1. めやには、なにが たまったもの?
1. 朝の目やには、一晩ぶんの流しそこねだった
1. 目やには、まばたきが止まった夜にたまる老廃物である
おきている ときの 目は、まばたきを して います。そのたびに、ごみや いらなく なった ものを、なみだと いっしょに はなの ほうへ ながして います[1]。
ところが、ねている あいだは、まばたきを しません。ながれなかった ものが、目の すみに たまります。それが、あさの めやにです。すこしだけ ついて いるのは、ふつうの ことだと いわれます[1]。
めやには、ねばねばした ものと、あぶらっぽい ものが まざって できて います。目の ひょうめんを まもる はたらきも あります[2]。ひるまは、まばたきの なみだで あらい ながされます。
では、かおの ひふには、なにが たまって いるのでしょう。
まばたきが止まると、流れが止まる
起きている間、目はまばたきをするたびに、入りこんだ異物や老廃物を涙といっしょに鼻のほうへ流しています。ところが眠っている間はまばたきがありません。流れなかったものが目頭や目尻にたまり、朝の目やにになります。起きたときに少量の目やにがあるのは、ふつうの状態だと説明されています[1]。
目やには、ただのごみではない
目やにの中身は、おもに結膜から出る薄い粘液(ムチン)と、まぶたの縁にあるマイボーム腺から出る脂っぽい物質です。涙の膜や目の表面のごみを取りのぞく、保護の働きがあるとされます。日中は、まばたきの涙が洗い流してくれます[2]。
つまり朝の目やには、夜のあいだ止まっていた「目のそうじ」の残りです。では、顔の皮膚のほうには、何がたまっているのでしょうか。
起きている間、目はまばたきのたびに、表面に入った異物や老廃物を涙とともに鼻腔へ流している。ところが眠っている間はまばたきが止まるため、流れなかったものが目頭や目尻にたまり、朝の目やにになる。起床時に少量の目やにがあるのは通常の状態だと解説されている[1]。
では、その中身は何か。目やには、主に結膜から出る薄く水っぽい粘液(ムチン)と、まぶたの縁のマイボーム腺から出る脂質を多く含む分泌物でできている。涙液膜や眼球表面の老廃物・ごみを取りのぞく保護の働きがあり、日中はまばたきの涙で洗い流されるため、目に見えるほどたまらない[2]。
ここから分かるのは、朝の目やには「汚れ」というより、夜のあいだ止まっていた目の自浄作用の残りだということだ。ただし、量が多い、色がついている、目が赤いといった場合は別の話で、ここで扱う「少量の朝の目やに」とは分けて考える必要がある。では、顔の皮膚のほうにたまるものは、どう位置づけられるのか。
2. ひしと あせは、わるものなの?
2. 皮脂と汗は、落とすだけの「汚れ」ではない
2. 皮脂と汗には、皮膚を守る役割がある
ひふには、皮脂という あぶらが でて います。あせも でます。ねている あいだも、からだの はたらきは とまりません。
この あぶらは、ひふを しっとり やわらかく して、そとの ものから まもる まくの やくわりを して います[3]。あせは、みずと しおけ などで できて いて、かわくと からだの おんどを さげます[3]。
ですから、ひしも あせも、ぜんぶ わるものでは ありません。ひしは、ひふを まもる はたらきも しています。いちばん そとの かわは、みずや ほとんどの ばいきんが はいるのを ふせぎます[3]。
それでも、ふとんの なかで ふえた ぶんは、あさに あらって おとす ひとが おおいのです。では、なんかい あらうのが いいのでしょう。
皮脂には、うるおいを守る働きがある
MSDマニュアル家庭版によると、皮脂は皮膚にうるおいを与えて柔らかい状態に保ち、異物に対する保護膜としても働きます。汗は水と塩分などからできていて、蒸発するときに体温を下げます[3]。
皮膚のいちばん外側の角層は、水を通さず、大半の細菌やウイルスが入りこむのを防いでいます[3]。皮脂や汗には、肌を守ったり、体温を調節したりする働きがあります。
だから「全部落とせばよい」とは限らない
皮脂や汗は、悪者として一方的に落とすものではなく、働きを終えて肌の上に残ったものです。洗顔の目的は「汚れをゼロにする」ことではなく、たまりすぎた分を整えることだと考えると、次の問いが出てきます。何回洗うのが、ちょうどよいのでしょうか。
皮脂は皮膚にうるおいを与えて柔軟な状態に保ち、異物に対する保護膜としても働く。汗は水と塩分などからなり、蒸発するときに体温を下げる。さらに皮膚の最外層である角層は水を通さず、大半の細菌やウイルスの侵入を防ぐ[3]。
このため、皮脂や汗を「悪者」として扱うのは正確ではない。皮脂には肌を守る働きがあり、汗は蒸発によって体温を下げる働きをもつ。洗顔の目的を「汚れの完全な除去」と考えると、洗いすぎという別の問題が生じうる。
では、洗顔は何を目標にするのか。この問いに具体的な数字で答えているのが、次に見る日本皮膚科学会のガイドラインである。ただし、その対象は一般の人ではない。
3. かおは、なんかい あらえば いいの?
3. 洗顔は1日何回? にきびのガイドラインが言うこと
3. 「1日2回」の推奨は、誰を対象にした何の根拠か
にほんの ひふの ぐあいを みる おいしゃさんの あつまり(にほん ひふかがっかい)は、にきびの ある ひとに、1にち 2かい あらう ことを すすめて います[4]。
りゆうは、あぶらを とれば、にきびを ふせげる はずだ、という かんがえです。ただ、この すすめの ねもとの しょうこは、じゅうぶんとは いえない、とも ガイドラインに かいて あります。
そして、あらえば あらうほど いいわけでは ありません。1にち 4かい あらった グループでは、とちゅうで やめた ひとが でた、という ほうこくが あります[4]。
このように、だれにでも 「2かいが ひつよう」と きまって いるわけでは ありません。では、あらう ときは、どう あらえば いいのでしょう。
推奨は、にきびのある人が対象
日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」は、にきびのある人に1日2回の洗顔を勧めています。推奨度は、行ってもよいが科学的な根拠は十分でないという意味の「C1」です。理由として挙げられているのは、皮脂を取りのぞけば予防できるという合理的な考えです[4]。
洗顔の効果を比べる試験は難しく、証拠は十分ではないとも書かれています。1日2回を1回に減らしたら悪化した例があった一方、回数による発疹数に有意な差はなかった、という報告も紹介されています[4]。
洗えば洗うほどよい、でもない
同じガイドラインでは、1日4回洗った群で脱落した人がいたと報告されています。理由は書かれていないので、肌が荒れたからと決めつけることはできません。ただ、回数を増やすほどよい、とは読めません[4]。
この「1日2回」は、にきびのある人への推奨であり、ふつうの肌の人に朝晩2回洗うことを求めたものではありません。では、洗うときの強さや洗い方は、肌にどう影響するのでしょうか。
日本皮膚科学会の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ43「痤瘡に洗顔は有効か?」)は、痤瘡患者に1日2回の洗顔を推奨する。推奨度はC1で、行うことを考慮してよいが根拠が十分ではないという位置づけである。推奨の理由は、皮脂の除去による予防効果に合理的な根拠があると考えられるため、とされる[4]。
ただし、その土台は固くない。洗顔の効果を比較する臨床試験は難しく、証拠は十分でないと述べられている。1日2回を1日1回にしたところ悪化した例が報告された一方、洗顔の回数によって発疹数に有意な差はなかったという報告もある[4]。
では、増やせばよいのか。同ガイドラインは、1日4回の洗顔を行った群で脱落例がみられたと紹介している。脱落の理由は原文にないため、悪化したためと読むことはできない。なお、オイルクレンジングを悪化因子とする根拠はない、とも述べている[4]。
要するに「1日2回」は、にきびのある人への、証拠が限られた推奨にとどまる。健康な人が朝何回洗うべきかという問いに、この資料は直接は答えていない。そこで次の関心は、回数より「どう洗うか」に移る。
4. あらい かたは、どうする?
4. こする強さと洗う液の性質で、肌への影響は変わる
4. 角層バリア機能は、洗い方とpHで変わる実験結果
かおを あらう とき、ごしごし こすって いませんか。ひふの そとがわの かわは、みずが にげるのを ふせぐ はたらきも して います[5]。
この はたらきが、あらい かたで どう かわるかを、しらべた けんきゅうが あります。こする つよさで、えいきょうが かわる ことが わかりました[5]。
また、アルカリせいの えきで あらうと えいきょうが おおきく、ひふに ちかい じゃくさんせいの えきでは すくなかった、と いわれます[5]。
ただし、これは けんきゅうの じっけんの ばあいの はなしです。おみせで うって いる もの ぜんぶに あてはまる わけでは ありません。
角層のバリア機能を測った研究
皮膚の角層は、水が体の外へ逃げるのを防ぐバリアの役目をしています。皮膚洗浄の方法が、この働きにどう影響するかを、水分の蒸散量などで測った日本の研究があります[5]。
この研究では、こする程度によって影響が変わることが確かめられました。また、洗う液がアルカリ性(pH9)だと角層への影響が大きく、皮膚の生理的なpHに近い弱酸性(pH5)だと影響は少なかったと報告されています[5]。
実験の結果と、ふだんの洗顔は別
これは決められた条件の実験の結果です。身の回りの洗顔料や石けんのよしあしを決めるものではありません。分かるのは、「強くこする」「肌に合わない液で洗う」ことが、洗顔の目的である「整える」こととは逆に働きうる、という方向です。
洗い方を整えたとして、冷たい水で顔を洗うとシャキッとするのは、どう説明できるのでしょうか。
角層のバリア機能は、経表皮水分蒸散量などで評価される。皮膚洗浄の操作がこの機能にどう影響するかを検討した日本皮膚科学会雑誌の報告では、こする操作の程度によって影響が異なること、洗浄液がアルカリ性(pH9)の条件では角層への影響が大きく、皮膚の生理的pHに近い弱酸性(pH5)では影響が少ないことが確認された[5]。
この結果から、洗顔の「強さ」と「液の性質」が、角層の守りに別々に関わりうると読める。前の章で見たとおり、皮脂や汗は肌を守る面ももつから、強くこすると、落としたいものだけでなく、角層のバリア機能にも影響する可能性がある。
ただし、条件には注意が要る。これは実験条件下の結果であり、市販の洗顔料や石けんのどれがよい・悪いという話には広げられない。ここまでで、洗顔は「汚れを落とす」より「たまりすぎを整える」行為として説明できそうだ。残るのは、洗顔で感じる「目が覚める」感覚である。
5. つめたい みずで、めは さめるの?
5. 冷たい水で「目が覚める」感覚は、どこまで確かか
5. 冷水洗顔と睡眠慣性:「目が覚める」感覚の証拠の強さ
おきた すぐは、ぼんやり するのが ふつうです。これを「すいみんかんせい」と いい、めが さめた あとに、すこしの あいだ、はたらきが おちた じょうたいです[6]。
もとに もどるまでの じかんは、けんきゅうに よって まちまちです。すうふんで もどる という ほうこくも あれば、さいだい 2じかん という ほうこくも あります[6]。
では、つめたい みずは どうでしょう。「ひやす と めが さめる」と かんじる ひとは おおいのですが、さむさの しげきが、ぼんやりを へらすという つよい しょうこは、いまの ところ ありません[6]。
ひかりや カフェインの ほうが、しょうこは つよい とも されます[6]。でも、きもちが シャキッと する ことが わるいわけでは ありません。
起きた直後がぼんやりするのは、睡眠慣性
目が覚めた直後に、覚醒度や頭と体の働きが一時的に下がっている状態を「睡眠慣性」といいます。回復にかかる時間は研究によってまちまちで、数分で戻ったという報告から、最大2時間続くという報告まであります[6]。
冷水の効果は、強い証拠がない
職場での睡眠慣性への対処をまとめた論文は、寒さの刺激(冷水など)が睡眠慣性を減らすという強い証拠は今のところないとしています。冷たい空気にさらしても、本人の感じる眠気が一時的に減っただけだという報告があります。一方、光やカフェインは、証拠が比較的強いとされています[6]。
ですから「冷水で目が覚める」と感じる人は多くても、それが効果の強い証拠で裏づけられているとはいえません。ただ、すっきりした気持ちになること自体が、朝の切りかえになっている可能性はあります。では、洗面所で今日から確かめられることは何でしょうか。
覚醒直後に覚醒度や認知・身体機能が一時的に低下する状態を、睡眠慣性という。回復までの時間は研究ごとにまちまちで、数分でベースラインに戻るとする報告から、最大2時間続くとする報告まである[6]。
では、冷水で顔を洗えば短縮できるのか。職場での睡眠慣性の管理をまとめた論文は、寒さの刺激(冷水など)が睡眠慣性を減らすという強い証拠は現時点ではないとする。冷気にさらしても、主観的な眠気が一時的に減ったという報告があるにとどまる。他方、カフェインや光は、証拠が比較的強い対策として扱われている[6]。
ここで押さえたいのは、「感じる」と「測れる」のちがいだ。冷水で目が覚めると感じる人が多いことと、それが睡眠慣性を実際に減らすことは、別の主張である。前者は本人が感じることで、後者は睡眠慣性が実際に減ること。後者を示す強い証拠は、論文では示されていない。
ただし、これは冷水が無意味だという意味ではない。自分の体の感じ方を、強い証拠のある方法と並べて観察すれば、洗顔の効き方を自分で確かめられる。その方法を、次の章で考える。
6. あしたの あさ、じぶんの めで みて みよう
6. 明日の朝、洗う前の自分の顔を観察してみる
6. 洗顔前の目やにと、洗顔後の目覚めを観察する
あしたの あさ、かおを あらう まえに、かがみを のぞいて みましょう。めの すみに、めやには ついて いますか。ついて いたら、ねている あいだに 目に たまった ものです。
つぎに、いつもの ように あらって から、めが さめた かんじを、1から 5までの かずで えらんで みましょう。5が いちばん さめた かんじです。つぎの ひは、ぬるい みずで ためして みても いいです。
なお、めが かゆい、あかい、めやにが たくさん でる、というときは、おうちの ひとに いって、おいしゃさんに みて もらいましょう。
洗う前に、鏡で目のすみを見る
明日の朝は、顔を洗う前に鏡をのぞいて、目頭や目尻に目やにがあるかを見てみましょう。あれば、それが一晩ぶんの流しそこねです。量が多い、色がついている、目が赤いときは、別の問題の可能性があるので、おうちの人に伝えて、眼科で診てもらってください。
感覚を数字にして比べる
洗ったあとの「目が覚めた感じ」を、1から5までの数字でメモしておき、数日続けてみましょう。冷たい水の日とぬるま湯の日を分けると、自分の感じ方の違いが見えてきます。これは自分の感覚のメモであって、冷水の効果の証拠ではありません。
洗う回数が気になったら、日本皮膚科学会のガイドラインのCQ43を読むと、「証拠が十分でない」と書かれていることを、自分の目で確かめられます。
家庭でできる確認は、2つある。1つ目は、洗顔前に目頭・目尻の目やにを観察すること。少量であれば通常の状態とされるが、量が多い、色がつく、目が赤いといった場合は別の問題の可能性があるので、眼科で診てもらう。
2つ目は、洗顔後の「目が覚めた感じ」を1〜5の数字で数日分メモすること。冷水の日とぬるま湯の日を分けて比べれば、自分の感じ方の差が見える。ただし、これは主観の記録であり、睡眠慣性が実際に短くなった証拠にはならない。
原典を読むなら、洗顔の回数はガイドラインCQ43、洗い方の影響は日本皮膚科学会雑誌の報告、目覚めの証拠は睡眠慣性の総説が手がかりになる。とくにCQ43は、推奨度C1の理由と、証拠の弱さをどう書いているかを読むと、「推奨」という言葉の強さの測り方が分かる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料の一覧です。洗顔の回数や冷水の効果についての記述は、これらの資料にもとづきます。
- fdoc 病気スコープ「目やに」の解説 https://fdoc.jp/byouki-scope/features/many-in-the-eyes/ (夜の間にまばたきが止まり、目やにがたまること)
- All About Vision「目やに」 https://www.allaboutvision.com/ja-jp/shoujou/meyani/ (目やにの成分と保護の働き)
- MSDマニュアル家庭版「皮膚の構造と機能」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/皮膚の生物学/皮膚の構造と機能 (皮脂・汗・角層の働き)
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」CQ43 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf (洗顔の回数の推奨と、その証拠の強さ)
- 奥田・吉池「皮膚洗浄方法の角層バリア機能に及ぼす影響」日本皮膚科学会雑誌110巻 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/110/13/110_2115/_article/-char/ja/ (こする強さとpHの影響)
- Managing sleep inertia in occupational settings (PMC10693319) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10693319/ (睡眠慣性と、冷水・光・カフェインの証拠。英語の論文)
なおした ところ
更新履歴
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- 中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。
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