイア」など、かくれんぼの仲間と考えられる遊びを数種類挙げています。ただし、辞書に書かれているのは主に名前の並びで、細かいルールまでは分かりません[2]。

遊び方は、「ひとりが目を閉じ、ほかの子が逃げて隠れる。隠れていた子が出発点に走って戻ると、次の鬼になる」と説明されることがあります[3]。これがポルックスの文章どおりかどうかは、辞典の説明だけでは決められないので、「そう説明されることがある」と受け取るのが安全です。

目を閉じる子、隠れる子、元の場所へ戻る、という流れは、いまのかくれんぼとよく似ています。では、かくれんぼは約1800年前に生まれた遊びなのでしょうか。

2世紀ごろのギリシャの学者ポルックス(ポリュデウケス)は、辞書『オノマスティコン』に子どもの遊びの名を載せた。その1つ「アポディドラスキンダ」は、古代ギリシャ語の大辞典(LSJ)に「ひとり以外が逃げる遊び」と説明され、出典は同書9巻117とされる[1]。

ポルックスは、かくれんぼ系の遊びとして「ミュインダ」「アポディドラスキンダ」「ハルケー・ミュイア」など数種類を挙げる。ただし、この辞書が書いているのは主に名前の列挙で、規則の細部は資料にない[2]。ひとりが目を閉じ、ほかの子が逃げて隠れ、隠れた子が出発点へ走って戻ると次の鬼になる、という形で説明されることもあるが、これがポルックス本文の規則かどうかは、二次的な解説からは判断できない[3]。そのため、ここでは「そう説明されることがある」にとどめる。

では、この辞書の記述は、かくれんぼの誕生を示すのか。それとも、すでにあった遊びを書き留めただけなのか。

2. かくれんぼは、1800ねん まえに できたの?

2. 記録の古さと、遊びの古さはちがう

2. 「古い文献」は「起源」ではない ── 壁画と世界各地の類例

じつは、「いつ はじまったか」は、分かって いません。分かるのは、「いま のこって いる 文字の 記ろくで 古い ものの ひとつが、ポルックスの 本」と いう ところまでです[4]。

火山の ふんかで うまった 古い 町、ヘルクラネウムの かべに、かくれんぼの なかまを かいたと される 絵が あります。ただ、どの あそびを かいた 絵なのか、学者の 中でも 考えが わかれて います[2]。

かくれんぼに にた あそびは、世界の いろいろな ところで、名前を かえて あそばれて います[4]。本に 書かれる ずっと まえから、子どもたちは かくれて いたのかも しれません。

では、日本の かくれんぼは、どんな ふうに 本に 出て くるのでしょう。

ここで大事なのは、「文字に残った記録が古い」ことと、「遊びが生まれた時期が古い」ことは、同じではないという点です。英語版のウィキペディアは、かくれんぼを世界各地で名前を変えて遊ばれている、たいへん古い遊びと紹介し、ポルックスのギリシャ語の記述を古い文献の一つとして挙げています[4]。

絵の資料もあります。火山で埋もれた古代の町ヘルクラネウムの壁画に、かくれんぼの仲間を描いたとされる絵があります。ただ、絵はルールを教えてくれないので、ポルックスの挙げたどの遊びにあたるかは、研究者の間でも説が分かれています[2]。

つまり、言えるのは「ポルックスの辞書(2世紀ごろ)が、いま確かめられる古い文献の1つ」というところまでです。遊びそのものは、もっと古くからあったかもしれません。

では、日本ではどうでしょう。日本の古い文献には、かくれんぼはどんな名前で出てくるのでしょうか。

ポルックスの記述を、かくれんぼの「起源」と読むのは、資料の読みすぎになる。英語版ウィキペディアは、この遊びを世界各地で名を変えて遊ばれる古い遊びと位置づけ、古い文献の一つとしてポルックスのギリシャ語の記録を挙げる[4]。文献に現れた時点と、遊びが生まれた時点は別の問題である。

絵の資料もある。火山で埋もれた町ヘルクラネウムの壁画に、かくれんぼの一種を描いたとされる絵があり、フリブール大学の遊戯史サイトは、図像は規則を伝えないため、どの遊びにあたるかについて複数の仮説があると説明する[2]。町が埋もれたのは紀元後79年とされるので、ポルックスの辞書より前の町の壁画だが、絵の年代そのものは断定を避ける。

したがって、確かに言えるのは「2世紀ごろの辞書に、ひとり以外が逃げる遊びとして載っている」までである。始まりの年と場所は、現在の資料からは特定できない。

この遊びが日本で文字に現れるとき、どんな名前で、何を説明されているのか。次は江戸時代の文献を見る。

3. 江戸えどの 人も、おなじ あそびを して いたの?

3. 江戸の本は、遊び方を「昔から今まで同じ」と書いた

3. 『守貞漫稿』が書いた江戸の遊び方

江戸えどの おわりごろに できた『守貞漫稿もりさだまんこう』と いう 本が あります。この 本には、ひとりの 子が 目を 袖そでで ふさぎ、その あいだに みんなが かくれて、さがさせる あそびだと 書いて あります[5]。

目を とじる 子が いて、ほかの 子は かくれる。ギリシャの 話と、とても にて います。この 本は、「あそびの かたちは、むかしから 今まで かわらない」とも 書いて います。

ところで、この あそびは、はじめから「かくれんぼ」と よばれて いたのでしょうか。

江戸時代の終わりごろの『守貞漫稿』は、かくれんぼを次のように書いています。ひとりの子が袖で目をふさぎ、そのあいだにほかの子たちが方々に隠れ、その子に探させる遊びだ、と。さらに、遊びの形は昔から今まで変わらない、とも述べています[5]。

ギリシャの説明と並べると、似たところがはっきりします。どちらも、ひとりが目を閉じ(江戸では袖でふさぎ)、そのあいだにほかの子が隠れます。ちがいは、ギリシャの説明では隠れた子が出発点へ戻って次の鬼になる点で、江戸の記述にはそれが出てきません。

江戸の人も、現在の私たちとほぼ同じ形で遊んでいたようです。では、この遊びは当時、どんな名前で呼ばれていたのでしょうか。

江戸末期の随筆『守貞漫稿』(喜田川守貞)は、ひとりの子が袖で目をふさぎ、そのあいだにほかの子が諸所に潜み隠れ、それを探させる遊びだと記し、その形は昔から今まで変わらないとする[5]。

ギリシャの説明と比べると、共通点は「ひとりが目を閉じ、そのあいだにほかが隠れる」という骨格にある。ちがいは、ギリシャ側の説明では隠れた子が出発点へ走って次の鬼になる点で、江戸の記述では触れられていない。ただし、ギリシャ側の規則がポルックス本文のものかは決まっていない[3]。

では、「かくれんぼ」という名前は、いつ、どこから生まれたのか。

4. 「かくれんぼ」って、もとは なんと いう ことば?

4. 「かくれんぼ」は「かくれ子」が変わった言葉?

4. 山東京伝『骨董集』の語源説 ── 「かくれ子」の転語

日本の じてんでは、この あそびは、むかしは「かくれあそび」や「かくれおに」と よばれて いたと あります。いまは、「かくれんぼ」が 日本じゅうで ふつうの 名前に なりました[5]。

では、「かくれんぼ」は どこから きたのでしょう。江戸えどの 人、山東京伝さんとうきょうでんは、『骨董集こっとうしゅう』と いう 本に、「かくれんぼは『かくれ子』が かわった ことばだ」と 書きました(1814〜15年)[5]。

「かくれ子」は、かくれる 子の こと。その ことばが、少しずつ 言いやすく なって、「かくれんぼ」に なったと 考えたのです。これは 京伝きょうでんの 考えで、本当に そうだったか、ほかの 考えが あるかは、ここでは 分かって いません。

この 本に よれば、「かくれあそび」の ほうが、古い 名前です。

ところが 昔の 日本では、おなじ あそびでも、土地に よって 名前が ちがって いました。

日本の辞典には、この遊びは昔「かくれあそび」「かくれおに」などと呼ばれ、近年は「かくれんぼ」が全国的に標準になった、と書かれています[5]。

「かくれんぼ」の語源について、江戸の文人・山東京伝は『骨董集』(1814〜15年)に、「かくれんぼは『かくれ子』が変わった言葉(転語)だ」と記しています。同じ辞典の説明では、「かくれあそび」のほうが古い呼び名です[5]。

これは京伝の説です。ただ、「かくれる子」を指す言葉が、「かくれんぼ」へと形を変えたという考えは、言葉の変わり方として筋が通っています。

名前がひとつに決まっていなかった様子は、同じ時代の別の本にもっとはっきり出てきます。

日本語の辞典類は、この遊びを古くは「かくれあそび」「かくれおに」などと呼び、近年は「かくれんぼ」が全国的に標準的になったと説明する[5]。

語源については、山東京伝『骨董集』(1814〜15年)に、「かくれんぼはかくれ子の転語」とある。この説に従えば、「かくれあそび」のほうが古い呼び名ということになる[5]。なお、これは『骨董集』の説であり、定説とは限らない。

語源説が1つある一方で、同じ遊びが土地ごとにちがう名で呼ばれていたことは、18世紀の方言辞書がよく示している。

5. おなじ あそびなのに、町ごとに 名前が ちがったの?

5. 1775年の方言辞書に並ぶ、土地ごとの呼び名

5. 『物類称呼』(1775年)が記す地方名

1775年に できた『物類称呼ぶつるいしょうこ』は、土地ごとの ことばを あつめた 本です。かくれんぼの 名前も、ならんで います[6]。

この 本に ある 名前の 例れいは、つぎの とおりです。

  • 出雲いずもでは「かくれんご」
  • 仙台せんだいでは「かくれかじか」
  • 鎌倉かまくらでは「かくれんぼ」

ほかにも、相模さがみでは「かくれかんぢやう」と いう 名前が ありました。

なかでも おもしろいのは、「かくれんぼ」の 名前が、1775年の 鎌倉かまくらに あった ことです。

みなさんの 町では、かくれんぼを なんと よんで いますか。

1775年の方言辞書『物類称呼』には、かくれんぼの地方名が並んでいます。出雲では「かくれんご」、相模では「かくれかんぢやう」、鎌倉では「かくれんぼ」、仙台では「かくれかじか」と呼んだ、とあります[6]。

同じ遊びなのに、土地によって、「かくれんご」「かくれかじか」と、ずいぶんちがう音で呼ばれていたことになります。いっぽう、京伝の『骨董集』より約40年前の本に、すでに鎌倉の呼び名として「かくれんぼ」が出ている点も目を引きます。

語形がこう分かれた理由は、資料からは分かりません。

あなたの町や、家の人が育った土地では、この遊びはどんな名前だったでしょうか。

越谷吾山の方言辞書『物類称呼』(1775年)は、かくれんぼの地方名を記す。出雲は「かくれんご」、相模は「かくれかんぢやう」、鎌倉は「かくれんぼ」、仙台は「かくれかじか」とされる[6]。

注目点は2つある。1つめは、近年の標準語形「かくれんぼ」が、すでに1775年の鎌倉の語として挙がっていることである。『骨董集』(1814〜15年)より約40年前にあたる。2つめは、同じ遊びに対して、出雲・相模・仙台でまったく別の語形が使われていたことだ。

語形がこう分かれた理由は、資料からは読み取れない。

では、今の私たちの周りには、どんな呼び名が残っているのだろうか。

6. わが家の かくれんぼは、なんと よんで いた?

6. わが家の「呼び名」を集めてみよう

6. 呼び名の聞き取りと、原典への手がかり

やってみよう。おうちの 人に、「子どもの ころ、かくれんぼを なんと よんで いた?」と 聞いて みましょう。「かくれんぼ」と 答える 人も、ちがう 名前を 言う 人も いるかも しれません。聞いた 名前と、住んで いた 町を、ノートに 書いて おきます。

ギリシャの 辞書じしょの 「ひとり いがいは にげる あそび」と、江戸えどの 本の「目を ふさぐ」と、あなたの かくれんぼ。おなじ ところと、ちがう ところを さがして みましょう。

  • 家の人や祖父母に、子どものころ、かくれんぼを何と呼んでいたかを聞き、住んでいた土地とあわせてノートに書きます。『物類称呼』の呼び名と見比べると、土地による名前のちがいがつかめます。
  • 自分たちのかくれんぼの遊び方を、ギリシャの説明(出発点に戻って次の鬼になる)や江戸の記述(目をふさぐ)と見比べます。今の自分たちのルールで、同じ所とちがう所はどこでしょうか。
  • コトバンクの「かくれんぼ」の項目を読むと、「かくれあそび」から「かくれんぼ」への変化と、京伝の説を、原文の引用つきで見られます[5]。

遊び方に「いつ」の答えは出なくても、自分の周りの呼び名なら、今日から集められます。

聞き取りの手順は、次のとおりである。家の人や祖父母に、子どものころの呼び名と住んでいた土地を聞き、結果を『物類称呼』の4つの呼び名と見比べる。同じ「かくれんぼ」でも、土地や世代で別の語が出てくるなら、1775年と同じ「呼び名の分かれ」が現在も残っていることになる。

資料を読む手がかりは次のとおり。語源説(京伝)と規則の記述(『守貞漫稿』)は、国立国会図書館などで原本にあたると確かめられる。ギリシャ語の辞書の記述は、古代ギリシャ語の辞典LSJにあり、英語で読める[1]。この遊びが「いつ始まったか」を直接答える資料はないが、どの資料がどこまで言っているかを読み分けるのが、このテーマの面白さである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

ウィキペディアは一般向けの解説で、出典の確かな箇所を補うために使い、断定には使っていません。

  1. Chicago/BBAW Classical Lexicon(LSJ)見出し語アポディドラスキンダ。 https://cld.bbaw.de/lemma/grc/ (古代ギリシャ語の辞典での遊びの説明)
  2. Locus Ludi(フリブール大学). https://locusludi.ch/?p=1132 (ポルックスの挙げた遊びの種類、壁画)
  3. SAGE Encyclopedia of Play, “Hide-and-Seek”. https://sk.sagepub.com/ency/edvol/embed/play/chpt/hide-seek (ギリシャ版の遊び方の説明)
  4. Wikipedia “Hide-and-seek”. https://en.wikipedia.org/wiki/Hide-and-seek (世界各地の遊びとしての概説)
  5. コトバンク「かくれんぼ」(世界大百科事典ほか). https://kotobank.jp/word/かくれんぼ-43890 (呼び名の変化、『骨董集』『守貞漫稿』の引用)
  6. bou-tou.net「かくれおに」. https://www.bou-tou.net/kakureoni/ (『物類称呼』の地方名の引用)

なおした ところ

更新履歴

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