1. つぶあんと こしあんの ちがいは、どこ?
1. 同じ小豆なのに、粒あんとこしあんは何が違うのか
1. 分かれ目は「つぶしたか」「皮を取ったか」── 二つのあんの定義
つぶあんは、あずきを つぶさない ように たいた あんこです[1]。まめの かたちが、そのまま のこって います。
こしあんは、あずきを たいてから、うらごしを して、かたい がいひを とりのぞきます。そこへ さとうを くわえて、ねりあげます[1]。
つまり、おなじ あずきから はじまって、「うらごしを するか しないか」で、わかれるのです。
ところで、うらごしを したら、こしあんには つぶが のこらないのでしょうか。
農林水産省の資料の説明は、とてもはっきりしています。粒あんは、小豆をつぶさないように炊いたあんこです。こしあんは、小豆を炊いたあと、粒を裏ごしして外側の皮を取り除き、砂糖を加えて練り上げたあんこです[1]。
はじまりは、どちらも同じ炊いた小豆です。そこから、豆の形を残すか、裏ごしして皮を取るかで、二つの道に分かれます。
では、裏ごしをしたこしあんには、粒はまったく残っていないのでしょうか。実は、そうではないようです。
農林水産省の資料によると、粒あんは小豆をつぶさないように炊いたあん、こしあんは炊いた小豆を裏ごしして外皮を取り除き、砂糖を加えて練り上げたあんである[1]。出発点は同じ「炊いた小豆」であり、分岐点は、豆の形を残すか、裏ごしで皮を除くかの一点にある。
ここで、素朴な疑問が出る。皮を除いて裏ごしまでしたこしあんは、粒状の構造を完全に失っているのだろうか。メーカーの説明によると、こしあんにも粒状の構造が残っている。
2. なめらかな こしあんの なかにも、つぶが ある?
2. なめらかさの正体は、目に見えない「あん粒子」
2. あん粒子 ── デンプンをタンパク質が包んだ構造
あんこの なめらかな したざわりは、「あんりゅうし」という ちいさな つぶから うまれます[3]。
あずきの なかには、でんぷんが はいって います。まめを にると、その でんぷんを、たんぱくしつが つつみこんで、あんりゅうしが できます[3]。
こしあんは、まめの かたちを なくしても、この ちいさな つぶは のこって います。だから、つるんと した くちあたりに なるのです。
たとえば、ちいさな ふくろに こなを つめた ところを おもいうかべて みてください。ふくろが、たくさん あつまって いる ようすです。ただし、ほんとうの あんりゅうしは、目に 見えないほど ちいさい ものです。
あんこ特有の舌ざわりは、「あん粒子」と呼ばれる小さな粒から生まれる、とメーカーの解説にあります。小豆を煮ると、豆の中にあるデンプンを、タンパク質が包みこむ形であん粒子ができるのだそうです[3]。
デンプンの粒を、タンパク質の薄い袋がひとつずつ包んでいる、と考えると分かりやすいかもしれません。ただし、実際のあん粒子は、目では見えないほど小さなものです。
粒あんの「粒」は豆の形が残ったものですが、こしあんにも、目に見えない別の「粒」が残っています。口に入れたときのなめらかさは、この粒が壊れずにあるおかげだと説明されています。
では、この粒をうまく作るには、家庭の台所で何に気をつければよいのでしょうか。
あんの舌ざわりについて、小豆メーカーの解説は「あん粒子」を挙げる。小豆を煮ると、豆の中のデンプンをタンパク質が包みこむ形で形成される、という説明である[3]。ただしこれは企業による解説であり、粒子の大きさや数値までは示されていない。ここでは構造の説明として読むのが妥当である。
この構造を前提にすると、粒あんとこしあんの違いは、「豆の粒」を残すか否かであって、「あん粒子」の有無ではない。こしあんも、豆の形がなくなっても、粒子が壊れずに残っていることで舌ざわりが保たれる、と読める。
粒子は煮ることでできる。ならば、炊き方の手順そのものが仕上がりを左右するはずだ。次に、家庭向けの手順の要点を見る。
3. さとうは、いつ いれるの?
3. 砂糖は、豆がやわらかくなってから入れる
3. 砂糖を入れる時機と、柔らかさの見極め
JAふくいけんの てじゅんでは、まめが やわらかく なるまで、さとうを いれません[6]。
やわらかさは、ゆびで たしかめます。たきあがった あずきが、かるく ゆびで つぶれれば だいじょうぶです。つぶれなければ、みずを たして、もう いちど たきます[6]。
では、さとうは ただ あまくする ためだけに いれるのでしょうか。
ALICの しりょうでは、さとうは、あんの ふうみを よくして、じょうひんな あまさを ひきだす ものと されて います。ほぞんの ことも 考えて つかわれます[2]。
ひを つかう さぎょうなので、おうちで やる ときは、かならず おとなと いっしょに しましょう。
JA福井県が紹介する、失敗しにくいあんこの手順で、いちばん大事なポイントとして挙げられているのが、豆が柔らかくなるまで砂糖を加えないことです[6]。
柔らかさの確かめ方も、とても具体的です。炊き上がった小豆を指で軽くつぶしてみて、つぶれなければ、水を足してもう一度炊きます[6]。道具を使わず、指ひとつで判断するのが、この手順のおもしろいところです。
砂糖には、甘くする以外の働きもあります。農畜産業振興機構(ALIC)の資料では、あんの風味を高め、上品な甘さを引き出す砂糖を使うことが、良いあんをつくる最大の要因とされています。保存性の面でも、砂糖は重要な役割を持つと説明されています[2]。
なお、火を使う作業ですから、家庭で試すときは、かならず大人と一緒に行ってください。
さて、せっかくとろとろに仕上がったあんこは、いつ「できあがり」としてよいのでしょうか。
家庭向けのレシピで、JA福井県は、豆が柔らかくなるまで砂糖を加えないことを大事なポイントとしている[6]。この資料は、なぜそうするのかという理由までは述べていない。そのため、順番の効果を断定するのは避け、「現場の手順で重視されている点」として押さえておく。
柔らかさの判定は、炊き上がった小豆が軽く指でつぶれるかどうかである。つぶれなければ水を足して再度炊く[6]。基準が数値ではなく指の感触なので、同じ手順でも、豆の状態によって炊く時間が変わりうる、と読める。
砂糖の役割について、ALICの資料は、風味を向上させ上品な甘さを引き出す砂糖を使うことが、良いあんをつくる最大の要因だと述べる。保存性の観点からも重要だという[2]。甘味づけだけではない働きを、製造側が重く見ていることが分かる。
火を使う工程であり、家庭では大人と行うのが前提になる。
では、砂糖を加えて練り上げた後、どこで火を止めるのか。固さの見極めには、意外な条件がある。
4. できたての あんこは、どうして ゆるいの?
4. 炊き立てはとろとろ、冷めると固くなる
4. 練り上がりの固さは「冷めたあと」で判断する
たきたての あんこは、とろとろ です。でも、じょうおんに さめると、たきたてより かたく なります[6]。
ですから、ねりあげる ときは、さめた あとの ようすを 考えて、かたさを きめる ことが だいじです。
あつい うちに ちょうどよく 見えても、さめると かたく なりすぎる ことが あるからです。ですから、ひやした あとの ことまで 考えて ひを とめます。
JA福井県の手順には、見落としやすい注意が書かれています。炊き立てのあんこはとろとろですが、常温に冷ますと、ほどよい固さになります[6]。
つまり、鍋の中でちょうどよい固さに見えるときに火を止めてしまうと、冷めたあとには思ったより固くなりかねません。練り上がりの固さは、冷めた状態を想像しながら見極める必要があります。
こしあんと粒あんで、この見極めが違うのかどうかは、手元の資料からは分かりません。ただ、炊く順番、柔らかさの確認、冷めたあとの固さと、家庭の手順には、どれも「次の状態を先に考える」点があります。
ところで、あんこになる豆は、小豆だけなのでしょうか。
JA福井県の手順は、炊き立てのあんこはとろとろだが、常温に冷ますと程よい固さになる、と述べる[6]。これは、火を止める時点の固さをそのまま最終の固さとみなさない、という注意である。
実務上は、鍋の中で適度に見える状態では、冷めると固くなりすぎる可能性がある。練り上がりの判断は、冷却後の状態を見越して行う必要がある。ただし資料は、固さを数値で示してはおらず、粒あんとこしあんで基準が異なるかも述べていない。
ここまでの手順は、すべて小豆が前提だった。だが「あん」を名乗るものの材料は、小豆に限られない。
5. あんこは、あずきだけで できるの?
5. 小豆以外の豆から作るあんと、混ぜあわせるあん
5. 原料と作り方で変わるあんの種類 ── うぐいすあん、白あん、小倉あん
あんこは、あずきだけでは ありません。あおえんどうまめで つくる「うぐいすあん」や、しろいんげんまめで つくる「しろあん」も あります[1]。
「おぐらあん」は、こしあんに、おおつぶの あずきの みつで あまく にた ものを まぜた ものです。だいなごんなどの おおつぶの あずきが つかわれます[1]。
こしあんの なめらかさと、つぶの しょっかんを、いっしょに たのしめる あんこ という ことです。
ぼたもちと おはぎの ちがいを、こしあんか つぶあんかで わける、という せつも あります。ほかに いろいろな せつが あって、はっきりとは きまって いないようです[5]。
農林水産省の資料によると、あんの原料は小豆とは限りません。うぐいすあんは青えんどう豆、白あんは白いんげん豆、さつまいもあんはさつまいもからできています[1]。
作り方の組み合わせ方でも、新しい種類が生まれます。小倉あんは、こしあんに、大納言などの大粒の小豆を蜜煮で甘くしたものを混ぜたあんこです[1]。なめらかなこしあんの中に、粒の舌ざわりをはっきり残した形といえます。
さらに、ぼたもちとおはぎの違いを、「こしあんで作ったものがぼたもち、粒あんのものがおはぎ」とする説があります。ただし諸説あり、牡丹と萩の花に見立てる説など、定義は分かれているようです[5]。こしあんと粒あんの違いが、お菓子の呼び名の議論にまで及んでいるのは、おもしろい点です。
ところで、こうした「あんこ」は、いつごろから日本で食べられてきたのでしょうか。
農林水産省の資料に従えば、あんの原料は小豆に限られない。青えんどう豆はうぐいすあん、白いんげん豆は白あん、さつまいもあんの原料になる[1]。したがって、あんを分ける軸は、原料の種類と、仕上げ方(粒を残すか、裏ごしか)の二つが組み合わさったものと整理できる。
小倉あんは、この組み合わせの例である。大納言など大粒の小豆を蜜煮で甘くしてこしあんに混ぜたものだと、同じ資料は説明する[1]。なめらかなあんと、豆の形を残した粒を、一つのあんで両立させる工夫といえる。
粒あんとこしあんの区別は、お菓子の呼び名の説にも現れる。農林水産省の和食文化のページは、ぼたもちとおはぎについて「こしあんで作ったものがぼたもち、粒あんのものがおはぎ」という説を挙げつつ、諸説あるとする[5]。つまり、これは複数ある説明の一つであって、定説ではない。
では、これらのあんは、いつから日本の暮らしに入ってきたのか。
6. あまい あんこは、いつから ひろまったの?
6. 大陸から来たあんこが、甘いお菓子になるまで
6. あんの伝来と、砂糖の普及によって甘くなった経緯
あんこの もとに なったものは、いまから 1400ねんほど まえ、けんずいしが ちゅうごくから もちかえった、と されて います[2]。
けれども、むかしから いまの ような あまい あんこが あったわけでは ありません。あまい あんこが ふつうの 人に ひろまったのは、さとうが ひろがった えどじだいと いわれます[4]。
さとうが あったから、あまい あんこが 町の みんなの おやつに なったのです。
ALICの資料によると、「あん」はいまから約1400年前、遣隋使が大陸の文化とともに持ち帰ったものだとされています[2]。ただし、これは「とされる」という説明で、当時のあんが今のものと同じだったという意味ではありません。
甘いあんこが庶民のあいだに広まったのは、砂糖が普及した江戸時代だと、農林水産省の記事は説明します[4]。先に見たとおり、砂糖はあんの風味や保存の面でも重要な材料です[2]。砂糖が手に入りやすくなったことが、今の甘いあんこの背景にあったと読めます。
では、ここまで読んだことを、自分の台所と、おやつの時間で確かめるには、どうすればよいでしょうか。
起源について、ALICの資料は、「あん」は約1400年前に遣隋使が大陸の文化とともに持ち帰ったものだとされている、と述べる[2]。「とされている」という書き方から分かるとおり、これは伝承に近い説明であり、当時のあんが現在のものと同じだとは述べていない。
甘いあんが庶民に広まった時期については、農林水産省の記事が、砂糖が普及した江戸時代だと説明する[4]。砂糖があんの風味と保存性に関わる[2]ことを合わせると、砂糖の入手しやすさが、甘いあんの広がりの条件の一つだったと考えられる。ただし、この二つの資料は、普及の過程を詳しく検証してはいない。
ここまでの内容を、手元のあんこで確かめる方法を最後に示す。
7. ふたつの あんこを、くらべて みよう
7. 二つのあんこを、舌と指でくらべる
7. 手元のあんこで確かめられること
おうちに、つぶあんと こしあんが あったら、すこしだけ とって、くらべて みましょう。
まず、目で 見ます。まめの かたちが 見えるのは、どちらでしょう。
つぎに、ひとくち たべて、したと うわあごで そっと おしつぶして みます。つぶあんは、つぶの かんじが あります。こしあんは、つるんと して います。
こしあんの なかにも、目に 見えない あんりゅうしが あることを、おもいだして みてください。
もし おとなと いっしょに たける なら、たきたての あんこと、さめた あんこの かたさも くらべて みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
あんの定義と種類は農林水産省、砂糖の役割と起源はALIC、あん粒子はメーカーの解説、作り方はJA福井県、ぼたもち・おはぎの説は農林水産省の公開資料による。
- 農林水産省 東海農政局「ニャンズと学ぶ食文化 あんこができるまで」 https://www.maff.go.jp/tokai/keiei/shokuhin/bunka/attach/pdf/chiikinodentou-55.pdf (粒あん・こしあん・小倉あんの定義、原料の種類)
- 農畜産業振興機構(ALIC)「あん製造における砂糖の役割」 https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000074.html (砂糖の役割・あんの起源)
- 井村屋「あずきはあんになる」 https://www.imuraya.co.jp/azuki/features/apricot/ (あん粒子の構造)
- 農林水産省「あずきのスイーツに夢中!」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2403/spe1_04.html (甘いあんこが庶民に広まった時期)
- 農林水産省「春の和菓子ぼたもち」 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2302/spe14_04.html (ぼたもちとおはぎの説)
- JA福井県「失敗なしの あんこ」 https://www.ja-fukuiken.or.jp/topics/detail.php?id=554 (砂糖を入れる時機・柔らかさ・冷めた後の固さ)
なおした ところ
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