1. くろいた用の ぼうと、いわは、どうして おなじ なまえなの?
1. 黒板用の棒と岩は、なぜ同じ「チョーク」と呼ばれるのか
1. 岩石のチョークと黒板用チョークは、なぜ同じ名前なのか
「チョーク」は、もともと いわの なまえです。うみに いた ちいさな いきものの からや、とても こまかい ほうかいせきが つもって できた、やわらかい いわです[2]。
この いわは、9わり いじょうが たんさんカルシウムです。ほうかいせきも、たんさんカルシウムの なかまで、かたさは 3ほどです[3]。
こくばんの ぼうは、いしの こなを かためた ひつきの どうぐで、いわとは わけて かんがえられます[2]。でも、どちらも たんさんカルシウムが おもな なかみです。
では、おなじ ざいりょうの ぼうなら、かきごこちも おなじでしょうか。
辞典では、「チョーク」はまず岩石の名前です。浮遊する単細胞の生き物の遺骸と、ごく細かい方解石からなる軟らかい岩で、約90%以上が炭酸カルシウムとされています[2]。方解石は炭酸カルシウムの鉱物で、モース硬度は3、希塩酸に溶けて泡を出します[3]。
黒板に使う棒は、同じ辞典で「石灰の粉末などを固めた棒状の筆記具」(白墨)として、岩とは区別されています[2]。日本語での最初の用例とされるのは、中村正直が訳した『西国立志編』(1870〜71年)の「白灰(チョウク)を以て図を画きて学習せり」という一節です。
岩と棒は別のものです。でも、黒板用の棒には、炭酸カルシウムの粉を固めたものと、石膏を使ったものがあります[1]。同じ「チョーク」でも、中身は一つではないのです。それなら、成分のちがいは書き味にどう出るのでしょうか。
「チョーク」は本来、浮遊性の単細胞生物の遺骸と微細な方解石からなる軟らかい石灰岩(白亜)を指し、約90%以上が炭酸カルシウムである。黒板用の棒は、これとは別に「石灰の粉末などを固型化した棒状の筆記具」(白墨)と定義される[2]。構成鉱物の方解石はCaCO₃で、モース硬度3、希塩酸に溶けて発泡する[3]。
日本語の用例としては、『西国立志編』(1870〜71年、中村正直訳)の「白灰(チョウク)を以て図を画きて学習せり」が初出とされる[2]。ここでは、岩と棒を「同じ語で呼ばれる別物」として扱う。
実際、黒板用の棒には、炭酸カルシウムの粉末を粘結剤で固めたものと、石膏を使ったものがある[1]。したがって、「チョークの成分」は一つに決まらない。では、成分のちがいは書き味に出るのか。
2. たんさんカルシウムと せっこう、かきごこちは どう ちがうの?
2. 炭酸カルシウム系と石膏系で、書き味はどうちがうのか
2. 成分と摩擦 ── 高校生の課題研究が示した意外な関係
こうこうせいが、しじょうに うっている チョークを くらべた けんきゅうが あります[4]。
たんさんカルシウムの チョークは、「かたくて いろが よく でる」ものと、「やわらかくて こすれが すくない」ものが ありました。せっこうの チョークは、「ねばりけが ある」と いう かんじ でした。
これは 1つの がっこうの ひとたちの かんじかたで、ぜんぶの チョークに あてはまる わけでは ありません。
おもしろいのは、すりへる りょうと こすれの くらべです。せっこうの チョークは、すりへる ほうが すくないのに、こすれが つよく でました。
伊那北高校の理数科の課題研究では、ダストレス、フルタッチ、ニューポリーという市販の3種類を比べています[4]。
ダストレスとフルタッチは炭酸カルシウム、ニューポリーは硫酸カルシウム(石膏)が主成分です。高校生の評価では、ダストレスは「固く、発色が良い」、フルタッチは「柔らかく、摩擦が少ない」、ニューポリーは「粘り気がある」でした。ただし、これは人の感じ方の評価で、すべての製品に当てはまる法則ではありません。
この研究の黒板を引く試験では、同じ成分のチョークどうしなら、削れる量が多いほど摩擦も大きくなりました。ところが成分がちがうと逆で、削れた量がいちばん少ない石膏のポリーのほうが、摩擦は大きかったのです。研究の結論は、成分が書き味に影響している「可能性がある」というところまでです。
「減りにくいチョークは、引っかかりやすい」。成分のほかにも、書き味を左右するものがありそうです。次は、粉の粒の形に注目した例を見ます。
伊那北高校(長野県)理数科の課題研究は、ダストレス(炭酸カルシウム)、フルタッチ(炭酸カルシウム)、ニューポリー(硫酸カルシウム)を比べた[4]。生徒による書き味の評価は、ダストレスが「固く、発色が良い」、フルタッチが「柔らかく、摩擦が少ない」、ポリーが「粘り気がある」。これは主観評価であり、高校生の研究であって、全製品に当てはまる法則ではない。
注目すべきは摩擦の測定である。この研究の試験では、同一成分のチョークは削れた量が多いほど摩擦が大きかった。ところが、異なる成分で比べると、削れた量が少ない硫酸カルシウムのほうが摩擦は大きい。削れた量は、同条件の黒板引きテストで、ダストレス約0.08g、フルタッチ約0.07g、ポリー約0.03gだった。
硫酸カルシウムは必ず引っかかる、とはいえない。この研究が結論としているのは、成分が摩擦、つまり書き味に影響している「可能性がある」ところまでだ。そうなると、成分のほかに何が書き味を左右するのかが気になる。そこで次に、粒の形を変えて性能を上げた例を見る。
3. かいがらの こなを まぜると、チョークは どう かわるの?
3. 貝殻の粉を混ぜると、チョークはどう変わるのか
3. 貝殻粉の棒状粒子 ── 折損強度と書き味の改善
ほたてがいの からは、たんさんカルシウムが おもな ざいりょうです。これを こなにすると、ちいさな ぼうの ような かたちの つぶに なります[1]。
ふつうの たんさんカルシウムの こなの いちぶを、この かいがらの こなに おきかえると、チョークが おれにくく なりました。かたちが ぼうの ようだから、つよく なったのでは ないかと かんがえられて います。
ほっかいどうの けんきゅうじょは、せんせいたちに つかって もらう テストも しました。せんが はっきり して、なめらかさも よく なったと いう こえが ありました[5]。
ほたてがいの からは、ほっかいどうで まいとし 20まん トンほど でます。チョークの ざいりょうに なるのは、80トンほどです。ぜんたいの 2500ぶんの 1ぐらいなので、ごく いちぶです。
北海道立工業試験場の技術情報によると、ホタテ貝殻の粉は、高純度で白さが高い炭酸カルシウムが主成分で、粒が棒状です[1]。石灰石からとった炭酸カルシウムの一部を貝殻粉に置き換えると、折れにくさ(折損強度)が上がりました。補強の効果は、粒が棒状なためだと「考えられる」とされています。
書き味も変わりました。従来の炭酸カルシウムのチョークより、黒板への粉のつきがよく線が鮮明で、小中学校の先生のモニターテストでも、なめらかさがよくなったと確認されています。この配合は特許を取得し、2005年(平成17年)から商品になりました[5]。
北海道では毎年約20万トンのホタテ貝殻が出て、そのうち約80トンがチョークの原料に使われています。計算すると約0.04%、2500分の1ほどなので、貝殻問題の解決策というより、書き味の改善と再利用を同時にねらった例です。
こうして、成分と粒の形が書き味を変えることが分かってきました。では、その配合を決めて、毎日つくっているのはどんな人たちでしょうか。
北海道立工業試験場の技術情報では、ホタテ貝殻粉末は高純度・高白色度の炭酸カルシウムが主成分で、粉末が棒状粒子とされる[1]。石灰石由来の炭酸カルシウムの一部を貝殻粉に置換すると、折損強度が向上した。補強効果は、貝殻粉の形状が棒状のためと「考えられる」と報告されている。因果関係の説明は推定の段階である。
書き味についても、従来の炭酸カルシウムチョークより黒板への粉の付着がよく、描線が鮮明だった。小中学校の教員によるモニターテストでも滑らかさの向上が確認され、特許取得の後、2005年(平成17年)に商品化された[5]。
貝殻の量を見ると、北海道内の排出量は年間約20万トンで、チョークの原料に使われるのは約80トンである[5]。計算すると約0.04%(2500分の1程度)にすぎない。そのため、これは貝殻処理の決め手というより、性能と再利用を両立させた配合の例と読むのが妥当だ。
ここまでで、成分だけでなく、粒の形も書き味に関わりうることが分かった。では、こうした配合を実際に決め、毎日つくっている現場はどうなっているのか。
4. チョークを まいにち つくって いる ひとたちは?
4. チョークを毎日つくっている職人たち
4. 日本理化学工業の製造現場 ── 昭和35年から続く「職人の働き」
にほん りかがく こうぎょうと いう かいしゃは、1937ねんから チョークを つくって います[6]。「ダストレスチョーク」は、くにの なかで 7わり いじょうの シェアだと、この かいしゃが しょうかい して います。
この かいしゃでは、1960ねんに ちてきしょうがいの ある 2にんが はたらき はじめました。2013ねんごろの しゅざい きじでは、はたらく ひとぜんいんの 7わりほどが、ちてきしょうがいの ある しゃいんだと しょうかい されて います[7]。
せいぞうの ラインの ほとんどで、「しょくにんの はたらき」を して いると、この きじには あります。チョークを つくる しごとを、まいにち している ひとたちが います。
5. せんせいの ひとことから うまれた チョークは?
5. 先生の一言から生まれた、色の見分けやすいチョーク
5. 「ダストレスeyeチョーク」── 色覚の多様性に配慮した設計
2004ねん11がつから、「ダストレスeyeチョーク」と いう チョークが うられて います。「しりょくの よわい せいとにも、みやすい いろに して ほしい」と いう、せんせいの こえが きっかけでした[8]。
いろの みえかたは、ひとに よって ちがいます。この チョークは、いろの みえかたの ちがいに きを くばって、いろの くみあわせを くふう して います。ねだんは ふつうの チョークと おなじ です。
チョークの かきごこちも、いろも、つかう ひとの ことを かんがえて つくられて います。
2004年11月15日から、日本理化学工業は「ダストレスeyeチョーク」を発売しています[8]。色の見え方に多様性があることに配慮した配色で、CUD(カラーユニバーサルデザイン)の認証を受けています。値段は通常のチョークと同じです。
きっかけは、先生からの「視力の弱い生徒にも見やすい色にしてほしい」という要望だったと伝えられています。
成分や粒の形で書き味を整え、色の組み合わせで見やすさを整える。チョークづくりは、使う人の「書く」と「読む」の両方に目を向けた仕事だと分かります。
日本理化学工業は2004年11月15日から「ダストレスeyeチョーク」を販売している[8]。色覚の多様性に配慮した配色で、CUD(カラーユニバーサルデザイン)の企画認証製品であり、価格は通常のチョークと同じとされる。
開発のきっかけは、先生からの「視力の弱い生徒にも見やすい色にしてほしい」という要望だったと報じられている。
このように、チョークの設計は、炭酸カルシウムや石膏といった成分、貝殻粉のような粒の形、そして配色という、書き味と見やすさの両方にまたがる。「書き味は何で決まるか」という最初の問いには、書き味は成分や粒の形で変わることがあり、製品ごとに違いが見られた、というのがここまでの答えだ。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
がっこうで しゅるいの ちがう チョークが つかえる ときは、せんせいに たずねてから、2しゅるい かりて みましょう。おなじ せんを ひいて、せんの こさと、ゆびに つく こなの ようすを くらべます。かきごこちを ことばに して みましょう。
こうしきの じょうほう
にほん りかがく こうぎょうの ホームページで、チョークの ことが しらべられます。
今日できること
学校で種類のちがうチョークが使えるときは、先生にたずねてから2本を借り、同じ長さの線を引いてみましょう。線の濃さ、音、指に粉がつく量を比べ、どちらが「固い」「なめらか」と感じるかを言葉で書き残します。成分表示が箱にあれば、そこも見てみましょう。
公式情報
日本理化学工業の公式サイトと、北海道立工業試験場の技術情報(出典[1][5][6])で、製品と配合の話を読めます。
今日できること
教室や理科室で使われているチョークの種類を調べ、成分表示や製品名を手がかりに、主成分が炭酸カルシウムか石膏かを確かめる。そのうえで、2種類を同じ条件で引き、書き味の感想を、「固い・柔らかい」「摩擦」「発色」の観点で整理してみる。1回の感想なので、結論には「可能性」の言葉を添える。
資料を読む
伊那北高校の課題研究(出典[4])には、実験の条件と数値がまとまっている。北海道立工業試験場の技術情報と成果パネル(出典[1][5])には、貝殻配合の開発の経緯がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、チョークの語の意味は辞典、書き味と摩擦は高校の課題研究、貝殻配合は公的試験研究機関、製造現場は会社の公式サイトと取材記事を突き合わせた。
- 北海道立工業試験場「ホタテ貝殻を配合したチョークの開発」技術情報 https://www.hro.or.jp/upload/2670/30-03-07.pdf (チョークの種類・棒状粒子・折損強度)
- 「チョーク」日本大百科全書・日本国語大辞典(コトバンク) https://kotobank.jp/word/チョーク (岩としてのチョーク・白墨・日本語の初出)
- 「方解石」最新 地学事典(コトバンク) https://kotobank.jp/word/方解石-131824 (方解石の硬度・性質)
- 伊那北高校 理数科課題研究「チョークの成分と書き味について」 https://www.nagano-c.ed.jp/ina/B_educationalinfo/2019/kadaikenkyu/R1kagaku1.pdf (成分別の書き味・摩擦・削れ量)
- 北海道立工業試験場 成果パネル(ダストレスチョーク) https://www.hro.or.jp/upload/56593/iri_dustless_chalk.pdf (滑らかさ・特許・商品化・貝殻の量)
- 日本理化学工業 公式サイト https://www.rikagaku.co.jp/ (製造開始・シェア)
- nippon.com 特集「日本理化学工業」 https://www.nippon.com/ja/features/c00613/ (雇用の経緯と現在)
- ねとらぼ「ダストレスeyeチョーク」取材記事 https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3284453/ (色覚配慮チョークの発売)
なおした ところ
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