1. 62ねん ぶりに 見つかった、小さな 点
1. 冥王星のあと、62年ぶりに見つかった天体
1. 1992 QB1 ── 冥王星・カロンの次に見つかった海王星以遠天体
1992ねんに 見つかった 天体は、「1992 QB1」と いう 名前が つきました。見つけたのは、デビッド・ジューイットさんと ジェーン・ルーさんです[2]。
ふたりが さがしはじめたのは、1987ねんごろです。ジューイットさんは「海王星より そとは、からっぽなのかな」と ふしぎに 思ったのが きっかけでした。ルーさんが 手つだい、およそ 5ねん、さがしつづけて 見つけました[1]。
じつは、冥王星も 同じ なかまです。いまは、冥王星は 海王星より そとに ある 天体の 第1ごうだったと 考えられて います[9]。そのころは、だれも 知りませんでした。
この 記事の 答えを 先に 言うと、見つけにくい わけは 2つです。ものすごく くらい ことと、星空の 中で とても ゆっくり 動く ことです。見つける ほうほうは、カメラで 同じ 空を 何どか うつして、動く 点を さがす ことです。大きさは、星の 前を 通る ときに 星が 消える ようすで はかります。
この天体には「1992 QB1」という仮の名前がつき、のちに(15760)アルビオンと名づけられました[2]。発見したのは、ハワイ大学のデビッド・ジューイットさんと、ジェーン・ルーさんです。大きさは直径100〜170km前後と見積もられています(推定値は研究者によって異なります)。[2]。
探索のきっかけは1987年のことでした。ジューイットさんは、当時マサチューセッツ工科大学の研究者で、「海王星より外の太陽系はなぜこんなに空っぽに見えるのか」と疑問に思い、大学院生だったルーさんに海王星より外を探してもらいました。ふたりは約5年、探しつづけました[1]。
のちに分かったことですが、冥王星も海王星より外にたくさんある天体の仲間のひとつでした。NASAは、冥王星を、見つかった最初のカイパーベルト天体と説明しています[9]。ただ、1930年には、そんなものがほかにもあるとは分かっていませんでした。
見つけにくい理由は、反射した光だけで見えるため極端に暗いことと、星空の中での動きが遅いことです。見つける方法は、感度の高いカメラで同じ空を何度か撮り、動く点を探すことです。大きさや形は、天体が星の前を横切って星を隠す「掩蔽(えんぺい)」で測ります。
1992 QB1(のち(15760)アルビオン)は、ジューイット(D. Jewitt)とルー(J. Luu)がハワイ島マウナケア山のUH 2.24 m望遠鏡で発見し、1992年8月30日に発表された[2][1]。冥王星とカロンに続いて海王星以遠で見つかった最初の天体とされる[2]。直径の推定は約108〜167 kmと幅がある(反射率の仮定による)[2]。
探索の動機は、1987年にジューイットが、海王星の外側が見かけ上ほとんど空っぽであることを不思議に思ったことだった。彼は大学院生だったルーに、冥王星軌道の外側を探すよう頼み、探索は約5年に及んだ[1]。
現在では、NASAは冥王星を、最初に発見されたカイパーベルト天体と説明している[9]。カイパーベルトは海王星軌道(約30 au)から約50 auまでの領域で、その外側に、離心率の大きな軌道をもつ散乱円盤が広がる[9]。2018年までに2000個を超える天体が見つかっている[1]。
題名の問いへの答えを先に整理する。見つけにくいのは、(1)太陽の光を反射するだけなので距離とともに極端に暗くなること、(2)見かけの動きが遅く、ふつうの小惑星の探し方では拾いにくいことの2点が重なるため。見つける手段は、高感度のCCDで同じ領域を時間をおいて撮り、動く点を探すこと。大きさや形は、天体が恒星の前を通る掩蔽の観測で測る。
2. どうして そんなに くらいの?
2. 暗さは「距離の4乗」できいてくる
2. 反射光の減光 ── 距離の4乗に反比例する
海王星より とおくに ある 天体は、自分では 光りません。太陽の 光が あたって、はね返った 光を、わたしたちは 見て います。
くらい 体育館を 思いうかべて ください。むこうの はしに ある ボールに、こちらから 懐中電灯を あてます。光は ボールまで 行く あいだに 弱くなり、はね返って もどって くる あいだにも、また 弱くなります。行きも 帰りも 弱く なるので、とおい ボールは、とても くらく 見えます。 ただし 本当の 太陽系は 体育館より ずっと 広くて、光の 弱まり かたも 数字で きまって います。
太陽から 40倍とおい ところでは、光が 行きで 1600ぶんの 1、帰りでも 1600ぶんの 1に なります。かけると、やく 250万ぶんの 1です。
海王星より遠い天体は、自分では光りません。太陽の光を反射して、その光を地球のわたしたちが見ています。
太陽からの光は、距離が2倍になると4分の1に弱まります。これを「距離の2乗に反比例する」といいます。反射した光も、地球に届くまでにまた距離の2乗で弱まります。だから、太陽から40倍遠い天体は、太陽に1天文単位(地球と同じ距離)まで近い同じ天体より、約250万分の1(40の4乗=256万)の明るさになります。木星の距離(約5倍)なら625分の1です。
たとえるなら、暗い体育館のむこうのはしにあるボールに、こちらから懐中電灯を当て、はね返った光を見るようなものです。ただし本当は、光が弱まる量は距離で決まった式があり、体育館のたとえよりずっときびしい暗さです。
23.3等級は、肉眼で見える限界(約6等級)の約800万分の1です。1992 QB1が見つかる前には、これだけ暗い点を、空の広い範囲から探す手段がなかったのです。
太陽から距離 r、地球から距離 Δ にある天体が反射して地球に届く光の強さは、おおよそ 1/(r²Δ²) に比例する。入射光が r の2乗で弱まり、反射光が Δ の2乗で弱まるためだ。冥王星のように r と Δ がほぼ同じ(約40 au)とみなせる場合は、r⁴ に比例して暗くなる。
| 天体の太陽からの距離 | 1 auを基準にした明るさの比 |
|---|---|
| 約5 au(木星の軌道の付近) | 約1/625(5⁴) |
| 約40 au(カイパーベルト) | 約1/256万(40⁴) |
上の数字は、大きさと反射率が同じ天体を、地球・太陽・天体が一直線上に並んだ位置で比べた概算で、本記事での計算である(地球と天体の距離を太陽からの距離とほぼ同じとみなした)。
1992 QB1は23.3等級[2]。肉眼の限界(約6等級)との差17.3等級は、明るさの比で 10^(0.4×17.3) ≒ 8×10⁶、つまり約800万倍にあたる。
3. 動く 点を さがす ほうほう
3. 探し方は「同じ空を撮り比べて、動く点を探す」
3. 探索手法 ── ブリンク比較からCCDへ
とおくの 電車は、近くの 電車より ゆっくり 動いて 見えます。海王星より とおくの 天体も、星空の 中で とても ゆっくり 動きます。ただ、まわりの 星は 動かないので、すこし ずつ 動く 点が あれば、それが とおくの 天体だと 分かります。
むかしは、同じ 空を 時間を あけて 2まい 写真に とり、ふたつを かわりばんこに 見せる 道具で 見くらべて いました。1930ねん、クライド・トンボーさんが この 方法で 冥王星を 見つけました[3]。
ジューイットさんと ルーさんも はじめは 写真で さがしましたが、1まいの 組を 調べるのに 8じかんくらい かかりました[1]。
そこで つかったのが、デジタルカメラの ような 電子の 目、CCDです。入ってきた 光の うち、記録に つかえるのは、写真で やく1わり、CCDでは やく9わりです[1]。しかも 画面の 上で 見くらべられます。ハワイの 望遠鏡で 5ねん さがして、1992ねんに ついに 見つかりました。
遠い天体は、星空の中でとてもゆっくり動きます。まわりの恒星はほとんど動かないので、同じ空を時間をあけて何回か撮り、位置が少しずつ変わる点を探せば、それが太陽系の天体だと分かります。
1930年、クライド・トンボーさんはアリゾナ州ローウェル天文台で、同じ空を数日あけて写真に撮った2枚の乾板を、かわりばんこに見せる装置(ブリンク比較装置)で見くらべました。動く天体は、画面の中で「ぴょん」と飛んで見えます。2月18日、トンボーさんは冥王星を見つけました[3]。
ジューイットさんとルーさんも、はじめは写真乾板を使いました。ところが、1組の乾板を見くらべるのに約8時間かかりました[1]。
突破口は、CCDという電子の撮像素子でした。写真は入ってくる光の約10%しか使えませんが、CCDは約90%をとらえます。さらに、パソコンの画面の上で見くらべられます[1]。1988年にハワイ大学へ移った2人は、マウナケア山の2.24m望遠鏡とCCDで探索を続け、およそ5年後にQB1を見つけました[1]。
冥王星より遠い天体は、天球上の動きが遅い。公転速度が遅く、地球の公転による見かけの動き(視差)が主な動きになるためだ。そこで、同じ領域を時間をあけて撮像し、背景の恒星に対して位置が変わる点を探す。1930年のクライド・トンボーによる冥王星の発見は、アリゾナ州フラッグスタッフのローウェル天文台の13インチ天体写真儀で撮った乾板を、ブリンク比較装置で見くらべる方法だった。2月18日に冥王星を識別したとされる[3]。
1987年にジューイットとルーが始めた探索も、はじめは写真乾板のブリンク比較だった。1組の乾板を調べるのに、最初は約8時間かかった。CCDは入射光の約90%を電気信号に変える(写真乾板は約10%)ため、より暗い天体を記録できる。さらにブリンクを計算機の画面上で行える[1]。ただし初期のCCDは視野が小さく、後に1024×1024画素へ大きくなった[1]。
1988年にジューイットはハワイ大学へ移り、ルーとともにマウナケア山の2.24 m望遠鏡で探索を続けた。約5年後の1992年に1992 QB1を、6か月後に2個目の(181708) 1993 FWを発見した[1]。現在までに見つかった海王星以遠天体は2000個を超える[9]。
4. 見つけた あとは、大きさを どう はかるの?
4. 見つけたあとの難問 ── 明るさだけでは大きさが決まらない
4. エリスは写真で見逃され、掩蔽で大きさが分かった
見つけたら、つぎは 大きさを 知りたく なります。でも、くらい 天体は 見えるだけで、形も 大きさも わかりません。しかも 明るさだけでは 決まりません。大きくても 光を あまり 反射しない 天体と、小さくても よく 反射する 天体は、同じくらいの 明るさに 見える ことが あるからです。
2005ねんに 見つかった エリスは、そんな 天体の ひとつです。じつは 2003ねんの 写真に、もう うつって いました。でも、そのころの プログラムでは、ゆっくり 動く 天体を 見つけにくく、エリスも 見のがされて いました[4]。
エリスの 大きさは、2010ねん11月6日に はかられました。エリスが 星の 前を 通って、星を かくした ときの ようすを、いろいろな ばしょの 望遠鏡で しらべたのです[5]。わかった 大きさは、冥王星と ほとんど 同じくらいでした。直径は、やく2326kmです[5][4]。
2006ねん8月24日、国際天文学連合は、冥王星、エリスなどを「準惑星」と 決めました[6]。冥王星と 同じような 天体が ほかにも ある ことが、まえより よく 分かって きた時期でした。
天体を見つけたあと、次に知りたいのは大きさです。ところが、見えているのは点だけで、大きさははかれません。明るさから大きさを逆算するには、表面がどれくらい光を反射するか(反射率)を知らなければならず、大きくても光をあまり反射しない天体と、小さくてもよく反射する天体は、同じくらいの明るさに見えるからです。
エリスは、そのことをよく示す例です。マイク・ブラウンさんたちは、2003年10月21日に撮った写真をもとに、2005年1月5日にエリスを見つけました。じつは写真には、2年前からもう写っていました。当時のソフトでは動きの遅い天体を見つけにくく、エリスも見逃され、2005年に写真を目で見直して見つかりました[4]。
大きさは、2010年11月6日、エリスが星の前を通る掩蔽を複数の地点で観測して決められました。半径は約1163km(誤差±6km)でした。冥王星とほぼ同じ大きさで、「冥王星の双子」のようだと論文は表現しています[5]。冥王星の直径は、探査機ニューホライズンズの観測で約2377kmと分かっていて、エリスの約2326kmよりわずかに大きくなっています。質量はエリスの方が約27%大きいとされています[4]。
2006年8月24日、国際天文学連合は「惑星」の定義を採択し、冥王星・エリスなどは「準惑星」に分類されました[6]。冥王星級の天体がほかにも見つかり始めていたことが、定義を考える背景にあったといわれます。
見つけたあとの課題は、大きさの決定だ。見かけの明るさは、直径の2乗と反射率(アルベド)の積で決まるため、片方が分からなければもう片方も決まらない。そのため、直径は、掩蔽や熱放射の観測を別に行って決めることになる。
エリスは、マイク・ブラウンらがパロマー天文台の1.2 mシュミット望遠鏡で2003年10月21日に撮った画像にすでに写っていたが、当時の解析が動きの遅い天体を除外していたため見逃され、2005年1月に目視で見直して発見された(発見日2005年1月5日)[4]。遅い動きは、遠い天体の特徴そのものだ。
2010年11月6日(UT)の掩蔽をシカルディらが多地点で観測し、半径1163±6 kmを得た。論文は、冥王星と同程度の大きさ(「冥王星の双子」)で、アルベドが高く、窒素・アルゴン・メタンの大気は上限約1 nbar以下と報告している[5]。冥王星の平均直径は、2015年のニューホライズンズの観測で2377±2 kmと求められ[4]、エリスよりわずかに大きいが、質量はエリスのほうが約27%大きい[4]。
2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)は決議5Aで、惑星を「(a)太陽の周りを回り、(b)自己重力で丸くなるのに十分な質量があり、(c)軌道の近くから他の天体を一掃した」天体と定義した。(c)を満たさないものは準惑星で、冥王星とエリスはこれにあたる。決議6Aは、冥王星を海王星以遠天体という新しい区分の代表と認めた[6]。
5. 星を かくす 影を、みんなで つかまえる
5. アロコスが星を隠す現象を、24台の望遠鏡で観測
5. 2017年のアロコス掩蔽 ── 影の帯に望遠鏡を並べる
えんぺいは、ある 天体が 星の 前を 通って、星の 光を さえぎる ことです。さえぎる 天体の かげは、地球の うえを 動いて いきます。かげの はばは、天体の 大きさと ほとんど 同じです。
ニューホライズンズという 探査機は、冥王星の つぎに 行く 天体を えらびました。いまは「アロコス」と よばれる、2014ねんに ハッブル宇宙望遠鏡で 見つかった 天体です[10]。
研究者たちは、アロコスが 星の 前を 通る 日、南アメリカの アルゼンチンで、24だいの 望遠鏡を 道の よこに ならべて、かげを つかまえようと しました。7月17日、そのうち 5だいが 星が 消える ところを とらえました[7][10]。
わかったのは、おおまかな 形です。2つの かたまりが くっついた ような 形で、大きさは 20km × 30km くらいでした[7]。2019ねん1月1日、探査機が そばを 通って 写した 写真でも、2つの かたまりが つながった 形でした。全体の 長さは やく35kmです[10]。
掩蔽とは、天体が恒星の前を通って、星の光を一時的にさえぎる現象です。さえぎる天体の影は地球の上を動いていきますが、影の幅は天体の大きさとほぼ同じです。うまく望遠鏡を並べれば、星が消える時間の長さから、天体の大きさや形が分かります。
2014年6月26日、マーク・ビューイさんたちはハッブル宇宙望遠鏡を使い、探査機ニューホライズンズが冥王星のあとに訪れられる天体を探して、(486958)アロコス(当時の仮の名前は2014 MU69)を見つけました[10]。
ビューイさんたちは、2017年に3回の掩蔽を観測しました。6月3日は、アルゼンチンと南アフリカで影が見つからず、あとでハッブルの観測を使い直したところ、望遠鏡の置き場所がずれていたことが分かりました。7月10日は、航空機に載せた望遠鏡SOFIAが太平洋の上空から観測しましたが、中心の影を外したと考えられました(2018年1月に短い減光に気づきました)。7月17日、アルゼンチン南部に24台の移動式望遠鏡を「柵」のように並べ、少なくとも5台が影をとらえました[10][7]。
5本の線(弦)から、複雑な輪郭、つまり2つの塊がくっついた「接触連星」と読める形、およそ20km×30kmの大きさと、可視光の反射率約10%が分かりました[7]。2019年1月1日、探査機は太陽から約43.4天文単位(光で約6時間かかる距離)の場所で、約3538kmまで近づきました[10]。2つの塊は全体で約35kmの大きさで、掩蔽で見えた「くっついた形」は、実物で確かめられました[10][8]。
掩蔽観測では、天体の影が地球上を通る帯の幅が、天体の大きさとほぼ等しい。この帯に複数の望遠鏡を並べれば、各地点で恒星が隠れる時間(弦の長さ)から、輪郭を再構成できる。精度は、望遠鏡の位置と、天体の軌道と恒星の位置が、どれだけ正確に分かっているかで決まる。
アロコス(486958 Arrokoth、仮符号2014 MU69)は、2014年6月26日、ビューイらのニューホライズンズ KBO探索チームがハッブル宇宙望遠鏡で発見した。探査機が冥王星のあとに到達できる天体を探す探索の2つめの発見で、2015年8月28日、必要な燃料が最も少ないため、探査の目標に選ばれた[10]。
2017年に3回の掩蔽が観測された。6月3日は、25の移動観測点と固定望遠鏡でも検出なし(望遠鏡の置いた位置が後のハッブルの観測データとずれていたと判明)。7月10日はSOFIAが太平洋上空から観測し、中心の影を外したが非常に短い弦が得られた。7月17日は、アルゼンチン南部に24の観測点を並べ、5本の弦を得た。2018年8月4日にも22の観測点で2本の弦を得ている[7][10]。
Buie et al. (2020)は、7月17日の弦から、複雑な輪郭と接触連星と整合する形、およそ20×30 kmの大きさ、可視光アルベド約10%を報告した。リングや破片は検出されなかった。掩蔽は、探査機の航法に使う精密な位置情報にもなった[7]。
2019年1月1日、ニューホライズンズは太陽から約43.4 au、約3538 kmまで近づいた(太陽系で探査機が訪れた最も遠い天体)[10]。ベストフィットの寸法は約34.5×19.8×13.8 kmで、2つの塊(ウェヌ約20.1 km、ウィーヨ約15.0 km)からなる接触連星だった。2024年の再解析(Porter et al.)では、最初の推定より扁平さが小さいとされている[10][8]。
6. もっと 小さい ものは、見えるの?
6. 望遠鏡では見えない小さな天体を探す
6. 見えない小天体 ── 掩蔽による統計的な検出
アロコスは 長さが やく35kmでした。でも、カイパーベルトには もっと 小さな 天体が たくさん あると 考えられて います。直径が 100kmより 大きい ものだけでも、数十万こ あると 考えられて います[9]。
半径が 1kmより 小さい ものは、ハッブル宇宙望遠鏡でも 直接は 見えません。それでも、星の 前を 通って 星が 一しゅん 消えるのを つかまえる ことで、いる ことは 分かります。2009ねんには、ハッブルの 古い 記録の 中から、半径 やく520mの 天体が 0.3びょう だけ 星を かくした ようすが 見つかりました[1]。
もっと 小さい ものが どれくらい あるのかは、まだ はっきり わかって いません。
カイパーベルトには、アロコスより小さい天体が、はるかに多いはずです。直径が100kmより大きい天体だけでも、数十万個あると推定されています[9]。
半径が1kmより小さい天体は約35等級で、ハッブル宇宙望遠鏡でも直接は見えません。けれども、掩蔽なら捉えられます。2009年、シュリヒティングさんたちは、ハッブルが星を追いかけて記録していた2007年3月のデータの中から、約0.3秒だけ星が暗くなる現象を見つけました。半径は約520±60mと見積もられました。2012年にも、半径約530±70mの2例目が報告されています[1]。
この2例では、小さな天体は大きな天体の数から単純に予想するより少ない結果でした[1]。ただし、観測例は2つなので、見積もりは変わる可能性があります。
カイパーベルトの天体は、直径100 km超は数十万個あると推定されている[9]。半径1 km未満の小天体は約35等級とされ、ハッブル宇宙望遠鏡でも直接は撮像できない。掩蔽で検出された例がある[1]。
Schlichting et al. (2009)は、2007年3月のハッブル精密誘導センサーの記録(星の追尾用データ)から、約0.3秒の減光を見つけ、半径520±60 mの天体と推定した。Schlichting et al. (2012)は、半径530±70 mの2例目を報告した。2例から、大きい天体の数からの単純な外挿より、小さい天体は少ないと見積もられた[1]。
事象が2例のみで、統計的な不確かさは大きい。小天体の数は、いまも決着していない。
7. 星を かくす ものを、じぶんで ためして みよう
7. 掩蔽を、部屋の中でためしてみよう
7. 掩蔽の幾何を、身近な光で試す
家の 中で、できる ことが あります。かならず 太陽や、まぶしい ライトは 見ないで、へやの 電気や、スタンドの 小さな 光で ためして ください。
- へやの むこうの はしに ある 小さな 光を 見ます。
- うでを のばして、えんぴつの 先を 光の 前に 出します。
- えんぴつを 動かすと、光が 見えなく なったり、見えたり します。
- つぎは、えんぴつを うごかさずに、頭だけ 左右に 動かします。光が 見える ところと 見えない ところが あります。
光が 見えなく なる ときは、あなたと 光と えんぴつが 一直線に なって います。これが、星が かくれる ときと 同じです。見えない ところが 「かげの おび」で、そこに 望遠鏡を ならべたのが 「柵」でした。
ほんとうの 天体では、おびの はばは 20kmから 30kmほどです。ならべる 望遠鏡は、おびを まちがえないよう、天体の 位置を こまかく しらべて おく 必要が あります。
太陽は、ぜったいに 見ないで ください。目を いためます。夜に 外で 星を 見る ときは、おうちの 人と いっしょに 行って ください。
掩蔽のしくみは、部屋の中でも確かめられます。まぶしい光は使わず、部屋の電気やスタンドなど、小さな光で試してください。
- 部屋の向こうのはしにある小さな光を見ます。
- 腕をのばして、鉛筆の先を光の前に出します。光が隠れる位置を探します。
- 鉛筆は動かさず、頭を左右にゆっくり動かして、光が見える位置と見えない位置の幅を調べます。
見えない範囲が「影の帯」で、アロコスの観測では、この帯に24台の望遠鏡を並べました。光が隠れる位置の幅は、鉛筆の太さと同じ程度です。アロコスの影の帯の幅も、アロコスの大きさ(約20〜30km)と同じ程度でした。
資料を読むなら、Buie et al. (2020)の論文があります。影がとらえられなかった6月3日と、5台の望遠鏡がとらえた7月17日を並べて読むと、観測のむずかしさが見えてきます[7]。
太陽は絶対に見ないこと。星の観察で夜に外へ出るときは、保護者といっしょに。
影の帯の幅が天体の大きさに近いことは、部屋の中で試せる。小さな光源(遠くの電灯)を一つ決め、腕を伸ばして鉛筆を光源の前に出す。頭を左右に動かして、光が隠れる範囲の幅を測る。隠れる範囲の幅が鉛筆の太さに近いことを確かめられる。実際の掩蔽では、帯の幅はほぼ天体の直径に等しい(光源が点に近く、天体が観測点から十分遠いため)。
もう一つ、読みたい資料がある。Buie et al. (2020)は、4回の掩蔽を扱い、影を検出できなかった6月3日と、5本の弦が得られた7月17日の両方を報告している[7]。成功した回と失敗した回を並べて読むと、観測計画のむずかしさが見える。
太陽を直接見る観察は、目を傷める。夜に外へ出る観察は、保護者と一緒に行うこと。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:発見の経緯の一部は百科事典サイト(Wikipedia)のまとめに頼っています。個別の数値は、書かれている論文や、NASAの公式ページで確かめてから使ってください。Buie らの論文は英語です。
- Wikipedia「Kuiper belt」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Kuiper_belt (ジューイットとルーの探索の経緯、CCDの効果、探索に5年かかったこと、掩蔽による小天体の検出)
- Wikipedia「(15760) Albion」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/(15760)_Albion (1992 QB1の発見日、23.3等級、冥王星とカロンに続く最初の海王星以遠天体という説明、直径の推定幅)
- Wikipedia「Clyde Tombaugh」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Clyde_Tombaugh (1930年2月18日の冥王星の識別、ブリンク比較装置、13インチ天体写真儀)
- Wikipedia「Eris (dwarf planet)」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Eris_(dwarf_planet) (2003年の画像と2005年の発見、動きの遅い天体を除いた解析、冥王星との大きさと質量の比較)
- Sicardy, B. et al. (2011) "A Pluto-like radius and a high albedo for the dwarf planet Eris from an occultation", Nature 478, 493–496。 https://www.nature.com/articles/nature10550 (2010年11月6日の掩蔽から求めた半径1163±6 km)
- Wikipedia「IAU definition of planet」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/IAU_definition_of_planet (2006年8月24日の総会での惑星の3つの条件、準惑星、決議6A)
- Buie, M. W. et al. (2020) "Size and Shape Constraints of (486958) Arrokoth from Stellar Occultations", The Astronomical Journal 159, 130。 https://arxiv.org/abs/2001.00125 (2017年の3回と2018年の1回の掩蔽、7月17日の24観測点・5本の弦、約20×30 kmの輪郭、反射率約10%)
- Stern, S. A. et al. (2019) "Initial results from the New Horizons exploration of 2014 MU69, a small Kuiper Belt object", Science 364, aaw9771。 https://doi.org/10.1126/science.aaw9771 (探査機による観測で、アロコスが2つの塊からなる接触連星と分かったこと)
- NASA「Kuiper Belt: Facts」(英語)。 https://science.nasa.gov/solar-system/kuiper-belt/facts/ (カイパーベルトの範囲、冥王星が最初に見つかったカイパーベルト天体であること、2000個超の天体、アロコスの説明)
- Wikipedia「486958 Arrokoth」(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/486958_Arrokoth (2014年6月26日の発見、2017年の掩蔽の経過、2019年1月1日の接近、寸法)
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