ピアノは、なにの なかまの がっきなの?

ピアノは、弦楽器なのか打楽器なのか

ピアノの分類・仕組み・歴史 ── 打弦楽器としての位置づけと、88鍵・作曲家・ピアニストの指の速さ

分野:歴史・文化

ピアノは、げんを ハンマーで たたいて 音を だす がっきです。ピアノは、げんがっきなのでしょうか。それとも、たたく がっきなのでしょうか。

このメモでは、ピアノの しくみと むかし、けんばんの 数、にた がっきとの ちがいを、しらべた ことから 見て いきます。

ピアノは、弦をハンマーで叩いて音を出します。弦楽器なのでしょうか。打楽器なのでしょうか。鍵盤はなぜ88あるのでしょうか。ピアニストは、なぜあんなに速く指を動かせるのでしょうか。

このメモでは、ピアノの分類と仕組み、歴史、鍵盤の数、曲が多い理由、似た楽器とのちがい、指の速さの研究を、公開されている資料で確かめます。

ピアノは、弦をハンマーで叩いて発音する鍵盤楽器で、打楽器と弦楽器の両方の特徴をもつ「打弦楽器」に分類されます。楽器の分類は、見る角度によって、ひとつの楽器が複数の呼び名をもちます。

このメモでは、ピアノの分類と仕組み、クリストフォリによる発明から19世紀の改良、日本への導入までの歴史、88鍵になった経緯、曲が多い理由、チェンバロやオルガンとのちがい、指の速さを調べた研究を、百科事典的な解説と論文の要旨で確かめます。資料によって食いちがうことは、そう書きます。

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1. ピアノは、げんがっきなの?

1. ピアノは、弦楽器でもあり、打楽器でもある

1. 楽器の分類 ── 弦鳴楽器であり、打弦楽器でもあるピアノ

ピアノの 中には、げんが たくさん はって あります。ハンマーが その げんを たたくと、音が でます。

げんが ふるえて 音が でるので、げんがっきの なかまです。でも、たたいて 音を だすので、たたく がっきの なかまでも あります。がっきの わけかたは、1つとは かぎりません。

弦を叩く鍵盤楽器

ピアノは、弦をハンマーで叩いて音を出す鍵盤楽器です。打楽器と弦楽器の両方の特徴をもつので、「打弦楽器」に分類されます。中には、ミュージックワイヤーという特別な鋼の弦が、200本以上も張られています[1]

音の出し方で分けると

鍵盤楽器を、音の出し方で分けると、次のようになります。ピアノは、クラヴィコードやチェンバロと同じ「弦鳴楽器」(弦を振動させて音を出す)です。オルガンやアコーディオンは、空気の振動で音を出す「気鳴楽器」、チェレスタは楽器本体が振動する「体鳴楽器」、シンセサイザーや電子ピアノは「電子楽器」です[2]

つまり、ピアノは弦楽器の仲間で、叩いて鳴らすところは打楽器に近い、というのが答えです。では、その仕組みはどうなっているのでしょうか。

ピアノは、弦をハンマーで叩くことで発音する鍵盤楽器で、内部機構の面からは、打楽器と弦楽器の特徴を併せもつ「打弦楽器」に分類されます[1]。音の出し方で鍵盤楽器を分けると、ピアノはクラヴィコード・チェンバロと同じ弦鳴楽器(弦を振動させる)にあたり、オルガン・アコーディオン・鍵盤ハーモニカは気鳴楽器(空気の振動)、カリヨン・チェレスタ・トイピアノは体鳴楽器(本体の振動)、シンセサイザー・電子ピアノは電子楽器に整理されます[2]

このように、分類は「何を振動させるか」(弦鳴)と「どう鳴らすか」(打弦)という、別々の見方から行われます。ピアノは、弦鳴楽器のなかの、打って鳴らす打弦楽器だ、と整理できます。では、その仕組みは、どうなっているのでしょうか。

2. けんばんを おすと、なかで なにが おきるの?

2. 鍵盤・ハンマー・弦・ダンパー・ペダル

2. 打弦の仕組み ── ハンマー、ダンパー、ペダル3本

けんばんを おすと、ハンマーが うごいて、げんを たたきます。ゆびを はなすと、ダンパーと いう ぶひんが げんを おさえて、音が とまります。

ハンマーは、たいこの ばちの ような ものです。ただし ほんとうは、ばちより ずっと 小さく、フェルトで できて います。グランドピアノの あしで ふむ ペダルは、3本 あります。ペダルを ふむと、音の ひびきが かわります。

むかしの チェンバロと いう がっきは、げんを はじいて 音を だしました。ピアノは、たたく ちからで、大きい 音や 小さい 音を だせるのが ちがいです。

鍵を押すと、ハンマーが弦を叩く

鍵を押すと、それと連動したハンマーが弦を叩きます。ダンパーは、鍵を押しているとき以外は、弦の振動をおさえて、音を消す部品です。グランドピアノには、ダンパーペダル、ソフトペダル、ソステヌートペダルの3本のペダルがあります[1]

チェンバロとのちがい

ピアノの前に使われていたチェンバロは、鍵を押すと、ジャックという部品が上がり、その先の爪(プレクトラム)が弦を下から上にはじいて、音を出します。音の大きさは、鍵を打つ強さにほとんど頼りません[4]

いっぽうピアノは、鍵を押す強さで、音の大きさや音色を変えられます[6]。ピアノの名前も、ここから来ています。では、そのピアノは、いつ、誰が作ったのでしょうか。

ピアノの主要な部品は、鍵に連動して弦を叩くハンマー、弦(ミュージックワイヤーと呼ばれる鋼線で、200本を超える)、打鍵時以外は弦の振動を常に抑えるダンパー、そしてペダルです。グランドピアノのペダルは3本で、ダンパーペダル・ソフトペダル・ソステヌートペダルなどがあります[1]

比較として、チェンバロは、鍵を押すとジャックが上がり、プレクトラム(かつては鳥の羽軸、現代はデルリン製)が弦を下から上にはじいて発音します。鍵盤楽器のなかでは弦をはじく撥弦型で、音量は打鍵の強弱にほとんど依存せず、強弱表現には限界があります。代わりに、レジスター操作で音色を段階的に切りかえます[4]

英語版Wikipediaは、ピアノは鍵を押す強さの加減で、音量と音色に段階をつけられる点が、作曲家にとって革命的だった、と説明しています[6]。この特徴が、「ピアノ」という名前の由来につながります(次章)。

3. ピアノは、いつ 生まれたの?

3. 1700年ごろのイタリアで生まれ、19世紀に今の形になった

3. 歴史 ── クリストフォリ(1700年ごろ)から、19世紀の改良、日本への導入まで

ピアノは、いまから 300ねん ほど まえの、イタリアで うまれた と かんがえられて います。つくった 人は、クリストフォリと いう 人です。

はじめは、いまの ピアノと ちがう ところが たくさん ありました。200ねん ほど まえから、少しずつ よく なって、いまの かたちに ちかづきました。

日本には、200ねん ほど まえに、外国の 人が もって きた のが はじめて だと いわれます。

クリストフォリの発明

ピアノは、イタリアのバルトロメオ・クリストフォリが発明したと考えられています。フィレンツェのメディチ家の楽器の目録に、1700年に「強くも弱くも鳴る」楽器として載っているのが、最初の信頼できる記録です。この目録の書き方から、「ピアノ」という言葉が生まれました[3]。現存する最古のピアノは、1720年に作られたものです[3]

19世紀の改良

1790年ごろから1860年ごろにかけて、ピアノは、モーツァルトの時代の楽器から、いまのピアノに近い形へ、大きく変わりました[1]。1821年には、速い連打がしやすい「ダブル・エスケープメント」が開発され、1825年ごろには、鉄のフレームの特許が取られました[1]

日本のピアノ

日本には、1823年にシーボルトがピアノを持ちこんだ、と伝えられ、山口県萩市の熊谷美術館に、そのピアノが残っています。初の国産ピアノは、1900年に日本楽器製造(のちのヤマハ)が作りました[1]

ピアノは、時代とともに形が変わってきました。鍵盤の数も、昔といまでちがいます。では、なぜ今の数になったのでしょうか。

バルトロメオ・クリストフォリは、1655年にパドヴァで生まれ、1731年または1732年(資料により年がちがいます)にフィレンツェで亡くなりました。1688年に、フェルディナンド・デ・メディチ大公子に雇われて、フィレンツェで楽器の製作・修復にあたりました[3]。ピアノについての最初の信頼できる記録は、1700年のメディチ家の楽器目録です。目録には、「新しい発明で、ピアノ(弱く)もフォルテ(強く)も出せる」という意味の書き方(arpicembalo…che fa il piano e il forte)があり、現在の「ピアノ」という語は、この表記から派生しました。1698年とする説は、いまは信憑性が疑われています[3]。この章の年号や数字は、日本語版Wikipediaの記述で、原資料までは確かめていません。

クリストフォリの設計では、鍵の動きが中間のレバーで、ハンマーへ約8倍の大きさに伝えられ、ハンマーが弦にはね返ったあとで再び弦に当たらないための「チェック」機構がありました。現代のピアノは、この基本設計を受けついでいます。現存する最古のピアノは、1720年製(ニューヨークのメトロポリタン美術館、54鍵)、1722年製(ローマのイタリア国立楽器博物館)、1726年製(ライプツィヒ大学の楽器博物館)です。1711年には、マッフェイが、ヴェネツィアの雑誌でこの楽器を紹介し、一部の専門家が、この発明に十分な称賛を与えていないと書きました。当時は、音が「柔らかすぎ、鈍い」という評価もあったようです[3]

1790年ごろから1860年ごろにかけて、ピアノは、モーツァルトの時代の楽器から、いわゆるモダンピアノへと、劇的に変わりました。この間に、素早い連打ができる仕組み(1821年、エラールのダブル・エスケープメント・アクション)、鉄のフレーム(1825年のバブコックの特許、1843年のチッカリング社のグランドピアノ用の特許)、フェルトのハンマー(1826年)などが、次々に導入されました。1872年には、テオドール・スタインウェイが、デュープレックス・スケールの特許を取っています[1]。開発と特許の区別や、対象のピアノ(グランドかスクエアか)は、資料によって説明の精度がちがいます。

日本では、1823年にフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトがピアノをもたらした、とされ、山口県萩市の熊谷美術館に、日本最古のピアノ(スクエア・ピアノ)が現存します。1900年に、日本楽器製造(のちのヤマハ)が作った「カメンモデル」の第1号が、初の国産ピアノとされます。ヤマハと河合楽器製作所(カワイ)は、日本の2大メーカーとされます[1]。この章の内容は、日本語版Wikipediaにたよっていて、原資料までは確かめていません。

ピアノの構造は、このように時代とともに変わってきました。鍵盤の数も、昔とちがいます。では、なぜいまの88という数になったのでしょうか。

4. けんばんは、どうして 88こ なの?

4. 88鍵は、19世紀後半から少しずつ標準になった

4. 鍵盤の数の変遷 ── 54鍵・5オクターブから、88鍵の標準化まで

いまの ピアノの けんばんは、88こ です。白い けんばんが 52こ、くろい けんばんが 36こ です。

むかしの ピアノは、けんばんが もっと 少なく、少しずつ ふえて きました。どうして 88こに なったのか、はっきりした わけは、わかって いません。人の 耳で 音と かんじられる はんいの かぎりだから、と いわれる ことも あります。

いまの88鍵

いまのふつうのピアノは、白鍵52、黒鍵36の、あわせて88鍵です。いちばん低い音のAから、いちばん高い音のCまで、7オクターブと短3度の広さです[1]

昔は、もっと少なかった

クリストフォリの1720年のピアノは54鍵でした[3]。モーツァルトの時代のピアノは5オクターブほどで、19世紀のあいだに、いまの7オクターブ以上に広がりました[6]。古いピアノには、85鍵のものも多く、92鍵や97鍵のピアノを作ったメーカーもあります[1]

なぜ88鍵になったのか

88鍵は、19世紀後半ごろから作られはじめ、第一次世界大戦のあとに標準になりました。「人間が音として聞き分けられる範囲の限度だから」という説明もありますが、「といわれている」という書き方で、確かな理由は分かっていません[1]

標準的なモダンピアノは、黒鍵36と白鍵52の計88鍵で、A0からC8まで、7オクターブと短3度に及びます。88鍵が標準になったのは、この音域が楽音として人間が認識できる限度であるためだ、といわれています[1]。ただ、この説明は「いわれている」という書き方で、標準になった確定した理由ではなく、原資料までは確かめていません。

88鍵は、19世紀後半ごろから作られはじめ、第一次世界大戦後に標準となりました。古いピアノには85鍵(A0からA7の7オクターブ)のものも多く、88鍵を超える楽器も存在します。92鍵や97鍵のモデルを製造したメーカーもあります[1]。クリストフォリの現存する最古のピアノ(1720年)は54鍵です[3]。英語版Wikipediaは、ピアノの音域が、モーツァルトの5オクターブから、19世紀のあいだに、いまの7オクターブ以上へ大きく広がった、と書いています[6]

つまり、88という数は、設計で一度に決まったというより、19世紀の改良の中で音域が広がり、19世紀後半から20世紀にかけて標準になったもの、と整理できます。では、こうして広がった音域や機能を、作曲家たちは、どう使ったのでしょうか。

5. どうして ピアノの きょくは、こんなに 多いの?

5. 作曲家たちが、進化するピアノに合わせて曲を書いた

5. レパートリーの広がり ── 強弱表現、音域の拡大、ペダル、家庭への普及

ピアノは、大きな 音も 小さな 音も 出せます。ペダルを ふむと、音を つなげる ことも できます。だから、さっきょくかの 人たちが、ピアノの ための きょくを たくさん 書いた、と かんがえられて います。

いえに ピアノが ふえると、かぞくが きょくを ひいて、みんなで 聞く ことも できるように なりました。

強弱と音域と、ペダル

ピアノは、鍵を押す強さで音の大きさを変えられ、音域が19世紀に広がり、ペダルで音をつなげたり重ねたりできます[6]。これが、作曲家にとって、それまでの鍵盤楽器にはなかった大きな魅力でした。

作曲家とピアノ

モーツァルトは、ウィーンのフォルテピアノのために協奏曲やソナタを書き、ベートーヴェンは、ブロードウッド社のピアノの、5オクターブを超える音域を活かしました。ショパンはプレイエル社のピアノと結びつけて語られ、リストは、速い連打ができるダブル・エスケープメントをもつエラール社のピアノを使った一人として紹介されます[6]。ただ、作曲家が使った楽器は1つのメーカーだけではなく、1対1の対応ではありません。

家庭に広まった

ピアノが安くなると、家庭に広まりました。新しく出版された曲を、家族のひとりが簡単な楽譜で弾いて、みんなで聴くことも、できるようになりました[6]

ピアノの曲が全部でいくつあるのかを、数えた資料は、確かめられませんでした。ただ、こうした理由が重なって、たくさんの曲が書かれたと考えられます。では、ピアノに似た楽器は、どうちがうのでしょうか。

ピアノが作曲と演奏の中心になった理由として、鍵を押す強さで、音量と音色に段階をつけられること、音域が、モーツァルトの5オクターブから、いまの7オクターブ以上へ、19世紀に広がったこと、ペダル(とくにサステインペダル)で、音を「つなげて重ねる」表現ができ、ロマン派の音楽に欠かせなくなったこと、が挙げられます[6]

作曲家と楽器の関係として、モーツァルトは、ウィーンのフォルテピアノのために協奏曲やソナタを書き、ベートーヴェンは、ブロードウッドのピアノの5オクターブを超える音域を活かし、ショパンはプレイエルの楽器と結びつけて語られ、リストは、素早い連打を可能にするダブル・エスケープメント・アクションをもつエラールのピアノを使った、と紹介されています[6]。ただし、作曲家が使った楽器は複数のメーカーにわたり、1対1の対応ではありません。また、ピアノが手ごろな値段になると、家庭に広がり、新しい曲を、簡単にした楽譜で家族のひとりが弾いて、みんなで聴けるようになりました[6]

ただし、ピアノの曲が全部でいくつあるのか、なぜほかの楽器より多いのか、を直接に調べた資料は、確かめられませんでした。ここでの説明は、上の資料が挙げる理由を、このメモが整理したものです。では、ピアノに似た楽器とのちがいは、どこにあるのでしょうか。

6. にた がっきは、なにが ちがうの?

6. グランド・アップライト・電子ピアノ、チェンバロ、オルガンのちがい

6. 見た目の似た楽器 ── ピアノの種類、チェンバロ、オルガン、電子楽器

ピアノには、よこに ながい「グランドピアノ」と、たてに ながい「アップライトピアノ」が あります。でんきで 音を だす「電子ピアノ」も あります。

オルガンは、空気で 音を だす がっきです。けんばんを おして いる かぎり、音が つづきます。ピアノは、ゆびを はなさなくても、音が だんだん 小さく なります。

ピアノの種類

グランドピアノは、フレームと弦を水平に置いた形で、大きさによって、コンサートグランド、パーラーグランド、ベビーグランドに分けられます。アップライトピアノは、フレームと弦を垂直に置くので、場所をとりません。電子ピアノは、物理的な音源を使わず、電子回路で音を作り出します[1]

ピアノに似た鍵盤楽器

チェンバロは、弦をはじく楽器で、強弱がつけにくく、18世紀の後半に、ピアノが広まると、主流の座を失いました[4]

オルガンは、空気をパイプに送って音を出す楽器で、鍵を押している間は音が続きます。ピアノは、鍵を離すと、音が弱まります。オルガンには、足で弾く鍵盤もあります[5]

キーボード(シンセサイザーなど)は、電気で音を作る電子楽器です[2]。学校で使う鍵盤ハーモニカは、空気の振動で鳴る気鳴楽器です[2]

ここまでは、楽器の側の話でした。では、演奏する人の側、ピアニストは、どうしてあんなに速く指を動かせるのでしょうか。

ピアノと、見た目の似た楽器の音の出し方
楽器音の出し方(分類)特徴
ピアノ弦をハンマーで叩く(弦鳴楽器・打弦)打鍵の強さで音量が変わる。離すと音が減衰
チェンバロ弦をはじく(弦鳴楽器・撥弦)打鍵の強弱に頼らない。レジスターで音色を切りかえる
オルガンパイプに空気を送る(気鳴楽器)鍵を押す間は音が続く。足鍵盤やストップがある
電子ピアノ・シンセサイザー電子回路で音を作る(電子楽器)サンプリング方式が主流(電子ピアノ)

ピアノの種類は、グランドピアノ(フレームと弦を水平に置く。コンサートグランド・パーラーグランド・ベビーグランド)、アップライトピアノ(垂直に置き、場所をとらない)、電子ピアノ(電子回路で音を作り出す。サンプリング方式が主流)に分けられます[1]。チェンバロは、最古の文献が1397年で、18世紀後半にピアノの興隆で主流の座を失ったとされます[4]。オルガンは、加圧した空気を、鍵盤で選んだパイプへ送って発音し、紀元前264年ごろに、アレキサンドリアのクテシビオスが水オルガンを発明した、とされます[5]。電子オルガンは、電子音響で音を作ります[5]

ここまでは、楽器の側の話でした。では、演奏する人の側、ピアニストの指の速さは、どう調べられているのでしょうか。

7. ピアニストの ゆびは、どうして はやいの?

7. 指の速さを調べた研究 ── 長い練習と、動きの効率

7. 指の速さの研究 ── モーションキャプチャ、指の独立制御、ロボット外骨格

ピアニストは、1びょうの あいだに、7から 16この 音を ひく ことが あると、しらべた けんきゅうが あります。

ながい あいだ れんしゅうします。すると、ゆびの うごかしかたが じょうずに なり、それが はやさに つながる、と かんがえられて います。ただし、どうして はやく ひけるのかは、ぜんぶは わかって いません。

1秒に7〜16音

2013年の研究で、上級のピアニスト12人に、5音のメロディをとても速いテンポで弾いてもらい、指や手、腕の動きを、3次元のモーションキャプチャで記録しました。速さは、1秒に7〜16音でした[7]

指先の上下の動きには、指の付け根の関節が、いちばん大きく関わっていました。動きが効率的なピアニストほど、タイミングと力の正確さも高かった、と報告されています[7]

速くなっても、指は別々に動く

2012年の研究では、5人のピアニストに、30の曲の抜粋を、ふつうの速さと、いちばん速い速さで弾いてもらいました。速くなっても、指の動かし方の組み合わせは、ふつうの速さのときと同じように保たれていて、指を独立して動かす力が、テンポで変わらないことが分かりました。この性質は、熟練したピアニストに特有かもしれない、とされます[8]

ロボットの手で、速く弾けるように

2025年には、ロボットの手袋のような装置(外骨格)を、118人のピアニストにつけてもらい、速いピアノの練習に近い指の動きを、装置が動かして訓練させました。すると、片手だけでも、両手で速く弾けるようになり、脳の運動をつかさどる部分にも変化があった、と報道されています[9]。まだ実験段階の研究で、一般の練習にすぐ使えるものではありません。

つまり、指の速さには、動きの効率や、指を別々に動かす力が関わっている可能性があります。ただし、なぜそうなるのかは、研究が続いています。

熟練したピアノ演奏には、プロの音楽家が数十年の練習で身につける、高いタイミングと力の精度が必要で、とくに指の動きの効率が、とても速いテンポで弾くときの鍵になる、と考えられています。2013年のGoebl・Palmerの研究(PLOS ONE)では、高い技能をもつピアニスト12人に、5音のメロディを、極めて速いテンポ(1秒に7〜16音)で弾いてもらい、指や手の動きを3次元のモーションキャプチャで記録しました。指先の上下の動きには、指の付け根の関節(中手指節関節)がいちばん大きく関わり、指の関節の使い方が効率的な人ほど、タイミングも力も正確でした[7]

2012年のFuruya・Soechtingの研究(Journal of Neurophysiology)では、ピアニスト5人に、30の曲の抜粋を、ふつうのテンポと最速のテンポで弾いてもらい、指の関節の動きを記録しました。各指が打鍵するときの動きの組み合わせは、2つのテンポで全体的に似ていて、打鍵する指としない指のあいだの動きの連動や、打鍵の間隔のばらつきにも、テンポによる差はありませんでした。つまり、速く弾いても、指を独立して動かす力は変わらなかった、ということです。強い時間的な制約が、この独立した制御を広いテンポで保つ助けになっている可能性があり、これは熟練したピアニストに特有かもしれない、と考えられています[8]

報道によると、ソニーコンピュータサイエンス研究所などの研究チーム(古屋晋一ほか)が、2025年1月にScience Robotics誌で報告した実験で、外骨格ロボット(指の付け根の関節を曲げ伸ばしする装置)が、速く複雑な指の動きを引き出すことで、118人の訓練を積んだピアニストの、とくに速く弾く力を高めた、とのことです。まだ実験段階の研究で、一般の練習にすぐ使えるものではありません。訓練した片手だけでなく、両手で改善が見られ、運動野の検査で、脳の可塑的な変化も確認されたとされます[9]

ただし、これらは、限られた人数の、条件の決まった実験です。「なぜプロのピアニストは、あのように速く弾けるのか」の全体を説明する資料は、確かめられませんでした。上の研究は、指の付け根の関節の使い方の効率、テンポによらない指の独立制御、数十年の練習、という手がかりを示しています。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

ピアノが ある ところで、けんばんの 数を かぞえて みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • ピアノの ふたを あけて、なかを 見せて もらう。ハンマーと げんが 見える ことが あります。学校や おんがくきょうしつの 先生に、きいて みましょう。
メモの すすめ

きょう 知った ことを ひとつ だけ ノートに 書いて おきましょう。「ピアノの けんばんは 88こ」だけでも いいです。

このメモの内容は、公開されている資料や、身近な楽器で確かめられます。

今日できること

  • ピアノや電子ピアノの鍵盤の数を、数えてみる。88鍵かどうか、白鍵52・黒鍵36かを、確かめてみましょう[1]
  • 音楽室や楽器店で、グランドピアノとアップライトピアノを見くらべる。弦とハンマーの向きのちがいが分かります。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「ダンパー」や「打弦楽器」だけでも十分です。

このメモは、Wikipediaにたよっている部分が多く、原資料にあたっていません。指の速さの研究は、要旨だけを確かめています。原資料にあたる入口にしてください。

手を動かして確かめる

  • 88鍵の理由の出どころを探す。「人間が音として認識できる限度」という説明が、どの資料に、どんな根拠で書かれているかを、楽器の歴史の専門書や、メーカーの資料で探してみましょう。
  • Goebl・Palmerの論文の図を見る。指の関節の角度が、テンポによってどう変わるかを、論文の図で確かめられます[7]
  • クリストフォリの1700年の目録の書き方を調べる。「ピアノ」という言葉が、どの表記から生まれたかを、目録の翻刻や解説で確かめましょう[3]
メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「1700年、メディチ家の楽器目録」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:日本語版・英語版Wikipediaと、研究論文の要旨、研究成果を伝える報道記事を使いました。楽器の歴史の一次資料や、楽器メーカーの資料は、確かめられていません。英語の資料は、内容を日本語で説明しています。このメモは、これらの団体のものではなく、個人のまとめです。

  1. 日本語版Wikipedia「ピアノ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ (ピアノの分類、仕組み、歴史、鍵盤の数、種類、日本での歴史)
  2. 日本語版Wikipedia「鍵盤楽器」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/鍵盤楽器 (鍵盤楽器を音の出し方で分けた説明)
  3. 日本語版Wikipedia「バルトロメオ・クリストフォリ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/バルトロメオ・クリストフォリ (ピアノの発明、1700年の目録、現存する最古のピアノ)
  4. 日本語版Wikipedia「チェンバロ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/チェンバロ (チェンバロの発音のしくみと歴史、ピアノとの関係)
  5. 日本語版Wikipedia「オルガン」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/オルガン (オルガンの発音のしくみ、ピアノとのちがい)
  6. Wikipedia(英語版)「Piano」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Piano (ピアノが作曲の中心になった理由、作曲家と楽器。英語の資料)
  7. Goebl, W. & Palmer, C. (2013). Temporal control and hand movement efficiency in skilled music performance. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0050901 (熟練ピアニストの指の動きを調べた論文の要旨。英語の資料)
  8. Furuya, S. & Soechting, J. F. (2012). Speed invariance of independent control of finger movements in pianists. Journal of Neurophysiology. https://doi.org/10.1152/jn.00378.2012 (テンポと指の独立制御の関係を調べた論文の要旨。英語の資料)
  9. TechXplore「Use of robotic hand exoskeleton helps pianists improve their playing speed」(2025年1月)。 https://techxplore.com/news/2025-01-robotic-exoskeleton-pianists-playing.html (Science Robotics誌の研究(DOI 10.1126/scirobotics.adn3802)を伝える報道。論文そのものは確かめていない。英語の資料)

なおした ところ

更新履歴

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