1. まがった キュウリは、売れ ないの?
1. 曲がったキュウリは、本当に売れ残るのか
1. 規格外キュウリは、規格品より選ばれにくいのか
お店に ならぶ やさいには、大きさや 形の 「きかく」が あります。きかくに 合わない やさいが 「きかくがい」です。
まがった キュウリは、売れ ないと 思いませんか。ところが、ある ちょくばいじょを しらべた けんきゅうでは、きかくがいの キュウリが、ふつうの キュウリと 同じくらい、または それより 多く えらばれて いました[1]。
だから、形が わるい やさいを やすく 売ること自体が、すぐに 農家の 人を こまらせる わけでは ありません。では、どの やさいでも 同じでしょうか。
スーパーに並ぶキュウリは、まっすぐでそろっています。曲がったキュウリは売れ残るはずだと思うのが自然です。
ところが、農産物直売所の規格外野菜を調べた研究では、規格外のキュウリが規格のキュウリと同程度以上に選ばれていたと報告されています[1]。曲がっていても、味や使い道が変わらなければ、買う人はその分安いほうを選ぶ場合があるということです。
この結果から、形が悪い野菜を安く売ること自体が、すぐ農家を困らせるとは言えないことが分かります。では、どの野菜でも同じ結果になるのでしょうか。
直感的には、形の悪いキュウリは売れ残りやすいと考えられる。ところが、農産物直売所の規格外野菜の流通を調べた研究は、規格外キュウリが規格キュウリと同程度以上に選択されていたことを確認している[1]。
この研究が重視している条件の一つは、規格品と規格外品が同時に並ぶなかで、規格外の野菜も「ついで」ではなく独立して選ばれているかどうかである[1]。選ばれているのなら、安く売ることは、売れ残りを減らして収入を得る手段になりうる。したがって、安売りがそのまま農家を困らせるという単純な見方は、少なくともキュウリの例では成り立たない。
ただし、この結果は特定の直売所での調査にもとづく。そこで、同じ研究が別の野菜をどう扱っているかが問題になる。
2. ダイコンは なぜ 売れ のこるの?
2. 同じ規格外なのに、ダイコンは売れ残った
2. 規格外ダイコンの残品率85%以上が示すこと
同じ 研究で、きかくがいの ダイコンも しらべて いました。こちらは、ちょくばいじょで 売れ のこった わりあいが 85%か、それより 多かったそうです[1]。ほとんどが のこった ことに なります。
たくさん 売れ のこると、作る のに かかった 手間や お金を、売った お金で もどしにくく なる ことが あります。ここに、「やすく 売ると こまる」かも しれない 場面が あります。
では、売れる やさいと 売れ のこる やさいを、農家の 人は どう あつかって いるのでしょう。
同じ研究は、規格外のダイコンについても調べています。結果は、残品率が85%以上でした[1]。置いた十本のうち、八本半以上が残る計算です。
売れ残りが多いと、栽培や出荷にかかった費用を、売上で回収しにくくなる場合があります。安く売っても売れなければ、農家の手元には何も残りません。
ここに、「形の悪い野菜を安く売ると困る」という心配が現実になる場面があります。ただし、同じ研究の中でも、農家は値段の決め方を工夫していました。その工夫を次に見ます。
同じ研究は、規格外ダイコンの残品率が85%以上であったと報告している[1]。置かれたものの八割半以上が売れ残った計算になる。キュウリが規格品並みに選ばれていた事実と並べると、「規格外」の一語では、売れ行きを説明できないことが分かる。
売れ残りが多いと、栽培や出荷の費用を売上で回収しにくくなる場合がある。そのため、安く売る以前に、売れる見込みの低い野菜をどれだけ出荷するかが、農家の収支を左右する。
では、売れ行きが野菜ごとにちがうなかで、農家は値段をどう決めているのか。同じ研究の別の事例が手がかりになる。なお、ダイコンのような売れ残りやすい野菜を無駄なく使う最適な方法については、意見が分かれており、一つに決まった答えはない。
3. 農家の 人は、ねだんを どう 決めて いるの?
3. トマトの値段に見える、農家の工夫
3. 農家は規格外トマトを230円でどう売ったか
同じ 研究の トマトの れいです。ある ちょくばいじょでは、きかくがいの トマトを、ふつうの トマトより やすい 230円の ふくろで 売って いました[1]。
この 230円は、ある 出荷者が 18ふくろ 出した れいです。研究者は、農家が これまでの 出荷や 売れ方から、りえきが 出ると 考えて この ねだんで 出して いたのだろうと 考えて います。
お客さんの ほうも、「やむを えず 買う」のでは なく、きかくがいを 自分で えらんで 買う ことが 大切だと、この 研究は 考えて います[1]。
でも、そもそも やさいを 作る お金が 高く なって きたら、どうなるのでしょう。
4. やさいを 作る お金は、今 どうなって いるの?
4. 野菜を作るお金が上がると、安売りの意味が変わる
4. 生産コストの上昇と、価格転嫁の難しさ
国の 農業の 役所は、やさいを 作る お金が 上がって いると せつめい して います。ひりょうの もとになる ざいりょうの 世界での ねだんが 上がり、ハウスの 温度を ちょうせつ する エネルギーや、作った ところから 町まで 運ぶ お金も 高く なりました[2]。
同じ ねだんで 売り つづけると、やさいを 作る 人と、まわりの 人の くらしが たちゆかなく なる おそれが ある、と いう せつめいです[2]。これは きかくがいに かぎらない、やさい 全体の 話です。
やさいの ねだんは、天気にも ゆれます。
農林水産省のフェアプライスプロジェクトは、野菜の生産コストが上がっていると説明しています。肥料の原料の国際価格が上がり、ビニールハウスの温度を保つエネルギーや、産地から消費地へ運ぶ費用も高くなりました[2]。
そのうえで、これまでと同じ価格で売り続けると、野菜をつくる人とそのまわりの人たちの生活が立ち行かなくなるおそれがあると述べています[2]。これは規格外野菜に限った話ではなく、野菜全体の話です。
野菜の値段は、天候にも大きく動きます。作物の出来が変わると、売る側の事情も変わります。
農林水産省のフェアプライスプロジェクトによれば、肥料原料の国際価格の上昇、ビニールハウスの温度管理に使うエネルギーの価格上昇、産地から消費地への輸送費の上昇が、野菜の生産コストを押し上げている[2]。同資料は、従来どおりの価格で販売を続ければ、生産者とその周辺の人々の生活が立ち行かなくなると述べている[2]。
注意すべきは、この記述が規格外野菜に限らない、野菜全体を対象にしている点である。規格外野菜の安売りが農家の収入にどれだけ響くかを、この資料だけで数字で示すことはできない。示せるのは、コストが上がっている時期には、価格の下げ余地が小さくなるという条件である。
さらに、野菜の価格は需給でも動く。その性質を見る。
5. 売る先や きまりは、やさいの 形に かんけい するの?
5. 売り先や制度は、野菜の外観とどう関わるのか
5. 野菜の売り先と価格安定制度には、どんな条件があるか
やさいは、天気で できる りょうが かわりやすく、いつまでも 持たないので、たくさん できると ねだんが 下がりやすい、と いわれます[3]。
だから、売る 先を 広げる ことは 大切です。ジュースや おそうざいに する 会社など、しょくひんに かこうしたり、お店で りょうりに 使ったり する やさいは、見た 目より 使い道に 合った 品しつが 大事に される と、国の しりょうは 書いて います[4]。形が ふぞろいな やさいにも、つかい道が ありそうです。
一方、ねだんが 下がった ときの 国の しくみも あります。ただ、その しくみを 使う には、国の きまりで 決められた きかくに 合う やさいで ある ことが きまりです[5]。
野菜は天候で出来が変わりやすく、日持ちもしにくいため、供給量が増えると価格が下がりやすいと、農畜産業振興機構の資料は説明しています[3]。
売り先を広げることは、その対策の一つです。家庭で食べる野菜は外観が重視されるのに対し、加工用や業務用の野菜は、用途に応じて求められる特性がいろいろだとされています[4]。形のそろい方だけが条件とは限らないので、形がふぞろいな野菜にも売り先が見つかる余地があります。
価格が下がったときの制度もあります。指定野菜の平均販売価額が保証基準額(平均価格の90%)を下回ると、差額が補てんされます。ただし対象になるのは、機構が定める規格以上の野菜です[5]。制度を使うには、規格を満たす必要があるのです。
形の悪い野菜を安く売るだけでなく、そもそも売れないほど作ってしまう問題もあります。
野菜は天候で作柄が変動しやすく、保存性も乏しいため、供給量の増減が価格に直結しやすい[3]。したがって、豊作の年に規格外が増えると、同時に価格も下がり、農家は二重に不利になりうる。ただし、これは資料の記述からの推論であり、規格外野菜の価格が実際にどう動くかを示した数字ではない。
売り先を分散する手段として、加工・業務用がある。家計消費用では外観などが重視されるのに対し、加工・業務用で求められる特性は用途に応じて多様である[4]。そのため、外観だけで評価されにくい売り先では、形のふぞろいな野菜が受け入れられる余地がある。
一方、指定野菜価格安定対策事業は、対象となる野菜の平均販売価額が平均価格の90%(保証基準額)を下回った場合に、その差額を補てんする。ところが対象の条件として、機構が定める規格以上の野菜であることが挙げられている[5]。この制度が規格外野菜そのものを対象にするのかどうかは、条文にある規格の中身を見ないと判断できない。ここでは、制度の利用に規格の条件があることだけを押さえておく。
では、売れ残りを減らすために、農家側にできる工夫はあるのか。
6. 売れ のこりを へらす くふうは あるの?
6. 作りすぎを減らす試み:ホウレンソウの例
6. 廃棄ロスを減らす試み:収穫量予測と事前の販売先決定
農家の 人は、お店に 「たりない」と 言わないように、たのまれた より 少し 多めに 作る ことが あると、国の しりょうは 書いて います。あまった 分は、すてる ことも あります[6]。
そこで、ホウレンソウで 研究が ありました。AIで とれる りょうを 予想し、先に 売る 先を 決めて おくと、すてる 分が 13〜35%、ならすと 24%へる ことが たしかめられたそうです[6]。
形が わるい やさいを 安く 売る 前に、そもそも 売れ のこりを 出さない くふうも、育って いるのです。
農家が野菜を多めに作ってしまうのには、理由があります。注文された量より少ないと「欠品」になるので、受注見込みより多めに生産し、余った分を廃棄することがあると、農林水産省の研究成果は説明しています[6]。
これを減らすため、ホウレンソウで、AIで収穫量を予測し、事前に販売先を決める試みが行われました。通年での廃棄ロスの削減効果は13〜35%、平均で24%だったと報告されています[6]。
形の悪い野菜を安く売って売れ残りを減らすだけでなく、売れ残る量そのものを事前に減らす方向が、並行して進んでいます。
生産者は欠品を避けるため、受注見込量より多めに生産する傾向がある。その結果、余剰分は廃棄に回りうる[6]。規格外野菜の安売りは、すでに生じた余りを収入に変える手段だが、余りの量そのものを減らす手段ではない。
これに対し、農林水産省の研究成果は、ホウレンソウを対象に、AIによる収穫量予測と事前の販売先決定を組み合わせると、通年での廃棄ロス削減効果が13〜35%、平均24%になることを確認したと報告している[6]。ただし、この数字はホウレンソウでの結果であり、ダイコンやキュウリでも同じになるとは言えない。
以上から、規格外野菜と農家の関係は、安売りの是非だけで決まるのではなく、売れ行き、値段のつけ方、生産コスト、売り先、作る量の五つの条件の組み合わせで決まると整理できる。
7. 売り場で 見て みよう
7. 売り場で、形のちがう野菜に値段をたずねてみる
7. 売り場で野菜を観察し、研究論文を読んでみる
スーパーや ちょくばいじょに 行く ときは、形が ふぞろいな やさいが ないか 見て みましょう。あれば、ふつうの やさいと ねだんが どれくらい ちがうか、かぞくと 話して みても いいですね。
キュウリのように すぐ なくなる ものと、いつまでも のこって いる ものは ないか、見くらべるのも おもしろいです。お店の 人の じゃまに ならないように、見るだけに しましょう。
家族と買い物に行ったとき、形がふぞろいな野菜の売り場を探してみましょう。ふつうの野菜と値段がどれくらいちがうのか、ちがう時間帯に何度か見に行くと、すぐ売り切れるものと残っているものの差が見えるかもしれません。
この記事の中心にした研究は、J-STAGEで公開されています[1]。キュウリ、ダイコン、トマト以外の野菜がどう扱われているのか、気になった人は、元の文章で、ほかの野菜の扱いも確かめられます。売り場の観察は、お店の人の迷惑にならないように、見るだけにしてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事実の根拠にした資料です。
- 農産物直売所における規格外野菜の流通に関する研究(フードシステム研究) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsr/32/4/32_005/_pdf/-char/ja (キュウリ・ダイコン・トマトの売れ行きと価格)
- フェアプライスプロジェクト(農林水産省) https://www.maff.go.jp/j/shokusan/fair-price-project/index.html (生産コストの上昇)
- 野菜品目の需給動向の「見える化」(農畜産業振興機構) https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2505_wadai1.html (天候による出来の変動と価格)
- 加工・業務用野菜の生産・供給拡大に向けた取り組みの方向(農畜産業振興機構) https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2504_wadai1.html (加工・業務用に求められる品質)
- 指定野菜価格安定対策事業の概要(農畜産業振興機構) https://alic.go.jp/y-kofu/yagyomu02_000169.html (差額補てんと規格の条件)
- ホウレンソウ廃棄ロスの削減(農林水産省 農林水産研究推進事務局) https://www.affrc.maff.go.jp/docs/project/seika/2023/r5_seikashu_02.html (多めの生産と廃棄ロス削減)
なおした ところ
更新履歴
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