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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

「ぜんぶ はがね」の ほうちょうは、なぜ われやすい?

鋼だけの本焼きと、鉄に貼り合わせた霞 ── 和包丁の2つの作り方

本焼きと霞 ── 和包丁の鋼を、全鋼か複合鍛造かで読み解く

分野:技術・ものづくり

おなじ 和包丁わぼうちょうでも、鋼はがねだけで できた ものと、やわらかい 鉄に 鋼はがねを はりつけた ものが あります。

鋼はがねだけの ほうが 高い ねだんの ことが おおいのに、つくる とちゅうで われる ことも あると いわれます[2]。どうして、そんな ものを つくるのでしょう。

和包丁には、鋼(はがね)だけで作る「本焼きほんやき」と、鋼をやわらかい鉄に貼り合わせた「霞かすみ」があります[1]。

本焼きは作る途中で割れることがあり、1本仕上げるのに2〜3本余分に作る場合もあると、メーカーは説明しています[2]。それでもなぜ、本焼きは作られ続けるのでしょうか。日本刀の作り方ともくらべながら、鋼づくりの工夫をたどります。

和包丁の鋼の使い方には、単一の鋼で作る「全鋼製」の本焼きと、軟鉄と鋼を組み合わせた複合鍛造の霞がある[1]。

本焼きは焼入れで割れるおそれがあり、1本仕上げるのに2〜3本余分に作る場合もあるという[2]。割れる危険を負ってまで鋼だけで作る理由を、メーカーや工芸の資料、日本刀の解説を突き合わせて整理する。

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1. ほうちょうは、ふた とおりの つくりかた

1. 「鋼だけ」と「貼り合わせ」── 2つの和包丁

1. 全鋼製の本焼きと、複合鍛造の霞

ほうちょうの 切る ところには、「鋼はがね」と いう、かたい 鉄が つかわれて います。この 鋼はがねだけで ぜんぶを つくった ものが「本焼きほんやき」です[1]。

もう ひとつは「霞かすみ」です。刃はの ぶぶんだけが 鋼はがねで、ほかは やわらかい 鉄(軟鉄なんてつ)に なって います[1]。

かたい ガラスの 板は、おとすと われます。ゴムの 板は われませんが、かたちを たもてません。鋼はがねと やわらかい 鉄を はりあわせるのは、この ふたつの いいところを ほしがる くふうに にて います。ただし 本当の 鉄は、ガラスや ゴムとは ちがう ふるまいを します。

和包丁の刃には「鋼(はがね)」という、硬くて炭素を含む鉄が使われます。この鋼だけで包丁全体を作ったものが本焼きで、単一の鋼で作るので「全鋼製」とも呼ばれます[1]。

もう一方の霞は、刃の部分だけを鋼にして、そのほかを軟鉄でつくった包丁です。異なる金属を組み合わせるので「複合鍛造」と呼ばれます[1]。

堺の刃物づくりの説明でも、硬い鋼を「刃金(はがね)」、軟らかい鉄を「地金(じがね)」と呼び、この2つをつないで、強さとしなやかさの両方を持たせるとされています[5]。ただ、堺の包丁がすべて霞というわけではなく、本焼きも作られています。

本焼きは単一の鋼で作る「全鋼製」の包丁、霞は軟鉄と鋼を組み合わせた「複合鍛造」の包丁で、霞では刃の部分が鋼、その他の部分が軟鉄になる[1]。

産地の資料では、硬い鋼を「刃金」、軟らかい鉄を「地金」と呼び、炉で赤く熱して鎚で叩いてつなぎ、強さとしなやかさを両立させると説明される[5]。ただし、堺の包丁がすべて霞ではなく、本焼きも作られている。

本焼きの名は、焼入れなどの工程が日本刀と似た製法であることに由来するとされる[2]。以降、この2つの構造の違いが、作りやすさ・研ぎやすさ・折れやすさをどう分けるかを順に見る。

2. 「かすみ」って、どうして この なまえ?

2. 霞の名前と、火の中での貼り合わせ

2. 霞の名の由来と、鍛接の工程

「霞かすみ」は、かすんで ぼんやり した ようすの ことです。ほうちょうの 名まえに なったのは、しあげの ちがいから だと いわれます。

まんなかの 鋼はがねは、ぴかぴかに みがきます。まわりの やわらかい 鉄の ぶぶんは、もやが かかった ように しあげる ことが おおいのです[4]。

つくる ときは、まず 鉄を とても あつく して、鋼はがねを のせて たたきます。ほうしゃと いう こなを つかう こともあり、たたいて、ぴったり くっつけます[6]。

「霞」という名前は、合わせ包丁の仕上げ方に由来するといわれます。中心の鋼には光沢を持たせ、地金の部分は霞がかかったような仕上げにすることが多いためです[4]。

作り方は、ある堺の工房の説明によると、1000度以上に熱した地金に、硼砂(ほうしゃ)などを使って鋼を貼り合わせます。そこからもう一度熱して叩き、完全に接着させます[6]。この、金属を溶かさず熱して叩いてつなぐ方法が鍛接です。

鍛接では、温度の管理が大切だといわれます。鋼に含まれる、切れ味に関わる炭素が逃げてしまうおそれがあるためです[6]。

「霞」の名は、合わせ包丁の仕上げで、心材(鋼)には光沢を持たせ、地金の部分には霞がかったような仕上げをすることが多いことに由来すると説明される[4]。

堺の工房の工程説明では、1000度以上に熱した地金に硼酸・硼砂・酸化鉄などを用いて鋼を貼り合わせ、再加熱して叩き、完全に接着させる(鍛接)[6]。温度や工程の細部は工房や鋼の種類で異なる。

この工程では、鋼の炭素が逃げないような温度管理が要点とされる[6]。炭素の量は、次章以降で出てくる「焼きの入りやすさ」に関わる。

3. 本焼きほんやきは、なぜ つくるのが むずかしい?

3. 割れの逃げ場がない ── 本焼きが高価になる理由

3. 焼入れで割れる危険と、1本に2〜3本の手間

本やきは、ぜんぶが 鋼はがねで できて います。つよく ぶつけると、ひびが はいっても、にげる ばしょが ありません[3]。

つくる とちゅうでも、われる ことが あります。ある 店の せつめいでは、1本 しあげる ために 2〜3本 よぶんに つくる こともある そうです[2]。

そのぶん、ねだんが 高く なりやすいのです。切れあじにも、鋼はがねだけで つくる よさが あると いわれます[2]。

本焼きは地金がないので、衝撃を逃がす余裕がなく、焼入れの途中でも割れやすいといわれます[3]。

堺の刃物メーカーは、1本仕上げるのに2〜3本余分に作る場合もあると説明しています。この手間の分だけ、本焼きは高価になります[2]。

それでも作られるのは、鋼だけを鍛造するので金属の組織が均一に細かくなり、切れ味に優れるとされるからです[2]。霞では焼入れのときに炭素が軟鉄側に移り、切れ味の低下やさびやすさにつながるという指摘もありますが、差の大きさはメーカーの説明だけでは判断できません[3]。

本焼きは地金がなく、衝撃に弱く、ダメージの逃げ場がない。焼入れでも割れやすく、1本仕上げるのに2〜3本余分に作る場合があるといい、これが価格に反映される[2][3]。

利点は、硬い鋼だけを鍛造するために金属組織が均一に細分化され、切れ味に優れるとされる点である[2]。

一方、焼入れ時に鋼の炭素が軟鉄側へ移り、切れ味の低下やさびやすさにつながるという説明もある[3]。ただし、これは刃物メーカー・販売店の説明で、影響の大きさを定量した研究は、今回の資料には含まれていない。

4. 火に入れる まえに、土を ぬる

4. 焼入れの前に土を塗る ── 硬い所とやわらかい所を1度で作る

4. 土置きによる差別硬化 ── 日本刀と共通する焼入れの考え方

鋼はがねは、あつく して、水で いっきに ひやすと、かたく なります。これを「焼入れやきいれ」と いいます。

本やきは、ぜんぶ かたい ままだと おれやすい。そこで、火に 入れる まえに、土を ぶあつく ぬります[2]。

ほうちょうの 平(ひら)の ところに ぬった 土は、ひえる ときに ゆっくり させるので、そこが すこし やわらかく なります。土を ぬらない 切る ところは、かたく なります。ひとつの 焼入れやきいれで、かたい ところと、すこし やわらかい ところが できます。

本焼きでは、焼入れの前に「焼き土」を厚く盛ります。1度の焼入れで、焼きの入る所と入りにくい所を作るためで、日本刀の「土置き」と同じ手法です[2]。

包丁では、刃の部分は硬く、平(ひら)の部分は硬度を少し落とします。そこがクッション代わりになり、衝撃に強くなるとされます[2]。

焼入れは、約800度まで熱して急冷し、そのあと200度前後に再加熱して焼戻す工程が紹介されています[6]。ただし温度は工房や鋼の種類で違い、堺市の情報では、焼入れ750〜800度・焼戻し160〜180度とも紹介されます。

本焼きは焼入れの前に焼き土を厚く盛り、1回の焼入れで、焼きの入る部分と入らない部分をつくる。日本刀の土置きに通じる手法で、平の部分の硬度をやや落として、そこを衝撃のクッションにするという[2]。

日本刀の焼入れでも、刀身に土を塗って焼きの入りやすさを調整し、刃は硬く、地鉄はやわらかくする。全体を硬くすると折れてしまう、と説明される[8]。

ある堺の工房の説明では、焼入れは約800度まで加熱して急冷し、その後200度程度に再加熱して焼戻す[6]。温度は工房・鋼種で異なり、別の紹介では焼入れ750〜800度・焼戻し160〜180度とされる。数値は例として読む。

5. にほんとうと、おなじ かんがえかた

5. 日本刀の「硬い皮でやわらかい芯を包む」工夫

5. 日本刀の造り込みと、玉鋼というルーツ

にほんとうも、「かたい」と「おれない」を どちらも ほしがりました。そこで、かたい 鉄で、やわらかい 鉄を つつむ ように つくったと いわれます[7]。

本やきは、鋼はがねだけで つくる かわりに、土で かたさを ちょうせつします。霞かすみは、やわらかい 鉄を うしろに はります。どちらも、「かたさ」と「おれにくさ」の せめぎあいの こたえです。

日本刀は、硬い皮鉄(かわがね)でやわらかい心鉄(しんがね)を包む「造り込み」という作り方で、折れにくさと曲がりにくさを両立させたと説明されます[7]。

材料の玉鋼(たまはがね)は、砂鉄と木炭から、たたら製鉄で作る和鋼で、1振の刀に約10kg必要とされます[9]。

霞は「やわらかい鉄に硬い鋼を貼る」発想、本焼きは「土で硬さを変える」発想で、日本刀の2つの工夫とよく似ています。ただし、各工房が刀の技法をどこまで意識しているのかは、今回の資料からは分かりません。

日本刀は、別々に鍛えた硬い皮鉄とやわらかい心鉄を組み合わせる「造り込み」で、折れにくさと曲がりにくさを両立させたとされる[7]。焼入れでは焼刃土を塗り、約800℃から水に入れて急冷する[7]。

材料の玉鋼は、砂鉄と木炭を使うたたら製鉄で得られる和鋼で、刀1振に約10kgが必要とされる[9]。

霞は貼り合わせで、本焼きは土置きでという対応は、日本刀の2つの手法に似る。ただし、それぞれの工房が刀の技法をどこまで意識して包丁づくりを組み立てたかは、今回の資料からは分からない。

6. つかう ときは、どちらが いい?

6. 研ぎやすさ・折れやすさ・鋼の名前

6. 研ぎ直し・衝撃への強さと、現代の鋼材

ほんやきは、とぐ めんが ぜんぶ かたい 鋼はがねです。とぎなおす のが むずかしく、つよい ちからや ショックで、まっぷたつに おれる ことも あると いいます[1]。

かすみは、とぐ めんの ほとんどが やわらかい 鉄です。とぎやすく、大きな かけや まっぷたつの しんぱいが すくないと いわれます[1]。

ほんやきが 「わるい」わけでは ありません。ちがう ところで ゆうめいな だけです。

本焼きは研ぐ面全体が硬い鋼なので、研ぎ直しは非常に難しく、力の入れ方や衝撃で真っ二つに折れる可能性があると説明されています[1]。

霞は、研ぐ面の大部分が軟らかい地金です。研ぎやすく、大きく欠けたり真っ二つになったりする心配が少ないといわれます[1]。

いま和包丁に使われる鋼の代表は、安来鋼の白紙・青紙・銀紙などです。名前は、鋼を区別するために貼った紙の色に由来するといわれます。白紙は不純物や合金の成分をできるだけ減らした炭素鋼で、炭素は1〜1.3%ほど。ただし号数で幅があります[10]。

本焼きは研ぎ面全体が硬い鋼のため研ぎ直しが非常に難しく、不用意な力の入れ方や衝撃で真っ二つに折れる可能性がある。霞は研ぎ面の大部分が軟らかい地金で研ぎやすく、大きな欠けや真っ二つの心配が少ない[1]。

現代の和包丁の鋼は、白紙・青紙・銀紙など安来鋼(日立金属、現プロテリアル)が代表的で、名は鋼を区別するために貼った紙の色に由来するとされる。白紙は不純物や合金成分を極力抑えた炭素鋼で、炭素は約1.0〜1.3%と、号数による幅がある[10]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

おうちの 人に たのんで、台所の ほうちょうを 見せて もらいましょう。さわらずに、目で 見るだけです。刃はの ちかくに、ひかる ところと くもった ところが あるか、あいだに せんが あるか、さがして みます。

なお、ふつうの 家の ほうちょうは、ステンレスの ものが おおいです。この 記事の 話とは、ちがう つくりの ことが あります。

でかけて できること

ほうちょうを うって いる お店で、大人に たのんで、見せて もらうのも いい やりかたです。ぜんぶ 鋼はがねの ものと、くっつけた ものが あれば、ならべて 見てみましょう。

今日できること

おうちの人に頼んで、台所の包丁を見せてもらいましょう。刃には触れず、目で見るだけです。刃の近くに、光っている所とくもっている所があるか、その境目に線があるかをさがします。

ただし、家の包丁はステンレスのものが多く、この記事の話とはつくりが違うことがあります。

出かけてできること

包丁を扱う店で、大人と一緒に、和包丁を見せてもらうのも方法です。「これは本焼きですか、霞ですか」と聞いてみると、作り方の違いを教えてもらえるかもしれません。

今日できること

家の包丁を、家族に頼んで見せてもらう。刃には触れず、目で観察する。刃の近くに、光沢のある部分とくもった部分の境目があるか探す。家庭の包丁はステンレス製が多く、本焼きや霞とは構造が違うことがある。

出かけてできること

刃物店などで、本焼きと霞の違いを店の人に聞いてみる。研ぎやすさ・折れやすさ・価格は、この記事で読んだ違いと合うだろうか。

公式情報・資料

本焼きと霞の説明は藤次郎のページ[1]、本焼きの構造は刃物メーカーの解説[2][3]、産地の説明は堺市のページ[5]が入り口になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

刃物メーカー・販売店の説明が中心です。各社の説明であり、製造は工房や鋼の種類で違います。

  1. 藤次郎「本焼きと霞」 https://tojiro.net/reading/8752/ (本焼きと霞の構造、研ぎ直しと折れやすさ)
  2. 堺一文字光秀「本焼き包丁」 https://hocho.ichimonji.co.jp/types/japanese-style-knives/hon-yaki-hocho-structure/ (本焼きの製法・土置き・割れやすさ)
  3. 實光「本焼き包丁」 https://www.jikko.jp/c/knowledge/detail/kouzou/honyaki-knife (本焼きの衝撃への弱さ、炭素の移動の説明)
  4. 實光「霞(用語集)」 https://www.jikko.jp/c/glossary/ka-kasumi (霞の名前の由来)
  5. 堺市「堺打刃物」 https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/sakai/keisho/dentosangyo/sakaiuchihamono.html (地金と刃金、産地の説明)
  6. 青木刃物製作所「包丁のできるまで」 https://aoki-hamono.co.jp/process/ (鍛接・焼入れ・焼戻しの工程)
  7. meihaku.jp「日本刀の作り方」 https://www.meihaku.jp/sword-basic/touken-making/ (造り込みと焼入れ)
  8. meihaku.jp「日本刀の硬さ、やわらかさ」 https://www.meihaku.jp/ginga-sword/ginga-kataiyawai/ (日本刀の土による焼き入れの調整)
  9. 鉄の道文化圏推進協議会「日本刀」 https://tetsunomichi.gr.jp/katana/ (玉鋼とたたら製鉄)
  10. ほんまもん「白紙、青紙、銀紙鋼の種類について」 https://www.honmamon.jp/blog/2024/07/02/%E7%99%BD%E7%B4%99%E3%80%81%E9%9D%92%E7%B4%99%E3%80%81%E9%8A%80%E7%B4%99%E9%8B%BC%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/ (安来鋼の名前と炭素量)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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