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キッチンペーパーは、ぬれても どうして やぶれにくいの?

水を拭いても破れにくいキッチンペーパー ── ぬれた紙を丈夫にした薬品と作り

キッチンペーパーの湿潤強度 ── 水素結合、PAE樹脂(1957年)、厚みと積層、福井県の絞り試験

分野:技術

ティッシュを ぬらすと、すぐ くしゃくしゃに なって、やぶれて しまいます。ところが、キッチンペーパーは、ぬらして ぎゅっと しぼっても、なかなか やぶれません。

どちらも、おなじ「かみ」なのに、どうして ちがうのでしょう。この きじを よむと、ぬれた かみを じょうぶに する くふうと、じっさいに しぼって しらべた けっかが わかります。

ティッシュは水に濡れるとすぐにちぎれるのに、キッチンペーパーは濡らして絞っても、破れにくい製品が多くあります。もとは同じ、木からできた紙です。

この差には、濡れた紙を丈夫にする薬品の発明や、厚み・重ね方などの工夫が関係しています。1957年の実験室の試作、福井県が25銘柄を絞って比べた試験、それでも乾いた時ほどは強くならない理由が分かります。

紙は水に濡れると急に弱くなる。これは紙の性質であり、ティッシュやトイレットペーパーで日常的に経験する。それにもかかわらず、水を拭き取るために作られたキッチンペーパーは、濡れたまま絞っても破れにくい製品が多い。

なぜ濡れた紙は弱くなり、どのような手当てで持ちこたえるのか。この記事では、総説論文、福井県消費生活センターの試買テスト、メーカーの発表を突き合わせ、薬品による補強、製品の作りの違い、それでも乾燥時の強さには届かないという限界が分かるようにする。

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1. かみは、みずに ぬれると どうなるの?

1. 紙は、なぜ濡れると弱くなるのか

1. 濡れると弱くなる紙 ── 水素結合という接着

かみは、とても ほそい きの せんいが、たくさん あつまって できて います。この せんいどうしが、おたがいを つかまえて いるので、かみは かたちを たもてます。

ところが、みずが しみこむと、この つかまえる ちからが よわく なります。かみが とけて しまうのでは ありません。せんいどうしの つながりが、ゆるむのです。

ティッシュが すぐ やぶれるのは、そのためです。では、キッチンペーパーは、どうして ゆるまないのでしょう。

紙は、木の繊維せんい(セルロース)が網のように重なったものです。繊維どうしは、主に水素結合という弱い引き合う力などで、つながっているとされます[1]。

紙は小さなすき間が多く、水になじみやすい性質があります。水が入りこむと、このつながりが弱まり、シートの強さが落ちます[1]。紙が水に「溶ける」わけではなく、繊維を結んでいたつながりがゆるむ、というのが正確な言い方です。

普通のティッシュがすぐ破れるのは、この弱まりをそのまま受けているからです。それなら、濡らして使う紙には、何か別の手当てがあるはずです。

紙はセルロース繊維の網目構造で、繊維どうしを保つのは主に水素結合であり、ほかに機械的なからみ合い、静電気的な力、ファンデルワールス力なども関わる[1]。紙は多孔質で親水性なので、水が入ると繊維間の結合が弱まり、濡れたシートの強度が落ちる[1]。

注意したいのは、繊維が水に溶けて崩れるのではなく、繊維間のつながりが弱まるという点である。したがって、水に強い紙を作るには、繊維そのものではなく、繊維どうしの結び目を水に負けない形で補えばよい。これが次に述べる薬品の発想である。

2. ぬれても やぶれない くすりは、いつ できたの?

2. 1957年1月8日、実験室の最初の試作

2. 濡れ強度を与える樹脂 ── PAEの誕生

ぬれた かみを じょうぶに する くすりが あります。この くすりの ひとつ(PAE)を、さいしょに じっけんしつで つくって みた ひが、きろくに のこって います。1957ねん 1がつ 8日で、アメリカでした[1]。

くすりは、せんいと せんいを、みずが しみても はなれにくいように、しっかり つなぐ はたらきを します。ロープの あいだに もう1ぽん ひもを むすぶような ものです。ただし、ほんとうの くすりは ひもではなく、ちいさな つぶが せんいに くっつくのです。

この くすりは、タオルや ティッシュなど、ぬらして つかう かみに つかわれて います[2]。

濡れた紙を丈夫にする薬品は、湿潤紙力増強剤と呼ばれます。その代表がポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂(PAE)で、最初の実験室での試作は1957年1月8日、アメリカのハーキュリーズ社の研究者2人が行ったと、総説は伝えています[1]。特許は1960年2月23日に成立しました。

薬品のはたらきは、繊維どうしを化学的につなぐ「架橋」です。水が入っても、つながりが崩れにくくなります。タオル、ティッシュ、ワイプなど、濡れたり乾いたりを繰り返す紙製品に使われる、と説明されています[2]。

ただし、キッチンペーパーに使われている薬品は、製品ごとに異なります。

この課題に答えた樹脂が、ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂(PAE)である。総説によれば、最初の実験室での試作は1957年1月8日、米国のハーキュリーズ社(Hercules Powder Company)の研究者2人が行い、特許は1960年2月23日に成立した[1]。

PAEは、樹脂中のアゼチジニウム基がセルロースのカルボキシ基と反応し、繊維に結びつくと説明される[2]。こうして繊維間を化学的に架橋するため、水が入っても網目が崩れにくい。ところが同じ総説は、PAEと繊維の相互作用の仕組みは完全には解明されていないとも述べる[1]。定説に細部の研究が残る、と読むのが妥当である。

用途は、濡らして使うタオル・ティッシュ・ワイプなど、濡れと乾燥を繰り返す紙製品である[2]。ただし、キッチンペーパーに使われる薬品は製品ごとに異なる。

3. くすりだけで、じょうぶに なるの?

3. 薬品だけではない ── 厚みと重ね方

3. 製品の作りの違い ── 不織布とエンボス2枚重ね

くすりの ほかに、つくりかたにも くふうが あります。ふくいけんの しょうひせいかつ センターが、25しゅるいの キッチンペーパーを しらべました[3]。

「ふしょくふ」や「フェルト」と かいて ある ものは、ひょうめんの せんいに すきまが あって、きりくちが あつぼったい ものでした。かいて ない ものは、でこぼこの かたが ついていて、2まい かさねの ものが おおかったそうです。

かみを あつく したり、かさねたり して、ぬれても やぶれにくく した しょうひんも あります[3]。

福井県消費生活センターは、令和4年度に25銘柄のキッチンペーパーを買って調べました。材質の表示があった22銘柄のうち、20銘柄はパルプだけでできていました。残る2銘柄は、洗って数回使えるとうたい、パルプにポリプロピレンなどを合わせていると考えられる、とされています[3]。

作りにも違いがありました。「不織布」「フェルト」と表示された銘柄は、表面の繊維にすき間があり、断面が分厚いものでした。表示のない銘柄は、表面に凹凸(エンボス)の加工があり、2枚重ねのものが多かったといいます[3]。

製紙各社は、既存品より厚手にして濡れても破れにくくした商品を出している、とも説明されています[3]。なお、凹凸加工がどれだけ濡れた強さを上げるかは、今回の資料には書かれていません。

では、実際の製品はどう作られているのか。福井県消費生活センターが令和4年度に25銘柄を試買した報告によれば、材質表示のあった22銘柄のうち20銘柄がパルプのみで、残る2銘柄は、洗って繰り返し使えるとうたい、パルプにポリプロピレン等を使うと考えられる[3]。この割合はこの25銘柄での値で、市販品全体の割合ではない。

構造も二手に分かれた。「不織布」「フェルト」の表示がある銘柄は表面の繊維に隙間があって断面が厚く、表示のない銘柄は表面にエンボス(凹凸加工)があり、2枚重ねが多かった[3]。製紙各社は、既存製品より厚手にして濡れても破れにくくする工夫を施した商品を出しているという[3]。

ただし、エンボスが濡れ強度をどれだけ高めるかは、参照した資料からは分からない。エンボスは、この報告では厚み・2枚重ねの文脈で述べられており、強さの原因と決めつけないほうがよい。なお、キッチンペーパーの表示や定義を定める法令はない、と報告は述べる[3]。

4. しぼって しらべたら、どうだった?

4. 25銘柄を絞ってみた試験の結果

4. 絞り試験の結果 ── 25銘柄中23銘柄が83〜100点

ふくいけんの しけんでは、キッチンペーパーを みずに つけて、りょうてで ぎゅっと しぼりました。ひろげて、やぶれぐあいを 目で 見て、てんすうを つけました[3]。

25しゅるいの うち、23しゅるいは 83〜100てん。とても やぶれにくい けっかでした。「やぶれにくい」と かいて いない ものも、やぶれにくい ばあいが ありました。

ただ、2しゅるいだけは、29てんと 46てんでした。ぜんぶが おなじでは ない ようです。

この試験の「破れにくさ」は、水に浸して両手で絞り、広げて破れ具合を目で見て評価するものです。機械で引っ張って測った強さではなく、目で見て点をつけた評価です[3]。

結果は、25銘柄のうち23銘柄が83〜100点でした。「破れにくい」とうたっていない銘柄でも、破れにくいものがありました。一方で、2銘柄は29点と46点で、差がはっきり出ています[3]。

多くの銘柄は絞っても持ちこたえるけれど、全部が同じではない。これは、店で選ぶ時にも、家で試す時にも、覚えておきたい点です。

実際にどの程度破れないのかは、同じ報告の「破れにくさ」試験が示す。水に浸して両手で絞り、広げて破れ具合を目視で評価する官能評価で、引張強さの測定値ではない[3]。

評点は29〜100点で、2銘柄を除く23銘柄が83〜100点と高く、例外の2銘柄は29点と46点だった。「破れにくい」と謳わない銘柄でも破れにくい場合があり、表示の有無と実際の強さは必ずしも一致しない[3]。試験では、表示の有無だけで破れにくさは決まらなかった。

ただし、この結果は令和4年度に25銘柄を対象とした一つの試験の数字である。目視評価である点も含め、製品全般の強さを保証する値とは読めない。

5. ぬれても、かわいた ときと おなじ つよさ?

5. 乾いた時と同じ強さにはならない

5. 濡れ強度の限界 ── 乾燥時に対する比と、洗って使う紙

ぬれても やぶれにくく なった かみは、かわいて いる ときと おなじ つよさに なる わけでは ありません。ぬれると、やっぱり すこし よわく なります。

ある けんきゅうでは、ぬれた ときの つよさが、かわいた ときの 5〜30%くらいと いう れいが ありました[2]。とくべつな じょうけんの けっかなので、ぜんぶの しょうひんが そうとは かぎりません。

それでも、2020ねんには、ぬのの ように しぼって、あらって なんども つかえる かみも うられました[4]。

薬品を使っても、濡れた紙は乾いた紙と同じ強さにはなりません。研究には、広葉樹の漂白クラフトパルプで、濡れた時の強さが乾いた時の約5〜30%という例があります[2]。特別な条件の値なので、製品一般の数字ではありません。

薬品には、効き方の違いもあります。総説によると、一時的な薬品では、10秒浸した時の濡れ強度の最大約3分の2が2時間後も残り、永続的な薬品では80〜100%が残ります。ただしこれは板紙の話で、タオルやティッシュでは「一時的」「永続的」の意味が異なる、とも書かれています[1]。

2020年4月には、日本製紙クレシアが、布のように絞って洗って繰り返し使えるペーパータオルを発売しました。通常のキッチンペーパーより濡れた状態の強度が優れているとされますが、これは企業の発表で、作りの詳しい説明はありません[4]。

それでは、薬品を使えば乾燥時と同じ強さになるのか。答えは否である。ある研究では、広葉樹晒しクラフトパルプの湿潤/乾燥強度比は約5〜30%にとどまった[2]。これは特定の実験条件での値であり、製品一般の数字ではない。

薬品の効き方にも幅がある。総説は、一時的な湿潤紙力増強剤では、10秒浸した時の湿潤強度の最大約3分の2が2時間後も残り、永続的なものでは80〜100%が残ると述べる。ただし、これは板紙の文脈の値で、タオルやティッシュでは「一時的/永続的」の意味が板紙と異なるとされ、キッチンペーパーにそのまま当てはめることはできない[1]。

なお、その先を目指した製品もある。日本製紙クレシアは2020年4月1日に、布のように絞って洗って繰り返し使えるペーパータオルを発売し、通常のキッチンペーパーより濡れた状態の強度が優れるとした[4]。ただし企業の宣伝文であり、素材・構造の詳細は発表文に書かれていない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いえに キッチンペーパーが 2〜3しゅるい あれば、くらべて みましょう。おなじ みずに つけて、りょうてで そっと しぼり、ひろげて みます。やぶれた ところや、あなの あいた ぐあいを、じっくり 見て ください。

ティッシュや トイレットペーパーで やると、ちがいが よく わかります。ぬらしたら、ながしや おふろばで やって、あとで ごみばこに すてましょう。

家にキッチンペーパーが2〜3種類あれば、濡らして絞り、破れ方を見比べられます。水に浸し、両手でそっと絞り、広げて、破れた場所や穴の開き方を見ます。福井県の試験と同じ手順ですが、これは目で見る比べ方なので、正確な強さの測定ではありません。同じ大きさの紙を使い、水に浸す時間もそろえると比べやすくなります。

表面の凹凸、厚み、2枚に分かれるかどうかも見てみましょう。ティッシュやトイレットペーパーで試すと、差が大きく出るはずです。使った紙は、濡れているので、水気を切って捨てます。

ふきんとして使える商品もあります。パッケージの「洗って使える」などの表示も、見比べてみるといいでしょう。

強さを比べる方法の一つとして、身近なキッチンペーパーを2〜3種類用意し、同じ条件で濡らして絞り、破れ方を見比べる方法がある。福井県の試験は、水に浸して両手で絞り、広げて目視で評価する方法だった[3]。これは目視の比較であり、強さの測定ではない。

調べるなら、表示(「不織布」「洗って使える」など)と、断面の厚み・表面の凹凸・枚数の関係を見ると、報告の記述を自分で確かめられる。論文(総説)は英語だが、PAEの開発の記述は Ntifafa ほか(2024)にある[1]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字は、総説論文・自治体の試買テスト・企業の発表を突き合わせた。乾燥時と濡れ時の強度比などは、特定の実験条件の値である。

  1. Ntifafa et al. (2024) BioResources 19(2), PAAE review(湿潤紙力増強剤の歴史・種類) https://bioresources.cnr.ncsu.edu/ (紙が濡れて弱くなる理由・PAEの発明・一時的/永続的の違い)
  2. Polymeric Wet-Strength Agents in the Paper Industry (PMC10252473) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10252473/ (架橋・用途・湿潤/乾燥強度比の例)
  3. 福井県消費生活センター 試買テスト結果報告書 キッチンペーパー(令和4年度) https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/shohic/shibai_d/fil/R04-02.pdf (材質・作りの違い・絞り試験の結果)
  4. 日本製紙クレシア ニュースリリース「スコッティ ファイン 洗って使えるペーパータオル」 https://digitalpr.jp/r/38039 (洗って使えるペーパータオル・2020年4月発売)

なおした ところ

更新履歴

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