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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

せきゆの なかに、はっぱの いろの なごりが ある?

石油の中に、葉っぱの色素に似た分子がある ── 石油はどうやってできたのか

石油の起源 ── ポルフィリンが示す生物由来と、有機物が残る海・熱の条件

分野:自然

せきゆの なかには、はっぱの みどりの いろに にた ぶんしが はいって いる ことが あります。なぜ、せきゆに はっぱの なごりが あるのでしょう。

この きじを よむと、おおむかしの うみの ちいさな いきものが、どうして せきゆに なるのかが わかります。

石油の中から、葉っぱの緑の色素(クロロフィル)によく似た構造の分子が見つかっています[6]。地面の下の油に、なぜ植物のなごりが入っているのでしょうか。

石油は、大昔の海にいた小さな生き物からできたと考えられています。この記事を読むと、生き物由来と考えられる手がかり、材料が海の底に残る条件、地下の熱が果たす役目が分かります。

1930年代、トライブス(Alfred Treibs)は、石油から葉緑素(クロロフィル)に似た構造をもつ、金属を含むポルフィリンを見つけた。この発見は、石油が生物に由来することを裏づける有力な手がかりになった[6]。

では、海の生物の遺骸は、なぜ分解されずに残り、どんな条件で石油になるのか。この記事を読むと、有機成因説の根拠、有機物が堆積物に残る条件(とくに底層水の酸素)、地下での熱による変化と、別の説の位置づけが分かる。

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1. せきゆは、なにから できたと わかるの?

1. 石油が生き物からできたと考えられるのは、なぜか

1. 石油が生物由来とされる根拠 ── 分子に残る葉緑素の骨格

せきゆは、おおむかしの うみに いた ちいさな いきものから できたと かんがえられて います[1]。でも、だれも その ばめんを 見て いません。どうして わかるのでしょう。

1930ねんだいに、トライブスと いう ひとが、せきゆの なかから、はっぱの みどりの いろに にた ぶんしを 見つけました[6]。はっぱの みどりの いろに にた ぶんしが、せきゆの なかに のこって いたのです。

せきゆの なかに、ちいさな いきものの からだの つくりが のこって いる ことも あります[7]。では、その ざいりょうは、どんな いきものだったのでしょう。

石油の成分をくわしく調べると、植物のものによく似た分子が見つかります。1930年代、トライブス(Alfred Treibs)は、石油の中に、金属を含むポルフィリンというものを見つけました。これは、葉っぱの緑の色素クロロフィルとよく似た構造をしていて、石油が生き物に由来することの有力な手がかりになりました[6]。

手がかりは、これだけではありません。ステランやホパンといった、細胞を包む膜に由来する分子も、石油の中から見つかります。生き物の体のなごりという意味で「分子化石」とも呼ばれ、生き物以外から石油ができるという考えには、不利な証拠とされています[7]。

こうした証拠を重ねて、多くの研究者が支持している考え方は、石油は海や湖の底にたまった生き物の遺骸が、長い時間をかけて変化してできたというものです[1]。では、その材料は、どんな生き物なのでしょうか。

石油の生物由来を支える手がかりは、分子の構造にある。トライブスは1930年代に石油から金属ポルフィリンを見つけたが、その構造がクロロフィルに似ていたため、石油の生物起源を確認する材料になった。ただし、これは「証明した」というより、有力な手がかりが得られたと読むのが適切だろう[6]。

さらに、原油にはステランやホパンといった、細胞膜に由来する分子化石(バイオマーカー)も含まれる。これらは、生物を経由しない成因を考える立場にとって不利な証拠とされる[7]。

こうした状況証拠の積み重ねが、有機成因説の土台になっている。この説は、地質調査所月報の抄録(1950年代)が「支配的な学説」と述べたものである。この説では、石油の端初物質は動植物のセルロース、リグニン、タンパク質、脂肪などとされる[1]。では、実際に材料になる生物は何か。そして、それは海の底まで届くのか。

2. ざいりょうは きょうりゅう? ちいさな いきもの?

2. 石油の材料は、海の小さな生き物 ── 海の底へ沈むあいだに消えていく

2. 材料の主役はプランクトンと藻類 ── 沈降中の分解で減る有機物

せきゆの ざいりょうは、きょうりゅうでは ありません。おもに、うみに ういている ちいさな いきものや、そうるいです[1]。

この ちいさな いきものが しぬと、うみの そこへ しずんで いきます。ところが、しずむ あいだに、ほとんどが ぶんかいされて きえて しまいます。

ある ちょうさでは、ふかさ 400メートルで やく 10ぶんの 1、4000メートルでは 100ぶんの 1に へる と されます[2]。

それなら、どうやって うみの そこに のこるのでしょう。

石油の材料というと、恐竜を思い浮かべる人がいるかもしれません。でも、主役は、海や湖にいたプランクトンや藻類などの小さな生き物の遺骸だと考えられています[1]。

ここに、最初のむずかしさがあります。海の表面近くで作られた有機物は、沈んでいく途中で分解されていきます。ある報告を紹介した資料では、同じ量が作られたとして、深さ400mまで沈むと約10%、4000mではたった1%に減ってしまうとされています[2]。

これは海の中で作られた量が基準で、海の底に届いたぶんがすべて石油になるわけではありません。石油になるのは、さらにその一部です。分解されるのが当たり前の海の中で、材料が残る場所は、どこにあったのでしょうか。

石油の材料は、おもに海や湖に生きたプランクトン・藻類の遺骸である。恐竜が主役という見方は誤解で、有機成因説が想定する材料は、水中の小さな生物の有機物だ[1]。

ところが、水中で作られた有機物は、沈降する間に分解される。地質ニュース487号が紹介するCalvert(1987)の値では、生産量が同じとき、深度400mでは約10%、4,000mではたった1%に減る[2]。ただし、これは水柱を沈む間の減少を示す数字で、「海底に届いた量が石油になる」という意味ではない。堆積後に石油になるのは、さらにその一部にすぎない。

深い海ほど有機物が減るなら、有機物に富む堆積物は、特別な条件の海でできたはずだ。その条件とは何か。

3. おいしい ざいりょうが のこる うみとは?

3. 材料が食べ残される海は、酸素が足りない海だった

3. 底層水の酸素量が鍵 ── 中生代に有機物が濃集した海

うみの そこで ざいりょうが のこる いちばんの わけは、さんそが すくない ことだと かんがえられて きました[2]。

さんそが すくないと、ぶんかいする はたらきが よわく なります。たべものが のこりやすく なる ような ものです。

ただし ほんとうは、ぶんかいを する ものは、いろいろ います。なので、これは、わかりやすく した たとえです。

せきゆは、おおむかし、とくに ちゅうせいだいと いう じだいに できた ものが おおいと いわれます。つぎは、うみの そこに のこった ざいりょうが、どう かわるかを 見て みましょう。

海の底に有機物が残る条件には、生き物の生産量、積もる速さ、海の深さ、海底近くの水に溶けている酸素の量があります。なかでも酸素の量は、最大の因子として取り上げられてきました[2]。酸素が少ない海では、有機物を分解する働きが弱くなり、材料が分解されきらずに残りやすいからです。食べ物が食べ残されるようなものですが、実際の分解は、いろいろな働きが重なって進みます。

そうした海は、世界中のどこでも、いつでもあったわけではありません。世界の石油鉱床の約7割は中生代にできたとされます。残りは約2割が新生代、約1割が古生代です[5]。この割合は百科事典に書かれた数字なので、「約」の目安として読んでください。

中生代には、とくに後期ジュラ紀と中期白亜紀に、有機物に富む層が広がりました。南大西洋の白亜紀の地層では、まわりの海から孤立して海水が入れかわりにくく、酸素の乏しい水がいつもできていたらしい、と考えられています[2]。東京大学の研究紹介でも、約1.5億年前の後期ジュラ紀に海の循環が止まり、世界的に酸素の乏しい海ができたとされています。主題は銅の鉱床ですが、石油の資源が保存されたことにも触れています[3]。

材料が海底に残ったあと、どのようにして石油になるのでしょうか。

石油の根源岩は、有機物に富む海成堆積物であることが多い。堆積物に有機物が残るかどうかは、生産量・堆積速度・水深・海底近くの水の溶存酸素量で決まり、底層水の溶存酸素量は、根源岩形成の最大の因子として取り上げられてきた[2]。

では、そうした海はいつあったのか。世界の石油鉱床の約70%が中生代、約20%が新生代、約10%が古生代に形成されたとされる(百科事典の記述)[5]。

中生代は石油向きの根源岩が堆積した重要な時代で、後期ジュラ紀と中期白亜紀に、有機物に富む層が広く堆積した。南大西洋の白亜系では、周囲の大洋から相対的に孤立して海水循環が妨げられ、貧酸素(ときに無酸素)の海水が定常的にできたらしい。この場合、生物生産が低くても有機物が濃集できたと考えられる[2]。東京大学の発表でも、後期ジュラ紀(約1.5億年前)の海洋循環の停止と全球的な無酸素状態が、海底の鉱物資源とともに石油の保存にかかわったとされるが、主題は銅鉱床で、石油は付随的な言及にとどまる[3]。

有機物が堆積物に残ったとしても、それは石油ではない。液体の油になるには、何が必要なのか。

4. ちかの あつさで、どう かわるの?

4. 地下の熱で、材料がゆっくり油に変わる

4. ケロジェンとオイルウィンドウ ── 熱が足りても強すぎてもだめ

うみの そこに のこった ざいりょうは、つちや すなに うもれて、ちかの ふかい ところへ いきます。ちかは、ふかく なるほど あつく なります。

ざいりょうは、まず ゆぼ(ケロジェン)と いう ものに なります。ここに ながい じかんを かけて ねつが あたると、えきたいの せきゆや、ガスに かわります[5]。

ねつが たりないと、ゆぼの まま。つよすぎると、ガスに なります。せきゆが できる ちょうど いい あつさの はんいを、「オイルウィンドウ」と いいます。

こうして、ながい ながい じかんを かけて、せきゆが できるのです。

海の底に積もった有機物は、さらに土砂に埋もれて地下深くに入っていきます。有機物は、まず油母(ケロジェン)という固体のようなものになります。そこへ地下の熱が長い時間あたると、ケロジェンが液体や気体の炭化水素に変わっていきます[5]。

熱が足りないと、ケロジェンのままです。反対に、熱が強すぎると、液体の油は天然ガスになります。石油ができる温度の幅は、「オイルウィンドウ」と呼ばれます。何度ぐらいかは、地域や時間の長さで変わるので、ひとつの数字では決められません[5]。

アラスカ北部の石油の根源岩を調べたアメリカ地質調査所の報告では、このオイルウィンドウの範囲が、岩を分析室で熱して測る指標で調べられています。ただしこれは実験室の値で、地下の温度そのものではありません[4]。

石油は、材料があるだけでも、熱があるだけでもできません。ちょうどよい場所と時間がそろったときに、ようやくできるのです。

堆積物に残った有機物は、埋没して地下の熱を受けると、まず油母(ケロジェン)となり、熱を長く受けると液体・気体の炭化水素に変わる。温度や時間などの条件が合わなければ、ケロジェンのまま残ることがある。熱を強く受けると、液体の油からガスへ変わる場合がある。油ができる温度の幅がオイルウィンドウである[5]。

温度の値は、条件によって変わる。アラスカ北部の根源岩を調べたUSGSの報告は、オイルウィンドウの入り口を約440℃、出口を約470℃(Rock-Eval熱分解のTmax)としたが、これは分析室の指標であり、地下の温度とは別物である[4]。

このため、地下の温度を一つの数字で語るのは難しい。有機物の供給、酸素の乏しい海での保存、地下の熱の三つがそろう場所と時間が重なって、はじめて石油ができる。では、この「生物由来」の説明に、反対の考えはなかったのか。

5. ほかの かんがえかたは なかったの?

5. 「石油は生き物からではない」という説は、どうなったか

5. 無機成因説の位置づけ ── 主流でなくなった理由

むかし、メンデレーエフと いう ひとは、せきゆは いきものからでは なく、じめんの したの みずと きんぞくから できると かんがえました[1]。

この かんがえは、むかしの ソビエトれんぽうを ちゅうしんに つづきました。でも、20せいきには、いきもの から できたと いう かんがえが しゅりゅうに なりました[1]。

いきものを とおさずに できる ガスや あぶらも、あります。でも、ほとんどの せきゆは、いきもの から できたと かんがえられて います[7]。

石油は生き物からではなく、地下の無機的な反応でできるという説もありました。無機起源説です。メンデレーエフが唱えたとされ、地殻の割れ目から水が入りこみ、金属の炭化物と反応して炭化水素ができる、という考えでした[1]。この説は旧ソ連を中心に続きましたが、20世紀には有機起源説が主流になりました[1]。

生物を介さずにできる炭化水素は存在しますが、商業的に採れる量ではないとされています。無機起源説は、いまの主流の研究者には支持されていません[7]。

その主流を支えるのが、1つ目の章で見た葉緑素に似た分子や、細胞膜に由来する分子化石です。

有機成因説に対しては、無機成因説もある。創始者とされるメンデレーエフによれば、地殻の割れ目を伝って水が金属炭化物を含む塊に入りこみ、水と炭化物の相互作用で炭化水素の混合物ができる[1]。この説は旧ソ連を中心に続いたが、20世紀には有機成因説が主流になった[1]。

非生物的な炭化水素が存在すること自体は否定されない。ただし、その量は商業的に採れる規模ではないとされ、無機起源説は主流学派に支持されていない[7]。無機起源が完全に否定されたというより、ごく一部にとどまる、と読むのが正確だろう。

決め手は、第1章で見た金属ポルフィリンと、ステラン・ホパンなどの分子化石である。これらは生物由来の分子が石油に残る証拠として、有機成因説を支えている[6][7]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おうちに ある プラスチックの ものを さがして みましょう。ポリぶくろや ペットボトルなど、せきゆから つくられる ものが あります。そのもとは おおむかしの うみに いた いきもの かも しれません、と かんがえて みると おもしろいです。

出かけてできること

としょかんで、ちそうや かせきの ほんを さがして みましょう。うみが さんそが たりなく なった じだいの はなしが のって いるかも しれません。

こうしきの 情報じょうほう

さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうしょの ちしつちょうさそうごうセンターの ホームページに、せきゆの できかたの はなしが のって います。

今日できること

家の中の、プラスチックでできたものを探してみましょう。ポリ袋やペットボトルなど、石油から作られるものがあります。それが、大昔の海の生き物から始まっているかもしれないと考えると、見え方が変わります。

出かけてできること

図書館で、地層や化石、石油の本を探して、「酸素の少ない海」や「中生代」について書かれた部分を読んでみましょう。

公式情報

産業技術総合研究所の地質調査総合センターのホームページに、地質や資源の解説があります。この記事で使った「地質ニュース」も、そこで読めます。

今日できること

身の回りの石油製品(ポリ袋・ペットボトルなど)を挙げ、そのもとが、大昔の海の有機物にさかのぼることを、この記事で見た条件と対応させて説明してみる。

出かけてできること

図書館で、堆積学・石油地質学の入門書を探し、有機物が残る条件と、油が移動してたまる条件の説明を比べてみる。

公式情報

産業技術総合研究所地質調査総合センターの「地質ニュース」487号(1995年)には、根源岩形成と地球環境の変遷が書かれている。1995年の資料のため、数字は新しい教科書でも照合したい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

石油の成因は地質調査機関の資料を中心に、百科事典の記述を補助として使った。数字は、資料に書かれた範囲のものだけを使い、原典を読むと細部が分かる。

  1. 地質調査所月報7巻9号「石油成因学説のProtonaphthaについて」(抄録) https://www.gsj.jp/data/bull-gsj/07-09_06.pdf (有機成因説・無機成因説の説明)
  2. 地質ニュース487号「地球環境の変遷と石油天然ガス根源岩の形成」(1995) https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/95_03_02.pdf (根源岩・酸素・中生代・沈降中の有機物の減少)
  3. 東京大学 UTokyo FOCUS「別子型鉱床の形成と海洋無酸素事変」 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/a_00163.html (後期ジュラ紀の海洋無酸素の研究紹介)
  4. USGS Open-File Report 03-328 (2003) https://pubs.usgs.gov/of/2003/0328 (オイルウィンドウの分析値)
  5. Wikipedia: Petroleum https://en.wikipedia.org/wiki/Petroleum (ケロジェンとオイルウィンドウ、鉱床の年代の割合)
  6. Wikipedia: Alfred E. Treibs https://en.wikipedia.org/wiki/Alfred_E._Treibs (ポルフィリンの発見)
  7. Wikipedia: Abiogenic petroleum origin https://en.wikipedia.org/wiki/Abiogenic_petroleum_origin (分子化石・無機起源説の位置づけ)

なおした ところ

更新履歴

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