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野生の 馬は、いま どこで くらして いるの?

野生の馬は、いまどこで暮らしているのか ── 草原から消えた馬と、野に戻った馬たち

野生馬はどこで暮らすのか ── モウコノウマ、アメリカの野生化馬、都井岬の御崎馬

分野:生きもの

「野生の 馬」と 言われる 馬の 中には、むかし 人に かわれて いた 馬の まごたちが たくさん います。生まれつき 野生の 馬は、1969ねんを さいごに、野生では 見られなく なりました。

では、いま 馬は どこに すんで いるのでしょう。この 記事では、草原に もどった 馬、アメリカの 野に いる 馬、日本の みさきに すむ 馬を くらべます。そして 馬が すむ 場所に、人の 手が かかわって いる ことが わかります。

「野生の馬」と呼ばれる馬の中には、もとは人に飼われていた馬が野に戻り、その子孫になったものがたくさんいます。生まれながらの野生馬といわれるモウコノウマは、1969年を最後に、野生では確認されなくなりました。

では、馬はいまどこで暮らしているのでしょうか。草原に戻った馬、アメリカの西部に広がった馬、日本の岬で暮らす馬を比べると、馬の暮らす場所には人の手が深く関わっていることが分かります。

野生馬として知られるモウコノウマは、1969年を最後に野生個体が確認されなくなり、IUCNのレッドリストでも一度は「野生絶滅」に区分された[1][2]。一方、アメリカ西部では家畜に由来する馬が野に広がり、日本では江戸時代に放牧された馬が、いまも岬の草原で暮らしている。

馬の「野生」とは何を指すのか。生息地の変化を3つの地域で比べると、草原という環境と人の管理が、馬の暮らす場所を決めてきたことが分かる。ただし、数値や年代には資料による幅があり、本文で条件を示した。

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1. 野生の 馬は、どこに いるの?

1. 「野生の馬」は、本当に野生なのか

1. 「野生」の意味 ── 生まれながらの野生馬と、野に戻った馬

ぼくじょうや 動物園には、馬が います。では、人が かって いない 野生の 馬は、どこに いるのでしょう。

じつは、人に かわれた ことが ない 系統けいとうの 馬は、とても 少ないのです。草原に すむ モウコノウマという 馬は、一度 野生から 見られなく なりました。いま 野に いる 馬の 中には、かわれて いた 馬が 野に もどった ものたちも います。

つぎは、野生から 消えた 馬が、どうやって 草原に もどったのかを 見ます。

動物園や牧場以外で、人に飼われずに暮らしている馬は、世界のどこにいるのでしょうか。

モウコノウマは、草原(ステップ)や半砂漠にすんでいた馬です。野生の個体が最後に確認されたのは、1969年のモンゴルとされています[1]。つまり、生まれながらの野生馬が自然の中で暮らしている場所は、いったん世界から消えたことになります。

いま「野生の馬」と呼ばれる馬には、人に飼われていた馬が野に戻った子孫がたくさん含まれます。野生の馬と、野に戻った馬を分けて見ると、馬の暮らす場所が見えてきます。まず、野生から消えた馬がどう戻ったのかを見てみましょう。

馬のうち、家畜化されていない系統として知られるのがモウコノウマ(タヒともいう)である。もともと草原(ステップ)と半砂漠にすんでいたとされ、最後に野生個体が確認されたのは1969年、モンゴルのドゥンガリアン・ゴビとされる[1]。なお、本来の生息地が草原なのか半砂漠なのかは議論が続いている。

ここで、「野生の馬」という言葉が2種類のものを指すことに注意が必要である。ひとつは、家畜化されたことのない系統の馬、もうひとつは、家畜が野に戻って自立した群れである。前者は一度野生から姿を消し、後者は現在、世界の各地に広がっている。では、前者はどのように草原へ戻ったのか。

2. 野生から 消えた 馬は、どうやって もどったの?

2. 1992年、16頭がモンゴルの草原に戻った

2. 再導入 ── 野生絶滅から「危機」への区分変更

1992ねん 6月5日、モンゴルの こうえんに、16とうの 馬が とどきました。人が はこんで、草原に もどす とりくみが はじまったのです[2]。

いま、モンゴルの 草原では、500とう いじょうの モウコノウマが じゆうに くらして いると、2018ねんに 知らされました[2]。

この 馬は、おとなの オス 1とうと、メス 1〜3とうと、その 子どもで 家ぞくの むれを つくります[3]。わかい オスは、べつの むれを つくります。

でも、まだ 心配ごとは あります。かちくの 馬と まざったり、びょうきが うつったり、オオカミに 子馬が ねらわれたり する ことが あります[1]。

1992年6月5日、モンゴルのフスタイ国立公園に16頭の馬が到着しました。野生に戻す取り組みの始まりです。それから25年の2017年を振り返る報告では、500頭以上がモンゴルの草原で自由に暮らしていると伝えられました[2]。

再導入が進むにつれて、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでの扱いも変わりました。2008年に「野生絶滅」から「深刻な危機」へ、2011年には「危機」に変更されています。再導入の場所は、フスタイのほか、大ゴビBとホミン・タルの3か所です[2]。

馬たちは、家族ごとの小さな群れで暮らし、若いオスは別の群れをつくるといわれます[3]。

安心とはいえません。主な脅威は、家畜の馬との交雑、感染症、オオカミによる子馬の捕食とされています[1]。ほぼ同じ生き物でも、人の飼う馬と同じ草原にいることが問題になる、というわけです。

では、野生に戻る前から世界中にいる馬は、どこから来たのでしょうか。

1992年6月5日、モンゴルのフスタイ国立公園に16頭が到着し、再導入が始まった。25年を経た2017年時点で、モンゴルでは500頭以上が自由に暮らしており、これは世界で最も多いとされる(初回の頭数を15頭とする資料もあり、500頭は2018年公表の値で最新値ではない)[2]。

再導入の進展にあわせて、IUCNレッドリストの区分は2008年に「野生絶滅」から「深刻な危機」へ、2011年に「危機(Endangered)」へと改められた。再導入地はフスタイ、大ゴビB、ホミン・タルの3か所である[2]。

社会構造は、家族群(ハーレム)が基本で、若いオスは別に独身群をつくるといわれる[3]。一方で脅威も残る。家畜馬との交雑、感染症、オオカミによる子馬の捕食が挙げられている[1]。野生復帰が成功したといっても、家畜馬と同じ草原にいること自体が遺伝的なリスクになる点は、再導入の条件として押さえておく必要がある。

ところで、モウコノウマは、いま世界中にいる家畜馬の祖先なのか。次の章で、馬と人の関係を遡る。

3. アメリカの 野に いる 馬は、どこから 来たの?

3. アメリカの野にいる馬は、人の馬の子孫

3. 家畜馬の起源と、アメリカ西部の野生化馬

いま 世界中に いる 馬の ごせんぞは、モウコノウマでは ありません。かちくに なった 馬の ふるさとは、ヨーロッパと アジアに またがる 草原の 一部で、いまから 4000ねんほど 前に ひろがって いったと 言われて います[4]。

アメリカの 西の ほうには、人の かって いた 馬が 野に もどって、むれで くらして います。国の 役所は、10の 州に 175か所の 地いきを 決めて、野生の 馬と ロバを 見まもって います。2026ねん 3月の すいていは、馬と ロバを あわせて 85,466とうです[5]。

この 数は、ロバも 入って います。馬だけの 数では ありません。

いま世界にいる家畜の馬は、モウコノウマの子孫ではありません。2021年の研究によると、家畜馬の故郷はユーラシア西部の草原で、ヴォルガ川とドン川の下流あたりがもっとも有力とされます。紀元前2000年ごろから急速に広がり、各地にいた馬の集団をほとんど置きかえたと報告されています[4]。

アメリカ西部の野生の馬も、こうして人と暮らすようになった馬が野に戻った子孫です。アメリカの土地管理局(BLM)は、西部10州の175か所の「群れ管理地域」で、野生の馬とロバを管理しています。2026年3月1日の推定は、馬とロバを合わせて85,466頭です[5]。

数字には、ロバも含まれます。馬だけの数ではない点に気をつけたいところです。

ここでも、野に戻った馬が暮らしているのは、人が地域を区切って管理している土地です。日本には、さらに長く、人が馬を野に放してきた場所があります。

ここでの問いは、現在の家畜馬がどこで家畜化されたかである。2021年のLibradoらの研究(Nature)は、西ユーラシアのステップ、ヴォルガ・ドン川下流域を有力な故郷とし、紀元前2000年ごろから家畜馬がユーラシアに急速に広がって、ほかの地域の馬の集団をほぼ置きかえたとした[4]。モウコノウマは、この家畜馬の祖先ではない別の系統である(原論文本文までは確認していない二次的な要旨による)。

アメリカ西部の「野生馬」は、この家畜馬が野に戻ったものである。BLMは西部10州の175の群れ管理地域で野生の馬とロバを管理し、2026年3月1日の全国推定は馬とロバ合わせて85,466頭とされる[5]。この数にはロバが含まれ、馬だけの数ではない。

生息地という視点で見ると、これらの群れは、行政が地域を区切って個体数を管理する土地にいる。野生の馬といっても、「人の管理の外」にいるとは限らない。

4. 日本にも、野に すむ 馬は いるの?

4. 日本の岬で、300年以上続く馬の暮らし

4. 都井岬の御崎馬 ── 放牧が続いてきた草原

日本にも、野に すむ 馬が います。みやざきけんの といみさきには、「みさきうま」と いう 馬が、100とうほど くらして います[6]。

はるから なつは 草地、あきから ふゆは 海ぞいの すぎ林や ざつ木林へ うつって くらします。そうして 馬を 放して かう くらしは、300ねん いじょう つづいて きました[6]。

むかし、この 馬は、えどじだいに たかなべはんが 放した ことが はじまりと 言われて います[7]。

ただし 馬の 数は、しらべた 本に よって 80〜110とうと、少し はばが あります。

日本にも、人に飼われているのに野に近い暮らしを続ける馬がいます。宮崎県の都井岬にいる御崎馬です。環境省の資料によると、約100頭が約560haの平原で、野生に近い状態で暮らしています[6]。頭数は資料によって約80〜110頭と幅があります。

季節によって、馬の暮らす場所は変わります。春から夏は草地で、秋から冬は海ぞいの杉林や雑木林へ移ります。こうした放牧は300年以上続いています[6]。

始まりは江戸時代、高鍋藩が藩営の牧場として馬を放したことと伝えられています。1697年とする説もあります[7]。

御崎馬は、木曽馬や与那国馬などと同じ、日本に古くからいる在来馬の仲間です。

さて、御崎馬の草原は、放っておけばいつまでも草原でいるのでしょうか。

日本で、家畜化された馬が人の管理のもとで半野生のまま維持されている例が、宮崎県串間市の都井岬である。環境省の「重要里地里山」の記載では、約100頭の御崎馬が約560haの平原で野生に近い状態で暮らしている[6]。頭数は資料によって約80〜110頭の幅があるため、年を添えて読む必要がある。

馬の生息地は季節で変わる。春から夏は草地、秋から冬は海ぞいの杉林や雑木林に移る放牧が、300年以上続いている[6]。この点は、モウコノウマの「家族群が広い草原を移動する」暮らしとは様子が異なり、移動の範囲は、岬という限られた土地の中に収まっている。

起源は江戸時代、高鍋藩の藩営牧場としての放牧とされ、1697年説もある[7]。御崎馬は、木曽馬・与那国馬などと並ぶ日本在来馬の一つである。

では、岬の平原は、馬がいるだけで草原として維持されているのか。

5. 草原は、だれが たもって いるの?

5. 馬の草原を守るのは、年に1回の野焼き

5. 草原の維持 ── 野焼きと保護の仕組み

といみさきの 草原では、年に1回、野やきが 行われます。馬の ための 草原を たもつ ためです[6]。

火を つける のは、ぼくじょうの 組合の 人たち です。野やきを しないと、草原は 木や 高い 草に おおわれて、馬の 食べる 草が へる おそれが あります。

みさきうまと、馬の いる 場所は、国が 大切に まもる ものに なって います[6]。

草原に すむ 馬の くらしは、人の 手が あって、つづいて きたのです。

都井岬の草原は、年に1回の野焼きで保たれています。行っているのは、都井御崎牧組合です[6]。

野焼きをしないと、草原には木や背の高い草がふえます。そうすると馬の食べる草が減るおそれがあります。野焼きは、馬の暮らす場所を保つための仕事、と考えられます。

御崎馬と繁殖地は、国の天然記念物に指定されています[6]。

ここまで見てきた3つの場所には、共通点があります。馬は、草原に近い場所で暮らしていること。そして、その場所を、人が管理したり、広げたり、保ったりしていることです。再導入されたモウコノウマも、アメリカの野生化馬も、御崎馬も、人の手を離れて完全に自立しているとはいえません。

日本の馬の飼養頭数は近年7万頭台で、2024年は約7万8千頭と紹介されています[8]。岬の馬は、そのうちのごく一部です。ふだんは牧場や乗馬クラブなど、人の暮らす場所のほうに多くの馬がいます。

都井岬の草原は、都井御崎牧組合による年1回の野焼きで維持されている[6]。野焼きは、草原が樹林へ遷移するのを防ぐ管理で、馬の生息地としての草原を保つ役割をもつと考えられる。御崎馬とその繁殖地は国指定の天然記念物である。

3地域を比べると、馬の「野生」は一様ではない。モウコノウマは、絶滅後に再導入され、IUCNの区分は野生絶滅から危機へ改善した。アメリカでは、家畜由来の馬が、行政の管理のもとで個体数が調整されている。都井岬では、人が放牧と野焼きを続けて草原を保っている。共通するのは、馬の生息地が草原的な環境であり、その維持に人間活動が何らかの形で関わる点である。

日本の馬の飼養頭数は近年7万頭台で推移し、2024年は約7万8千頭と紹介されている(岩手県資料による引用で、原典PDFは取得できていない)[8]。馬の暮らす場所を頭数で見れば、岬の馬はごく一部で、多くは人の暮らす地域の中にいる。

「馬はどこで暮らしているか」という問いの答えは、野生か家畜かの二択ではなく、人との距離の段階で考えるのが適切だと思われる。再導入されたモウコノウマ、行政が頭数を管理するアメリカの馬、放牧を続ける御崎馬は、それぞれ人との距離が異なる。

馬の いる 場所を たしかめよう

馬のいる場所を、自分の目で確かめる

馬のいる場所を、自分の目で確かめる

今日できること:ちずを ひらいて、モンゴルと、みやざきけんの といみさきを さがして みましょう。草原は、どんな 場所に ありそうですか。

出かけて できること:ぼくじょうや どうぶつえんで、馬が どこで 草を 食べて、どこで 休んで いるかを 見て みましょう。

もっと 知りたい ときは、下の 出てんの 記事を、おうちの 人と 見て みましょう。

今日できること:地図帳で、モンゴルと宮崎県の都井岬、アメリカ西部を探してみましょう。馬のいる場所が、海や山や平原のどのあたりにあるかを比べると、草原の広がり方が見えてきます。

出かけてできること:牧場や動物園、乗馬施設で、馬が草を食べる場所と休む場所を見てみましょう。野に暮らす馬の一日を想像する手がかりになります。

公式情報:環境省の「生物多様性保全上重要な里地里山」のページには、都井岬の草原と馬の保全が載っています。

今日できること:地図帳や地図サイトで、3つの地域(モンゴルのフスタイ国立公園、宮崎県の都井岬、アメリカ西部)を探し、標高や植生を比べる。馬の生息地が、どんな環境に当てはまるかを自分で確かめる入口になる。

出かけてできること:牧場や動物園で、馬が草を食べる場所・休む場所・水を飲む場所を観察する。

公式情報:環境省の里地里山のページ[6]は日本語で読める。IUCNの記事[2]は英語だが、再導入の年表が載っている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の事実は、公的機関の資料と、研究の要旨・紹介記事にもとづきます。頭数や年代には資料による幅があります。

  1. 環境省 ESABII 絶滅危惧哺乳類データベース「Equus ferus」. https://www.esabii.biodic.go.jp/database/mammal/perissodactyla/equus_ferus.html (生息環境・最後の野生個体・脅威)
  2. IUCN "25 years since reintroduction in Mongolia". https://www.iucn.org/news/commission-ecosystem-management/201803/extinction-free-ranging-successful-reintroduction (再導入の年と頭数・区分の変更)
  3. Przewalski's horse(Wikipedia英語版). https://en.wikipedia.org/wiki/Przewalski%27s_horse (家族群の構成)
  4. Librado et al. (2021) Nature、エクセター大学リポジトリの要旨. https://ore.exeter.ac.uk/repository/handle/10871/127531?show=full (家畜馬の起源と広がり)
  5. U.S. Bureau of Land Management "Program Data". https://www.blm.gov/programs/wild-horse-and-burro/about-the-program/program-data (野生の馬とロバの推定頭数と管理地域)
  6. 環境省「生物多様性保全上重要な里地里山(都井岬)」. https://www.env.go.jp/nature/satoyama/45_miyazaki/no45-5.html (御崎馬の暮らし・野焼き・天然記念物)
  7. 串間市の観光案内. https://www.satofull.jp/city-kushima-miyazaki/index.php (御崎馬の始まりの伝承)
  8. 岩手県資料(農林水産省「馬をめぐる情勢」の引用). https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/093/028/byoukan20251215.pdf (日本の馬の飼養頭数)

なおした ところ

更新履歴

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