1. うたって いるのは、だれ?
1. 歌っているのは誰で、その歌はどんな歌なのか
1. 歌い手は主にオスで、同じ群れの歌はそろっている
うたって いるのは、おもに オスの ザトウクジラです。こどもを うむ ために あつまる あたたかい うみで、ながい うたを くりかえし うたいます。
この うたは、でたらめでは ありません。きまった かたちが あります。そして、おなじ むれの オスたちは、その としは ほとんど おなじ うたを うたいます。
どうして そろうのでしょう。まわりの オスの こえを 聞いて、おぼえるからだと 考えられて います。人が はやりの うたを 耳で おぼえるのに、ちょっと にて います。ただし、なんの ために うたうのかは、まだ はっきり わかって いません。
では、この うたは、どこまで ひろがるのでしょうか。
歌っているのは、主にオスのザトウクジラです。子どもを産むために集まる暖かい海などで、長くて決まった形のある歌を、くり返し歌います[1]。
この歌は、その年の同じ群れのオスたちが、ほとんど同じものを歌います。そろう理由は、まわりのオスの声を聞いて学ぶからだと考えられています[1]。繁殖のための声の「表示」と考えられていて、歌の目的が「求愛」だとはっきり決まったわけではありません。
ここで気になるのは、群れの中で歌がそろうなら、別の群れの歌とはどれくらいちがうのか、ということです。そして、そのちがいは、どう動いていくのでしょうか。
ザトウクジラの歌は、主にオスが繁殖海域などで歌う、長くて形の決まった声の表示である。同じ群れのオスはその年ほぼ同じ歌を歌い、これは周囲のオスからの音声学習によると考えられている[1]。ただし、歌の役割が求愛なのか、オスどうしの牽制なのかは断定できず、「繁殖のための表示」という言い方にとどめるのが慎重である。
この性質が、歌を「文化」のように扱える理由になる。生まれつきの声だけで決まるなら、群れの歌がある年に突然入れ替わることはないはずだ。ところが現実には、歌は学ばれ、群れの間を動いていく。では、その動き方には、どんな向きや速さがあるのか。
2. うたは、どうやって となりの むれへ うつるの?
2. 歌のまねが隣の群れへ、数年かけて海を東へ広がる
2. 歌のまねが近隣の群れへ連なり、約2年ごとに東へ進む
こたえは、「となりの むれの うたを まねする」です。
南の 太平洋で、およそ 10年のあいだ、いくつもの むれの うたを 録音して くらべた 研究が あります。見たのは、東オーストラリア、ニューカレドニア、トンガ、アメリカりょうサモア、クックしょとう、フランスりょうポリネシアの 6つの むれです。そこには 11 しゅるいの うたが あったと つたえられて います[2]。
うたは、東オーストラリアから、となりの むれへ、また となりへと、じゅんばんに 東へ うつって いきました。フランスりょうポリネシアまで、ふつう 2年ほど かかったそうです[2]。
むきも ふしぎです。うたは、ほとんど いつも 西から 東へ すすみました。西へ もどった うたは、この 研究の あいだに 1つだけ でした[3]。東オーストラリアの むれが いちばん 大きいから かもしれない、と 言われて います。
答えは「となりの群れの歌をまねする」です。2011年に発表された研究では、約10年の録音を使って、南太平洋の隣り合う6つの群れ(東オーストラリア、ニューカレドニア、トンガ、アメリカ領サモア、クック諸島、フランス領ポリネシア)の歌を比べました。見つかった歌のタイプは11種類です[2]。
歌は東オーストラリアで始まり、少しずつ東の群れへ移って、フランス領ポリネシアまで届きました。そこまで、通常約2年かかったと報告されています[2]。別の論文の導入部でも、歌は南太平洋の西部から中央部を、通常約2年で何度も広がってきたと整理され、動物の海盆規模の文化の伝わり方として最もよい例の一つとされています[1]。
向きにもきまりがあります。歌はほぼいつも西から東へ動き、西へ戻ったのは、研究期間中に1つだけでした[3]。東オーストラリアの群れが最も大きく、小さい群れより影響が強いからかもしれない、と説明されていますが、これは推測です。
ここまでが、題名の問いへの答えです。ただ、歌が少しずつ変わりながら伝わるのではなく、一気にすべて入れ替わることもあります。
この広がりを数字で示したのが、2011年の研究である。約10年間(大学の発表では11年間)の録音から、南太平洋の隣り合う6つの群れ、すなわち東オーストラリア、ニューカレドニア、トンガ、アメリカ領サモア、クック諸島、フランス領ポリネシアの歌を比べ、11種類の歌タイプを見つけた。歌は東オーストラリアの群れで始まり、段階的に東へ進んで、フランス領ポリネシアに届いた。そこまで通常約2年かかっている[2]。
のちの論文も、近い群れほど似た歌を持ち、歌が西部・中央部の南太平洋を通常約2年で繰り返し広がったと述べ、非ヒト動物における海盆規模の水平的な文化伝播の最良の例の一つとしている[1]。群れから群れへ横に伝わる、このような広がり方を「水平伝播」と呼ぶ。
向きにも偏りがある。歌はほぼ常に西から東へ移動し、西へ戻ったのは研究期間中の1例だけだった[3]。理由として、東オーストラリアの群れが最大で影響力が大きい可能性が挙げられているが、これは推測の域を出ない。
ここまでが題名の問いへの答えである。ただし、歌が少しずつ変わりながら伝わるだけなら、「流行」と呼ぶ必要はない。実際には、歌が一気に入れ替わる出来事が記録されている。
3. 数頭の「よそ者」で、うたが ぜんぶ かわったって、ほんと?
3. 少数のよそ者で、群れの歌が丸ごと入れ替わった
3. 「革命」と呼ばれた入れ替わり:外来の少数の歌い手が引き金か
2000年に、おどろく けんきゅうが はっぴょう されました。東オーストラリアの 太平洋がわの むれの うたが、たった 数年で、西オーストラリアの インド洋がわの むれの うたに すっかり かわったのです[4]。
はじめは 少ししか かわりませんでした。1997年には、ふるい うたと あたらしい うた、まざった うたが 聞こえました。1998年には、あたらしい うたしか 聞こえなく なりました[5]。
きっかけは、ほんの 少しの 「よそ者」の うたい手だと みられて います[4]。「あたらしい うたの ほうが 人気が 出るのかも」と 考えた 学者も いますが、まだ たしかな こたえでは ありません[5]。
この できごとは、「うたの 革命」と よばれます。
2000年の『ネイチャー』に載った論文は、研究者を驚かせました。東オーストラリア沖(太平洋側)の群れの歌が、西オーストラリア(インド洋側)の群れの歌に「急速かつ完全に」入れ替わったのです。ごく少数の「よそ者」の歌い手が入り込んだのが原因らしいとされ、動物の音声の伝統として前例がない、と著者は述べました[4]。
録音は1995年から98年まで、クイーンズランド州南東沖で行われ、1,057時間分の歌が調べられました。最初は変化が小さく、1997年には古い歌と新しい歌、その混ざった歌が同じ海で聞かれました。1998年には、新しい歌だけになりました。その新しい歌は、1996年に西海岸で歌われていた歌とほぼ同じでした[5]。
なぜ新しい歌が受け入れられたのかは、決まった答えがありません。著者は、目新しさそのものが歌の変化を後押しするのかもしれない、と示唆しました[5]。「新しい歌のほうがモテる」と言い切れる証拠ではなく、あくまで著者の提案です。
この入れ替わりは、研究者から「革命」と呼ばれています。では、革命が起きたあと、歌はどうなるのでしょうか。
決定的な例が、2000年の『ネイチャー』論文である。東オーストラリア沖(太平洋側)の群れの歌が、西オーストラリア(インド洋側)の群れの歌に急速かつ完全に置き換わったと報告され、原因はごく少数の「外来」の歌い手の流入とみられた。著者は、動物の文化的な音声の伝統としては前例がないと述べている[4]。
経過は、1995〜98年にクイーンズランド南東沖で録音した計1,057時間の歌の分析から追われた。初めの変化は小さく、1997年には古い歌・新しい歌・両者が混ざった歌が併存し、1998年には新しい歌だけになった。新しい歌は、1996年の西海岸の歌とほぼ同じだった[5]。
併存する時期があったことは重要である。ある日突然全員が書き換えられたのではなく、個々のオスが少しずつ新しい歌に乗り換え、やがて古い歌が消えたとみるのが自然だ。その引き金について、著者は目新しさが変化を促すかもしれないと示唆したが、確定した結論ではない。目新しい歌ほど有利になる、とまでは言えない[5]。
では、こうして歌が入れ替わるたびに、歌の中身はどう変わるのか。
4. あたらしい うたは、むずかしく なるの? かんたんに なるの?
4. 東オーストラリアの13年調査では、革命のあと歌は単純になった
4. 東オーストラリアの13年調査では、歌の複雑さは小さな変化で増え、革命で下がった
東オーストラリアの むれを 13年 つづけて しらべた 研究が あります。すると、1年ごとの 小さな かわり方では、うたが すこしずつ ふくざつに なりました。ところが、うたが ぜんぶ 入れかわる 「革命」の ときは、うたが かんたんに なりました[6]。
どうしてでしょう。まったく あたらしい うたを おぼえるのには、かぎりが あるからかも しれない、と 書かれて います。ただし、これは 考えの 1つです。
みんなが おなじ うたを うたう なかで、1ぴきだけ めだつ ために、少しずつ かざりを つけて いるのかも しれない、という 考えも あります[6]。まだ 決まった こたえでは ありません。
東オーストラリアの群れを13年連続で調べた2018年の研究があります。すると、年ごとの小さな変化では、歌の複雑さは増えていました。ところが、歌が丸ごと入れ替わる「革命」では、複雑さが下がったのです[6]。
なぜ単純になるのか。著者は、まったく新しい材料を社会的に学ぶ力には限りがあるのかもしれない、と示唆しています。つまり、新しい歌をまるごと覚えるときは、細かい飾りまでは覚えきれない、という考えです。
反対に、年々複雑になる理由についても、著者は仮説を出しています。全員が同じ歌を歌う中で、オスが目立つための「飾り」になっているのかもしれない、というものです[6]。どちらも確かめられた結論ではなく、これからの研究が待たれる部分です。
13年連続の調査では、東オーストラリアの群れの歌の複雑さは、年ごとの小さな変化の間は増え、歌が丸ごと入れ替わる革命では下がった[6]。ここまでが観察された結果である。問題は理由で、著者は新しい材料を社会的に学ぶ能力に限界がある可能性を示唆している。ただし、なぜ単純になるかは仮説であり、断定はされていない。
年々の複雑化についても、全員が同じ歌を歌う集団の中で、個体が目立つための装飾として働くのかもしれない、という見方が出されている[6]。ここには緊張関係がある。他と同じ歌でなければ仲間に入れない一方、同じだけでは目立たない。この「そろえる力」と「目立つ力」で説明する読み方は、論文の示唆をつなげた仮説であり、論文が因果を実証したわけではない。
では、そもそも海を隔てた群れのオスどうしは、いつ、どこで互いの歌を聞くのか。
5. うたは、どこで きこえて いるの?
5. 遠く離れた群れは、どこで歌を聞き合うのか
5. 歌はどこで受け渡されるのか:3つの仮説と、南極海のえさ場
ここが、いちばん わかって いない ところです。遠くに すむ クジラが、いつ どこで たがいの うたを 聞くのでしょう。
学者は、3つの 考えを 出して います[1]。
1つめは、ある 年の あと、べつの むれへ うつる クジラが いる、という 考え。2つめは、おなじ 年の うちに、2つの 子そだての うみを ゆき来する クジラが いる、という 考え。これは めずらしいと されます。3つめは、みんなが 通る 回遊の みちや、えさを たべる 場所で 聞き合う、という 考えです。
3つめに 近い 手がかりも あります。南極の 近くの えさ場で 2010年の はじめに 録音した うたに、4つか それより 多くの ふしが ありました。その 4つは、東オーストラリアの 2009年の うたと、同じ 年の おわりの ニューカレドニアの うたと、同じでした[1]。えさ場で うたが わたされた かのうせいを ささえますが、そうだと 決まった わけでは ありません。
歌がどこで届き合うのかは、はっきり分かっていません。2013年の論文は、3つの可能性を整理しています[1]。
① 繁殖期をまたいで、個体が別の群れへ移る。② 同じ繁殖期に、2つの繁殖群の間を行き来する(まれ)。③ 共通の回遊の道すじや、高緯度のえさ場で歌が聞き合われる。
③を支える手がかりが、南極海のえさ場で2010年初めに録音された歌です。4つ以上のテーマがあり、同じ4つが、東オーストラリアの2009年の歌と、同じ年の後半のニューカレドニアの歌から見つかりました[1]。ただし、これはえさ場で歌が受け渡された可能性を支える証拠の一つにとどまります。
では、こうして広がり続けた歌は、その後どこまで行ったのでしょうか。
歌が実際にどこで受け渡されるかは、仮説の段階にある。2013年の論文は、三つの経路を整理している。(1) 繁殖期をまたいで個体が別の群れへ移る。(2) 同じ繁殖期に二つの繁殖群の間を移動する(まれとされる)。(3) 共通の回遊路や高緯度のえさ場で歌が聞き合われる[1]。
(3)に手がかりを与えるのが、南極海のえさ場(Area V)で2010年初めに録音された歌である。そこには4つ以上のテーマがあり、同じ4つが、東オーストラリアの2009年の歌と、同年後半のニューカレドニアの歌で見つかった[1]。西の群れの歌が、東の群れの歌と同じテーマを持つ場所でも聞かれたことになる。そのため、えさ場が歌の受け渡しの場になりうるとされる。
ただし、この結果はあくまで可能性を支えるもので、「えさ場で伝わった」と言い切る根拠にはならない。1回の録音にもとづく点にも注意が要る。そして仮説(1)〜(3)は排他的ではなく、複数が同時に働くこともありうる。
もし歌が受け渡される場所が複数あるなら、歌は太平洋の東の端を越えて、さらに先へ進めるのだろうか。
6. うたは、もっと とおくまで いったの? ほかの うみでは?
6. 歌は太平洋の東端へ届いたのか、ほかの海ではどうか
6. 歌はエクアドルまで一致が見つかり、大西洋・インド洋の比較研究では革命が見つかっていない
2022年の けんきゅうでは、2016年から 2018年に 録音した フランスりょうポリネシアの うたの ふしが、2018年の エクアドルの うたと 同じだった、と つたえられて います[7]。ここまでが 見つかった ことです。これを、うたが 東オーストラリアから ポリネシアを 通って エクアドルまで 東へ ひろがった あらわれだと 見る 学者が います。
けれど、ほかの うみでは ようすが ちがいます。アフリカの ガボンの 近くの 大西洋と、マダガスカルの 近くの インド洋の うたを くらべた 研究では、うたの にかたは 年に よって 大きく かわりました。むれの ちがいよりも、録音した 年の ほうが、うたを わける ものさしに なって いました[8]。うたが ぜんぶ 入れかわる 「革命」は、見つかりませんでした。
ただし、しらべた うたは 多くないので、「そう 見える」くらいの はなしです。
歌の旅は、太平洋の東端で終わりませんでした。2022年の論文は、2016〜18年に録音されたフランス領ポリネシアの歌のテーマが、2018年のエクアドルの歌のテーマと一致したと報告しています[7]。観察されたのはこのテーマの一致です。これを、東オーストラリアからポリネシア、そしてエクアドルへと、歌の入れ替わりが東へ進み続けた結果と解釈するのが、論文の見方です。
一方、ほかの海では様子がちがいます。大西洋東部(ガボン)とインド洋南西部(マダガスカル)の2001〜2005年の歌を比べた研究では、歌の似かたが年によって大きく変わり、群れの違いより録音した年のほうが歌をまとめる基準になっていました。南太平洋のような、全面的な入れ替わりは見つかっていません[8]。
ただし、調べた歌の数が限られるため、この結果は「示唆的」とされる段階です。海の広さ、群れの大きさ、クジラの動き方がちがえば、歌の広がり方も変わるのでしょう。それが何なのかは、これから調べられる課題です。
広がりは、南太平洋の東端で止まらなかった。2022年に『ロイヤル・ソサエティ・オープン・サイエンス』に載った研究は、2016〜18年に録音されたフランス領ポリネシアの歌のテーマが、2018年のエクアドルの歌のテーマと一致したと報告する。東オーストラリア、ポリネシア、エクアドルと、歌の入れ替わりが東へ進み続けているという解釈になる[7]。観察されたのはテーマの一致で、東への連鎖はその解釈である。
では、どの海でも同じことが起きるのか。大西洋東部(ガボン)とインド洋南西部(マダガスカル)の2001〜2005年の歌を比べた研究では、類似度(Dice係数)が36〜100%と年によって大きく変わり、群れの違いより録音年のほうが歌をまとめる基準になった。革命級の全面入れ替わりは見つかっていない[8]。サンプルが少なく、結果は示唆的にとどまる。
南太平洋で見えた「西から東への連鎖」が、世界の海に共通する法則なのか、東オーストラリアの群れが大きいなどの条件が揃ったから見えた例外なのかは、現時点では分からない。海の広さ、群れの大きさ、移動の仕方といった条件の比較が、次の課題になる。
7. じぶんで ためして みよう
7. 「まねの連鎖」を、自分の耳と声で試す
7. 伝言歌で「変化の積もり方」を体験し、原典に当たる
きょう できる こと
ともだち 5人くらいで、じゅんばんに ならんで みましょう。1ばんめの 人が、みじかい ふしを ハミングで 3回 うたいます。2ばんめの 人は、それを 耳で 聞いて おぼえて、つぎの 人に うたって つたえます。いちばん さいごの 人は、元の ふしと くらべて みましょう。
ふしは、どこが かわるでしょうか。少しずつ かわったり、ちがう ふしに なったり します。ザトウクジラの うたも、こうして ひろがりながら かわって いくのかも しれません。
しらべる とき
水族館や はくぶつかんの ホームページで、ザトウクジラの うたの 録音を さがして みましょう。おとなの 人と いっしょに 見ると あんしんです。
伝言歌で試す
友だち5〜6人で順に並び、最初の人が短いふしをハミングで3回聞かせます。次の人は耳で覚えて、隣の人へ歌って伝えます。最後の人と最初の人のふしを比べてみましょう。
どこが変わったか。ほぼ同じだったか。1人ずつ少しずつ変わる様子は、クジラの歌が群れの間を伝わるときの、小さな変化の積み重ねに少しだけ似ています。ただし、実際のクジラの歌は人間のハミングよりずっと長く複雑なので、あくまで雰囲気をつかむ遊びです。
もう一つ、やってみる
3人くらいで、同じ伝言歌を2回やってみましょう。1回目と2回目で、変わる場所は同じでしょうか。それとも毎回ちがうでしょうか。クジラの歌でも、変化が決まった形で起きるのか、そのつど偶然なのかは、気になるところです。
体験でつかむ
友人5〜6人で伝言歌を試す。最初の人が短い旋律を3回ハミングし、次の人は耳で覚えて隣へ歌い継ぐ。最後の人の旋律を、最初の旋律と比べる。変化が何人目から出るか、数人分重なるとどれほど変わるかを観察できる。クジラの歌の「年々の小さな変化」が積もる様子の、ごく粗い模型にすぎないが、歌が学習で伝わるとはどういうことかを実感する助けになる。
原典に当たる
本記事の中心は、2011年の隣り合う6群れの比較[2]、2013年の伝播経路の整理[1]、2000年の歌の入れ替わりの報告[4]、2018年の複雑さの変化[6]、2022年のエクアドルへの広がり[7]、大西洋・インド洋の比較[8]である。原典の本文を読むと、数字の出し方やデータの範囲がより正確に分かる。歌の「どこで受け渡されるか」が決着していない以上、新しい研究が出れば、この記事の仮説の部分は書き換わりうる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- Garland, E. C. et al. Population structure of humpback whale song in the South Pacific(PLoS ONE, 2013). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3835899/ (歌の学習、広がる速さ、受け渡しの場の3つの仮説、南極海のえさ場の歌)
- UQ News「Humpback whales spread songs across Pacific」2011. https://news.uq.edu.au/2011-04-15-humpback-whales-spread-songs-across-pacific (6つの群れ・11種類の歌・約2年で東へ)
- ScienceDaily 2011(Garland らの研究の紹介). https://www.sciencedaily.com/releases/2011/04/110414131444.htm (歌がほぼ西から東へ動くこと)
- Noad, M. J. et al. Cultural revolution in whale songs. Nature 408:537 (2000)の抄録(CWR掲載). https://www.cwr.org.au/?p=222 (歌が急速かつ完全に入れ替わった報告)
- Scientific American「Whale Song Revolution」. https://www.scientificamerican.com/article/whale-song-revolution (1997〜98年の入れ替わりの経過、目新しさの示唆)
- Allen, J. A. et al. Cultural revolutions reduce complexity in the songs of humpback whales. Proc R Soc B 285:20182088 (2018). https://research-portal.st-andrews.ac.uk/en/publications/cultural-revolutions-reduce-complexity-in-the-songs-of-humpback-w/ (革命と歌の複雑さ)
- Schulze, E. et al. Humpback whale song revolutions continue to spread from the central into the eastern South Pacific. Royal Society Open Science 9:220158 (2022)(DOAJ掲載の論文情報). https://doaj.org/article/e5a10e58b1ae4c62804a20d786c1dfa6 (ポリネシアからエクアドルへの歌の一致)
- 大西洋東部(ガボン)とインド洋南西部(マダガスカル)のザトウクジラの歌を比べた論文(PMC6281946). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6281946/ (年ごとに似かたが変わること)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。