1. とんびは、どんな 場所で 見られる 鳥?
1. 海岸から高山帯まで、トビはどこにいる?
1. 海岸から高山帯まで:トビの分布はどこまで広いのか
外で「ピーヒョロロロ」と 聞こえたら、空を 見上げて みましょう。大きな 鳥が 羽を ひろげて ゆっくり とんで いたら、それは とんびかも しれません。
ある 県の ページには、とんびは 海岸から 高い 山まで、はば広く くらして いると 書いて あります[1]。海の ちかくの 漁港や、町の ごみを あつめる 場所には、とくに 数が 多いそうです[2]。
世界を 見ても、ユーラシア、アフリカ、オーストラリアに 広く います。ヨーロッパの なかまだけは、旅を する ことが 多く、ほかは ほとんどが 一年中 同じ 場所に 住んで いると いわれます[3]。
山の 上から 町の 中まで 住めるなんて、すごい ことです。いったい、なにを 食べて いるのでしょう。
「ピーヒョロロロ」という声が上から聞こえて見上げると、大きな鳥が羽を広げてゆっくり飛んでいる。そんな場面なら、トビかもしれません[4]。
新潟県の解説では、トビは海岸から高山帯まで幅広い環境で暮らし、佐渡島や粟島を含む県内に広く生息・繁殖しています[1]。日本大百科全書には、海岸から山地の開けた所にすみ、とくに漁港や都会のごみ捨て場には数が多いとあります[2]。
世界ではユーラシア、アフリカ、オーストラリアに広く分布します。札幌市円山動物園の解説によると、ヨーロッパの集団は渡りの性質が強く、ほかはほとんどが留鳥、つまり一年を通して同じ地域にいる鳥です[3]。
山の上から魚市場のある港、都会まで。住む場所がこれだけ違うのに、同じ鳥が暮らしています。その鍵は、何を食べているかにありそうです。
「ピーヒョロロロ」と鳴きながら上空を舞う姿は、身近な猛禽の一つとして知られる[4]。では、その分布はどこまで広いのか。新潟県の解説は、トビを海岸から高山帯まで幅広く生活する鳥とし、佐渡島・粟島を含む県内に留鳥として広く生息・繁殖すると述べる[1]。『日本大百科全書』も、海岸から山地の開けた所にすみ、とくに漁港や都会のごみ捨て場には数が多いとする[2]。
範囲は日本にとどまらない。ユーラシア、アフリカ、オーストラリアにかけて広く分布する[3]。留鳥とは、季節で大きく移動せず、年中同じ地域で暮らす鳥のことである。円山動物園の解説では、ヨーロッパで生息する集団は渡りの性質が強いが、ほかはほとんどが留鳥だという[3]。長い距離を移動して季節をしのぐ必要がないなら、土地で食べ物を確保できることが条件になる。
ここで、高山帯と漁港と都会という3つの環境を並べてみる。地形も気温も人の数もまるで違う。それでも同じ種が暮らしているなら、環境ごとに別の能力を使い分けているのではなく、どの環境でも通用する「暮らし方」を持っている可能性が高い。次は、その中心になる食べ物を調べる。
2. 生きた 動物を おそわないのに、どうやって ごはんを 見つけるの?
2. 狩りに頼らないトビは、空から何を探しているのか
2. 主な食べ物は死んだ動物:狩りに頼らない食性は何を可能にしたか
とんびの ごはんの 中心は、死んだ 動物や 魚です[4]。生きた 大きな 動物を おそう ことは ほとんど ありません[5]。川原や 海岸で、動物の からだを さがして 食べる ことが 多く、「自然の そうじ屋」と よばれる ことも あります[2]。
もちろん、生きた 小さな 動物も 食べます。カエルや ネズミなどです[4]。魚を 食べる ことも あります。
見つけ方は、こうです。空を とびながら 下を 見て、食べ物を 見つけたら、そこへ 急に おりて、足で つかまえます。視力が とても いいそうです[4]。
ここが ふしぎな ところです。食べ物が 見つかる 場所は、うみべや 山、町にも あります。食べ物を えらばない とんびは、住む 場所も 広げやすいのです。ただ、巣を 作れる 場所も ひつようです。
トビの食べ物は、主に動物や魚の死骸です。生きている大型の動物を襲うことはほとんどありません[4][5]。河原や海岸で動物の死体をあさる姿がよく見られ、「自然界の掃除屋」とも呼ばれます[2]。
ただし、「獲物を捕らない」わけではありません。カエルやネズミなど生きた小動物も食べ、都市部では生ゴミも口にします[4]。魚も食べます。
探し方は、上空を飛びながら地上を見渡し、餌を見つけるとその場所へ急降下して捕らえるというものです。視力がたいへんよいと説明されています[4]。
ここから分かるのは、トビの食べ物が「特定の生き物」ではなく「落ちているもの」だということです。死んだ動物や魚は、海辺や川辺、山、人の暮らしの近くでも見つかることがあります。食べ物を選ばないので、住む場所の幅も広がります。ただ、食べ物があっても、卵を育てる場所がなければ、そこで子どもを育てることはできません。トビは巣をどこに作るのでしょうか。
トビの食性を整理すると、主な食べ物は動物や魚の死骸であり、これに生きた小動物が加わる。鳥取県の解説は、主に動物や魚の死骸を食べるが、カエルやネズミなど生きた小動物も食べ、都市部では生ゴミなども食べるとする[4]。我孫子市鳥の博物館の資料は、死んだ動物が主な食べ物で、生きている大型の動物を襲うことはほとんどないと述べる[5]。したがって「ほとんど襲わない」は「まったく狩らない」ではなく、カエルやネズミなどの小動物を食べることが、鳥取県の解説に記されている。
河原や海岸で動物の死体をあさる姿がよく見られ、「自然界の掃除屋」と呼ばれる[2]。見つける方法は上空からの探索である。上空を飛びながら餌を探し、見つけるとその場所に急降下して捕らえる。視力が非常によいとされる[4]。
この食性は、分布の広さを説明する材料になる。獲物を追いかける捕食者は、特定の獲物がいる環境に縛られやすい。一方、死骸は川にも海岸にも、山にも都市にも、場所を問わず発生する。資料はトビの分布と食性を別々に述べており、「だから広く分布できる」という因果を直接書いた文は見当たらない。これは両者を並べたうえでの推論であることに注意したい。いずれにせよ、食べ物だけでは暮らしは成り立たない。繁殖の場所、つまり巣はどう確保されているのか。
3. とんびは、どこに 巣を つくるの?
3. 巣は高い木の上、ときには崖の地面
3. トビはどこに巣を作るのか:樹上と、まれな崖の地上
とんびの 巣は、木の 上に あります。かれた えだを つみ重ねて つくります[3]。大きな 木が 目じるしに なります。
とても まれに、がけの 地面に 巣を つくる ことも あります[3]。
ひろい 場所に 住めるのは、食べ物が 見つかるから。そして 木や がけが あるから、卵を そだてる 場所も 見つかるから、と 考えられます。海の ちかくの 林や、町の 公園の 木でも、巣は つくれそうです。
でも、木が まったく ない 場所は どうなのでしょう。町に 近づくと、とんびの くらしには ちがいも 見えます。
札幌市円山動物園の解説では、トビは樹上に営巣し、巣は大木の樹上に枯れ枝を積んで作ります。まれに断崖の地上に巣を作ることもあるそうです[3]。
巣を置く場所が「高い木」か「崖」なので、森や林、神社の木立、海辺の崖など、トビがいる場所の多くに巣を作れる場所があるはずです。ただし資料は、特定の環境のどこに営巣が多いかまでは述べていません。ここは、巣の条件がそろう場所なら暮らせる、と読むのがよさそうです。
食べ物は空から探せて、巣は木の上や崖に作れる。この2つがあれば、海岸でも山でも暮らせる鳥になれます。そこへ人の暮らしが加わると、何が起こるのでしょうか。
巣については、札幌市円山動物園が、樹上に営巣するが、まれに断崖の地上に営巣することもあると述べる。巣は大木の樹上に枯れ枝を積んでつくる[3]。
ここで、食べ物と営巣の2条件を重ねてみる。死骸という食べ物は場所を選ばずに存在する。巣の置き場所は樹上や断崖で、樹林がある地域や海岸の崖で確保できそうに見える。ただし資料は、この2条件が分布を決めると直接述べてはいない。記述を組み合わせた見通しであり、他の要因を排除するものではない。
では、条件が揃う場所に人の暮らしが重なると、トビの暮らしはどう変わるのか。
4. 町の とんびは、どうして 人の 食べ物を ねらうの?
4. 町のトビが人の食べ物を狙うのは、どんな場所か
4. 相模湾沿岸5地点の調査:人の食べ物を狙う行動は何に左右されるか
鎌倉市の せつめいでは、とんびは もともと けいかい心が 強く、人に かんたんには 近づかない 鳥です[7]。ところが、食べ物を あげたり、人の そばの ごみを あさったり していると、人を こわがらなく なりやすいと いいます[7]。
海の ちかくの 5つの 町(えのしま、かまくら、ずし、おおいそ、まなづる)では、こんな けんきゅうが ありました。人の 食べ物を ねらう ようすは、とんび 1羽に ついて、まわりの 森や 畑が すくない 場所ほど 強く、春の ころには さらに 強まったそうです[6]。
まわりの 森や 農地が 少ない 場所や、春には、人の 食べ物を ねらう ようすが 強まったと つたえられて います。そして 人も、とんびの ようすを かえる 場面に かかわって います。
鎌倉市の説明によると、トビはもともと警戒心が強く、人には安易に近づかない鳥です。ところが、安易な餌付けや、人のそばで生ごみをあさることが続くと、人を恐れなくなりやすいといいます[7]。
神奈川県の相模湾沿岸では、江の島・鎌倉・逗子・大磯・真鶴の5地点で、都市のトビが人の食べ物を狙う行動が調べられました。この研究では、トビ1羽あたりの森林面積と、水田以外の農地面積が少ない地域ほど、狙う行動が強いと報告されています。季節にも左右され、春の繁殖期に強まりました[6]。
この結果は、トビが「悪い鳥」だと言っているのではありません。まわりの食べ物が少ない場所ほど、人の食べ物を狙うようになる、というつながりを示した報告です。そしてもう一つ、人のほうの行動も関わります。餌を与えたり、生ごみを無防備に出したりする行動が、トビの慣れを後押ししうるのです。
一つの地域の5地点の結果なので、日本全体にあてはまるとまでは言えません。
人の近くで暮らすトビには、どんな変化が起きるのか。鎌倉市は市民相談への回答で、本来トビは警戒心が強く、人間には安易に近寄らないことが多いと説明する。そのうえで、安易な餌付けや、人のそばで生ゴミをあさる行動が、人を恐れなくさせやすいという[7]。
これを研究で見たのが、Galbreathらによる2014年の報告である。相模湾沿岸の5地点(江の島・鎌倉・逗子・大磯・真鶴)で、都市のトビが人の食べ物を狙う行動を調べた。その結果、行動の強さは、トビ1羽あたりの森林面積、水田以外の農地面積、そして季節に有意に左右された。森林や農地が少ない地域ほど強く、春の繁殖期に強まった[6]。
解釈には注意が要る。これは相関の結果であり、森林が少ないからトビが悪さをする、という話ではない。トビ1羽あたりの自然の食べ物が少ない場所ほど、人の食べ物が選ばれやすくなる、という見方はできるが、論文の抜粋から直接確認できるのは上記の関連までである。また、調査地は相模湾沿岸の5地点だけで、他地域に一般化することはできない。
つまり、トビを広い場所で暮らせるようにしている「食べ物を選ばない」性質は、人のそばでは、人の食べ物へ向かう行動としても現れうる。どちらも、トビの暮らし方の同じ根から出ていると読める。ただしこれも、資料を重ねた推論である。
5. 空を 見上げて、とんびを さがして みよう
5. 空を見上げて、トビかどうかを確かめる
5. トビを見分けて観察するための手がかり
近くの 空を 見上げて、とんびを さがして みましょう。見る ときは、太陽を 見ない ように します。まわりの 人や 車にも 気を つけます。
見つけたら、えさを あげずに 見る だけに しましょう。人が 食べ物を あげると、とんびが 人を こわがらなく なりやすいと いわれます[7]。
近くの空で、トビを探してみませんか。太陽を直接見ないことと、周囲の人や車に気をつけることは守ってください。
- カラスより一回り大きく、体は褐色と白のまだら模様です[4]。
- 尾の先端の中央がへこんでいるのが、見分ける目印になります[3]。
- 飛んでいく先と、その下の地面(海、川、町、山)を一緒に見ると、食べ物と巣の条件が見えてくるかもしれません。
見つけても、餌は与えず、見るだけにしておきます。安易な餌付けは人を恐れなくさせやすいと、鎌倉市が説明しています[7]。
観察の手がかりを、資料から3つ拾う。第一に大きさと色。カラスより一回り大きく、褐色と白のまだら模様をしている[4]。第二に尾。尾の先端は中央がへこんでいる[3]。第三に、飛ぶ向きと下の地形。食べ物の探し方(上空から探索し、急降下で捕らえる)と、巣の条件(樹上、まれに断崖)が、実際にその場所と合っているかを、自分の目で確かめる手がかりになる。観察のときは、太陽を直接見ないこと、周囲の安全に気をつけること。
調べを進めるなら、本記事の出典欄にある自治体や動物園の解説が出発点になる。鳥取県は食べ物と探し方、札幌市円山動物園は巣と渡りの有無、鎌倉市は餌付けを取り上げており、読み比べると、トビの暮らしの別々の面が見えてくる。
餌付けについて、鎌倉市は、安易な餌付けが人を恐れなくさせやすいと説明している[7]。観察は、距離を保って見るだけにとどめたい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数字や分布の説明は、資料の記述を自分の言葉で言いかえています。
- 新潟県 環境対策課「野生鳥獣の解説ページ」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908743310.html (分布・生息環境)
- コトバンク「トビ」(日本大百科全書・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E3%83%88%E3%83%93-2067853 (漁港・ごみ捨て場、死体をあさる行動)
- 札幌市円山動物園「トビ」 https://www.city.sapporo.jp/zoo/100-k.html (営巣、渡りと留鳥)
- 鳥取県「トビ」の解説ページ https://www.pref.tottori.lg.jp/329087.htm (食べ物、餌の探し方、鳴き声)
- 我孫子市 鳥の博物館「手賀沼の鳥」2020年1月号 https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info2/tegatan/tegatan2017_.files/tega202001.pdf (主な食べ物、手賀沼の魚食)
- Galbreath et al. (2014) Landscape Ecology 29(1):169-178 https://agris.fao.org/search/en/records/65df4ac063b8185d9cac2b4d (相模湾沿岸5地点の調査)
- 鎌倉市 市民相談への回答(27-39) https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/soudan/joho/documents/27-39.pdf (警戒心と餌付け)
なおした ところ
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