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すった 酸素さんそは、からだの なかで なにに なるの?

吸った酸素さんそは、体の中でどこへ行き、何の役に立っているのでしょうか

吸った酸素さんそは細胞さいぼうの中で何をしているのか:電子の最後の受け手とATPの関係

分野:からだ

すった 酸素さんそは、からだの なかで さいごに「みず」に なります。酸素さんそが そのまま ちからに なるわけでは ありません。では、なにを して いるのでしょう。

この メモでは、脳のうが 酸素さんそを たくさん つかう ことや、酸素さんそを つかわない いきものの はなしも ふくめて、酸素さんその やくわりが わかります。

吸った酸素は、体の中で最後に「水」になります。酸素そのものが力に変わるのではありません。それなのに、酸素が足りなくなると、体は短い時間で困ってしまいます。酸素は、いったい何の役をしているのでしょうか。

この記事では、食べ物から力を取り出す流れの中での酸素の役目、脳が酸素をたくさん使う理由、サケの筋肉にすむ、細胞が10個に満たない動物が酸素で呼吸しない例として報告されたことまで、酸素の使い道が分かります。

吸った酸素は、細胞の中で最終的に水になる。ところが、酸素そのものがエネルギーになるわけではない。酸素は、食べ物から取り出した電子の「最後の受け手」を務めている。受け手が欠けると何が起きるのか。

この記事では、酸素が電子の受け手として果たす役割と、それが止まったときの影響、脳の酸素消費、酸素を使わない動物の例を通して、酸素の使い道が分かる。

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1. すった 酸素さんそは、さいごに なにに なるの?

1. 吸った酸素は、最後に何に変わるのか

1. 吸った酸素は、細胞の中で最終的にどうなるのか

いきを すうと、酸素さんそが からだに はいります。この 酸素さんそは、からだの ちいさな ちいさな 細胞さいぼうの なかに はこばれます。

そして、さいごに「みず」に なります。酸素さんそが ちからの もとに なるのでは ありません。ちからは、たべものから とりだします。酸素さんそは、その ながれの いちばん さいごで、あるものを うけとる やくです[2]。

たとえば、バケツリレーを おもいうかべて ください。さいごの ひとが バケツを うけとって、みずを あけると、つぎの バケツが まわって きます。酸素さんそは、この さいごの ひとの ような やくです。ただし ほんとうに はこばれて いるのは みずでは なく、とても ちいさな「でんき の つぶ」です。

息を吸うと、酸素は肺から血液に入り、体じゅうの細胞に運ばれます。細胞の中には、ミトコンドリアという小さな部品があり、食べ物から力を取り出す流れのうち、体が使う力のもと(ATP)を多くつくる段階がここで行われます[7]。

ミトコンドリアの中で、酸素は最後に水になります。食べ物から取り出された「電気の粒(電子)」が、いくつもの段階を順に渡されていき、いちばん最後に酸素が受け取るからです[1]。注意したいのは、酸素そのものがエネルギーになるのではないことです。力のもとは食べ物で、酸素は電子を受け取る役です[2]。

バケツリレーにたとえると、電子はバケツの水です。最後の人が水をあけてくれるから、列の全員が次のバケツを渡せます。ただし、実際に運ばれているのは水ではなく電子です。たとえ話の水と、酸素からできる水は別のものです。

吸った酸素は、肺から血液を経て全身の細胞に届き、ミトコンドリアで消費される。細胞内のミトコンドリアは酸素を使ってブドウ糖などを分解し、エネルギーを取り出す場所である[7]。

では、酸素は何をしているのか。呼吸鎖(電子伝達系)では、食べ物から取り出された電子が複数の酸化還元反応を順に渡されていき、最終段階で分子状酸素が電子を受け取って還元され、水(H2O)になる[1]。反応式はO2+4H++4e-→2H2Oと書かれる[2]。教育用教科書でも、酸素は電子伝達系の「最終的な電子の受け手」と説明される[3]。

ここで誤解しやすいのは、酸素がエネルギーの源だと考えてしまうことである。エネルギーの源は食べ物の側にあり、酸素は電子の流れを最後まで通す受け手として働く。受け手を失うと流れ全体が滞る。その影響は次章で見る。

2. 酸素さんそが ないと、ちからは どうなるの?

2. 酸素がなくなると、力をつくる流れはどうなるのか

2. 受け手がなくなると、ATPの生産はどう変わるのか

からだは、ちからを「ATP(エーティーピー)」という ちいさな ものに ためて つかいます。ミトコンドリアでは、でんきの つぶが ながれる ときに、ATPが つくられます[1]。

でも、さいごの ひとが いなければ、バケツリレーは とまります。酸素さんそが なくなると、この ながれも とまって、この ながれで たくさんの ATPを つくる ことは できなく なります。ATPが ぜんぶ なくなる わけでは ありません。

じつは、酸素さんそを つかわなくても、すこしだけ ATPは つくれます。ブドウとうの ひとかたまりから 2こ です[4]。酸素さんそを つかうと、さいだいで やく 30こ。やく 15ばいです[5]。

この 30こは、りろんの うえの いちばん おおきい かずです。ほんとうの さいぼうでは、もっと すくなく なります。

体は、食べ物から取り出した力を、ATPという小さな分子に入れて持ち歩き、必要なときに使います。ミトコンドリアでは、電子が段階的に渡されていくのと結びついて、ADPとリン酸からATPがつくられます[1]。

では、最後の受け手の酸素がなくなったらどうなるのでしょうか。電子の渡しが止まり、電子伝達系によるATPづくりが止まります。ブドウ糖は、酸素なしでも「解糖系」という別の道でATPをつくれますが、ブドウ糖1個から2個だけです[4]。

酸素を使う道では、ブドウ糖1個から最大で約30個(29.85個)と見積もられています[5]。29.85÷2で、約15倍になる計算です。ただし約30は理論上の最大の値で、実際の細胞ではもっと少なくなります。昔の教科書にあった36〜38という数字は、今では古い値とされます[5]。

教科書では、ブドウ糖を酸素で分解したときにできるATPの約90%が、この電子の流れを使った仕組みでつくられると説明されます[3]。これは概算の値で、条件によって一定ではありません。

受け手の酸素が失われると、何が起きるのか。ATP合成は、電子伝達と共役している。NADHとFADH2から来た水素イオン(H+)がミトコンドリア内膜の外側へ汲み出されて膜電位ができ、H+がF1Fo-ATPaseを通って戻るときに、電気のエネルギーがATPの化学エネルギーに変わる[2]。電子の流れが止まれば、この水車に相当する仕組みも回らなくなる。

酸素に頼らない道もある。解糖系は、ブドウ糖1分子をピルビン酸または乳酸まで分解し、ATPを2分子つくる。酸素を必要としないので嫌気的解糖ともよばれる[4]。酸素がある場合、ブドウ糖1分子を完全に酸化したときのATPの最大収量は、H+/ATP比を13:3と仮定した計算で約29.85分子とされる[5]。29.85÷2≒15で、約15倍の差が出る。

この「約30」は理論上の最大であり、実際の細胞ではそれより少ない。昔の教科書の36〜38は古い値である[5]。また、好気的分解でできるATPの約90%が化学浸透の仕組みでつくられるという説明も、教科書の概算である[3]。酸素の役目を数字で言えば、「受け手がいると、同じブドウ糖から約15倍まで取り出せる」ということになる。

3. なぜ 脳のうは、酸素さんそを たくさん つかうの?

3. 脳は小さいのに、なぜ酸素をたくさん使うのか

3. 体重の2%の脳が、酸素消費の約20%を占める理由

脳のうの おもさは、体重たいじゅうの 2% ほどです。100この うち 2こ ぐらいです。

それなのに、おとなが しずかに している とき、からだ ぜんぶで つかう 酸素さんその やく 20% を つかうと いわれます[6]。おなじ おもさで、からだ ぜんぶの へいきんと くらべると、やく 10ばいです。

これは、おとなの しずかな とき の かずです。こどもは、もっと わりあいが おおいと いわれます。

脳のうは、かんがえて いない ときも、いつも はたらいて います。だから、ATPが たくさん いるのだと かんがえられます。

脳の重さは体重の2%ほどなのに、安静時に体全体で使う酸素の約20%を消費します[6]。20÷2で、同じ重さあたりでは全身の平均の約10倍の酸素を使う計算です。

これは大人が静かにしているときの値です。子どもでは、脳が体に占める割合がもっと大きく、酸素を使う割合も高いとされます。一般向けの記事に出てくる「25%」などの数字は、数え方がちがうものです。

脳は、考えていないときも、神経の細胞が休まず働いています。そのため、ATPをつくる酸素の流れが、いつも必要になると考えられます。酸素が足りなくなると、脳は困りやすい、とも言えます。

脳は重さが体重の2%程度であるのに、酸素消費は全身の約20%に達する。酸素消費の最も大きい臓器の一つである[6]。単純に割り算すれば、全身の平均と比べると、同じ重さあたりで約10倍の酸素を使う計算になる。

この値は成人・安静時のもので、子どもでは割合がもっと高いとされる。一般向けの記事に見られる25%などは、数え方がちがう別の値である[6]。

脳は、休んでいるときも神経細胞が働き続ける。その分のATPをつくるために、酸素を最後の電子の受け手とする流れがいつも回っていなければならない。なぜ脳がこれだけ使うのか、細胞レベルの内訳までは本稿では扱わない。

4. 酸素さんそを つかわない 動物どうぶつは いるの?

4. 酸素を使わずに暮らす動物は、本当にいるのか

4. 酸素で呼吸しない動物の報告と、哺乳類で報告された硫黄呼吸

おおくの 動物どうぶつは、酸素さんそを つかって いきて います。ところが 2020ねん、サケの きんにくに すむ ちいさな 寄生虫きせいちゅうが みつかりました。さいぼうが 10こ より すくなく、酸素さんそを つかわない はじめての 動物どうぶつだと いわれて います[8]。

この いきものは、ミトコンドリアの いでんしを ほとんど なくして いました。どうやって ちからを えて いるのかは、まだ はっきり して いません。

また、2017ねんには、ほにゅうるいの さいぼうにも、酸素さんそを つかう こきゅうとは べつに 硫黄いおうの こきゅうが あると、東北大学とうほくだいがくなどが ほうこくしました。酸素さんその ばあいは「みず」ですが、硫黄いおうでは毒どくの ある ガスが でると みられます[7]。

ただし、これは 酸素さんその かわりに なる という ことでは ありません。

多くの動物は、酸素を使って生きています。ところが2020年、テルアビブ大学のチームが、サケの筋肉にすむ寄生虫(Henneguya salminicola)について、酸素で呼吸しない初めての多細胞動物と報告しました[8]。細胞が10個に満たない小さな動物で、ミトコンドリアの遺伝子をほぼ失っていました。酸素で呼吸しない、というのが報告の中身です。

では、どうやってエネルギーを得ているのか。この点は、まだはっきりしていません[8]。

もう一つの例が、硫黄です。2017年に東北大学などが、哺乳類の細胞にも、酸素を使う呼吸とは別に「硫黄呼吸」があると報告しました。酸素による呼吸では水ができますが、硫黄呼吸では毒性のある硫化水素が出るとみられます[7]。ただし、酸素の代わりに使えるという意味ではありません。研究グループは、成長に必要不可欠と考えています。

酸素に頼らない動物はいるのか。2020年、テルアビブ大学のYahalomiらはPNASで、サケの筋肉に寄生する、細胞が10個に満たない動物Henneguya salminicolaが、ミトコンドリアの遺伝子をほぼ失い、酸素で呼吸しない初めての多細胞動物とされると報告した[8]。エネルギーの得方は、いまのところはっきりしない。これは特殊な寄生虫の例で、多くの動物が酸素なしで生きられるという意味ではない。

酸素に関わる別の例として、2017年に東北大学などが、哺乳類の細胞にも、酸素を使う呼吸とは別に「硫黄呼吸」があると報告した。酸素による呼吸では水ができるが、硫黄呼吸では毒性のある硫化水素が排出されるとみられる[7]。研究グループは、これが成長に必要不可欠と考えており、酸素呼吸の代わりという意味ではない。

こうした例は、「受け手が酸素である」ことが生きものにとって唯一の形ではないことを示す。ただし、人を含むふつうの動物は、酸素を受け手にして、解糖の約15倍までATPを取り出している(第2章)。

5. もっと しらべて みたく なったら

5. 酸素の「その先」を調べるなら

5. 酸素の「その先」を調べるなら

きょう できる こと

たべものの ふくろの うらに、「エネルギー」と かいて あるのを さがして みましょう。ごはんや パンに ある ちからの もとが、からだの なかで酸素さんそと いっしょに つかわれます。

しらべる とき

JSTの サイエンスポータルで「硫黄いおうこきゅう」の きじを よんで みましょう。おうちの ひとと いっしょに。

今日できること

お菓子や、パンの袋の裏にある「エネルギー(kcal)」の数字を探してみましょう。この数字は食べ物のエネルギーの量です。体の中でATPにどう変わるかは、表示だけでは分かりません。

資料を読むなら

JSTサイエンスポータルの「硫黄呼吸」の記事[7]は、日本語で読めます。看護roo!の電子伝達系の解説[2]は、反応の流れが図で分かるように書かれています。

今日できること

食品の栄養成分表示にあるエネルギー(kcal)は、食べ物がもつエネルギーの量を示す。ただし表示だけでは、それが体内でATPにどう変わるかまでは分からない。表示で分かることと分からないことを、第1〜2章の流れと照らして説明してみるとよい。

資料を読むなら

日本語では、JSTサイエンスポータルの硫黄呼吸の記事[7]、看護roo!の電子伝達系・解糖系の解説[2][4]が読みやすい。ATP収量の見積もりはRich(2003)の論文に由来するため、BioNumbers[5]から原典をたどれる。教科書はOpenStax Biology 2e[3](英語)がある。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。

  1. 世界大百科事典「電子伝達系」(コトバンク). https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E4%BC%9D%E9%81%94%E7%B3%BB (酸素が最後に水になること)
  2. 看護roo!『図解ワンポイント 生理学』電子伝達系. https://www.kango-roo.com/learning/2298/ (反応式とATPの合成)
  3. OpenStax Biology 2e 7.4 Oxidative Phosphorylation. https://openstax.org/books/biology-2e/pages/7-4-oxidative-phosphorylation (最終的な電子の受け手、ATPの約90%)
  4. 看護roo! 解糖系. https://www.kango-roo.com/learning/2296/ (酸素なしでつくるATP)
  5. BioNumbers: Maximum ATP yield(Rich 2003, Biochem Soc Trans 31:1095). https://bionumbers.hms.harvard.edu/bionumber.aspx?id=101778 (ATPの最大収量)
  6. 山田・稲垣「低酸素状態において脳を保護するATP感受性Kチャネル」生体の科学 53(4), 2002. https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.2425902552 (脳の酸素消費の割合)
  7. サイエンスポータル(JST)2017-11-13. https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20171113_01/ (ミトコンドリアと硫黄呼吸)
  8. CBS News 2020-02-26(原論文: Yahalomi et al., PNAS 2020). https://www.cbsnews.com/news/scientists-discover-first-ever-animal-that-doesnt-need-oxygen-to-breathe-2020-02-26/ (酸素を使わない動物)

なおした ところ

更新履歴

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