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とっきょは「しんさ してください」と おねがいしないと しんさされない?

審査待ち約75万件から生まれた、特許の審査請求制度

出願しても審査は始まらない:特許の審査請求制度が昭和45年に生まれた背景と現在の数字

分野:技術

とっきょを とるために しょるいを だしても、3年の うちに「しんさを おねがいします」と 言わないと、その しょるいは とりさげた ものと されます。

どうして、だした だけでは だめなのでしょう。むかしは 75万けんも しんさ まちが たまって いました。この きじで、その わけと、いまの すうじが わかります。

発明を特許にしたくて出願しても、3年以内に自分から「審査してください」と申し出なければ、出願は取り下げたものとみなされます。審査官がすべての出願を見るわけではないのです。

なぜこんな二段階の仕組みになったのでしょうか。昭和45年の改正の前、審査待ちは特許と実用新案を合わせて約75万件にふくれていました。この記事では、その事情と、今は出願のどれくらいが審査まで進むのかが分かります。

特許は、出願しただけでは審査されない。出願日から3年以内に「出願審査の請求」をしなければ、その出願は取り下げたものとみなされる。しかも2019年出願分では、約4分の1が審査請求に至っていない。

では、なぜ出願と審査を切り離したのか。昭和45年の法改正の背景にあった約75万件の滞貨、出願公開との組み合わせ、請求期間が7年から3年に縮んだ経緯と、現在の件数・費用が分かる。

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1. だしたのに 3年で きえるって ほんと?

1. 出願しただけでは審査が始まらない

1. 出願後3年以内の審査請求という条件

あたらしい はつめいを おもいついた 人が、とっきょを とりたくて しょるいを だします。これを「しゅつがん」と いいます。

ここで ふしぎな きまりが あります。しゅつがんを した 日から 3年の うちに「しんさを して ください」と おねがい しないと、しゅつがんは とりさげた ものと されて しまいます。この おねがいが「しんさせいきゅう」です[1]。

おねがいは、しゅつがんした 人じゃ なくても できる きまりです。ただ、いちど おねがいすると、とりけすことは できません[1]。

では、どうして ぜんぶ すぐに しんさ しないのでしょう。

町の発明家でも会社でも、新しい発明を特許にしたいときは、まず特許庁に書類を出します。これが出願です。ところが、出願しただけでは審査官は動きません。出願した日から3年以内に「出願審査の請求」をしないと、その出願は取り下げたものとみなされます[1]。

この請求は、条文では「何人も」できるとされています。出願した本人でなくても請求できるのです[1]。一方で、いったん請求すると取り下げることはできません[1]。3年たって取り下げ扱いになった場合の救済規定もありますが、細かい条件は条文で確かめる必要があります。

3年の猶予をつけたのは何のためでしょうか。それを知るには、この制度がなかった時代を見る必要があります。

出願しても、審査は自動的には始まらない。特許法48条の3によれば、出願日から3年以内に出願審査の請求がなければ、その出願は取り下げたものとみなされる[1]。この請求をするのは出願人に限られず、条文上は「何人も」できる[1]。

ただし、請求したあとの扱いは厳しい。出願審査の請求は取り下げることができない[1]。出願を分割・変更した場合には、3年が過ぎていても30日以内に限って請求できる特例があり[1]、3年以内に請求できなかったことに救済規定もあるが、細かい条件は条文で確かめる必要がある。

つまり、期限・取り下げ不可・例外の三つがそろって、「請求するかどうかを出願人が決める」仕組みが成り立っている。では、そもそもなぜこの二段階が必要になったのか。

2. むかしは ぜんぶ しんさして、75まんけんも たまった

2. 全部を審査していた時代、待ち行列は約75万件に

2. 全件審査の限界:滞貨約75万件と5年の壁

この きまりが できたのは しょうわ45ねん、ひゃくねんも たたない むかしです。それより まえは、でた しゅつがんを、しんさかんが ぜんぶ しんさして いました[2]。

ところが しゅつがんが ふえて、はつめいも むずかしく なりました。しんさが おいつかず、1969ねんどの おわりには、とっきょと「じつようしんあん」を あわせて やく 75万けんが しんさ まちに なりました[2]。

たとえば、おみせの レジに 75万人が ならんで、レジが 1つ ふえても なかなか へらない ようすです。ならぶのは 人では なくて、しんさを まつ 75万けんの しゅつがんです。

これでは、とっきょが とれる ころには、もう じだいが かわって しまいます。

昭和46年(1971年)の前は、出願はすべて審査官が自分で審査していました[2]。ところが出願が増え、技術も高度になって、審査が追いつかなくなります。1969年度末には、特許と実用新案を合わせた滞貨が約75万件になりました。なお、この数字は特許だけではなく実用新案を含む合計です[2]。

当時は、特許権の存続期間から見て審査期間を約5年と想定していました。滞貨がそれを超える状況だったと説明されています[2]。5年待たされて権利が出る頃には、権利の期間がずいぶん減ってしまいます。

全部を審査する方式は、出願が増えるほど行き詰まります。そこで昭和45年に法律を変え、出願と審査の間にもう一つ段階を置くことになりました。

昭和46年1月1日より前の出願は、すべて担当の審査官が職権で実体審査をしていた[2]。この方式は、出願が増え続けると破綻する。実際、出願件数の増加や技術の高度化などで審査の滞貨がふくらみ、1969年度末には特許と実用新案の滞貨の合計が約75万件に達した[2]。約75万件は特許だけの数ではなく、実用新案を含む合計である。

問題は件数そのものだけではない。当時の特許権の存続期間は、想定される約5年の審査期間を前提に組み立てられていた。滞貨はその前提を超える状況になっていた[2]。審査に年月がかかるほど、権利として使える期間は削られていく。

では、審査官を増やす以外に手はなかったのか。昭和45年に選ばれたのは、審査する件数のほうを減らす道だった。

3. はやく ひらいて、しんさは ほしい ものだけ

3. 内容は早めに公開し、審査は希望した出願だけ

3. 出願公開と審査請求の抱き合わせ(昭和45年改正)

しょうわ45ねん5がつ22日に、あたらしい ほうりつが できました。つぎの としの 1がつ1日から うごき はじめます[2]。

ひとつめの かわりかたは、しゅつがんから 1ねん6かげつ たったら、しんさが すすんで いなくても、なかみを みんなに しらせる ことです。しんさが おくれて、おなじ けんきゅうを ふたりが する むだを へらす ねらいが ありました[2]。

ふたつめが しんさせいきゅうです。つかいたい はつめいだけを、人が えらんで しんさに のせます。しゅつがんした 人に、はつめいが やくに たつか かんがえる じかんを あげる と いう せつめいも あります[4]。

では、人や かいしゃは、これを どう つかったのでしょう。

昭和45年5月22日に公布された法律は、昭和46年1月1日に施行されました。ここで二つの制度が入ります[2]。

一つは出願公開です。出願から1年6か月たったら、審査が進んでいるかどうかに関係なく内容を公開します。審査が遅れて発明が長く世に出ず、同じ研究や投資が重なる弊害をなくすねらいがありました[2]。

もう一つが審査請求です。日本弁理士会の意見書は、この改正で出願公開と審査請求の制度が導入されたと述べています[4]。出願人に時間をかけて発明の価値を見きわめてもらい、審査してほしいものだけを審査すれば、審査官は不要な出願に手間をかけずにすむ、という説明もあります。

公開は早く、審査は希望制。この組み合わせが、会社の出願のやり方も変えていきます。

昭和45年5月22日公布の法律第91号は、昭和46年1月1日に施行され、出願公開制度と出願審査請求制度の二つを採用した[2]。導入の年は昭和45年の改正、施行は昭和46年と区別して読む必要がある。

出願公開は、出願から1年6月を経過したら、審査の進み具合にかかわらず内容を公開するものである。審査の遅れで発明が長く公開されないと、重複研究や重複投資の弊害が生じる。それを除くことが狙いだった[2]。

一方、審査請求は審査の入口を絞る。出願人に3年などの時間をかけて価値を見きわめさせ、希望するものだけを審査すれば、審査官は不要な出願に手間をかけずにすむ、という説明がある[4]。これは制度の目的の一つの説明として読む。

公開で情報を早く出し、審査は選んだものに集中する。この組み合わせは、出願する側の行動も変えた。

4. 「とりあえず だす」と「ほんとうに ほしい」を わける

4. 「出しとけ特許」が生まれ、請求期間は7年から3年へ

4. 出願は増え、請求は絞られた:「出しとけ特許」と請求期間の短縮

あるかいしゃの れいでは、はつめいが できて あたらしければ、とりあえず しゅつがんする ようになりました。「だしとけとっきょ」と よばれる やりかたの もとが、このころ できました[2]。

そのうえで、しんさせいきゅうは かずを しぼりました。たとえば、せいひんに つかうと きめた ものを えらぶ、というぐあいです[2]。ただ、これは ひとつの かいしゃの れいで、ぜんぶの かいしゃが おなじとは いえません。

また、しんさせいきゅうの きげんは、さいしょは 7ねんでした。2001ねん10がつ1日いごの しゅつがんから 3ねんに みじかく なりました[2]。

さて、いまは どれくらいの しゅつがんが、しんさまで すすむのでしょう。

制度ができると、企業は「発明が完成して新しければ、まず出願しておく」という動きをするようになりました。いわゆる「出しとけ特許」の土台ができた、と日本大学の論説は述べています。そのうえで、審査請求の件数は絞り込まれました。たとえば事業部が製品に採用すると決めたものなどを請求した、という一企業の事例が紹介されています[2]。これは一つの企業の管理の例なので、すべての会社に当てはまるとは言い切れません。

請求できる期間も変わりました。昭和46年から平成13年9月30日までの出願は、出願日から7年以内でした。平成13年10月1日以降の出願は、法律の改正により3年以内に短縮されています[2]。

7年が3年になれば、請求するかどうかを決める時間は短くなります。では、いま実際に請求される割合はどのくらいなのでしょうか。

制度導入後、企業では「発明が完成し新規性があれば、とりあえず出願する」という、いわゆる「出しとけ特許」の基盤が作られ、出願件数は増えた。そのうえで審査請求の段階で件数を絞り込み、事業部が製品に採用すると決めたものなどを請求した、という管理の事例が報告されている[2]。この論説は一企業の事例を含み、全企業の傾向とは言い切れない。

請求期間も一定ではなかった。昭和46年から平成13年9月30日までの出願は出願日から7年以内、平成11年法律第41号の改正を受け、平成13年10月1日以降の出願は3年以内となった[2]。猶予が短くなれば、出願人は早く判断を迫られる。

したがって、現在の請求率は、出願の段階で見きわめを済ませる動きがどこまで進んだかを映す数字になる。では実際の数字はどうか。

5. いまは、しゅつがんの どれくらいが しんさに すすむ?

5. 今は出願のどれくらいが審査に進むのか

5. 審査請求率と件数・期間・費用の現在地

2019ねんの しゅつがんでは、3ねんの うちに しんさせいきゅうが された わりあいは 74.7パーセントでした。2016ねんの ぶんは 72.7パーセントです[3]。

100から 74.7を ひくと 25.3です。つまり、しゅつがんの やく 4ぶんの 1は、しんさせいきゅうされずに おわります。「ほとんど」ではなく「4ぶんの 1ぐらい」です。

しんさせいきゅうから さいしょの へんじまでは、2022ねんで 10.1かげつでした[3]。おねがいには おかねも かかり、2019ねん4がつ いごの しゅつがんでは、きほんは 13万8000円に、せいきゅうの かずに おうじた 金がくが たされると いわれます[5]。

出願の年ごとに、3年以内に審査請求された割合を出願審査請求率といいます。特許庁の統計を転記した資料では、2016年出願分が72.7%、2019年出願分が74.7%です[3]。100から74.7を引くと25.3なので、約4分の1の出願は審査請求されないまま終わります。

ここで注意したいのは、ある年の「請求件数÷出願件数」は審査請求率ではないことです。その年の請求の中には、過去の年に出願されたものが含まれるからです。

請求すると、最初の審査結果が来るまでの目安(ファーストアクション期間)は、2022年で10.1か月でした[3]。費用もかかります。2019年4月以降の出願では、基本料138,000円に、請求項の数に4,000円をかけた額を足す計算で、請求項が10なら178,000円という説明があります[5]。料金は改定されることがあるので、最新の金額は特許庁で見る必要があります。

請求は取り下げられず、お金もかかるので、「ほんとうに必要か」を考える時間が3年あるのは、出願する側にとっても意味があると考えられます。

出願年ごとに、3年以内に審査請求された割合が出願審査請求率である。特許庁統計を転記した解説によれば、2016年出願分は72.7%、2019年出願分は74.7%で[3]、100−74.7=25.3より、約4分の1の出願は審査請求されない。「ほとんど」ではなく「約4分の1」である。

注意したいのは、年ごとの件数の比と請求率は別物だという点である。ある年の審査請求件数を同じ年の出願件数で割っても、請求率にはならない。請求件数には、過去の年に出願された分が含まれるためである。請求率は、出願年をそろえて、その出願のうち3年以内に請求された割合を見る必要がある。

請求後の流れでは、最初の審査結果通知までの目安であるファーストアクション期間が、2022年で10.1か月とされる[3]。費用は、2019年4月1日以降の出願で、基本料138,000円に請求項数×4,000円を加えた額で、請求項10なら178,000円という例がある[5]。中小企業などには減免制度がある。この金額は改定されうるため、最新値は特許庁の案内で確認する必要がある。

請求できる期間を過ぎれば出願は消え、請求すれば取り下げられない。猶予の3年は、費用と時間をかけて審査を受ける価値があるかを、出願人が判断する期間になっている。

6. かんたんな けいさんで たしかめよう

6. 数字を自分の手で確かめてみる

6. 数字を検算し、資料にあたる

おうちの 人と、けいさんを して みましょう。

もし 100けんの しゅつがんが あったら、74.7パーセントは 74.7けんぐらいです。のこりの 25けんぐらいは、しんさせいきゅうされません。かみに かいて ひきざんして みて ください。

とっきょの 人の はなしを よむ ときは、「しゅつがん」と「しんさせいきゅう」の どちらの はなしかな、と わけて みると わかりやすく なります。

検算は電卓とメモ用紙でできます。たとえば、ある年に1000件の出願があったとします。出願審査請求率が74.7%なら、請求される出願はおよそ747件、請求されない出願はおよそ253件です。100%から引くだけなので、ほかの年の率でも同じように計算できます。

次に、「請求件数÷出願件数」が請求率にならない理由も考えてみてください。ある年の請求には、2年前や3年前に出願した分も入っています。分母と分子の「年」がそろっていないのです。

原典に当たるなら、特許庁の統計や、日本大学の論説(出典[2])を開く手があります。論説には、昭和45年改正の前後で企業の管理がどう変わったかが、具体的に書かれています。

検算は単純である。出願審査請求率が74.7%なら、1000件の出願のうち請求されるのはおよそ747件、されないのは約253件。72.7%(2016年出願分)なら約727件と約273件である。年ごとの差は2ポイントで、請求率が大きく動いたとは読みにくい。

もう一つの確認は、出典の読み方である。本記事の件数・率・費用の多くは、特許庁の統計や手数料案内を転記した二次資料による。条文はe-Govの法令検索、件数は特許行政年次報告書、金額は特許庁の手数料案内と、一次原本にさかのぼれば、数字の定義(出願年別か、請求年別か)を確かめられる。

制度の歴史は、出典[2]の論説が具体的である。昭和45年改正のあとに企業が出願と請求をどう使い分けたのかを、一企業の事例として詳しく書いている。ただし一社の例なので、他社や他の時代の話とは分けて読みたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。条文・金額は改定されることがあるので、最新のものは特許庁で確認してください。

  1. 特許法48条の3の解説ページ(4IP-Law) https://scrapbox.io/4IP-Law/特許法48条の3 (請求期限・取り下げ不可・救済規定)
  2. 河合信明「発明届出から出願審査請求までの管理の変遷の一事例」知財ジャーナル2012(日本大学) https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/property/property_5/each/05.pdf (昭和45年改正・滞貨約75万件・請求期間・出しとけ特許)
  3. 小山特許事務所ブログ「特許行政年次報告書2023」の解説 https://www.koyamapat.jp/2023/07/29/report_patent_2023/ (審査請求率・ファーストアクション期間)
  4. 日本弁理士会 意見書(2012年10月22日) https://www.jpaa.or.jp/old/activity/appeal/2013/20121022opinion.pdf (昭和45年改正での導入と制度のねらい)
  5. 審査請求料の費用解説(弁理士事務所) https://www.kotora.jp/c/152493-2/ (審査請求料の計算例)

なおした ところ

更新履歴

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