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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

海の そこに ある 白い とうの 町、ロストシティは 火山が ないのに なぜ あたたかいの?

大西洋の海底にある白い塔の町ロストシティは、火山がないのになぜ温かいのか

ロストシティ熱水域 ── 火山なしで温まる低温・アルカリ性の海底の塔は、黒煙の噴出孔と何が違うのか

分野:自然

海の そこに、高さ 約やく60メートルの 白い 塔とうが 立つ 町が あります。名前は ロストシティ。まわりに 火山は ありません。それなのに、水は あたたかく なって います。

火山も ないのに、どうして あたたかいのでしょう。黒い けむりを 出す ふつうの 噴出孔ふんしゅつこうとは、なにが ちがうのでしょう。あたたかさの もとは 岩と 海水の 反応はんのうで、そこには 水素すいそと メタンを 使って 生きる 小さな 生きものが いる ことが 分かります。

大西洋の海底、水深700〜900mほどの場所に、高さ約60mの白い塔が立つ場所があります。名前はロストシティ。近くに火山はないのに、水は温かく、塔は洞窟の石灰岩に似た白い炭酸塩でできています。

火山がないのに、なぜ温かいのでしょうか。黒い煙を出す噴出孔と、何が違うのでしょうか。熱の元は岩と海水の反応であること、そこでは水素とメタンを使う微生物が暮らしていること、生命の起源とのつながりが論争中であることが分かります。

大西洋中央海嶺に近い海底山の上に、高さ約60m(「60m以上」とする資料もある)の白い塔が林立する熱水域がある。ロストシティである。熱源はマグマではなく、主に海水とマントルの岩石の反応(蛇紋岩化)で、岩石の冷却も寄与するとされる。ここの水は約40〜90℃で、約400℃に達する黒煙の噴出孔より、上限どうしの比べでも約310℃低い。

では、火山なしで温まる仕組みは何か。成分や塔の材料は、黒煙の噴出孔とどう違うのか。そして、「生命が生まれた場所の有力候補」という評価は、どこまで確かなのか。熱源・温度・成分の違い、微生物のエネルギー源、仮説をめぐる賛否、2023年の掘削が分かる。

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1. 海の そこの 白い とうの 町は、どうして 見つかったの?

1. 探していなかった海底で、白い塔の町が見つかった

1. 熱水域を探す航海ではなかった ── 偶然見つかった白い塔

ロストシティが 見つかったのは、2000ねんの 12月です。アメリカの 調査ちょうさの 船が、大西洋の まん中あたりの 海を 調べて いました。じつは、この 場所を さがしに 行った わけでは ありません。ぐうぜん 見つかりました[2]。

名前は、「うしなわれた 町」と いう 意味です。いちばん 大きな 塔とうは ポセイドンと よばれ、高さは 約やく60メートル。18かい だての ビルほどです[2][4]。

場所は、大西洋の まん中を 走る 海の 山の れんなり、中央海嶺かいれいの ちかくです。アトランティス・マシフと いう 海の そこの 山の 上に あります[5]。

ふしぎなのは ここからです。まわりに 火山は ありません。なにが 水を あたためて いるのでしょう。

ロストシティが見つかったのは、2000年12月です。アメリカの国立科学財団の支援を受けた大西洋中央部の調査航海で、見つけようと狙っていた場所ではなく、偶然の発見でした[2]。名前は「失われた町」の意味です。

いちばん大きな塔はポセイドンと呼ばれ、高さは約60m(「60m以上」とする資料もあります)。調査した研究者は「18階建ての柱」とたとえています[2][4]。場全体は、およそ300×1000フィート(約90×300m)の範囲に、高さ30〜180フィート(約9〜55m)の大きな塔が約30本です。

場所は、大西洋中央海嶺の近く、北緯30度にある海底山アトランティス・マシフの上です[5]。ここでは、地球の深い部分(マントル)の岩石が海底に顔を出しています。

ところが、近くに火山はありません。では、水を温めている熱はどこから来るのでしょうか。

ロストシティは、2000年12月、アメリカ国立科学財団(NSF)が支援する大西洋中央部の調査航海で見つかった。調査隊は熱水域を探しに行ったのではなく、発見は偶然だった[2]。

規模は、最大のポセイドンが約60m(NOAAは「60m以上」、UWは「18階建て」)で、場全体はおよそ300×1000フィートの範囲に、高さ30〜180フィート(約9〜55m)の塔が約30本ある[2][4]。60mは最大級の値で、多くの塔はそれより低い。

舞台は、中央海嶺の近くの北緯30度にある海底山アトランティス・マシフである。大洋底の「コア・コンプレックス」と呼ばれる地形で、マントルの岩石が露出している。水深は700〜900m前後とされるが、資料により数値に幅がある[5]。

この場所は、ふつうの海底火山の熱水域とは前提が違う。近くに火山がないのに、熱水が出ているからである。では、その熱はどこから来るのか。

2. 火山が ないのに、水は なにで あたたまるの?

2. 熱の元はマグマではなく、岩と海水の化学反応

2. 蛇紋岩化 ── かんらん岩と海水の反応が熱を生む

答えは、岩と 海水の 反応はんのうです。海の そこには、地球の 深い ところに ある かんらん岩と いう 岩が 顔を 出して います。この 岩に 海水が しみこむと、反応はんのうが 起きて、あたたかく なります[1]。この 反応はんのうは 「蛇紋岩化じゃもんがんか」と よばれます。

火山の マグマで あたたまるのでは ありません。つかいすての カイロが、中の 鉄が さびる ときに あたたかく なるのに、少し にて います。ただし 本当は、岩も 反応はんのうも ちがいます。

この 反応はんのうは、あたたかさだけでなく、ある 気体きたいも 作ります。その 気体きたいが、このあと 出て くる 生きものたちの ごはんに なります。

熱の正体は、海水とマントルの岩石(かんらん岩)が反応する「蛇紋岩化」という化学反応です[1]。海底に出たかんらん岩に海水がしみこむと、岩の性質が変わり、そのとき熱が出ます[5]。

火山の熱で水が温まる黒煙の噴出孔とは、熱の出どころが違います。たとえるなら、使い捨てカイロが中の鉄のさびる熱で温まるのに近い、という話です。ただし、岩も反応もまったく別のものです。

この反応は熱のほかに、水素やメタンといった気体も作ります。のちの章で見るように、これが微生物のごはんになります。

では、このやり方の熱水は、黒い煙を出す噴出孔と、どれほど違うのでしょうか。

ロストシティの熱は、火山のマグマではなく、海水とマントルのかんらん岩(橄欖岩)との反応、すなわち蛇紋岩化から主に生じる(マントル岩の冷却も熱の一部になるとされる)[1]。海水がかんらん岩(主成分の一つはオリビン)にしみこむと、鉱物が水と反応して別の鉱物に変わり、そのとき熱と水素が出る[5]。

この反応が起きる条件は、マントルの岩石が海底近くまで持ち上がり、そこに海水が入りこめることである。アトランティス・マシフはまさにその地形で、熱源がマグマではないという主張は、近くに火山がない点と整合する[8]。

この反応は、熱のほかに水素やメタンも作る。次章以降で見る温度の低さ、成分、微生物の餌は、この岩の反応を出発点にした話である。

では、黒煙の噴出孔との違いを、数字で並べるとどうなるのか。

3. 黒い けむりの 噴出孔ふんしゅつこうとは、なにが ちがうの?

3. 黒煙の噴出孔と並べると、温度も成分も塔の材料も正反対

3. 約400℃・酸性・硫化物の煙突と、約40〜90℃・アルカリ性・炭酸塩の塔

黒い けむりを 出す 噴出孔ふんしゅつこうでは、水が 約やく400度にも なります。水は 酸性さんせいで、鉄や いおうの 入った 黒っぽい 煙突えんとつが できます[1]。

ロストシティの 水は、40度から 90度ほどです。お風呂ふろより あつい ことも ありますが、黒い けむりの 水に くらべると ずっと 低いひくい 温度です[3]。水は アルカリ性せいで、酸性さんせいとは 反対の 水です。

塔とうの 材料ざいりょうも ちがいます。ロストシティの 塔とうは、ほとんど 炭酸塩たんさんえんで できて いて、ほら穴あなの 石灰岩せっかいがんに にて います[1]。だから 白いのです。

もう 一つ、おどろく ことが あります。この 塔とうは、少なくとも 3万年 ほど 活動を つづけて きたと 考えられて います[9]。黒い けむりの 煙突えんとつより ずっと 長生きだと されます。

こんな 水の 中で、いったい だれが 生きて いるのでしょう。

黒い煙を出す噴出孔(ブラックスモーカー)では、噴き出す水が約400℃に達し、酸性で、鉄や硫黄を含む硫化物の煙突ができます[1]。

ロストシティの水は約40〜90℃、強いアルカリ性(pH 9〜11)です[3]。pHは酸性・アルカリ性の度合いで、7が中性、数字が大きいほどアルカリ性です。上限どうしを比べると、黒煙の約400℃は、ロストシティの約90℃より約310℃も高い温度です。塔の材料も違い、ほぼ純粋な炭酸塩で、洞窟の石灰岩に似ています[1]。硫化物の煙突ではありません[2]。

活動の長さも違います。放射性炭素による年代測定から、塔は少なくとも約3万年活動を続けたとされ、黒煙の煙突の寿命よりずっと長いと書かれています[9]。年代は研究により幅があります。

低温で、アルカリ性で、白い。黒煙の噴出孔と正反対の場所です。では、ここでは何が生きているのでしょうか。

温度・成分・材料を、WHOIとUW Newsの記述を軸に並べる。ブラックスモーカーの噴出水は、約700〜760°F(約370〜400℃)に達し、酸性で、鉄や硫黄を含む硫化物の煙突を作る[1][2]。一方、ロストシティの水は約40〜90℃(Brazeltonらは40〜91℃、華氏では約105〜170°F)で、pHは9〜11の強いアルカリ性である[3]。

上限どうしで比べると、400℃は90℃より約310℃高い。ただし、この「上限」は資料によって幅がある(研究により90〜116℃と報告が異なる)。塔の温度も場所によって変わるため、一つの数字だけで言い切れない。

塔の材料も正反対である。ロストシティの構造物は「ほぼ純粋な炭酸塩」で、洞窟の石灰岩に似ており、1970年代から研究されてきた硫化物の煙突ではない[1][2]。

寿命も大きく異なる。放射性炭素年代測定により、塔の活動は少なくとも約3万年続き、最も古い堆積物は12万年以上とされる。ブラックスモーカーの煙突の寿命よりずっと長いという記述はあるが、年代は研究により異なり、二次資料の要約を経た数字であるため幅をもたせて読む[9]。

これほど条件が違うなら、ここの微生物は、黒煙の噴出孔の生態系とは別のものを食べているはずだ。では、何を。

4. 光も 火山も ない 場所で、なにを 食べて 生きて いるの?

4. 微生物は、岩から出る水素とメタンを使っている

4. 二酸化炭素に頼らず、水素とメタンで生きる微生物

ここで 生きて いるのは、微生物びせいぶつと いう、目に 見えない ほど 小さな 生きものです。その ごはんは、岩の 反応はんのうで できる 水素すいそと メタンだと 考えられて います[2]。

この 反応はんのうで 出る 水素すいそと メタンは、ふつうの 黒い けむりの 噴出孔ふんしゅつこうの 10倍から 100倍にも なるそうです[1]。

ただし、黒い けむりの 噴出孔ふんしゅつこうに いる チューブワームや エビは、ロストシティでは 見つかって いません[2]。にぎやかな 町ではなく、小さな 微生物びせいぶつが 静かしずかに くらす 町です。

その 中には、メタンを 作る 仲間なかまに 近いと される 古い タイプの 微生物びせいぶつが います。でも、この 微生物びせいぶつが メタンを 作って いるのか、こわして いるのかは、まだ 分かって いません[3]。

岩と 海水だけで、水素すいそや メタンが できる。それは、もっと 大きな 問いに つながります。

ロストシティの微生物は、豊富なメタンと水素をエネルギー源にしているようです[2]。黒煙の噴出孔では二酸化炭素が重要な炭素源になりますが、ここの流体にはほとんどないと書かれています。

水素とメタンは、蛇紋岩化の反応で作られます。典型的なブラックスモーカー系に比べて、10〜100倍もの水素とメタンが生まれ、より複雑な炭化水素もできるといいます[1]。

ここには、黒煙の噴出孔で有名なチューブワームやエビは見つかっていません。微生物の種類の多様性も高くないと書かれています[2]。

活発に噴き出す高温の煙突では、メタンを作る菌に近いとされる古細菌(Methanosarcinales)が多く、冷えた煙突では、メタンを分解するANME-1という古細菌が見られます[3]。この菌がメタンを作るのか分解するのかは、まだ決着していません。

岩と海水の反応だけで、生きもののごはんと熱の両方が手に入る。この仕組みは、生命の始まりにも関わるのでしょうか。

UW Newsは、ロストシティの微生物が「豊富なメタンと水素」に頼っているようだと述べる。ブラックスモーカーでは二酸化炭素が重要な炭素源とされるが、ここの流体にはほとんどない。チューブワームやエビも見つかっていない[2]。多様性は低いと書かれており、「生きものがあふれる」と読むのは正確でない。

水素とメタンの供給量には裏づけがある。WHOIの解説では、蛇紋岩化の反応は典型的なブラックスモーカー系より10〜100倍の水素とメタンを生み出し、より複雑な炭化水素も作る[1]。

微生物の群集は、煙突の状態によって変わる。活発に噴出する高温の煙突ではメタノサルシナ目に近い古細菌(LCMSという系統)が優勢で、冷えて噴出の弱い煙突ではメタンを酸化するANME-1が見られる[3]。この菌がメタンを作る側か分解する側かは決着しておらず、系統の近さだけで働きを断定できない。

水素・メタン・炭化水素が、生きものを介さず岩と海水だけで作られる。この事実が、ロストシティを生命の起源の議論に結びつけた。ただし、そこに論争がある。

5. ここは、いのちが 生まれた 場所かも しれないの?

5. 生命が生まれた場所の有力候補といわれるが、決着はしていない

5. 水素・メタン・pH差 ── 仮説を支える点と、批判する点

岩と 海水だけで、水素すいそや メタンが 作られる。それなら、いのちが うまれる ときも、にた しくみが あったかも しれません。そう 考える 人たちは、ロストシティの ような 場所を 「いのちが 生まれた 場所の 有力ゆうりょくな 候補こうほ」と 書いて います[1]。

もう 一つ、考え方が あります。むかしの 海は、いまより 少し 酸性さんせいだったと されて います。そこに アルカリ性せいの 水が 出て くると、水の 性質せいしつの ちがいが、力に なったかも しれません。ダムの 水が 高い ところから 低いひくい ところへ 流れて 水車を まわす ように、です。

けれども、「そうだった」と 言い切る ことは できません。ある 研究者は、塔とうの 中で その ちがいが たもたれて いる 証拠しょうこは まだ ない、と 書いて います[7]。

この 話は、いまも 決着して いません。

岩と海水の反応だけで水素・メタン・炭化水素が作られることから、ロストシティのような熱水域は「生命が生まれた場所の有力候補」と書かれています[1]。「有力候補」であって、生命がここで生まれたと確かめられたわけではありません。

この仮説には、もう一つの根拠があります。当時の海は弱い酸性だったとされ、アルカリ性の熱水と出会うと、両者のpHの差がエネルギーを生んだかもしれない、という考えです。ダムの高さの差が水車を回す、というイメージに近いものです。

これに対し、2016年にJacksonは、ロストシティでも薄い鉱物の膜が鋭いpHの差を保っている証拠はまだなく、こうした自然のpH勾配が生命の起源に役割を果たした可能性は低い、と論じています[7]。

当時の海のpHは、実測ではなく推定です。仮説を支える点も批判する点もあり、結論は出ていません。では、決着をつけるために、研究者は何をしているのでしょうか。

アルカリ熱水噴出孔が生命誕生の場だったという仮説には、二つの柱がある。一つは、蛇紋岩化が水素とメタンを豊富に、しかも生物を介さず作ることだ。もう一つは、当時の海水(弱酸性とされる)とアルカリ性の熱水との間のpH勾配が、エネルギーの源になりえたという考えである[1][7]。

これに対し、Jackson(2016)は、ロストシティでも薄い無機の膜が鋭いpH勾配を保つ証拠はまだなく、そうした自然のpH勾配が生命の起源に関わった可能性は低いと論じた[7]。つまり、水素とメタンが豊富という点は共有されていても、「勾配を使えたか」という点で意見が分かれる。

ここで前提を確かめておく。当時の海のpHは推定値で、実測ではない。ロストシティが太古の海底にどこまで似ているかも、確定した話ではない。したがって、「有力候補」という評価は、決定的な証拠というより、検討すべき場として挙がっているという意味に近い。

では、決着に向けて何をしているのか。次章では、海底を実際に掘った研究を見る。

6. 海の そこを 1268メートルも ほると、なにが 分かるの?

6. 海底を掘って、反応が起きている現場の岩を調べる

6. IODP第399次航海 ── 掘削が支持したことと、まだ言えないこと

2023ねんに、世界の 研究者が ジョイデス・レゾリューションと いう 船で、この 海の そこの 山を ほりました。水素すいそや メタンが どこで、どうやって 作られ、熱水ねっすいに とどくのかを 調べる ためです[5]。

取り出した 岩は、1268メートルぶんにも なりました。その 岩の かわり方は、近くの ロストシティの 水の 成分せいぶんと 合って いました[6]。

ただし、地下の 穴あなと 塔とうが 一本の 道で つながって いると、はっきり しめせたわけでは ありません[8]。まだ、調べて いる さいちゅうです。

この 研究は、ロストシティだけの 話では ありません。次の 章で、遠くの 空にも つなげて 考えます。

2023年、国際深海科学掘削計画(IODP)の第399次航海で、研究者は調査船ジョイデス・レゾリューション号を使い、アトランティス・マシフを掘りました。目的は、水素やメタンがどこで、どのように作られ、熱水にどう届くのかを調べることです[5]。

回収されたのは、蛇紋岩化したマントルの岩石の1268mぶんの区間です。岩の変化のパターンは、近くのロストシティの熱水の成分と合っていたと報告されました[6]。掘削地点はロストシティの北約800mで、近くに火山はありません[8]。

もう一つ、既存の孔(U1309D)は海底下1415m、底の温度は140℃です。これは微生物が生きられる限界を超える温度なので、さらに深い場所で作られる水素やメタン、有機物は、生きものが作ったものではない(反応だけで作られた)と期待されます[5]。

ただし、結果は「支持する形になった」にとどまります。海水の混入の可能性は否定されておらず、地下の穴とロストシティの塔が一本の経路でつながったことも、決定的には示されていません[8]。

2023年の国際深海科学掘削計画(IODP)第399次航海では、ジョイデス・レゾリューション号がアトランティス・マシフを掘り、蛇紋岩化した深海マントルのかんらん岩を、1268mの連続した区間で回収した。目的は、水素やメタンがどこで、どう作られ、熱水にどう届くのかを調べることだった[5][6]。この1268mは、掘削孔の深さではなく、回収した岩石の「長さの区間」である。

報告によると、岩石の変質パターンは、近くのロストシティの熱水の成分と一致していた[6]。日本語の紹介記事は、地点がロストシティの北約800mで、近くに火山がないことから、かんらん岩と海水の反応が熱源だという仮説が支持される形になったとする[8]。

ただし、著者らは海水が混入した可能性を否定していない。地下の孔とロストシティの塔が一本の経路でつながったことも、決定的には示されていない[8]。「熱源が確認された」と断定するより、「支持する結果」と書くのが資料に合う。

掘削前から使われていた孔U1309Dは、海底下1415mで底の温度が140℃と、微生物が生きられる限界を超える。そのため、そこより深くで作られる水素・メタン・有機物は生物起源ではないと期待されている。2,060m・約220℃という数値は、掘削前の目標・予測である[5]。

岩と海水だけで有機物ができるなら、同じことが地球の外でも起きているかもしれない。

7. 白い 石に 酢すを かけて、炭酸塩たんさんえんを 見て みよう

7. 炭酸塩の性質を、家で確かめる

7. 卵のからに酢をかけて炭酸塩の性質を確かめ、地図で位置を探す

ロストシティの 塔とうの 材料ざいりょうは、炭酸塩たんさんえんの 仲間なかまです。貝がらや たまごの からも、炭酸塩たんさんえんの 仲間なかまです。

やってみよう。あらって かわかした たまごの からか 貝がらを 小皿に のせて、酢すを 少し かけます。小さな あわが 出れば、炭酸塩たんさんえんの 仲間なかまらしい 性質せいしつです。酢すが 目に 入らない ように、大人と いっしょに やります。やった あとの からは 食べません。

ただし、塔とうと 貝がらが 同じ 成分せいぶんとは かぎりません。性質せいしつを 知る 入口です。

もう 一つ。ロストシティは、大西洋の 中央あたり、北緯ほくい30度 付近ふきんに あります。地図帳で さがして みましょう。

土星の 衛星えいせい、エンケラドスにも、にた 反応はんのうが あるかも しれないと いわれて います[5]。まだ 分かって いません。海の そこの 白い 塔とうが、遠い 星の 話に つながって いきます。

ロストシティの塔の材料は炭酸塩です。貝がらや卵のからも炭酸塩の仲間なので、性質の入口を家で確かめられます。

やってみよう:洗って乾かした卵のからか貝がらを小皿にのせ、酢を少しかけます。小さな泡が出れば、炭酸塩の性質です。酢が目に入らないよう、大人と一緒に行い、使ったからは食べません。ただし、塔と貝がらが同じ成分とは限らないので、炭酸塩の仲間の性質を知る入口です。

もう一つ:地図帳で北緯30度の線をたどり、大西洋の中央あたりを探します。海嶺の近くが、ロストシティのある場所です[5]。

次の問いは、地球の外へ広がります。IODP第399次航海の解説は、蛇紋岩の反応を使う同じような系が、土星の衛星エンケラドスのような氷の衛星にもあるかもしれない、と述べています[5]。可能性の指摘であり、あると確かめられたわけではありません。

確かめる道すじを二つ挙げる。

①炭酸塩の性質を確かめる。洗って乾かした卵のからか貝がらに酢をかけ、泡が出るかを見る。炭酸塩は酸と反応して気体を出す。ロストシティの塔は「ほぼ純粋な炭酸塩」とされるが、貝がらと塔が同じ鉱物とは限らない。あくまで炭酸塩の性質の入口で、塔の成分の確認ではない。酢が目に入らないよう注意し、使ったからは食べない。

②位置を確かめる。地図帳で北緯30度の線をたどり、大西洋中央海嶺の近くの海底山アトランティス・マシフを探す[5]。

資料の入口は、WHOIの解説記事(出典[1])、UW News(出典[2])、IODP第399次航海の解説(出典[5])である。IODP第399次航海の解説は、蛇紋岩の反応系が土星の衛星エンケラドスのような氷衛星にもあるかもしれないと述べるが、可能性の指摘であり、あると確定したのではない[5]。生命の起源との関係を批判的に読む材料は、Jackson(2016)にある[7]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:研究機関の解説記事、学術論文、新聞社の紹介記事、百科事典を使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。数値は資料により幅があり、二次資料の要約は幅をもたせて書いた。

  1. Woods Hole Oceanographic Institution, Oceanus「Lost City Pumps Life-essential Chemicals at Rates Unseen at Typical Black Smokers」。https://www.whoi.edu/oceanus/feature/lost-city-pumps-life-essential-chemicals-at-rates-unseen-at-typical-black-smokers/ (熱源、温度の対比、炭酸塩の塔、水素とメタンの量)
  2. University of Washington News「Hydrogen and methane provide raw energy for life at Lost City」(2005年)。https://www.washington.edu/news/2005/03/03/hydrogen-and-methane-provide-raw-energy-for-life-at-lost-city/ (発見の経緯、微生物のエネルギー源、塔の大きさ)
  3. Brazelton et al. 2006, Applied and Environmental Microbiology。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1563643 (温度とpH、古細菌の分布)
  4. NOAA Ocean Exploration「Lost City 2005 日誌(7月31日)」。https://oceanexplorer.noaa.gov/explorations/05lostcity/logs/july31/july31.html (ポセイドンの高さ)
  5. JOIDES Resolution「The Lost City Hydrothermal Field」(IODP第399次航海)。https://joidesresolution.org/expedition/the-lost-city-hydrothermal-field/ (場所、岩と海水の反応、掘削の目的、孔の温度、氷衛星)
  6. Lissenberg et al. 2024, Science 385:623-629。https://eprints.whiterose.ac.uk/id/eprint/227502/ (1268mの岩石の区間、変質パターン)
  7. Jackson 2016, Journal of Molecular Evolution。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4999464/ (pHの勾配をめぐる批判)
  8. ギズモード・ジャパン「ロストシティ熱水域の謎」。https://www.gizmodo.jp/article/atlantic-lost-city-hydrothermal-vent-mystery/ (掘削地点、仮説の支持と限界。二次資料)
  9. Wikipedia「Lost City Hydrothermal Field」。https://en.wikipedia.org/wiki/Lost_City_Hydrothermal_Field (塔の活動の長さ。事典的な資料)

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