1. 夜空の かたまりは、いくつ 見える?
1. 空に見える小さなかたまりは、いくつの星でできているのか
1. 肉眼で数えると何個か ── プレアデス星団の見え方と距離
すばるは、目で 見ると、小さな 星が 6つか 7つ、こちゃこちゃ 集まって 見えます[1]。目の いい 人は、8つほど 数えられると いいます[2]。
双眼鏡を つかうと、数十こも 数えられます[2]。
ただし、見える 数は、人や 空の くらさで かわります。どの 人にも「6つ」と 見える わけでは ありません。
この かたまりは、地球から 400光年 ほど はなれて います[3]。光が 400年 かけて とどく ほど 遠い 場所です。
さて、この かたまりを、人びとは なんと よんで いたのでしょう。
2. しずおかでは「ゴジャゴジャボシ」、なぜ?
2. 静岡では「ゴジャゴジャボシ」── 見え方をそのまま名前にした
2. 方言に残る見え方 ── ゴジャゴジャボシ・六連星・むりかぶし
星の 名前を たくさん 集めた 人が います。のじり ほうえいという 人です。
その 人の じてんには、日本の 農村や 山村、りょうそんで 使われて いた 星の 名前が、およそ 900しゅるい のって います[4]。
すばるの ところには、星が かたまって 見える ようすを あらわした 名前として、「ゴジャゴジャボシ」が あります[4]。しずおか市や しまの よび名として のって います。
ほかにも、日本には「むつらぼし」が、おきなわには「むりかぶし」が あります[1][5]。中国では「マオシィウ」、ギリシャの 神話では「セブンシスターズ(7人の 姉妹)」と よばれます[5]。
見た 目の ようすを つかまえた 名前も あれば、神話から 来た 名前も あります。
では、いちばん 有名な「すばる」は、いつごろの 名前でしょう。
静岡市や志摩での呼び名として紹介されているのが、「ゴジャゴジャボシ」です。星が固まって見える印象を、そのまま音にした方言だとされています[4]。
この例は、野尻抱影の『日本星名辞典』に載っています。この辞典は、日本の農村・山村・漁村に残っていた約900種の星の名前を分類したもので、原著は1973年に出ました[4]。
ほかにも、日本には「六連星(むつらぼし)」や、沖縄地方の「群れ星(むりかぶし)」という呼び名があります[1][5]。中国では「昴宿」、ギリシャ神話では「セブンシスターズ(7人姉妹)」と呼ばれました[5]。
集まって見える、つながって見える、群れて見える。名前ごとに、目に留まった点が少しずつ違います。それなら、最も有名な「すばる」は、いつごろから使われているのでしょうか。
『日本星名辞典』(野尻抱影、原著1973年、東京堂出版)は、日本の農村・山村・漁村に現存する星名約900種を分類した辞典で、スバルについては「固まっている印象を表した方言」として「ゴジャゴジャボシ」を静岡市・志摩の例として挙げる[4]。
この呼び名は、星の集まりという見え方を擬態語に近い形で写したもので、前章の肉眼での見え方と対応する。ほかにも、国立天文台の資料は日本で「六連星」や「群れ星(むりかぶし)」の名があったとし[1]、沖縄地方の呼び名として「むりかぶし」を紹介する資料もある[5]。海外では中国で「昴宿」、ギリシャ神話で「セブンシスターズ」と呼ばれた[5]。
呼び名の違いは、数や集まり、群れといった特徴のどこに注目したかの違いとして解釈できる(セブンシスターズのように神話に由来する名もある)。では、全国に通じる「すばる」は、文献のうえでいつ現れるのか。
3. せいしょうなごんは、星の 一ばんに「すばる」を 書いた
3. 清少納言は『枕草子』で、星の一番に「すばる」を挙げた
3. 『和名類聚抄』と『枕草子』 ── 文献に現れる「すばる」
いまから 1000年 ほど 前、平安時代の せいしょうなごんは、枕草子に、「星は すばる。ひこぼし。ゆふづつ。…」と 書きました[6]。
いちばんに 書いたのが、すばる です。星を 見て「すてきだな」と 思う 気もちが、このころの 文章に のこって います[7]。
もっと 古くには、和名類聚抄と いう 本に、「すばる」と 出て います[7]。
この 本は、平安時代の 中ごろに 作られました。星の 名前の 数は、まだ 少なかったそうです[7]。
では、「すばる」という 言葉は、どこから 来たのでしょう。
『枕草子』には、「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。…」という一節があります。すばる望遠鏡の公式FAQも、この一節を引いて「すばる」の名の由来を説明しています[6]。
この一節で、星が「をかし」(趣がある)と感じられる鑑賞の対象として取り上げられている点に、京都大学花山天文台の有本淳一さんは注目しています[7]。日本人が星を鑑賞してきた歴史は約1000年だと、有本さんは述べています[7]。ただし、これは筆者の見方で、それより前の歌にも星の言葉は出てきます。
「すばる」の文献上の例としては、源順(みなもとのしたごう)の『和名類聚抄』に、昂星の和名として「須波流」と載っています[7]。この本の星の項目は、日・月・星・明星・牽牛・織女・流星・天河など、まだ少数でした[7]。
星の名前が少ない時代に、すばるは載っていて、さらに清少納言にも一番に挙げられました。この言葉の意味は、どう考えられているのでしょうか。
『和名類聚抄』(源順、平安時代中ごろ)の天部には、昂星の和名として「須波流(すばる)」が載る。当時の星の項目は日・月・星・明星・長庚・牽牛・織女・流星・琴星・昂星・天河など少数で、その中にすばるが入っていた[7]。ただし辞典類は『和名抄』を「もっとも古い」例と記すにとどまり、星の名の最古の文献と断定はできない。
『枕草子』(和名類聚抄の60〜70年後)は「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。…」と書く。有本は、星が「をかし」の対象として取り上げられていることから、日本人が星を鑑賞してきた歴史を約1000年と述べる[7]。この「約1000年」は筆者の見方で、上代の歌にも星の語はあるため、鑑賞の歴史の下限とは読めない。すばる望遠鏡の公式FAQも同じ一節を引く[6]。
辞書的な記載と随筆の一節は、同じ名が約1000年前には書き残される存在だったことを示す。では、その語はどういう意味か。
4. 「すばる」って、どういう 意味?
4. 「すばる」という言葉は、何を意味していたのか
4. 語源の説 ── 「統(す)まる」と「すまる」(玉飾り)
「すばる」は、「ひとつに 集まる」と いう 意味の 言葉が もとだと いわれます[1]。
いくつかの 星が 糸で むすんだように 集まって いる、という ことです[8]。
古い 時代には、かみの けや 手首の 玉かざりを「すまる」と よんだ ので、それが「すばる」に なったと 見る 人も います[8]。
ただし、これは ひとつの 考えです。はっきり 決まった わけでは ありません。
集まって 見える 星に、ぴったりの 名前ですね。
ところで、星に 名前を つけたのは、空の かたまりだけでは ありませんでした。
5. ほくと七星は、ひしゃくだけじゃなかった
5. 北斗七星は、ひしゃくにも、サイコロにも、舵にも見えた
5. 北斗七星の見立て ── 柄杓・四三の星・舵星
ほくと七星は、7つの 星が ならんだ もの です。日本では「ひしゃく」の 形だと いわれます[9]。
水を くむ 道具の ひしゃくに 見えたのですね[10]。
ところが、ふたつの サイコロに 見立てた 人も います。目が 3と 4の「四三(しそう)の星」です[10]。
船の かじに 見立てた「かじぼし」も あります[10]。海で くらす 人には、かじの 形が 目に 入ったのでしょう。
カシオペヤざは「いかりぼし」、オリオンざは「つづみぼし」とも よばれました[9]。
では、すばるの 名前は、いまの 時代に どう つかわれて いるのでしょう。
北斗七星は、日本では水をくむ「ひしゃく(柄杓)」の形といわれます[9]。ところが、見立てはそれだけではありません。ふたつのサイコロ(目が3と4)に見立てた「四三(しそう)の星」や、船の舵に見立てた「舵星(かじぼし)」などもあります[10]。
『日本星名辞典』の紹介でも、北斗七星の方言として「かじぼし(舵星)」が挙がります。カシオペヤ座の「いかりぼし(錨星)」も、あわせて紹介されています[4]。船の道具にちなんだ名前は、海辺の暮らしと結びつけて見ると分かりやすくなります。
国際交流基金の資料は、オリオン座を「つづみぼし」とも紹介します[9]。
同じ星の並びを、水くみの道具、遊びの道具、船の部品に見立てる。見立ては各地で生まれました。
そうして生まれた名前の一つが、今は思わぬ場所で使われています。
6. 「すばる」は、どうして 望遠鏡の 名前に なったの?
6. 望遠鏡の愛称として、「すばる」が選ばれた
6. すばる望遠鏡の愛称公募 ── 1991年・約3,500通
ハワイの マウナケア山の 近くに、望遠鏡が あります。名前は「すばる望遠鏡」です[6]。
この 望遠鏡の 名前は、1991年に 全国から 集められました。およそ 3500通の おうぼの 中から「すばる」が えらばれました[6][11]。
大きさは、かがみの ちょっけいが 8.2メートルも あります[12]。
平安の 時代から よばれて きた 名前が、いま、遠い 空を 見る 大きな 目の 名前に なって います。
7. じぶんでも 調べて みたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
今日できること:
- 星の 図かんや 写真の中から、星の かたまりを ひとつ えらんで、「なにに 見えるか」を 自分の ことばで 書いて みよう。
- 「ゴジャゴジャボシ」のように、見た ようすを そのまま 名前に して みても いいです。
本で 調べるなら:
- 『枕草子』の「星は すばる」の ところを、よんで みよう。
- 『日本星名じてん』(のじり ほうえい)には、土地ごとの 星の 名前が たくさん のって います。
ネットで 調べるなら、すばる望遠鏡の 公式の ページが あります。
今日できること
- 図鑑や写真で星のかたまりを一つ選び、何に見えるかを自分の言葉で書いてみましょう。見え方をそのまま名前にしてみると、昔の呼び名の発想に近づきます。
- ひしゃくだけでなく、サイコロや舵に見立てた人がいたことを思い出し、同じ形を別の物に見立ててみましょう。
資料を読むなら
- 『枕草子』の「星はすばる」の段
- 野尻抱影『日本星名辞典』(原著1973年、東京堂出版)
- すばる望遠鏡の公式サイト「よくあるご質問」
今日できること
- 図鑑や写真から星のかたまりを選び、見え方を表す名前を自分でつけ、その根拠(見えた数・形)を書き添える。
資料を読むなら
- 野尻抱影『日本星名辞典』(東京堂出版、原著1973年)。地域ごとの星名の分類。
- 有本淳一「京都天文史跡めぐり【2】」(京都大学花山天文台)。『和名類聚抄』と『枕草子』の星の扱い。
- すばる望遠鏡の公式サイト(歴史と変遷)。愛称公募の記録。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[ ]の数字は、下の出典の番号です。
- 国立天文台 暦Wiki「昴」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/exhibition/058/ (見え方・語源・六連星・むりかぶし)
- 三菱電機 DSPACE コラム「すばる」 https://www.mitsubishielectric.co.jp/dspace/column/cw14_b.html (見える星の数)
- NASA Hubble「Messier 45」 https://science.nasa.gov/mission/hubble/science/explore-the-night-sky/hubble-messier-catalog/messier-45 (距離)
- 講談社『日本星名辞典』紹介 https://news.kodansha.co.jp/books/20151833 (ゴジャゴジャボシ・約900種・舵星・錨星)
- JAXA教育資料(国立天文台 天文情報センター資料の再掲) https://edu.jaxa.jp/activities/academy/assets/2024HW_4.pdf (各地の呼び名)
- すばる望遠鏡 よくあるご質問 https://subarutelescope.org/jp/inquiries/faq/ (枕草子の一節・愛称公募)
- 有本淳一「京都天文史跡めぐり【2】」京都大学花山天文台 https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/astron/astron2/astron2_P25-28.pdf (和名類聚抄・枕草子)
- コトバンク「昴」 https://kotobank.jp/word/昴 (語源の説)
- 国際交流基金 みんなのにほんご「日本の星座」 https://www.hirogaru-nihongo.jpf.go.jp/hoshi/article/nihonhoshi/index.html (ひしゃく・つづみぼし)
- 三菱電機 DSPACE コラム「北斗七星」 https://www.mitsubishielectric.co.jp/dspace/column/cw04_b.html (四三の星・舵星)
- すばる望遠鏡 歴史と変遷 https://subarutelescope.org/jp/about/history/ (愛称公募)
- 科学ポータル(JST) すばる望遠鏡 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20170301_01/ (口径・場所)
なおした ところ
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