このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ジョロウグモの あみは、よこから 見ると 三重に なって いるの?

ジョロウグモの網は、横から見ると三重になっている ── 前後の糸は何のためにあるのか

ジョロウグモの三重網 ── 前後の不規則網の役目の諸説と、残される足場糸、金色の糸

分野:生きもの

ジョロウグモの あみを よこから 見ると、1まいの 板では なく、3つの そうに なって います。まんなかの あみの まえと うしろにも、ばらばらな 糸が はって あるのです。

どうして そんな 手間の かかる ことを するのでしょう。まえと うしろの 糸の やくめ、やぶれた あみの なおしかた、時間が たつと 金いろに 光る 糸の ことが わかります。

ジョロウグモの網は、正面から見ると1枚の丸い網に見えます。ところが横から見ると、真ん中の網の前と後ろにもふぞろいな糸の網があり、三重になっています[1]。

獲物をとらえるだけなら、真ん中の1枚で足りそうです。なぜ手間をかけて前後にも糸を張るのでしょうか。前後の網について言われている役目、破れても直しながら使い続ける糸、時間がたつと金色に光る糸のことが分かります。

ジョロウグモの網は、中央の円網の前後に不規則な糸の層があり、横から見ると三重に見える[1]。円網そのものは平面の構造で、その両側を補助的な不規則糸が補強していると、論文も説明する[2]。

獲物をとらえる網の本体は中央の1枚である。なぜ前後にも糸を張るのか。近縁のクモで観察された例と、まだ仮説の段階の説、破れた網を張り直すときに使われる足場糸、時間とともに金色になる糸の話から、その問いへの手がかりが分かる。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. あみは、よこから 見ると どう なって いる?

1. 正面では1枚に見える網は、横から見ると三重になっている

1. 円網の前後に不規則網が重なり、三重に見える

ジョロウグモは、秋の 公園や 庭で 見かける、大きな クモです。あみの まんなかに、金いろの 糸で できた まるい あみが あります。

その あみを、よこから 見て みましょう。まんなかの あみの まえにも うしろにも、ばらばらな 糸の あみが あります。ぜんぶで 三重です[1]。

たとえば、まどの まえと うしろに、うすい カーテンを かけた ような ものです。ただし ほんとうの あみは、カーテンのように たいらでは なく、糸が ふぞろいに からまって います。

この ふぞろいな 糸は、なんの ために あるのでしょう。

ジョロウグモの網は、中央に目の細かい主網があり、その前後にも不規則な網があります。そのため、横から見ると三重に見えます[1]。

論文では、円網そのものは平面の構造で、その両側を補助的な不規則な糸が補強していると書かれています[2]。この仲間は大きな網を張ることで知られ、直径1mを超える網も報告されています。ただしこれは仲間の大きな例で、身近で見かけるジョロウグモの網がふつうそこまで大きいわけではありません[2]。

体長は、メスで20〜30mmほどです。資料によって少し幅があります。広島県の調査ページでは、秋に成体が出現すると説明されています[6]。

獲物をとらえる中心は、粘る糸のある円網です。では前後の網は、何をしているのでしょうか。

ジョロウグモの網を横から見ると、目の細かい主網(円網)の前後に不規則な網が重なり、三重網になっている[1]。PMCの論文も、円網は二次元の構造だが両側を補助的な不規則糸で補強していると述べる[2]。

同じ論文によれば、この属は直径1mを超える大きな網を張り、下方へ広がる馬蹄形をとる。ただし1m超は属としての傾向であり、個々の網の大きさを示すものではない[2]。メスの体長は20〜30mm前後とされる。資料ごとに数字に幅があるため、範囲で書く。成体は秋に現れる[6]。

獲物をとらえる仕事は、粘る糸のある円網が担う。ならば、そこに直接かかわらない前後の網は何のためにあるのか。まず、防御の面から調べた例を見る。

2. まえと うしろの あみは、まもって くれるの?

2. 前後の網は、大きな相手をはね返す盾になるのか

2. バリア網の防御説 ── 野外の観察例と、仮説の段階の説

クモの あいてに なる 生きものは、えものだけでは ありません。クモを つかまえに くる 鳥や 虫も います。

ジョロウグモの なかまを しらべた 人が、こんな ことを 書いて います。大きな トンボが、子どもの クモを おそおうとして、まえの 糸に はねかえされた ことが ありました。大人の クモを ねらった 鳥が、糸を とおりぬけられず、しっぱいした ことも ありました[3]。

ただし、これは ジョロウグモ その ものの はなしでは ありません。ちかい なかまの クモを 見て きた 人の 話で、見かけた 数も かぎられて います。子どもの クモの 糸なら、鳥は とおれる ようです[3]。

ほかにも、「えものや てきが 来た ことを、いち早く しらせる 糸では」という 考えや、「風で とんで くる 葉を ふせぐ」という 考えが あります。まだ、たしかめられた 話では なく、「そうかも しれない」と いう はなしです[4]。

では、糸の やくめは、まもる ことだけでしょうか。

前後の網について、まず思いつくのは、身を守る役目です。ジョロウグモのなかまのオオジョロウグモ類(Nephila属)を研究している人は、その観察を書いています。大型のトンボが幼体を襲おうとして、前の糸ではね返された例がありました。また、成熟したメスを襲った鳥が、この糸を通り抜けられずに失敗した例もありました[3]。

ここで注意したいのは、これが一人の研究者の観察談であり、ジョロウグモ自身を実験で調べた結果ではないことです。幼体の糸なら鳥は通り抜けられる、という記述もあります[3]。「網の前後は必ず身を守る」とまでは言えず、「こういう場面が見られた」という一例として受けとるのがよさそうです。

ほかには、獲物や、クモを狙う捕食者への早期警報の役目、風で飛ぶ葉を防ぐ盾の役目、という説明もあります。ただしこれは、仮説の段階の説明です[4]。

守りのほかにも役目があるのか。前後の網は、真ん中の網をどう支えているのでしょうか。

前後の網(バリア網)の役目として、まず防御が考えられる。この属を野外で観察した研究者は、大型のトンボ類が幼体を襲おうとして前後の糸にはね返された例と、成熟したメスを襲った鳥が通り抜けられず失敗した例を記録している。一方で、幼体のバリアは鳥が通り抜けられるとも述べる[3]。

この記述には限りがある。対象は近縁のオオジョロウグモ類(Nephila属)の観察で、ジョロウグモ自身を実験で調べた結果ではなく、一人の研究者の見聞にとどまる。したがって、「バリア網が捕食者を防ぐ」と一般化はできず、ここでは一例として扱う。

ほかに、獲物や捕食者への早期警報、風で飛ぶ葉を防ぐ盾としての機能を挙げる説明もあるが、この文に出典の引用は付いておらず、仮説の段階にある[4]。

防御以外に、バリア網には構造上の役目があるとも指摘されている。次にそれを見る。

3. まえと うしろの 糸は、あみを ぴんと はって いるの?

3. 前後の糸は、真ん中の網をぴんと張る役も持つのか

3. バリア網の第二の機能 ── 円網の張力を保つという指摘

テントを たてる ときは、ロープを ななめに ひっぱって、ぬのを ぴんと させます。ロープが ゆるむと、テントも ゆるみます。

さっきの クモを しらべた 人は、まえと うしろの 糸にも、あみを ぴんと させる やくめが ある かもしれない、と 書いて います。クモが やすむ ところと、まえの 糸を つなぐ 糸を、学生が 切って みました。すると、まんなかの あみが ゆるみました[3]。

あみが ぴんと はって いるほど、とんで きた えものは つかまりやすい とも いわれます。まもる ほかに、ささえる 役も あるのかも しれません。

ただし、これも 「かもしれない」と いう ところまでの はなしです。

さて、そんな あみは、やぶれたら どう なるのでしょう。

もう1つの役目として、網の張りを保つことが挙げられています。研究者は、バリア網と、クモの休み場所をつなぐ糸を、学生が切る実験をしたところ、真ん中の円網がゆるんだ、と書いています[3]。

張りの強い網は、飛んできた獲物をとらえやすいとされます。テントを張るときのロープをイメージすると分かりやすいでしょう。ロープが引っ張られているから、布がぴんと張れるからです。ただし、この役目についても、原文では「かもしれない(may be)」という書き方で、断定はされていません[3]。

前後の網には、守りの役目の説、張りを保つ役目の指摘があり、まだ調べられている途中の話といえます。では、その網が破れたとき、クモはどうするのでしょうか。

バリア網には、円網の張力を保つ役目もあるとされる。バリア網とクモの休み場所を結ぶ糸を学生が切る実験をしたところ、円網がゆるんだ。張りが強い網ほど獲物をとらえやすいので、前後の網は捕獲の効率にも関わりうる、という筋道になる[3]。

ただし原文の表現は「may be」で、二番目の機能の可能性として述べたものにとどまり、ジョロウグモ自身での検証でもない。前節と合わせ、前後の網の役目は、観察例・実験例・仮説が混ざった状態にある。読むときは、どれが観察でどれが説かを分けて考えたい。

では、こうして張られた網が破れたら、どう使い続けるのか。次は円網の内側、足場糸に目を向ける。

4. やぶれた あみは、どう なおすの?

4. 網が破れたら、楽譜の五線のような足場糸をどう張り直すのか

4. 足場糸は残り続ける ── 破れた網の張り直しと、獲物の多さ

ジョロウグモの あみを 近くで 見ると、がくふの 五せんのように 見える ことが あります。よこに ならんだ 糸の あいだに、べつの 糸が のこって いるからです[1]。

この 糸を、あしばいとと いいます。ねばねばしない 糸です。ふつうの クモは、あみを つくる とき だけ つかって、あとで なくします。ジョロウグモの なかまは、あみを つかって いる あいだ、ずっと のこします[2]。

あみが やぶれると、クモは やぶれた ところに、ジグザグに あしばいとを はりなおします[2]。

あみを 1回 つくって おしまいに せず、なおしながら つかう 家のように あつかって いる のです。

ところで、この 糸には もう 1つ、ふしぎな ことが あります。

ジョロウグモの網は、横糸の間に足場糸が残されているため、楽譜の五線のように見えます[1]。

足場糸は粘らない螺旋状の糸です。多くのクモでは、網を作る間だけの一時的な足場で、あとで取り除かれます。ジョロウグモを含むこの属では、網を使う間ずっと残ります。そして網が破れると、クモは破れた部分にジグザグに足場糸を新しく張り直すと報告されています[2]。

粘る糸の数は、獲物の多さにも関係しているようです。宮下・新海(1995)は、ジョロウグモとコガネグモの網を比べ、ジョロウグモの網は粘る糸の数が多いために、より多くの獲物をとらえる傾向がある、と報告しました。小さな獲物も大きな獲物も捕らえうると、論文は結論しています[5]。

これは粘る糸の数が理由であり、前後の網の効果を測った結果ではない点に注意が要ります。

網を作って終わりではなく、直しながら使う。では、その糸の色はどうなっているのでしょうか。

円網の粘る横糸の間には、粘らない螺旋糸(足場糸)が走る。ジョロウグモを含むこの属では、これが網を使う間ずっと構造の一部として残り、多くのクモで足場糸が一時的であることと対照的だ。網が破れると、クモは破れた箇所にジグザグに足場糸を張り直す[2]。足場糸が残るため、網は楽譜の五線のように見える[1]。

この網が獲物をとらえる力については、宮下・新海(1995)が、ジョロウグモとコガネグモの網を比較した報告がある。ジョロウグモの網は粘る糸の数が多いため、より多くの獲物をとらえる傾向があり、小さな獲物も大きな獲物も捕らえうると、論文は結論している[5]。理由は粘る糸の数で、前後の網の効果ではない。

つまり、足場糸が残る構造は、破れた網を張り直しながら使い続ける行動と結びついている。この点が、網を「毎回作って終わり」のものと見ない手がかりになる。

では、その網を構成する糸そのものには、どんな特徴があるのか。

5. 糸は、どうして 金いろに 光るの?

5. 時間がたつと、糸が金色に光る

5. 黄金色に輝く糸 ── 名前に「golden silk」が入る理由

ジョロウグモの 糸は、時間が たつにつれて、金いろに 光って 見えると いわれます[1]。

じてんには、糸の 中の せいぶんが さんそと むすびつきやすく、時間が たつと 金いろに 見えると 書かれて います。ジョロウグモは、えいごでは「ゴールデン・シルク・スパイダー」、つまり 「金の 糸の クモ」と よばれます[1]。

まえと うしろの あみ、なおしながら つかう 足場糸、そして 金いろの 糸。この クモの あみには、見る ところが たくさん あります。

辞典には、ジョロウグモの糸には酸化されやすい成分があり、時がたつにつれて黄金色に輝く、と書かれています。英語では golden silk spider(金の糸のクモ)と呼ばれます[1]。

つまり、網を張った直後と、時間がたったあとでは、糸の色が変わっていくということです。

この色が獲物を引きつけるのか、身を隠すのに役立つのかは、はっきり分かっていません。

三重の網、直しながら使う足場糸、金色に光る糸。1匹のクモの網に、見どころが重なっています。

辞典は、ジョロウグモの糸には酸化されやすい成分があり、時がたつにつれて黄金色に輝くと説明する。英名の golden silk spider は、この色に由来すると読める[1]。辞典の記述であり、金色になる過程の詳細は、ここでは扱わない。

網の色の役目はまだ確かめられていない。糸が時間とともに黄金色になるという辞典の記述はある。三重の網、足場糸の張り直し、黄金色の糸と、観察の手がかりは網に多い。

6. ジョロウグモの あみを 見つけたら

6. 見つけたら、横から見て、糸を数えてみる

6. 出口 ── 三重を自分の目で確かめる/原典を読む

ジョロウグモの あみを 見つけたら、まず 正面から 見ます。つぎに、あみの よこへ まわって、まえと うしろに 糸が あるか 見て みましょう。

クモにも あみにも、さわりません。遠くから 見るだけです。あみが 日の 光で 光るのを 見るのも、たのしみです。

あみの ようすは、ノートに 絵で かいて おきましょう。同じ あみが のこって いたら、やぶれた ところが どう なったか 見て みましょう。

ジョロウグモの網を見つけたら、正面から見たあと、横に回って、前後に不規則な糸があるかを見てみましょう。網やクモにはさわらず、少し離れて見るだけにします。

次の日にもう一度同じ網を見にいくと、破れていた場所が直っているか、足場糸が新しく増えているかを、確かめられるかもしれません。網のスケッチを1日ごとに描いて比べると、変化が分かりやすくなります。

もっと知りたくなったら、辞典の解説[1]、足場糸の論文[2]、宮下・新海の報告[5]が入り口になります。

ジョロウグモの網を見つけたら、正面に加えて横から見て、前後の不規則網が確かに二層あるかを確かめる。クモにも網にも触れず、距離をとって見る。同じ網を翌日にも見て、破れた箇所がどう変わっているかをスケッチで比べると、足場糸の張り直しを目で追える可能性がある。

原典に当たるなら、足場糸の論文[2]は英語だが図が多い。宮下・新海の報告[5]はジョロウグモとコガネグモの網の比較で、粘る糸の数が獲物の数に関わる点を読める。前後の網の役目は、近縁種の観察[3]と仮説[4]が混ざっているため、どの文が観察でどの文が説かを分けながら読みたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典の解説、足場糸の論文、近縁のクモを観察した研究者の解説、獲物の捕獲数を比べた日本語の論文、広島県の調査ページを使いました。

  1. コトバンク「ジョロウグモ」(世界大百科事典ほか)。 https://kotobank.jp/word/%E3%81%98%E3%82%88%E3%82%8D%E3%81%86%E3%81%90%E3%82%82-3155775 (三重網、足場糸が残ること、糸の黄金色について)
  2. Junctional microstructure of the non-sticky spiral scaffold in Trichonephila clavata (PMC)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12271046/ (円網の構造、足場糸が残ること、破れた網の張り直しについて)
  3. L. Higgins (UVM) "What a Nephila web looks like"。 https://www.uvm.edu/~lehiggin/Foraging.html (前後の網の防御の観察例と、張りを保つ役目について)
  4. Wikipedia "Trichonephila inaurata"。 https://en.wikipedia.org/wiki/Trichonephila_inaurata (前後の網の役目の仮説について)
  5. 宮下直・新海栄一「ジョロウグモとコガネグモの網の比較」Acta Arachnologica 44(1), 1995。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/asjaa1936/44/1/44_1_3/_article (粘る糸の数と、とらえる獲物の多さについて)
  6. 広島県「ジョロウグモ」調査ページ。 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/47/investigation-jorougumo.html (体の大きさと、成体が出る季節について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。