1. 8わりが 水なら、のこりの 2わりは なに?
1. 8割が水なら、残りの2割には何が入っているのか
1. 8割が水分なら、残りの2割には何が入っているのか
うんちの 8わりは 水です[1]。べんぴの ときは 7わりくらいに へり、げりの ときは 9わり いじょうに なる ことも あると いわれます。
のこりの 2わりは、3つの ものから できて います。ひとつめは、たべものの カス。ふたつめは、ちょうの 中の かべから はがれた ものです。そして みっつめが、腸内細菌です[1]。
つまり、うんちは「たべものの カス」だけでは ありません。体の 中から はがれた ものや、すんで いる 細菌も、うんちの 一ぶんです。
2. 細菌は、うんちの 中で どのくらい?
2. 細菌は、固形分のどのくらいを占めるのか
2. 細菌は固形分のどれほどか:研究ごとに25〜54%ほどの幅がある
うんちを かわかして 水を とりのぞくと、のこった ものの 大きな ぶぶんは 細菌だと いう しらべが あります[2]。ある しらべでは、およそ 半分でした。ほかの しらべでは、4わりから 2わり 半くらいと、はばが あります[3]。
この 細菌には、生きて いる ものと、死んだ ものが まざって います。
数も すごい のです。うんち 1グラム、つまり 1円玉 1まいぶんの 重さに、1000おく こから 1ちょう こくらいの 細菌が いると する しらべが あります[3]。しらべる 人に よって、数字は ちがいます。
では、そんなに たくさんの 細菌は、うんちの 中で なにを して いるのでしょう。
乾燥させて重さをくらべる
1980年に科学雑誌「Nature」に載った研究は、細菌がヒトのうんちの固形分の主要な部分を占めると報告しました[2]。西洋型の食事をする人では、乾燥重量のおよそ55%が細菌だとする集計があります[3]。ほかに、25〜54%や44%という報告もあり、研究によって幅があります[11]。
これは水を除いた乾燥重量での割合です。水を含むうんち全体の半分が細菌、という意味ではありません。生きた細菌と死んだ細菌の両方が含まれています。
数え方で変わる「1グラムの菌」
数についても、健康長寿ネットは、うんち1グラムに約1兆個の腸内細菌がいると紹介しています[1]。一方、BioNumbersの集計は、1グラムあたり10の11乗〜12乗個、つまり1000億〜1兆個の範囲です[3]。「1兆」は幅の上の端なので、数字を見るときは範囲で読むほうが安全です。
これほど多くの細菌は、うんちの中でただ流されているだけなのでしょうか。うんちの色を手がかりに考えます。
Stephen & Cummings(1980, Nature 284:283)は、ヒトの糞便では細菌が固形分の主要部分を占めると報告した[2]。BioNumbersの集計では、西洋型の食事をとる人で乾燥重量の約55%が細菌とされる一方、25〜54%や44%の値もあり[3][11]、条件によって幅がある。これは乾燥重量の割合なので、水を含む糞便全体の半分が細菌という意味にはならない。また、生菌と死菌の両方を含む。
菌数も資料でずれる。健康長寿ネットは糞便1gあたり約1兆個とする[1]が、BioNumbersの集計は10の11〜12乗個で、1兆(10の12乗)はその上端にあたる[3]。そのため、数値は「約1000億〜1兆個」と範囲で扱うのが妥当である。
では、これほどの細菌は糞便の中で受け身にいるだけなのか。茶色の由来を見ると、細菌が積極的に関わっていることが分かる。
3. ドロドロの ものが、かたまるのは どこ?
3. どろどろの食べ物は、どこで「うんちの形」になるのか
3. 流動状の内容物は、どこで水を失って固まるのか
たべものは、口から 小腸に すすみ、さいごに 大腸に つきます。
ある しりょうでは、1日に 体の 中の ちょうへ 入る 水は、のみものと 体の えきを あわせて 9リットルくらいと されます[4]。そのうち 8リットルくらいは 小腸で すいとられます。
大腸に 来る 1リットルくらいも、ほとんど すいとられて、うんちに のこる 水は ほんの すこしです[4]。
大腸に 長く いるほど、水が たくさん すいとられて、うんちは かたく なります[5]。
9リットルがごくわずかになる
国立がん研究センターの資料では、消化管に入る水は、飲食物と消化液を合わせて1日に約9リットルとされます[4]。このうち約8リットルは小腸で吸収され、大腸に流れ込む約1リットルも、ほとんどが吸い取られます。うんちに残る水はごくわずかです。消化液の量は資料で3〜6リットルと差があるため、数字は目安です。
1日のうんちの量は、成人でおよそ100〜250g、食物繊維の多い食事の集団では平均約150gとされます[10]。約9リットルの水が入っていっても、出てくるうんち全体がこの重さなので、水がほとんど体に戻されていることが想像できます。
とどまる時間が硬さを決める
食べてからうんちとして出るまでの時間は、24〜48時間とする資料や、1〜3日ほどとする資料があり、個人差が大きいものです[4]。大腸に長くとどまるほど水が多く吸われて、うんちは硬くなります[5]。便秘のときに水分が減るのは、この流れで説明されます。
形は水の量で決まるとして、あの茶色は水と関係があるのでしょうか。
消化管には、飲食物と消化液を合わせて1日に約9Lの水が入る。国立がん研究センターの資料では、そのうち約8Lが小腸で吸収され、大腸に入る約1Lの大部分もさらに吸われて、糞便に残る水はごく少量とされる[4]。消化液の量は資料で3〜6Lと差があり、ここでは「約」付きの目安として扱う。
排出される量とも整合する。成人の1日の糞便量は100〜250g、食物繊維の多い食事の集団で平均約150gとされ[10]、糞便全体の重さが、入った水の量に比べてはるかに小さい。
硬さは、内容物が大腸にとどまる時間と関係する。食物が摂取から排出まで24〜48時間、あるいは1〜3日とされる範囲は個人差が大きく、正常範囲の厳密な値ではない[4]。大腸に長くとどまるほど水が多く吸収されて糞便は硬くなる[5]ので、便秘で水分が70%前後に減ることとも矛盾しない。
では、形が水分量で決まるとして、色は何で決まるのか。
4. 茶色は、胆汁の 色の へんしん?
4. うんちの茶色は、胆汁の色素が変身した色
4. 茶色の由来:胆汁色素ビリルビンは、腸内細菌でどう変わるのか
うんちの 茶色は、たべものの 色では ありません。胆汁という えきに ある 色の もとが、もとに なって います。
この 色の もとが 大腸に とどくと、腸内細菌が べつの ものに かえます。そして さいごに、茶色の ものに なると いわれます[6]。
この かわり方の くわしい しくみは、まだ 研究が つづいて います。
なお、胆汁が ちょうに とどかない 病気では、うんちが 白っぽく なる ことが あります[7]。うんちの 色が いつもと ちがう ままなら、大人に つたえて、お医者さんに みて もらいましょう。
胆汁の色素がたどる道
胆汁には、ビリルビンという色素が含まれています。ビリルビンは腸内細菌のはたらきで別の物質に変わり、その一つで茶色のステルコビリンという色素がうんちに色をつける、という説明が百科事典的な解説にあります[6]。
つまり、茶色は食べ物の色ではなく、体がつくった色素と細菌の共同作業の結果です。細菌が変換に関わる酵素や種類の細部は、研究が続いている分野とされます。
色が教えてくれること
反対に、胆汁が腸に届かない閉塞性黄疸などの病気では、ビリルビンが腸に届かず、うんちが白っぽい粘土のような色になることがあります[7]。いつもと違う色が続くときは、医療機関に相談するのが勧められています。
色の話の次は、においです。あの強いにおいも、細菌の仕事なのでしょうか。
胆汁には、色素ビリルビンが含まれる。腸に届いたビリルビンが腸内細菌の作用を受けて変換され、その産物の一つである茶色のステルコビリンが糞便を着色する、という概略が百科事典的な解説で紹介されている[6]。途中の物質名や経路の細部は、この解説に頼らず専門の資料で照合したい。
ここで重要なのは、茶色の主役が食べ物ではなく胆汁色素であり、かつ細菌の働きを経て初めて完成する点だ。そのため、細菌が大量に存在するという前章の数字と、茶色の由来は一つの流れとしてつながる。
逆に、胆汁が小腸に届かない閉塞性黄疸などでは、ビリルビンが細菌の変換を受けられず、糞便は粘土色(白っぽい色)になるとされる[7]。便の色の変化が続く場合は医療機関に相談する、という注意が添えられている。診断の話は本稿の範囲を超えるため、ここでは色が体の働きを映す例として触れるにとどめる。
色を細菌が決めるなら、においも細菌が関わるのか。
5. においと かさは、たべもので かわる?
5. においとかさは、食べたもので変わるのか
5. においとかさは、食事の内容でどう変わるのか
うんちの においの もとの ひとつは、腸内細菌が アミノさんを こなごなに する ときに できる、インドールや スカトールという ものです[8]。においの もとは、これだけとは かぎりません。
うんちの かさは、食物繊維で かわります。食物繊維は、小腸では こなれず、大腸まで とどきます。水に とけない ものは、うんちの かさを ふやして、ちょうの うごきを たすけると いわれます[9]。
1980ねんの しらべでは、キャベツの せんいは 細菌に ほとんど わけられて しまい、こむぎの 皮の せんいは こわれにくく、水を だいて うんちを ふやしました[2]。
においの元の一つ
においの元の一つに、腸内細菌がアミノ酸のトリプトファンを分解してできる、インドールやスカトールがあります[8]。たんぱく質を多くとると、スカトールが増えることが知られています(主に動物実験での報告です)。においの原因は、これだけではありません。
食物繊維の種類で、かさも変わる
食物繊維は小腸で消化されず、大腸まで届きます。水に溶けない不溶性は便のかさを増して腸の動きを助け、水に溶ける水溶性は腸内環境を整えると、厚生労働省のe-ヘルスネットは説明しています[9]。成人の目標量は、日本人の食事摂取基準(2025年版)で、男性が1日20g以上、女性が18g以上です。
1980年の研究では、同じ食物繊維でも効き方が違うことが示されました[2]。キャベツの繊維は腸内細菌にほぼ分解され、菌が増える助けになります。小麦ふすまの繊維は壊れにくく、水を抱えて、うんちをふやします。
キャベツの繊維のように細菌に分解される食物繊維は、細菌をふやす助けになります。前の章で見た細菌の多さには、こうした食べ物も関わっているのかもしれません。
ここまでの話を、身のまわりで確かめるには、どうすればよいでしょうか。
においの原因の一つは、腸内細菌がアミノ酸のトリプトファンを分解して生じるインドールやスカトールである[8]。たんぱく質の摂取が多いとスカトールが増えることが知られるが、報告の中心は動物実験であり、悪臭の原因がこれだけという意味ではない。「主な原因の一つ」と理解するのがよい。
かさは食物繊維で変わる。食物繊維は小腸で消化されずに大腸へ届き、水に溶けない不溶性は糞便のかさを増して腸管の動きを助け、水溶性は腸内環境を整える[9]。成人の目標量は、日本人の食事摂取基準(2025年版)で男性20g/日以上、女性18g/日以上である。
ただし、繊維の種類で作用の仕方が異なる。Stephen & Cummings(1980)は、キャベツの繊維が腸内細菌によってほぼ分解されて菌の増殖を助けるのに対し、小麦ふすまの繊維は分解されにくく、水を保持して糞便の重量を増やすことを示した[2]。つまり、前章で見た「固形分の細菌」の一部は、食物繊維をえさにして増えた分でもありうる。ただし、これは1980年の一つの研究に基づく見方で、現在の食事全般にそのまま当てはまるとは限らない。
では、これを家庭で確かめるには、何を見ればよいのか。
6. たべものの うらの ひょうじで、せんいを さがそう
6. 食品の表示で、食物繊維の数字を探す
6. 栄養成分表示と原典で、食物繊維の量と研究にあたる
おうちに ある パンや シリアル、野菜の ふくろの うらを 見て みましょう。栄養が かいて ある ところに、食物繊維が あれば、何グラムか よんで みます。
ふくろに かいて ない ときは、見つけた ものだけで かまいません。ほかの ものと、数字を くらべて みると おもしろいです。
うんちの かたさや 色が いつもと ちがう ことに 気づいたら、大人に つたえましょう。かんさつは、見るだけで だいじょうぶです。
家にある食品で調べる
パンやシリアル、野菜の袋の裏にある栄養成分表示には、食物繊維の量がのっていることがあります。何グラムか読んで、2つの食品を比べてみましょう。成人の目標量は男性20g以上、女性18g以上です。ここでは比べるために数字を読みます。
表示がない食品もあるので、見つけられたものだけで構いません。
原典と、色の見方
1980年のNature 284:283の要旨や、BioNumbersの数字は、出典欄から探せます。細菌の割合が研究ごとに25〜54%などと動く理由を、自分で考えてみるのもよいでしょう。
うんちの色や形がいつもと違う状態が続くときは、自分で決めずに、大人に伝えて医療機関で相談してください。
食品の栄養成分表示に食物繊維が書かれている場合、量を読んで食品どうしを比べられる。成人の目標量は男性20g/日以上、女性18g/日以上[9]で、ここでは量の大小を比べるために読む。
原典にあたるなら、Stephen & Cummings(1980, Nature 284:283)の要旨とBioNumbersの集計が、細菌の割合と菌数の幅を確かめる入口になる。国立がん研究センターの資料は水分の吸収と通過時間を、e-ヘルスネットは食物繊維の目標量を扱う。水分の吸収量や通過時間、胆汁色素の変換経路は、出典欄の解説資料にもとづく概算なので、正確な値が要るときは原典で照合してほしい。
色や形の変化が続くときは、自己判断せず医療機関に相談すること。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数字は資料によって幅があり、水分量・通過時間・細菌の割合は目安です。
- 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「腸内環境」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonaikankyo.html (水分と成分の内訳、菌数)
- Stephen AM, Cummings JH, "The microbial contribution to human faecal mass", Nature 284:283 (1980) https://www.nature.com/articles/284283a0 (細菌の割合、食物繊維の種類による違い)
- BioNumbers, 糞便固形分に占める細菌の割合・菌数の集計 https://bionumbers.hms.harvard.edu/bionumber.aspx?id=112983 (細菌の割合と菌数の幅)
- 国立がん研究センター がん情報サービス CHEER「便秘」 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/advice/060/001_bennpi.pdf (水分の吸収量、通過時間の目安)
- LibreTexts, Absorption and Feces Formation in the Large Intestine https://med.libretexts.org/ (大腸にとどまる時間と硬さ)
- Wikipedia, Stercobilin https://en.wikipedia.org/wiki/Stercobilin (茶色の色素の由来の概要)
- MedlinePlus, Clay-colored stools https://medlineplus.gov/ency/article/003129.htm (胆汁が届かないときの色の変化)
- 日本公衆衛生雑誌 https://www.jsph.jp/docs/magazine/1997/01/44_01_0005.pdf (においの元になる物質)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-016 (食物繊維の働きと目標量)
- Radiopaedia, Faeces https://radiopaedia.org/articles/faeces?lang=gb (1日のうんちの量)
- 査読論文レビュー, PMC4500995 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4500995/ (細菌の割合25〜54%の範囲)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。