1. どんな やさいが「きかくがい」に なるの?
1. 規格外になるのは、どんな野菜なのか
1. 規格外は何で決まるのか ── 産地ごとに異なる見た目や大きさの基準
お店に ならぶ やさいには、大きさや 形の きまりが あります。これを「きかく」と いいます。きかくに 合わない やさいを「きかくがい」と よびます。
きかくがいに なる わけは、小さすぎる、大きすぎる、まがって いる、きずが ある、などです[1]。つまり 見た目や 大きさが 中心で、「まずい」から ではありません。
きまりを 作って いるのは、やさいを 作る 土地の 人たちです。中には、ほかの 土地との きょうそうも あって、とても こまかく 分けて いる ものも あると いわれます[1]。
では、きまりから はずれた やさいは、そのあと どこへ いくのでしょう。
お店に並ぶ野菜は、大きさや形ごとに箱を分けて出荷されます。この区分が出荷規格です。規格外になる主な理由は、小さすぎる、大きすぎる、曲がっている、傷があるなど、見た目や大きさです[1]。「味が悪いから」ではない点が、ここでの大事なところです。
規格を決めているのは産地です。農林水産省の資料は、産地間の競争を背景に、規格が必要以上に細かく分けられているものもある、と指摘しています[1]。物差しが細かいと、そこから外れる野菜が増えることがあります。
では、物差しから外れた野菜は、そのあとどこへ向かうのでしょうか。
出荷規格は、大きさ・形・傷の有無などで野菜を区分する基準である。規格外となる主な理由は、小さすぎる、大きすぎる、曲がっている、傷があるなど、見た目や大きさにある[1]。資料が挙げる理由に味は含まれておらず、少なくともこの資料では、規格外は品質の良否というより、流通の都合に合うかどうかの区分として扱われている。
その基準を定めるのは産地である。農林水産省は、産地間競争などを背景に規格が過度に細分化されているものもあると述べる[1]。区分が細かくなれば、選別だけでなく、収穫、袋詰め、出荷管理、輸送の手配まで作業が増え、労働力不足の一因になっている産地もあるという[1]。基準を細かくするほど、外れる野菜も、それを扱う手間も増える構造である。
では、基準から外れた野菜には、どのような行き先があるのか。
2. きかくがいの やさいは、まず だれの ところへ いくの?
2. 規格外の野菜は、まずどこへ行くのか
2. 規格外品の行き先 ── 食べる用途と、食べない用途
きかくがいの やさいには、すてられずに 使われる ものも あります。
ひとつは、作った 人の 家で 食べる ことです。ふたつめは、ほかの 人に ただで あげる こと。みっつめは、工場で 食べものに かこうする こと。よっつめは、牛などの えさや、畑の ひりょうに する ことです[1]。
形が まがって いても、ナスは ナスです。お家の 台所で 切って しまえば、形は あまり 気に なりません。
ただし、どの 道に どれだけ 回るのかは、わかる 数字が ありません。
農林水産省の資料によると、規格外の野菜は、収穫したあと、自家消費や無償贈与、加工用などの食用に回されます。さらに、飼料や肥料のような食べ物以外の用途にも、多くが活用されているといいます[1]。
曲がったナスも、切って炒めれば形は気になりません。農家の台所や、近所への「おすそ分け」が、最初の行き先になっているわけです。
ただし、どの用途にどれだけ回っているのか、廃棄はどのくらいあるのかを示す数字は、この資料にはありません。「多くが活用されている」という書き方にとどまっているため、割合までは言えません。
食べ物にする道のうち、量の面で大きいのは、工場などで使う加工です。
農林水産省は、規格外品の用途として、自家消費、無償贈与、加工用などの食用と、飼料・肥料用などの非食用を挙げ、「多くが活用されている」とする[1]。どの用途がどれだけを占めるかは、この資料からは読み取れない。
注意したいのは、「活用」と「販売」が別のことだという点である。無償贈与は、その名のとおり代金を受け取らない渡し方である。後の章で出てくる商品化は、この「活用」を「販売」へ近づける動きといえる。
食用の道のうち、市場に並ぶ流れとは別に大きな需要があるのが、加工と業務用である。
3. こうじょうで つかう やさいは、どのくらい 多いの?
3. 加工・業務用の需要は、野菜の使い道のどれくらいを占めるのか
3. 野菜の消費用途の約6割は加工・業務用 ── 市場出荷とは別の流れ
スーパーで 売る ほかに、やさいは 工場で つかわれたり、しょくどうや おべんとうの 店で つかわれたり します。これを「かこう・ぎょうむよう」と いいます。
国の きかんが まとめた しりょうでは、おもな やさいの 使い道の 6わりほどが、この かこう・ぎょうむよう だと いわれます[2]。10この うち 6こ ぐらい、と いう 見かたです。
たとえば あさづけの 工場では、新しい 感じが たいせつなので、近くの 畑の やさいを つかう ことが 多い そうです[3]。
つまり、お店に ならべる 道とは べつに、やさいの 大きな 行き先が あります。
スーパーの野菜売り場を思い浮かべると、野菜の行き先は店頭ばかりに見えます。ところが、農畜産業振興機構の資料では、主要野菜の消費用途の約6割が加工・業務用です[2]。10個のうち6個は、加工食品や外食・給食などで使われる計算です。
そのため、市場に出荷する流れとは違う流通のしかたが求められている、と資料は述べています[2]。
例として、浅漬けの原料野菜を見てみます。浅漬けは新鮮さが大切なので、国産の比率が高く、工場の近くの産地や生産者から仕入れることが多い傾向にあるとされます[3]。加工の現場は、近くの畑と結びついていることがあるのです。
ただ、これらの資料は、規格外の野菜がどのくらい加工に回っているかを示すものではありません。加工・業務用が野菜の大きな行き先であることを知っておくと、次に見る工夫が分かりやすくなります。
農畜産業振興機構の資料は、主要野菜の消費用途の約6割が加工・業務用であると述べ、市場出荷とは異なる流通形態が求められている、と整理する[2]。10のうち6ほどが加工・業務用に使われる計算になる。店頭に並ぶもの以外にも大きな使い道がある。
では、加工向けの野菜はどう調達されるのか。同機構の調査では、浅漬け用の原料野菜は鮮度感が求められるため国産比率が高く、調達先は工場近隣の産地や生産者が多い傾向にある[3]。加工の需要が、近隣産地との結びつきを生んでいる例といえる。
ただし、この2つの資料は規格外品の統計ではない。加工・業務用の需要が大きいことと、規格外品が実際に加工へどれだけ回っているかは、別の問題である。ここでは「受け皿になりうる大きな需要がある」という背景として読むにとどめる。次の章で見るのは、この受け皿に、名前をつけた商品として規格外品を載せる動きである。
4. きかくがいの やさいに、名前を つけて 売る ことも あるの?
4. 規格外の野菜に名前をつけて売る工夫には、どんなものがあるのか
4. 規格外品を商品にする ── 大袋・加工品・詰め合わせ販売
ある 会社は、小さすぎたり、まがって いたり する ナスを あつめて、大きな ふくろに 入れて 売って います。名前は「もったいなす」です[1]。
べつの 会社は、きかくがいの さつまいもを、米の こうじで はっこうさせて、あまい「いもみつ」に しました[1]。
10から 20しゅるいの きかくがいの やさいを 1つの はこに つめて、インターネットで 売る 会社も あります[1]。毎月、きかくがいの 食べものを とどける 会社は、1か月に 7トンぐらいの 食べものを むだに しないで すんだと 話して います[4]。
おおさかでは、形が ふぞろいの のうさんぶつを かんそうさせて、しおこんぶと まぜて 売る 店も あります[4]。
規格外の野菜に、商品としての名前や形をつけて売り出す例が、各地に出てきています。
株式会社カネエイは、小さすぎたり曲がっていたり傷があったりする規格外のナスを集めた大容量袋を「もったいなす」として、令和元年(2019年)12月から売っています[1]。名前に「もったいない」が入っているので、何が入っているか一目で分かります。
株式会社伊勢惣は、埼玉県川越地域の規格外のさつまいもと米麹から「芋蜜」をつくり、令和6年(2024年)3月に販売を始めました[1]。株式会社ユーキフーズは、規格外の野菜を10〜20種類詰め合わせ、「おやさいレスキュー」としてネットで売っています[1]。
大阪府の資料には、毎月、余剰や規格外になった食品を詰め合わせて届けるサブスクで、月に約7トンの食品ロスを減らしているという会社も載っています[4]。鳥居商店は、大阪府産の規格外やB級品の農産物を乾燥・フリーズドライにして、塩昆布と混ぜて売っています[4]。
7トンという数字は、会社の自己紹介にあたる情報です。実際に何が対象なのかは資料に細かく書かれていないので、「それくらいの取り組みがある」くらいで受け取るのがよいでしょう。
これだけ工夫があるなら、規格外はもう全部使い切れているのでしょうか。
規格外品が食べられる道だけでなく、収入になる商品へ変わる事例が、公的な資料に集まっている。農林水産省の資料は、小さい・大きい・曲がり・傷のあるナスを集めた大容量袋「もったいなす」(株式会社カネエイ、令和元年12月から)、川越地域産の規格外さつまいもを米麹で発酵させた「芋蜜」(株式会社伊勢惣、令和6年3月から)、規格外野菜を10〜20種類詰め合わせてネット販売する「おやさいレスキュー」(株式会社ユーキフーズ)を挙げる[1]。
大阪府の食品ロス削減パートナーシップ制度の掲載事例にも、同じ発想が見える。余剰・規格外の食品を詰め合わせて届けるサブスクで毎月約7トンの食品ロスを削減するという事業者や、大阪府産の規格外・B級・不揃いの農産物を乾燥・フリーズドライにして塩昆布と混ぜて売る鳥居商店がある[4]。
これらに共通するのは、「曲がっていても味は同じ」という点に頼らず、加工や詰め合わせ、名前づけで、買う側が納得できる形に変えていることである。形がそろわないという理由で売りにくかった野菜を、大袋にする(量で売る)、麹で発酵させる(別のものに変える)、乾燥させる(保存できるようにする)という3種類の方向で商品にしている。たとえば、小さすぎたり曲がったりしたナスを大袋で売る「もったいなす」や、規格外のさつまいもを麹で発酵させた「芋蜜」がその例である。
ただし、約7トンという数字は事業者の自己申告にもとづく掲載情報で、算出方法は示されていない。事例の紹介であって、全体の活用量を表す統計ではない。事例が増えても、規格外の問題がすべて解決したとは読めない。
では、なお課題が残るとすれば、それは何か。
5. いろいろ くふうして いるのに、すてられる やさいが のこるのは なぜ?
5. 活用が進んでも、捨てられる野菜が残るのはなぜか
5. 活用の課題 ── 価格・輸送費・収穫適期・手間
くふうが ふえても、すてられて しまう やさいが のこります。
ひとつは、ねだんです。ニンジンの れいでは、お店に ならぶのは 「A品」だけで、のこりは きかくがいとして 安く 売られ、作った 人の お金が へって いました[1]。
ミョウガでも、売れない ぶぶんを ほとんどの 人が すてて いました[1]。
はこぶ ときの お金も かかります[1]。それに、やさいは 大きく なり すぎると、きまりから はずれて しまいます。とる 時期を のがすと、すてる ことに なって しまうのです[5]。
活用の道が増えても、捨てられる野菜がなくなるわけではありません。農林水産省の資料や研究機関の解説から、理由がいくつか見えてきます。
ひとつは値段です。ニンジンの事例では、店頭に並ぶのはA品だけで、残りは規格外として安く取引され、生産者の収入が減っていました[1]。ミョウガの事例では、ほとんどの生産者が、製品にできない部分を捨てていました[1]。
もうひとつは運ぶお金です。規格外品を出荷したり輸送したりするにもコストがかかり、活用を進めるうえでの課題だとされています[1]。
さらに、収穫の時期の問題があります。露地の野菜は、育ちすぎると重さや大きさが規格を超えてしまうため、収穫の適期を逃すと廃棄が出ます。農研機構の開発者へのインタビューにも、適期をつかむことが大切だと書かれています[5]。
規格外の野菜が出る原因を減らすことと、出た野菜を使い切ること。両方からの取り組みが、すすめられています。
活用の事例が増えても廃棄が消えない理由は、資料から4つ読み取れる。第一に価格である。ニンジンの事例では、A品のみが店頭に並び、残りは規格外として安価に取引され、生産者の収入減につながっていた[1]。ミョウガの事例では、ほとんどの生産者が製品にできない部分を破棄していた[1]。
第二に輸送などのコストである。規格外品の出荷や輸送にもコストがかかり、活用の課題とされる[1]。値段が安いうえに運ぶ費用が同じようにかかれば、売っても手元に残るお金が少なくなり、「捨てたほうがまし」という判断が働きやすくなる、と考えられる。ただし、この因果は資料が直接述べているわけではなく、筆者の推論である。
第三に収穫の時期である。露地野菜は生育が進むと重量やサイズが大きくなりすぎて出荷規格を逸脱するため、収穫適期を的確につかむことが重要である。農研機構の「露地野菜生育予測API」の開発者インタビューは、この問題を背景に挙げている[5]。
第四は手間である。規格の細分化は、選別だけでなく収穫から輸送の確保まで作業を増やし、労働力不足の一因になっている産地がある[1]。
なお、廃棄量そのものや、規格外品の活用割合を示す統計は、参照した資料にはない。ここまでの記述は、事例と課題の整理であって、全体の規模を述べるものではない。
では、これらの課題に対して、規格そのものを変える動きはあるのか。
6. きかくを かえる 人たちと、お店で さがせる ことは?
6. 規格を見直す動きと、売り場で探せるもの
6. 規格を見直す動きと、読者が確かめられること
きかくは、土地の 人たちが 決めた きまりです。だから、見なおす ことも できます。国の やくしょは「きかくを 見なおしてみませんか」と よびかけて います[1]。
ある 会社は、すてられる はずだった うめに ねだんを つけて 買い取って います[1]。
やって みよう。お店に 行ったら、やさいの 売り場を 見て みましょう。「B品」や「きかくがい」と 書いた ふくろは ありますか。ふつうの やさいと、形や 大きさは どう ちがうでしょう。ほしい 食べものは、お家の 人と 相談して 買って みてください。
家に ある ナスや にんじんを 3本 ならべて、大きさと 形を くらべて みるのも おもしろいです。ぜんぶ ちがうはずです。切る ときは、お家の 人に 手つだって もらって ください。
規格は産地が決めたものなので、見直すこともできます。農林水産省は、産地に向けて「出荷規格を見直してみませんか」と呼びかける資料を出しています[1]。細かすぎる区分を減らせば、規格外になる野菜そのものを減らせる可能性があります。
別の方向からの例もあります。ある企業は、廃棄されるはずだった梅に値段をつけて買い取り、捨てられる量を減らしています[1]。
自分で確かめる方法があります。スーパーの野菜売り場で、「規格外」「B品」と書かれた袋があるか探してみてください。ふつうの野菜と形や大きさを見比べると、規格外が見た目の違いだと実感できます。お店によっては置いていないこともあります。
もうひとつは、家にある同じ種類の野菜を3本並べてみることです。ナスやニンジンは、思ったより1本ずつ形がちがいます。長さを定規で測って、いちばん長いものと短いものの差を比べると、同じ種類でも形や大きさの幅がどのくらいあるかが分かります。刃物を使うときは、家の人と一緒にしてください。
最初に見た農林水産省の資料は、出典欄から探せます。ほかにどんな野菜の事例が載っているか、読んで確かめてみてください。
課題への対応は、2方向ある。ひとつは規格の見直しで、農林水産省は産地に出荷規格の見直しを呼びかけている[1]。規格は国が定めた標準ではなく産地が主体的に決めるものなので、区分を粗くすれば、規格外になる野菜と選別の手間を同時に減らせる余地がある。ただし資料は、見直しの効果を数字で示しているわけではない。
もうひとつは、出てしまった規格外品に値段をつける方向である。ある企業は、廃棄される梅に値段をつけて買い取り、捨てられる量を減らしている[1]。買い取り価格が付けば、生産者にとって「捨てるか、安く売るか」以外の選択肢が増える。
残る問いも、資料から見えている。規格外品の価格設定や流通コストを、生産者と消費者のどちらがどのくらい負担するかは、ここで参照した資料からは分からない。
読者が自分で確かめられる道すじは三つある。ひとつは、売り場で「規格外」「B品」と書かれた商品を探し、通常品と形・大きさを見比べること。ふたつめは、同じ種類の野菜を数本並べて長さを測り、個体差の幅を数字にすること。みっつめは、農林水産省の「出荷規格を見直してみませんか」などの原典に当たり、本記事で事例として挙げた取り組みが、どの野菜・どの課題を背景にしているかを読むことである。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事例や数字は、次の資料から拾いました。企業の取り組みは、資料に載っている紹介内容です。
- 農林水産省「青果物の出荷規格を見直してみませんか?」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/kikaku.html (規格の仕組み、規格外の理由、用途、事例)
- 農畜産業振興機構「野菜の出荷規格および出荷関連作業の見直しに向けて」 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/1903_wadai.html (加工・業務用の割合)
- 農畜産業振興機構「加工・業務用野菜を活用した漬物における国産野菜利用の実態」 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2312_chosa2.html (浅漬け原料の調達)
- 大阪府「おおさか食品ロス削減パートナーシップ制度」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o120110/ryutai/foodloss/partnership.html (サブスク・乾燥加工の事例)
- 農研機構 WAGRI「露地野菜生育予測 API 開発者インタビュー」 https://wagri.naro.go.jp/interview/growth/ (収穫適期と規格逸脱)
なおした ところ
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