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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ペリカンの おおきな ふくろには、さかなを しまって いるの?

ペリカンののどの袋は、魚をしまう袋ではなく「網」だった? 種ごとの漁のちがい

ペリカンの咽頭嚢(gular pouch):貯蔵器官ではなく採餌用の網としての構造と、種ごとの漁法

分野:生きもの

ペリカンの くちばしの したには、ぶらんと おおきな 袋ふくろが あります。さかなを たくさん しまって おく ための ものでしょうか。じつは、ちょっと ちがうようです。いっしょに みて いきましょう。

ペリカンといえば、くちばしの下にぶら下がる大きな袋が目に浮かびます。あの袋は、とった魚を持ち歩くためのものだと思う人も多いでしょう。ところが動物園などの資料をたどると、袋の役目はもっと「道具」に近いようです。袋のつくりと、ペリカンの種ごとの漁のちがいを見ていきます。

ペリカンののど袋(咽頭嚢)は、魚の貯蔵庫ではなく、水ごと魚をすくう網として働くと説明される[1]。動物園の解説、鳥類学の論文、生体材料の研究[4][6]などを突き合わせて、袋の使い方、皮膚の構造、種によって異なる漁法を整理する。

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1. ふくろは さかなを しまう ところ?

1. 袋は、魚をしまっておく場所?

1. のど袋は貯蔵ではなく「すくい網」

アメリカの こくりつ どうぶつえんは、カッショクペリカンの ふくろを 「すくいあみ」と せつめい して います[1]。

あみで すくうと、さかなと いっしょに みずも はいります。ふくろは、その みずを きりはなす まで、とれた さかなを うけて おく ところです。

とった さかなを はこぶ ときは、ふくろでは なく、のどの おくの しょくどうに いれると いわれます[1]。ふくろは、しまう ところでは ないのですね。

アメリカのスミソニアン国立動物園は、カッショクペリカンの袋を「すくい網」のように使うと説明しています。水ごとすくい、水が絞り出されるまで、とれた魚をそこで受けとめておく、という使い方です[1]。

同じ説明には、魚は袋では運ばず、食道(のどの管)にあると書かれています[1]。袋は「しまう場所」ではなく、「すくう道具」というわけです。

スミソニアン国立動物園は、カッショクペリカンののど袋を、水が絞り出されるまで獲物を受けとめておく「すくい網」として説明する。魚が袋に入れて運ばれることはなく、食道で運ばれるとも述べる[1]。日本語では咽頭嚢と書かれることもある。

2. みずは どうやって すてるの?

2. すくった水は、どう捨てるのか

2. 排水の方法と、容量の資料差

さかなを のむ まえに、みずを すてなければ なりません。ペリカンは くちばしを かたむけて、みずを ながす、と いう せつめいが あります[2]。

ふくろに どれくらい はいるかは、しりょうに よって ちがいます。にほんの どうぶつえんの しりょうには、モモイロペリカンで 10リットルを こえる、15リットルも はいる、などと あります[3][8]。ペットボトルで 5〜8ほん ぶんくらいです。

どの かずが ただしいかは、ペリカンの しゅるいや はかりかたで かわるようです。

魚をのみこむ前に、水を出さなくてはなりません。コーネル大学の鳥の解説サイトは、くちばしを前に傾けて水を流すと説明します[2]。ほかに、袋を胸に押しつけて絞り出すと書く資料もあり、書き方は資料によってちがいます。種や場面による差なのかは、今回の資料では分かりませんでした。

袋にどれくらい入るのかも、資料によって幅があります。日本の動物園の資料には、モモイロペリカンで15リットル、10リットル超といった数字があります[3][8]。一方でスミソニアン国立動物園は、カッショクペリカンで水と魚あわせて約1ガロン(約3.8リットル)と書きつつ、絞り出す水は最大3ガロン(約11リットル)とも記していて[1]、ひとつの数字にはなりません。

すくったあと、水を出してから魚をのむ。排水の方法は資料で記述が割れる。コーネル大学の解説はくちばしを前に傾けて水を流すとし[2]、袋を胸に押しつけて絞り出すとする記述もある。種差か観察条件の差かは、今回の資料からは判断できない。

容量も一致しない。スミソニアン国立動物園はカッショクペリカンで水と魚を合わせて約1ガロン(約3.8L)とする一方、袋に受けた水は最大3ガロン(約11L)絞り出すとも記す[1]。日本の動物園資料はモモイロペリカンで15L、10L超などとする[3][8]。種・個体・測り方が異なるため単一の値は示さず、「10L前後、種による」程度の幅で読むのが妥当である。

3. ふくろの かわは よこに のびる

3. 袋の皮膚は、横に大きく伸びる

3. のど袋の組織は、向きによって伸び方が違う

ふくろの 皮膚ひふは、たてよりも よこに よく のびます。

カッショクペリカンの ふくろの けんきゅうでは、よこ むきに、もとの 3ばいいじょうも のびる ほどだと ほうこく されました[4]。たての むきは、その 3ぶんの 1ほどです。

あみは、よこに ひろがると さかなを うけとめやすそうです。のびる むきが きまって いるのは、そのためかもしれません。

袋の皮膚を調べた研究があります。カッショクペリカンの袋の組織は、横方向に最大200〜300%のひずみ(伸び)まで引っぱれると報告されています[4]。もとの長さの約3〜4倍にあたります。縦方向の伸びは、その約3分の1です。

この研究では、皮膚をつくるコラーゲンの繊維がうねっていることと、膜がしわのような波の形をしていることが、伸びを生むと考えられています[4]。ゴムの生地のようなものではなく、たたまれていたものが広がる、というイメージに近いようです。

網としては、横に大きく広がり、縦には伸びすぎないほうが、水と魚を受けとめやすいのかもしれません。これは、この構造の意味についての一つの見方です。

Acta Biomaterialiaの研究は、カッショクペリカンののど袋の組織が横方向に最大200〜300%の名目引張ひずみまで伸び、縦方向の約3倍に達すると報告する[4]。ひずみ200〜300%は、長さがもとの3〜4倍になることに当たる。膜は波形(corrugated)の構造をとり、コラーゲン線維のうねりとともに伸長を生むとされる[4]。

横に大きく伸び縦の伸びは抑えられるという異方性が、獲物を受ける網の機能に結びつくかどうかは、仮説として読むのが妥当である。数値は要旨までしか確認できておらず、原文照合は済んでいない。

4. たかい ところから、みずへ ドボン

4. 高いところから水に飛びこむ漁

4. カッショクペリカンの飛び込み漁

カッショクペリカンは、そらから あたまを したにして、みずに とびこみます[5]。ペリカンの なかまで、こんな とびこみ りょうを する ことで ゆうめいなのは、カッショクペリカンです[5]。

みずに はいる とき、くちばしを あけて、ふくろを ひろげます。ちいさな さかなを ふくろに いれて、みずの うえに でてから みずを はき、さかなを のみこみます[5]。

ある けんきゅうでは、4メートルより たかい ところから、いちばん たかいと 19メートルからの とびこみが みられました[6]。1びょうも かかりません。

カッショクペリカンは、空から頭を下にして水に飛びこみます。ペリカンの仲間で、こうした飛びこみ漁をする種の一つがカッショクペリカンです(ほかにペルーペリカンも飛びこみます)[5]。

着水の瞬間にくちばしを開き、袋を広げて小さな魚をとらえます。そのあと水面に浮かんで水を吐き出し、魚をのみこみます[5]。網が広がるタイミングは、飛びこみのほんの一瞬です。

鳥類学の論文によると、観察された飛びこみは、高さ4m超から最大19mで、速さは約18m/s(時速およそ65km)、1秒に満たない短い時間でした。空中で体を約180度回して水に入るとも報告されています[6]。成功したあと、水と魚を処理するのに最大1分ほどかかることがあるそうです[6]。

カッショクペリカンは高所から頭部を下にして水中へ突入する。ペリカン類で飛び込み漁をする種は本種のほかにペルーペリカンがいる[5]。着水時にくちばしを開いて咽頭嚢を広げ、小魚を袋内にとらえたのち、水面で水を吐き出して魚をのみ込む[5]。

Journal of Field Ornithologyの論文では、飛び込みは高さ4m超から最大19m、速さ約18m/s(時速約65km)、所要1秒未満で、体を空中で約180度回して水に入る(Split-Sターンに似る)と報告された。成功後、水と魚の処理に最大1分ほどかかる個体が普通に見られたという[6]。時速の値は18m/sからの換算であり、一般サイトにある別の値とは混ぜていない。

5. とびこまない ペリカンは なかまで おいこむ

5. 飛びこまないペリカンは、群れで追いこむ

5. アメリカシロペリカンの協同追い込み漁

アメリカシロペリカンは、とびこみません。みずの うえで、さかなを すくいます[7]。

なかまと ならんで およぎながら、さかなを あさい ところへ おいこみ、にげにくく なった ところを ふくろで すくいます[7]。にほんの どうぶつえんの しりょうでも、モモイロペリカンが 5わから 10わの むれで ちからを あわせて さかなを とると せつめい して います[3]。

ペリカンでも、とりかたは しゅるいに よって ちがうのですね。

アメリカシロペリカンは、飛びこまず、水面で漁をします。仲間と並んで泳ぎながら、小魚のむれを一か所に集めたり、浅いところへ追いこんだりして、逃げにくくなったところを袋ですくいます[7]。日本の動物園の資料も、モモイロペリカン(アメリカシロペリカンとは別の種)が5〜10羽の群れで協力して魚をとると説明しています[3]。

ネバダ西部で調べた1991年の研究によると、2〜6羽の群れは、単独や、それより大きな群れよりも、有意に多くの魚をとったそうです[7]。「多ければ多いほどよい」ではなく、ほどよい数がある、ということになります。ただし原論文は今回読めておらず、紹介サイト経由の情報です。

アメリカシロペリカンは飛び込まず、水面で漁をする。群れが並んで泳ぎ、群れをなす小魚を密な塊にまとめたり、浅瀬へ追い込んだりして、逃げにくくなったところをすくう[7]。日本の動物園資料は、別種のモモイロペリカンについて5〜10羽の群れでの協力漁を説明している[3]。

Anderson(1991, Colonial Waterbirds 14(2))のネバダ西部での研究は、2〜6羽の群れが単独個体や大きな群れより有意に多くの魚をとったと報告する。ただし、この情報はAskNatureの引用を通したものである[7]。群れが大きいほど有利とは読めない点に注意したい。

6. ふくろは、すずしく する ためにも つかう

6. 袋は体を冷やすのにも使われる

6. 咽頭振動による体温調節

あつい ひには、ふくろを ゆらして からだを ひやす、と いう せつめいも あります[8]。

ふくろの うすい まくには、血管けっかんが たくさん とおって います。ふくろを ふるわせると、からだを ひやす はたらきが ある、と されて います[8]。

あみと して だけで なく、ふくろは いろいろな はたらきを もって いるようです。

袋は、体温を下げる役目もあるといわれます。血管が多く通る薄い膜をふるわせて、水分が蒸発するときの熱の動きを利用し、熱を逃がすというしくみです。日本の動物園の資料も、袋をゆらして体を冷やす働きがあると説明しています[8]。

この説明は日本語の資料が中心で、専門の一次資料までは確かめられていません。ペリカンは、袋に魚を入れる道具としてだけでなく、暑さをしのぐ道具としても袋を使っているのかもしれません。

のど袋は体温調節にも使われる。血管に富む薄い膜を震わせ(咽頭振動, gular fluttering)、水分の蒸発によって熱を逃がすとされる。日本の動物園資料も、袋をゆらして体を冷やす働きがあると説明する[8]。咽頭振動は他の鳥にも見られる行動である。

ただし、この節の根拠は日本語の動物園資料と検索結果に限られ、一次資料は確認できていない。袋の機能は、採餌の網と放熱の両方にまたがると読めるが、個々の寄与の大きさは資料からは分からない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

いえで できる こと

あらいおけに みずを はり、おおきめの プラスチックの ふたなどを たくさん いれます。ふたを さかなに みたてます。ちいさな ものは、くちに いれないよう、おとなと いっしょに やりましょう。りょうてで おわんの かたちを つくって、みずごと すくって みましょう。そっと ななめに すると、みずだけ ながれて、ふたが のこります。ゆかが ぬれるので、タオルを しいて ください。

でかけて できる こと

ペリカンが いる どうぶつえんが ちかくに あれば、えさの じかんを しらべて みましょう。ペリカンが くちばしを どちらに むけるか、みて みて ください。

家でできること

洗面器に水を入れ、ペットボトルのふたなど大きめのものをたくさん入れます。それを魚に見立てて、両手をおわんの形にして、水ごとすくってみましょう。そっと傾けると、水だけが流れて、ふたが手に残ります。ペリカンが水を出す動きを、手で体験できます。床がぬれるので、タオルを敷いておきます。

出かけてできること

ペリカンがいる動物園が近くにあれば、給餌の時間を調べて行ってみましょう。魚をのみこむ前に、くちばしをどちらに向けるかを見てください。資料にあった「傾けて流す」動きが見られるでしょうか。

資料を読むなら

咽頭嚢の組織については論文[4]、飛び込みの高さと速さについては鳥類学の論文[6]が原資料になる。どちらも英語で、本記事では要旨や要約までしか確認できていない。原文で数字を確かめると、排水の方法や容量の資料差がどこから生じるのかも見えてくるかもしれない。

家でできること

洗面器の水にペットボトルのふたなど大きめのものを入れて魚に見立て、両手をおわん形にして水ごとすくう。そっと傾けて、水だけを流し、ふたが手に残る様子を確かめる。床がぬれるためタオルを敷く。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の主張は、下の資料を突き合わせて確かめました。

  1. Smithsonian's National Zoo: Brown pelican. https://nationalzoo.si.edu/animals/brown-pelican (袋はすくい網であること、魚は食道で運ぶこと、容量の記述)
  2. Cornell Lab: Ask About Birds, American White Pelican. https://askaboutbirds.com/species/american-white-pelican/ (水の出し方)
  3. 宮崎市フェニックス自然動物園:モモイロペリカン. https://www.miyazaki-city-zoo.jp/ (袋の容量、群れでの協力漁)
  4. On the gular sac tissue of the brown pelican. Acta Biomaterialia. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1742706120305973 (袋の皮膚の伸び方と構造。要旨のみ確認)
  5. Audubon: How Brown Pelicans dive after fish without breaking their necks. https://www.audubon.org/news/how-brown-pelicans-dive-after-fish-without-breaking-their-necks (飛び込み漁で袋を広げること)
  6. Plunge diving by Brown Pelicans resembles a Split-S Turn. Journal of Field Ornithology 93(1). https://journal.afonet.org/vol93/iss1/art2/ (飛び込みの高さ・速さ・時間)
  7. AskNature: Cooperative herding catches more food. https://asknature.org/strategy/cooperative-herding-catches-more-food/ (群れでの追い込み漁、Anderson 1991の紹介)
  8. ホームメイト:動物園でチェックしたい!ペリカンののど袋. https://www.homemate-research-zoo.com/useful/13977_zoo_062/ (袋の容量、体温調節)

なおした ところ

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