1. 水が こおると、どうして ふくらむの?
1. 凍った水は、同じ重さで約9%大きくなる
1. 氷が浮く条件 ── 体積約9%の増加と密度の低下
こおらせた ペットボトルを 見ると、ふくらんで いる ことが あります。水は こおると、おなじ おもさのまま、体積が 1わりほど(100が 109ぐらいに)ふえます[3]。
おなじ おもさで 大きく なるので、ぎゅっと つまって いる ぐあいが ゆるく なります。この「つまりぐあい」を 密度と いいます。氷の 密度は 水より ちいさく、だから 氷は 水に うきます[1]。
100の 水が こおると、およそ 109に なる、と おもって ください。
冷凍庫に入れたペットボトルや製氷皿の水は、凍ると膨らみます。日本語版Wikipediaの「氷」の項目は、通常の気圧で凍るとき体積がおよそ9%増えると説明しています[3]。
重さは変わらず、体積だけが増えるのですから、一定の体積あたりの重さ、つまり密度は小さくなります。0℃・1気圧での氷の密度は0.9167〜0.9168 g/cm³、液体の水は約0.9998 g/cm³です[2]。1÷0.9168を計算すると約1.09で、体積が約9%増えることと合います。
密度の小さいほうが、大きいほうの上に浮きます。氷は水より軽いので、水に浮くのです[1]。
では、浮いた氷は、水の上にどのくらい顔を出しているのでしょうか。
氷が水に浮くのは、凍るときに質量が変わらず体積だけが増えて、密度が液体の水より小さくなるためである[1]。0℃・1気圧での値は、氷が0.9167〜0.9168 g/cm³、液体の水が約0.9998 g/cm³とされ[2]、日本語版Wikipediaは通常気圧での凍結に伴う体積増加をおよそ9%と記す[3]。
検算すると、1÷0.9168≒1.0907で、体積増加は約9.1%である。これに対し、密度の低下は1−0.9167÷0.9998≒0.083、つまり約8.3%にとどまる。USGSは「密度が約9%下がる」と書いているが[1]、厳密には9%前後という概数であり、体積が約9%増えることと、密度が約9%下がることは別の数字である。出典の言い回しをそのまま重ねて読まないほうがよい。
では、密度が約8.3%小さい氷は、水面からどれだけ顔を出すのか。この問いも、同じ密度の値で計算できる。
2. うかんだ 氷は、水の うえに どれくらい 出る?
2. 浮かんだ氷は、水面の上に約8%しか出ていない
2. 浮力のつり合いから、水面上に出る割合を検算する
コップに うかぶ 氷は、うえに 出て いる ぶぶんが 少ないと 気づいた ことは ありませんか。
氷の 密度は、水の やく0.92ばいです。うかんで いる 氷は、じぶんの おもさと おなじ おもさの 水を おしのけて います。だから、氷の 体積の やく92%が 水の なかに あり、水の うえに 出るのは やく8%です。
これは、水と 氷の 数字を つかって、わたしたちが した けいさんです。ほんとうの 氷は、とけかけだったり、空気の あわを ふくんでいたり するので、すこし ちがう ことも あります。
水に浮かぶ氷は、自分と同じ重さの水を押しのけてつり合っています。氷の密度は水の約0.917倍(0.9167÷0.9998)なので、氷の体積の約92%が水の中にあり、水面の上に出るのは約8%です。
これは資料の密度の値から計算した結果で、実物がきっちりこの値になるわけではありません。空気の泡を含んだ氷や、とけかけの氷では、少しずれます。
さらに、この計算には、おもしろい帰結があります。コップの水に氷を浮かべ、水面の高さに印をつけておくと、氷がとけきったあとの水面は、ほとんど元の高さのままのはずです。水の中にあった約92%の体積に、とけた水の体積が、ほぼぴったり当てはまるからです。
浮かぶ氷には、氷の重さと、氷が押しのけた水の重さがつり合う浮力が働く。したがって水中にある体積の割合は、氷の密度÷水の密度=0.9167÷0.9998≒0.917で、約92%が水中、約8%が水面上となる。出典の値[2]を使った検算であり、実際の氷は気泡を含む場合や、塩分を含む水に浮かぶ場合で割合が変わる。
この計算は逆向きにも使える。氷がとけて水になると、元の氷の質量が同じ質量の水になる。その水の体積は、氷が水中にあった部分の体積にほぼ等しい。そのため、純水の氷が純水に浮かんで、とけきったときの水面は、ほとんど変わらないと予想できる。これは、論理から予想される結果であり、実験では蒸発や室温などの影響が重なる。
ただし、ここまでの話は「氷がなぜ軽いか」の理由を、体積の増え方として見ただけである。では、氷の中では水の分子に何が起きていて、体積が増えるのか。
3. 「すきまが あるから かるい」は、ほんとう?
3. 「氷はすきまだらけだから軽い」説明の、使いどころと限界
3. 水素結合と「すきま説」── 説明できることと、できないこと
氷が かるい わけを、「氷の なかには すきまが たくさん あるから」と せつめいする ことが あります。
水の つぶ(分子)は、おたがいを 手で つなぐ ように くっつきます。この つなぎかたを 水素結合と いいます。氷の ときは、つぶが きまった かたちに ならんで、すきまの 多い かたちの 結晶に なります[4]。
ただし、ある ひとが 一人で 書いた メモでは、4ど より つめたい 水が、こおる まえから ふくらむ わけは、「すきまが ある から」では うまく せつめいできない、と 書かれて います[5]。
こおった 氷の かたちの せつめいと、こおる まえの 水が ふくらむ わけは、わけて 考えます。あとの ほうは、まだ 研究中の ところが あります。
日本語版Wikipediaの「水の性質」では、氷の密度が小さい理由を、水分子どうしが水素結合でつながった氷の結晶構造が、かさばるためだと説明しています[4]。水分子が決まった並び方になると、すきまの多い形ができるのです。
ただし、この「すきまがあるから」という説明には、注意が必要です。水は4℃より冷やすと、凍る前から膨らみ始めます。個人のメモは、冷やされた水が向かうのは結晶の氷そのものではなく、低密度アモルファス氷に近い構造だとして、「氷のすきまに水分子が入った構造だから」という説明は不正確だと指摘しています[5]。
整理すると、凍った氷の結晶が水素結合でかさばる形になる、という説明は、百科事典にも書かれている基本の説明です。議論が残るのは、凍る前の4℃以下の水が膨らむ仕組みのほうです。
個人のメモなので、一つの見方として読むのがよいでしょう。氷が水より軽い、という事実は、密度の値ではっきり確かめられます。
氷が水より低密度なのは、水分子が水素結合で結ばれ、結晶構造が嵩高い(かさだかい)ことによる、と説明される[4]。地球上の氷のほとんどは、六方晶の氷Ihである[2]。
この説明は、凍った後の氷に限れば分かりやすい。しかし、水は4℃以下で冷やすと、凍る前から膨張し始める。個人のメモ[5]は、過冷却水は膨張するが結晶状の構造はほとんど増えないことを挙げ、4℃以下の膨張を「氷のすきまに水分子が入った構造だから」と説明するのは不正確だとする。冷えた水が近づくのは結晶の氷ではなく、低密度アモルファス氷に近い構造だという。
注意点は二つある。一つは、このメモは個人の研究者によるもので、学会や公的機関の資料ではない点。もう一つは、このメモが扱うのは「氷が軽い理由」ではなく「4℃以下の水の膨張」である点。したがって、「すきま説」を全面否定する根拠にはならない。本記事では、氷の結晶についての「すきま説」は二次資料の説明、4℃以下の膨張の分子的な説明は研究の途中、と区別して書く。
それでも、氷が水より軽い、という事実は動かない。そして、このわずかな密度差が、冬の湖を救っている。
4. 冬の 湖は、どうして 上から こおるの?
4. 湖が上から凍るから、氷の下で魚が冬を越せる
4. 水の密度は約4℃で最大になる ── 湖が底から凍らない理由
冬の 湖を 思いうかべて ください。つめたい 風が ふくのは、水の うえの ほうです。
水は、0どの ときより、4どの ときが いちばん おもく なります[4]。だから、つめたく なった うわべの 水が しずんで、そこの ほうに たまるのは、4どまでです。それより つめたく なると、水は かるく なって、うえに のこります。
そのまま こおるのは、いちばん うえの 水から です。氷は うかぶので、水面に ふたを した ように なります。ふたの したで、魚や 水草は すごす ことが できます[2]。
もし 水が こおる 温度で いちばん おもく なる ものだったら、つめたい 水が しずみつづけて、湖は そこから こおる かもしれない、と アメリカの 国の ページは せつめいして います[1]。
冬の湖の水面を、冷たい風が冷やします。冷やされた水は密度が大きくなって沈みます。ところが、純粋な水は、標準大気圧で約3.98℃(4℃近く)のときに密度が最大になります[4]。つまり、水温が4℃より下がると、水は軽くなり、沈むのをやめて水面近くにとどまります。
このため、結氷する湖では、水面付近の水より、湖底近くの水のほうが暖かい「逆列成層」という層ができる、と秋田県の報告書は一般的な性質として説明しています[6]。湖の水面近くが0℃になれば、そこから氷ができ、その氷は浮いて湖にふたをします。
USGSは、もし水が凍る温度で最も重くなる物質だったら、湖は底から凍りうると説明しています[1]。実際はそうならないので、氷が湖面を覆い、外の冷たい空気の影響を受けにくくなって、氷の下で動植物が冬を越せる環境ができます[2]。
氷が浮くことと、水が4℃で最も重くなることの二つが重なって、冬の湖の生きものは守られています。
冬の湖が上から凍る理由は、氷が浮くことに加えて、純水の密度が標準大気圧で3.984℃のとき最大になる性質にある。日本語版Wikipediaによると、この最大密度は999.97495 kg/m³、0℃の氷は916.72 kg/m³である[4]。
水が冷える過程を考えてみる。水温が4℃を下回ると、冷えた水は軽くなって沈まず、表層にとどまる。その結果、結氷する湖では、表層より湖底付近のほうが水温が高い逆列成層ができる[6]。表層が0℃に達すると氷ができ、その氷は浮いて、湖面を覆う。USGSは、もし水が凍る温度で最も重くなる物質だったら、冷えた表面の水が沈み、湖が底から凍りうると述べている[1]。実際にはそうならないため、水域が底から凍ることを防ぎ、氷が湖面を覆って外気の冷えの影響を受けにくくなるため、氷の下で動植物が冬を越せる環境ができる[2]。
ここまでの逆列成層は、結氷する湖一般についての説明であり、秋田県の十和田湖に関する報告書にも同趣旨の記述がある。十和田湖中湖での実際の観測値は、次章で別に扱う。
では、すべての寒い湖が、この仕組みどおりに凍るのだろうか。
5. ぜんぶは こおらない 湖も ある? ── 十和田湖
5. 全面結氷しない湖もある ── 十和田湖の場合
5. 全面結氷しない湖 ── 十和田湖と、湧水の影響という推測
冬に こおる 湖の はなしを して きましたが、ぜんぶの 湖が まるごと こおる わけでは ありません。
秋田県と 青森県に ある 十和田湖は、ぜんたいが こおらない れいと して、秋田県の 調べた ものに のって います。わけは、湖の そこの ほうの わき水の えいきょうでは ないか、と 考えられて いる だけで、はっきりは きまって いません[6]。
水の ふしぎな せいしつは、湖ごとの ちがいで 見え方が かわる のです。
ここまでは、湖が水面から凍る話でした。ところが、すべての湖が全面結氷するわけではありません。
秋田県の報告書は、十和田湖を、全面結氷しない湖の例にあげています。その理由として、湧水の影響が推測されており、報告書はこれを従来から言われてきた湧水説を支持する結果とみています[6]。ただし、あくまで推測です。つまり、水の密度の性質だけでは、湖のようすは決まりません。湖の深さ、広さ、湧水などが、重なって決まっています。
湖の氷の様子を調べるときは、水の性質に加えて、その湖の特徴にも目を向けると、見えてくるものが増えます。
水の密度が4℃で最大になるという性質は、全面結氷する湖の説明に役立つが、すべての湖に同じ結果をもたらすわけではない。秋田県の報告書は、十和田湖を全面結氷しない例外として挙げ、その背景に湧水の影響が推測されると記す[6]。
注意したいのは、「推測される」という表現である。資料は、湧水が原因だと断定していない(従来の湧水説を支持する結果、という位置づけである)。なお、報告書が十和田湖中湖で観測した水温・水質の層は、逆列成層そのものではなく、化学躍層として考察されている。ここから言えるのは、水の密度の性質が、湖が凍る一つの条件であって、湖の深さ・広さ・湧水など、ほかの条件も重なって結果が決まる、ということまでである。
では、この二つの性質の話を、家で試すことはできるだろうか。
6. 家に ある ものでも、たしかめられる
6. コップとペンで、氷のとけ方を確かめる
6. 家庭でできる検算と、資料の読みどころ
とうめいな コップに 水と 氷を 入れて、水面の たかさに ペンで しるしを つけて みましょう。コップの 水も 氷も、おなじ 水どうしに します。氷が とけたら、水面は どう なるでしょう。氷が 水の なかに あった ぶぶんと、とけた 水の 体積が ほとんど おなじなので、水面は ほとんど かわらない はずです。
ペットボトルで 氷を つくる ときは、ふたを しめずに、おうちの 人と いっしょに して ください。いっぱいに すると、ふくらんだ とき、こわれる ことが あります。
湖や ひょうざんの 本を 読んで みるのも おもしろいです。
透明なコップに水と氷を入れ、水面の高さにペンで印をつけてみましょう。水も氷も、同じ水道水どうしにします。氷がとけたあと、水面は印の近くのままで、ほとんど変わらないはずです。ずれたら、氷に空気の泡が入っていなかったか、時間がたって水が蒸発しなかったかなど、どの条件が違ったのかを考えてみてください。
ペットボトルで氷を作るときは、ふたを閉めず、大人といっしょに行ってください。水が膨らむので、容器が壊れることがあります。
家庭でできる検算を二つ挙げる。一つは、透明なコップに同じ水道水どうし(水と、同じ水でつくった氷)を入れ、水面に印をつけて、氷がとけた後の水面を比べる方法。結果は「ほとんど変わらないはず」だが、蒸発や室温、氷の中の気泡の影響が出るので、ぴったり同じにはならない。ずれた分が、なぜ生まれたかを考えること自体が観察になる。もう一つは、同じ容器に入れた水の水位に印をつけ、凍らせた後の氷の高さと比べる方法である。ふたを閉めず、大人といっしょに行う。容器が壊れることがあるため、満杯にしない。
資料の読みどころは三つある。①USGSの水の密度のページ[1]は、氷の密度が約9%下がることと、湖が底から凍りうる理由の両方が、英語で短く読める。②「すきま説」の限界を扱った研究者のメモ[5]は、個人のもので、4℃以下の水が膨らむ仕組みの分子レベルの説明に、議論の余地があることを知る入口になる。③十和田湖の報告書[6]は、全面結氷しない湖の存在と、その理由の推測が、実際の観測資料に出てくることを示す。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:公的機関(USGS・秋田県)の資料と、百科事典の記事、個人の研究者のメモを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- USGS Water Science School「Water density」。https://www.usgs.gov/water-science-school/science/water-density (氷の密度が下がること、湖が上から凍る理由について。英語)
- Wikipedia「Ice」。https://en.wikipedia.org/wiki/Ice (氷と水の密度の値、氷の下の環境について。百科事典の記事)
- Wikipedia日本語版「氷」。https://ja.wikipedia.org/wiki/氷 (凍るときの体積の増え方について。百科事典の記事)
- Wikipedia日本語版「水の性質」。https://ja.wikipedia.org/wiki/水の性質 (最大密度の温度、水素結合による結晶構造について。百科事典の記事)
- vitroid「水は4℃以下で膨張する」(Scrapbox)。https://scrapbox.io/vitroid/ (「すきま説」の限界について。個人の研究者のメモ)
- 秋田県「十和田湖中湖における鉛直方向の水質特性について」。秋田県報告書(PDF) (結氷する湖の逆列成層の説明と、十和田湖が全面結氷しない例であること、湧水の推測について。県の報告書)
なおした ところ
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