1. まんなかを よみたい とき、まきものでは どう する?
1. 巻物では、真ん中あたりを読むのも一苦労だった
1. 巻物の「順に送る」読み方と、冊子の「開けば飛べる」読み方
むかしの ほんは、まきものの かたちを して いました。かみを ながく つなげて、くるくると まいた ものです[1]。
まんなかの ところを よみたい とき、まきものでは、はじめから すこしずつ ひらいて いきます。とじた ほんなら、まんなかを ぱっと ひらけば よいのです[2]。
とじた ほんは、のちに おおくの ほんの かたちに なりました。では、とじた ほんに なったら、すぐ ばんごうが ついたのでしょうか。
端から読むか、開いて読むか
1世紀の初めごろ、書物の多くはパピルスを巻いた巻物でした[1]。巻物は、読みたい場所に着くまで、巻きを送っていく必要があります。
これに対して、紙や羊皮紙を重ねてとじた冊子(コデックス)は、読みたい場所を直接開けます。冊子の利点としては、両面に書ける、持ち運びやすいことなどが挙げられ、参照しやすさもその一つとされます[2]。ただし、冊子が広まった理由は参照のしやすさだけではなく、持ち運びや費用の説、流行や権威の説もあります。
後期古代には冊子が書物の大多数になりましたが、文学作品は4世紀ごろまで、おもに巻物に書かれ続けました[1]。では、「開けば途中に飛べる」冊子には、すぐにページ番号がついたのでしょうか。
1世紀の初めの書物は、パピルスの巻物が主流だった[1]。巻物は、読みたい箇所に達するまで巻きを送らねばならず、読み方は順番に限られる。一方、冊子(コデックス)は、途中のページを直接開ける。冊子の利点としては、両面に書ける、持ち運べることなどが挙げられ、参照しやすさもその一つとされる[2]。
ただし、冊子化の理由を「探しやすさ」だけに決めることはできない。携帯性や経済性、流行や権威を挙げる説もあり、文学作品は4世紀ごろまで巻物に書かれ続けた[1]。後期古代には、書物の大多数が冊子になった。
ここで重要なのは、「途中を開ける形」ができたことと、「番号がある」ことが別だという点である。冊子が広まってから、印刷された番号が現れるまでには、およそ千年の差がある。次の章では、その差を埋めるものを見る。
2. ばんごうが ついたのは、ずっと あとの こと
2. 番号が刷られたのは、冊子になってからずっとあとだった
2. 探せる形のあとに、番号が必要になった理由
ページばんごうが ほんに すられたのは、とじた ほんが ひろまってから、ずっと あとです。いまわかっている いちばん ふるい れいは、1470ねんごろの ドイツの ケルンの ほんだと いわれます[5]。
ばんごうが あれば、「あの ところ」を ひとに つたえられます。さがす とき、めやすにも なります[3]。
ところで、ばんごうが ない ころ、ほんを つくる ひとは、じゅんばんを どう まもって いたのでしょう。
番号があると、何ができるのか
ページ番号があれば、その本の特定のページを引用できます。読者は目的の部分を探しやすくなります[3]。
答えの要点
現存する印刷本で、番号が刷られた最初の例とされるのは、1470年ごろにケルンで出た小冊子です[5]。ページ(面)ごとの番号を印刷本につけたのは、1499年のヴェネツィアで、索引をつけるためだったとされます[7]。つまり番号は、「探せる形の本」ができたあと、「何ページを見て」と人に伝えたい、索引で探したい、という必要が強くなってから現れたと読めます。
ただし、番号がなかった時代にも、順番を守る工夫はありました。それは何だったのでしょうか。
ページ番号があれば、番号つきの文書の特定のページを引用でき、読者は目的の部分を探しやすくなる[3]。これは「何ページを見よ」と他人に伝える仕組みである。巻物では、読みたい箇所まで巻きを送る必要があり、番号で場所を伝える方法は一般的ではなかったと考えられる。
現存する印刷本で番号が刷られた最初の例とされるのは、1470年ごろにケルンで出た説教の小冊子である[5]。さらに、ページ(面)単位の番号を印刷本に初めて付けたとされるのは、ヴェネツィアのアルド・マヌーツィオで、1499年、索引を引けるようにするためだった[7]。つまり、番号は冊子の誕生と同時にできたのではない。探したい、伝えたい、索引で引きたい、という要求が強まった段階で現れたと読める。
ここで述べているのは、「探せる形になって、あとから番号が要った」という順序だけである。では、番号がなかった間、本の順番はどう守られたのか。
3. ばんごうが ない ころの、ほんの じゅんばん
3. 番号がないころ、製本職人は順番をどう守ったのか
3. 番号の前にあった目印:手書きの番号、かんぬき語、丁記号
ほんを つくる とき、かみの じゅんばんを まちがえては たいへんです。そこで、製本する ひとは、いろいろな めじるしを つかいました。
ページの 下に、つぎの ページの さいしょの ことばを 書いて おく やり方が あります[9]。つぎの ところが すぐ わかります。
いんさつの はじまった ころ、番号は 手で 書かれる ことも ありました[4]。そして 1470ねんごろ、ばんごうは はじめて、いんさつされました。
次の語と、記号と、手書きの数字
番号が刷られる前から、製本のために順番を守る目印はありました。各ページの下に、次のページの最初の語を書いておく「かんぬき語」や、折りたたんだ紙の束(折り丁)につける記号は、製本職人が順番を間違えないための道具でした[9]。
活版印刷の最初期の本には、紙葉の順番を示す連続番号は刷られていませんでした。飾り文字や赤字を書き入れる彩色職人が、注文に応じて順番を手書きすることがあったとされます[4]。
つまり、番号の前にも、「順番を守る」仕事は、人の目と手が受け持っていました。印刷の機械が、その数字を刷るようになるのが、1470年ごろです。
番号が刷られる前から、製本のために葉の順を守る目印はあった。各ページの下に、次のページの最初の語を書く「かんぬき語」(catchword)と、折り丁に付ける記号(丁記号)は、製本職人が順番を間違えないための道具だった[9]。どちらも、読者が使う番号ではなく、作る側の道具である。
活版印刷の最初期の本には、紙葉の順番を示す連続番号は刷られておらず、彩色職人(ルブリケータ)が注文に応じて順番を手書きすることがあったとされる[4]。飾り文字や赤字を書き入れる職人が、番号も書いたことになる。
注意したいのは、これらが読者のための番号ではなかった点である。順番を守る目的は、製本の現場にあった。読者が「あの箇所」を人に伝えるための番号とは、役目がちがう。この2つの役目を結びつけたのが、印刷された番号だったと考えられる。
4. 1470ねんごろの ケルンで、ばんごうが さいしょに すられた
4. ケルンの小冊子には、右の余白に番号があった
4. 1470年ごろのケルンの小冊子:葉番号と、最初に番号を刷った人
いま のこって いる いんさつの ほんで、ばんごうが すられた いちばん ふるい れいと いわれるのは、ケルンの ちいさな ほんです。せっきょうを あつめた、11まいの ほんです[5]。
1から 11までの ばんごうが、右の はしに すられて いました。ただし、ばんごうは かみ 1まいごとに つけられ、いまの ページとは すこし ちがいます[8]。
さいしょに すった ひとが だれかは、はっきり していません[6]。なくなった ほんは、わからないからです。
11枚の説教の小冊子
現存する印刷本で、番号が最初に刷られた例とされるのは、1470年ごろにケルンで出た説教の小冊子(11葉)です。1から11までの番号が、右の余白の、ページの半分ほどの位置に刷られていました[5]。
「葉」の番号と「面」の番号
この番号は、紙1枚(葉)ごとの番号です。紙の表と裏にあたる面ごとの番号とは、数え方が異なります[8]。同じ「ページ番号」でも、葉ごと(foliation)と面ごと(pagination)の2つがあるわけです。
最初の人は決まっていない
同じ印刷者の1474年の本にも番号があり、誰が最初に番号を刷ったのかは決着していません[6]。1470年という年代も、目録によっては1471年ごろとされます。「最初」は、現存する本の中ではそう見える、ということです。
現存する印刷本で番号が刷られた最初の例とされるのは、1470年ごろ、ケルンで印刷者アルノルト・テル・ヘールネン(日本語の表記は揺れる)が出した説教の小冊子(11葉)である。1から11までの葉番号が右の余白に刷られている[5]。
この番号は「葉」ごとである。紙1枚(葉)の表と裏を1つの番号で数えるのが葉番号(foliation)、面ごとに数えるのが面番号(pagination)であり、同じ「ページ番号」でも2つの数え方がある[8]。
では、誰が最初に番号を刷ったのか。この点は決着していない。同じ印刷者の1474年版『年代記の小束』にも番号があるが、誰が最初に番号を刷ったかは不明とされる[6]。1470年の本の年代も、目録により1471年ごろとされる。「現存する中で最初」という言い方は、失われた本を含まないという条件つきである。
5. 1499ねんの ヴェネツィアで、ページごとの ばんごうが うまれた
5. 1499年のヴェネツィアで、索引のために面の番号がつけられた
5. アルド・マヌーツィオは1499年、索引のために面の番号を印刷した
1499ねん、イタリアの ヴェネツィアで、アルドと いう ひとが、ページごとの ばんごうを つけました[7]。ほんの うしろに ある「さくいん」の ためだと いわれます。
さくいんは、ことばが 何ページに あるかを しめす リストです。アルドの ページごとの ばんごうは、この さくいんの ために つけられたと いわれます。
そして ばんごうを する ことが ふつうに なったのは、16せいきの まんなかごろからだと いわれます[8]。
索引が番号を必要とした
1499年、ヴェネツィアのアルド・マヌーツィオが、索引をつけるために、ページ(面)単位の番号を印刷本につけたのが最初とされます。ギリシア・ローマの古典など17版が出されました[7]。
索引は、「この言葉は何ページに出てくるか」を示す一覧です。1499年のアルドのページ付けは、この索引のためだったとされます。番号は、探す道具である索引と結びついて現れたのです。
広まるまでに半世紀
1515年には、バーゼルのフローベンが人文主義の書物で同じ型のページ付けを行いました[7]。それでも、15世紀のうちに葉番号が主流になることはありませんでした[4]。印刷本にページ番号を刷ることが普通の習慣になったのは、16世紀の第2四半期(1525〜1550年ごろ)からとされます[8]。
索引から目当ての箇所を引けるよう、面ごとの番号を印刷本に初めて入れたとされるのが、1499年、ヴェネツィアのアルド・マヌーツィオである。彼はギリシア・ローマの古典など17版を、この形で刊行した[7]。索引は「ある語が何ページに出るか」を示す一覧である。1499年のアルドのページ付けは、この索引のためだったとされ、番号は探す道具である索引と結びついて現れたと読める。
1515年には、バーゼルのフローベンが人文主義の書物で同じ型のページ付けを行い、この方式が広がった[7]。それでも、1470年代に始まった葉番号は、15世紀のうちには一般化しなかった[4]。
印刷本にページ番号を刷ることが普通の習慣になったのは、16世紀の第2四半期(1525〜1550年ごろ)からとされる[8]。ただしこの年代は二次的な紹介にもとづく。写本の時代、葉番号は中世の終わりまで珍しかった。
6. 「ノンブル」って、どんな ことば? 日本の ほんは?
6. 「ノンブル」という言葉と、日本の和本の「丁」
6. 「ノンブル」の語源と、和本の丁付け
ほんの ばんごうを、「ノンブル」と よぶ ことが あります。フランスごの「ばんごう」という ことばから きた、いんさつの ことばです[10]。
むかしの にほんの ほん(わほん)にも ばんごうは あります。かみを 2つに おって とじるので、1まいを「1ちょう」と かぞえ、おもてと うらを わけて しめします[11]。
ばんごうの かぞえかたは、ところに よって ちがいます。じぶんの ほんの ばんごうは、どう かぞえて あるでしょうか。
7. じぶんの ほんで、ばんごうの ばしょを さがして みよう
7. 手元の本で、番号の位置と「何ページ」を確かめる
7. 手元の本で確かめる:番号の位置、数え方、索引
うちに ある ほんを 1さつ、えらんで ください。ばんごうは、ページの 下の まんなかに ありますか。それとも、そとがわの すみに ありますか。
ひょうしの うらの しろい ページには、ばんごうが ない ことが おおいです。さがして みましょう。
つぎに、ともだちに「この ほんの 12ページを ひらいて」と つたえて みます。ばんごうが あるから、すぐ つたわります。
今日できること
手元の本を1冊選び、番号がページのどこに印刷されているかを見てみましょう。下の真ん中か、外側の隅か。表紙の裏の白いページには番号がないことが多いので、本の最初から何ページめに初めて番号が出るかを数えてみます。
次に、巻末に索引のある本なら、好きな言葉を1つ選んで索引で引いてください。「何ページ」と書いてあるのを頼りに、開いて探します。番号と索引が、500年以上前の工夫を受けついでいることが、手の動きで分かります。
手元の本で、次の3つを確かめられる。第1に、番号の位置である。下の中央か、外側の隅か。第2に、番号が何ページめから始まるか。表紙裏の白いページや扉には、番号が印刷されていないことが多い。第3に、索引のある本なら、好きな語を引き、示されたページを開いて確かめる。
「番号を見る」ことと「索引を引く」ことは、1499年のヴェネツィアで結びついた工夫が、今も同じ形で残っていることを示している。原典に当たるなら、雪嶋宏一の論考(出典[4][7])が、日本語で読める入口になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典は、番号の起源についての目録・論考・解説を使った。年号は「〜とされる」と書いた箇所を含む。
- British Library 「The beginnings of the Codex」 https://www.bl.uk/stories/blogs/posts/the-beginnings-of-the-codex (巻物から冊子へ)
- Wikipedia 「Codex」 https://en.wikipedia.org/wiki/Codex (冊子の利点)
- Wikipedia 「Page numbering」 https://en.wikipedia.org/wiki/Page_numbering (ページ番号の目的)
- 雪嶋宏一 早稲田大学図書館紀要 https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/67270/files/WasedaDaigakuTosyokanKiyou_69_13.pdf (最初期の手書き番号・葉番号の普及)
- Bodleian Library TEXT-inc 目録 https://textinc.bodleian.ox.ac.uk/catalog/tir00303000 (1470年ごろの葉番号)
- Vassar College Digital Library https://digitallibrary.vassar.edu/node/99838 (最初の人は未決着)
- 雪嶋宏一「16世紀前半バーゼルにおける近代的書物形態の発展について」 https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/46251/files/GakujutsuKenkyu_Jinbun_67_6.pdf (1499年の面付けと索引)
- I Love Typography 「The first printed page numbers」 https://ilovetypography.com/2014/02/21/the-first-printed-page-numbers/ (葉番号と面番号・普及の時期)
- College of Physicians of Philadelphia 「Medieval Monday」 https://histmed.collegeofphysicians.org/medieval-monday-18/ (かんぬき語)
- コトバンク「ノンブル」 https://kotobank.jp/word/%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB (語源)
- 国立公文書館 資料解題 https://www.archives.go.jp/publication/kita/pdf/kita58_p050.pdf (和本の丁付け)
なおした ところ
更新履歴
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