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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ギプスは ほねを くっつけて いるの?

ギプスは骨をつなげていない? 折れた骨を守る道具と、石膏包帯が生まれるまで

ギプスは骨を接合しない:仮骨を守る固定の理由と、デンプン包帯から石膏包帯(1851年)への進歩

分野:からだ

ギプスは、おれた ほねを くっつけて いる わけでは ありません。ほねは、自分の 力で つながります。ギプスは、その あいだ、おれた ところを うごかさないように 守って います[2]。

では、なぜ うごかさないと いけないのでしょう。そして むかしの 人は、どうやって 手や 足を かためて いたのでしょう。この メモでは、その わけと、1851年に おいしゃさんが 数分で かたまる せっこうの ほうたいを つかった はなしが わかります。

ギプスは、折れた骨を接着剤のようにくっつけているわけではありません。骨は自分の力でつながっていきます。ギプスの役目は、その間、折れた所を動かさないよう守ることです[2]。

では、動かさないことが、なぜ治すことになるのでしょうか。そして昔の人は、どんな材料で手足を固めていたのでしょうか。この記事では、骨が自分でつながる道すじと、マテイセンが1851年に数分で固まる石膏の包帯を使った経緯が分かります。

ギプスは、折れた骨を接合する装置ではなく、骨が自力で癒合する間、折れた部位を動かさず守る道具である。折れたあと最初にできるやわらかい仮骨は、支えが足りないと変形しうる[2]。

では、固定は何を防ぐのか。固定材料は、乾くのに1日以上かかるものから、1851年に水にひたして数分で固まる石膏の包帯へどう変わったのか。この記事では、骨の治り方の段階と、固定の道具が進んだ理由が分かる。

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1. ギプスが くっつけて いないなら、だれが ほねを なおすの?

1. ギプスが骨をつなげていないなら、折れた骨はどうやって治るのか

1. 骨折の治癒は4つの段階:血のかたまりから仮骨、そして形の整え直しへ

ほねが おれると、中の 血の くだも きれて、血が たまります。これが 血の かたまりです。ここから、ほねの 自分で なおす しごとが はじまります[2]。

つぎに、おれた ところの まわりに、やわらかい ほねの かたまりが できます。これを「かこつ」と いいます。やわらかい かこつが、だんだん かたい ほねに かわって いきます[1][2]。

さいごに、できた ほねは、うごいたり 体が 大きく なったり するのに 合わせて、長い 時間を かけて 形が ととのえられます。かかる 時間は、1日や 2日では ありません。数か月から 数年かかる ことも あります。ただし これは 目安で、場所や 年れいで かわります[2]。

つまり なおして いるのは、ギプスでは なく、ほね自身です。それなら、ギプスは なにを して いるのでしょう。

骨が折れると、骨の中を通る血管も切れて、折れ目に血がたまります。この血のかたまり(血腫)が、治りのはじまりです。そのあと、骨の両端のまわりに、仮骨という厚いかたまりができます[2]。

整形外科の解説では、骨折の治りは、炎症、膜性骨化、軟骨形成、軟骨内骨化、リモデリングという段階が、少しずつ重なりながら進むとされています[1]。むずかしい名前ですが、血のかたまりから、やわらかい仮骨ができ、それがかたい骨に置きかわっていく流れだと考えると、つかめます。

最後のリモデリングは、動きや外からの力、成長に合わせて、骨の形を整え直す段階です。目安として、炎症の時期が数時間から数日、仮骨ができる時期が数日から数週間、リモデリングが数か月から数年とされます。仮骨はレントゲンでは7〜10日ほどで見え始めます。ただし、部位や年齢で変わる目安です[2]。

治しているのは、骨自身です。それなら、ギプスの出番は、どこにあるのでしょうか。

骨折が起きると、骨の中の血管が断たれて骨折部に血腫ができる。炎症期の次に、骨の両端の周囲に厚い仮骨が形成され、さらに時間をかけて、荷重や外力、成長に応じて形が整えられる。これがリモデリングである[2]。

整形外科の総説は、この過程を、炎症、膜性骨化(まくせいこっか)、軟骨形成、軟骨内骨化(なんこつないこっか)、リモデリングと整理し、それぞれが段階的に、しかも重なり合いながら進むと述べる[1]。つまり「炎症→修復→再構築」は、きれいに区切れる順番ではない。

目安の期間は、炎症期が数時間〜数日、修復期が数日〜数週間(仮骨は単純X線で7〜10日ごろから見え始める)、リモデリングが数か月〜数年である。ただしこれは小児骨折の教育資料の目安で、部位と年齢で変わる[2]。

骨折の治癒の主役は、あくまで骨自身の反応である。では、この過程の中で、外から固定することは何を防いでいるのか。

2. なぜ ほねが つながるまで、うごかしては いけないの?

2. 骨がつながるまで、なぜ動かしてはいけないのか

2. 固定の理由:やわらかい仮骨の可塑性と、固定期間・手術との線引き

はじめに できる かこつは、やわらかく、ねんどのように 形が かわりやすい ものです。ささえが たりないと、まがったり ゆがんだり することが あると いいます[2]。

むかしから ある 木の 「そえ木」を 思いうかべて ください。おれた 木の えだに そえ木を して、つながるまで まつ やり方に にています。ただし、ほんとうは ちがいます。木と ちがって、ほねは 自分で 新しい ほねを つくって、つなぎ直す 生きた ものです。ギプスは、その しごとを じゃましないように、まわりを かためて 守る のです。

手首から ひじの あたりの ほねを おった ときは、ほねが かたまるまで、やく 1か月は ギプスなどで かためる ことに なると、せつめい されて います[3]。これは 手首や ひじの 場合の れいで、ほかの ところは かわります。

また、ずれが 小さい とき、または 手で もとの 場所に もどせて ギプスで たもてる ときは、しゅじゅつを しなくても なおせます。ずれが 大きかったり、もどしても ぐらぐらする ときは、しゅじゅつが ひつようです[4]。

さて、人は いつごろから、おれた 手や 足を かためて いたのでしょう。

初期のやわらかい仮骨は、変形しやすい性質(可塑性)をもっています。折れた所を十分に支えないと、仮骨は変形したり、曲がったりすることがあります[2]。固定の理由の一つが、ここにあります。

庭の植物にそえ木を立てて、枝が育つのを待つ作業を思い浮かべると、近い面があります。ただし骨は、枝とちがって生きていて、自分で新しい骨をつくって折れ目をつなぎ直します。ギプスはその仕事を代わりにするのではなく、仕事の邪魔にならないよう、まわりを固めて守っています。

固定する期間は、部位で変わります。手首から肘のまわりの骨折では、骨が固まる(骨癒合)まで、約1か月は固定することになる、という説明があります[3]。これは一つの例で、すべての部位の期間ではありません。

固定だけで治せるかどうかは、折れ方で決まります。ずれがない、または手で元の位置に戻せて(整復)、ギプスなどの外固定で保てるなら、手術なしで治せます。ずれが大きい、関節の面がつぶれている、戻しても不安定、という場合は手術が必要になります[4]。

骨が自分でつながるのを守る、という考え方は、いつごろからあったのでしょうか。

初期の軟性仮骨は可塑性があり、骨折部が十分に支えられていないと、容易に変形したり屈曲したりする[2]。ここに、外固定の理屈の一つがある。固定は骨を「接ぐ」のではなく、仮骨がゆがむのを防いで、癒合を正しい位置で進ませる手段である。

植物の添え木にたとえると近い面がある。ただし骨は生きた組織で、自ら新生骨をつくって折れ目をつなぎ直す点が決定的にちがう。固定は、その過程を肩代わりするのではなく、妨げないよう外側を支えている。

固定期間は部位で異なる。手関節〜肘周囲の骨折では、骨癒合まで約1か月の固定とされる例がある[3]。これは上肢の例であり、全部位に当てはまる数字ではない。

固定だけで足りるかは、整復後の安定性による。転位がない、または徒手整復で元の位置に戻り、ギプスなどの外固定で保てるなら保存的に治る。転位が大きい、関節面が陥没している、整復しても不安定な場合は手術の適応になる[4]。ただしこの記述は一般向けの医療情報サイトのもので、実際の判断は医師が診察で行う。

では、固定する道具そのものは、いつから、どんな材料で作られてきたのか。

3. むかしの 人は、なにで 手や 足を かためて いたの?

3. 古代の人は、何で折れた手足を固めていたのか

3. 古代の副木と、固まる包帯の先駆け:エジプトからアラブの医師まで

古い エジプトの あとから、木や 木の かわの そえ木が 見つかって います。いまから 4000年 いじょう 前の ものと されて、人の おれた ほねに 手当てを した、いちばん 古い れいと されて います[5]。木の かわや 木の 切れはしに、ぬのを あてて、手足を かためました。

ほうたいも ありました。まめや 大むぎの こなに、はちみつや 木の やにを まぜた ものに ひたすと、かわいた とき かたく なりました[5]。

ギリシャの おいしゃさん ヒポクラテスも、ろうや 木の やにを しみこませた ほうたいを 使ったと つたえられます。10せいき ごろの アラブの おいしゃさんは、ねんどや 木の やに、小麦の こなと たまごの しろみを まぜた ものを 使ったと 書かれて います[6]。

みんな、ぬれた ほうたいが かわいて かたまる、という 同じ 考え方でした。でも、かわくまでの 時間が、こまりごとに なって いきます。

古代エジプトの第5王朝(紀元前2494〜2345年ごろ)の発掘で、副木(そえ木)が見つかっています。人の骨折に対する積極的な手当ての、最古の例とされています。木の皮や木片に、麻の布を当てて固定していました[5]。

包帯にも工夫がありました。豆や大麦の粉に蜂蜜や樹脂を混ぜた液にひたすと、乾いたときに固くなったのです[5]。

その後も似た発想が続きます。紀元前350年ごろのヒポクラテスは、蝋や樹脂にひたした包帯で傷めた手足を巻いたと記されます。10世紀ごろのアラブの医師アル=ザフラウィーは、粘土と樹脂を混ぜたものや、小麦粉と卵白を、固定の材料に使ったと書かれています[6]。

共通するのは、ぬれた包帯が乾くと固まる、という考え方です。ただ、乾くのを待つ時間が、やがて大きな問題になります。

古代エジプト第5王朝(紀元前2494〜2345年)の遺跡で副木が出土しており、人の骨折に対する積極的な処置の最古の例とされる。樹皮や木片に亜麻布を当てて固定した。包帯は、豆や大麦の粉に蜂蜜や樹脂を混ぜた液にひたし、乾燥して硬化させた[5]。ただし、第5王朝の年代は、別の総説の記述による[6]。

この「液にひたした布が乾いて固まる」型は、のちの時代にも繰り返し現れる。ヒポクラテスは紀元前350年ごろ、蝋と樹脂にひたした包帯を傷めた手足に巻いたと記される。10世紀ごろのアラブの医師アル=ザフラウィーは、粘土と樹脂の混合物や、小麦粉と卵白を固定材料に使ったとされる[6]。

素材は変わっても、原理は同じである。布に液体を含ませ、乾く過程で硬くする。だからこそ、弱点も共通する。乾燥にかかる時間と、乾く前は固定の役に立たないことである。この弱点が、19世紀に表に出る。

4. かわくまで 1日いじょうも かかると、なにが こまるの?

4. 乾くまで1日以上かかるデンプンの包帯は、何が不便だったのか

4. デンプン包帯の限界:乾燥時間と、腫れの変化に合わせにくい問題

1830ねんだいごろ、ベルギーの スータンという 人が、デンプンを しみこませた ほうたいを 考えました。かみの そえ木も 作りました[7]。

でも、この ほうたいは、かわいて かたまる まで 1日 いじょうも かかりました。長い ときは 2日から 3日 かかったと する しりょうも あります[7]。

おれた ばかりの 手や 足は、はれて ふくらみます。かわく まで まつ 間に、はれ方が かわると、ほうたいが 合わなく なります。はれの かわりに 合わせにくい のも、弱点でした[7]。

すぐに かたまる ほうたいが あれば いいのに。その ねがいを かなえた 人が、オランダに いました。

1830年代ごろ、ベルギーのスータンという人が、紙や厚紙の副木と、デンプンにひたした包帯を考え出しました[7]。

この包帯は、乾いて固まるまでに、1日以上かかりました。資料によっては、長いと2〜3日とも書かれ、数字にはずれがあります[7]。

折れた直後の手足は、腫れて太くなったり、数日で引いたりと、状態が変わります。固まるまで時間がかかると、その間に腫れの具合が変わって、包帯が合わなくなります。乾いたあとで、手足の形に合わせ直すのも難しいのでした[7]。

では、もっと早く固まる材料があれば、どう変わるのでしょうか。それを実現したのは、オランダの軍医でした。

19世紀前半、ベルギーのスータン(Seutin)が、紙・厚紙の副木と、デンプンにひたした包帯(bandage amidonnée)を考案した。年代は資料で食いちがい、「1830年代ごろ」と、マテイセンの約10年前、という記述がある[7]。

この方法の弱点は、乾燥に1日以上、長いと2〜3日かかる点だった(資料で数字にずれがある)。折れた直後の患肢は、腫脹が強く、その後に引いていくなど、太さが変わる。固まるまでに時間がかかる材料では、その変化に合わせて作り直しにくい[7]。

ここで課題が絞られる。必要なのは、巻いたあとに素早く固まり、乾燥の途中の変形を待たなくてよい材料である。そこに現れたのが、石膏だった。

5. 教会の かべから、どんな アイデアが 生まれたの?

5. マテイセンは、教会の壁を直す職人から石膏包帯を思いついたのか

5. マテイセンの石膏包帯(1851年):着想の逸話と、同時期のピロゴフ

オランダの ぐんの 病院で はたらく おいしゃさんに、マテイセンと いう 人が いました。町は ハールレムです。病院の むかいの 教会で、しょくにんが かべの ひびを、せっこうを しみこませた ぬのの きれで なおして いるのを 見て、ひらめいたと つたえられて います。ニワトリで ためしたとも いわれます[8]。

せっこうを ひたした ほうたいは、水に つけて まくと、数分で かたまります。デンプンの ほうたいは 1日いじょう かかったのですから、ずっと はやく かたまる ことに なります。

マテイセンは、1851年に 病院で この ほうたいを つかい、1852年の 2月に、オランダの 医学の ざっしで はっぴょうしました[8]。町の 人は、かれを「せっこうおじさん」と よんだ そうです[8]。

ただし、かれ1人が すべてを 作った とは いいきれません。ロシアの ピロゴフと いう おいしゃさんも、同じ ころに、じぶんで せっこうの そえ木を 考えて います[7]。

1851年、オランダの軍医アントニウス・マテイセンは、ハールレムの軍の病院で、石膏の包帯を使いました。1852年2月には、オランダの医学雑誌『Repertorium』で発表しています[8]。

着想の逸話が伝わっています。病院の向かいの教会で、職人が壁のひびを、石膏にひたしたジュート(麻の一種)の布で直すのを見た、というものです。マテイセンはニワトリで試した、ともいわれます。ただし、これはおもに二次資料にある話で、本当にそうだったと言い切れるものではありません[8]。町の人は彼を「石膏おじさん(Oom Gips)」と呼んだとされます。

水にひたした石膏の包帯は、数分で固まります。デンプン法が1日以上かかったのに比べると、大きな差です。石膏は水と混ざると数分で固まりますが、完全に乾くには、そのあとさらに時間がかかります[8]。すぐ固まれば、巻いた直後から手足を支えられます。

「発明者」と一人に決めるのも、慎重にすべきです。ロシアの外科医ピロゴフも、1852年ごろ、麻布を石膏にひたして作る彫刻家の仕事を見て、独自に石膏の副木を考えました[7]。マテイセンの仕事は知っていたものの、自分の方法を発展させたと書かれています。

同じ時代に、別の場所で、同じ着想にたどり着く。それほど、固まる早さが、求められていたのかもしれません。

オランダの軍医アントニウス・マテイセン(Mathijsen)は、1851年にハールレムの軍病院で石膏包帯を使い、1852年2月にオランダの医学誌『Repertorium』で報告した。水にひたした石膏の包帯が数分で固まる点が、乾燥に1日以上かかったデンプン法より優れていた[8]。

着想については、向かいの教会で職人が壁のひびを石膏にひたしたジュート布の細片で直すのを見た、という逸話がある。ニワトリで試したともされ、ハールレムの人々は彼を「Oom Gips(石膏おじさん)」と呼んだという。ただしこの話は二次資料の記述で、一次資料で裏づけられたものではない。事実として確かなのは、1851年の使用と1852年の発表のほうである[8]。

では、なぜ石膏か。着想の核心は、液体を含ませた布を乾かして固めるという、前節までの型を残しつつ、固まる原因を「乾燥」から「水との反応」へ移した点にある。石膏は水と混ざって数分で硬化する(完全に乾くには別途時間がかかる)。乾くまで待つ時間は、材料の選び方で大きく短縮された。ただし、腫れによる緩みは残る。

「発明者は誰か」は、一人に決めにくい。ロシアの外科医ピロゴフ(Pirogov)も1852年ごろ、麻布を石膏にひたして作る彫刻家の仕事を見て、独自に石膏の副木を考えた。マテイセンの仕事は知っていたが、自分の方法を発展させたと記される[7]。同時期に別の場所で同じ着想が出たこと自体が、固まる早さへの需要の大きさを示唆する。

では、石膏の包帯は、いまのギプスにつながっているのか。

6. ギプスという ことばと、いまの ギプスは どうなって いるの?

6. 「ギプス」という言葉の由来と、いまのギプス、子どもの骨の特別な力

6. 語源と、現代の固定材:ガラス繊維製への移行、小児骨折の自家矯正

「ギプス」は、ドイツ語の「Gips」から きた ことばで、せっこうの ことです[9]。日本の しょうせつに 出る いちばん 古い れいは、1903年の 『まふうこいかぜ』と されます。ただし、これは 本に 出た 古い れいで、日本で 使われ はじめた 年では ありません[9]。

せっこうの ギプスは、ねだんが やすい かわりに、重くて、かんぜんに かわくまで 時間が かかり、レントゲンが とおりにくい という よわみが あります。水で かたまる じゅしを ふくませた、せっこうより かるくて つよい ガラスの せんいの ほうたいも あります[11]。

子どもの ほねには、おとなに ない とくちょうが あります。ほねが かたまった あとも、大きく なりながら 形を ととのえ直す 力が 強く、しゅじゅつを せずに ようすを みる ことが 多いと、せつめい する しりょうが あります。手首は その 力が 強いと されますが、場所や ようすで、なおる 力は ちがいます。力には かぎりが あるので、お医者さんが よく 見きわめます[10]。

ギプスは、ほねを つなぐ 道具では なく、ほね自身が なおす 時間を まもる 道具でした。

「ギプス」は、ドイツ語のGips(石膏)から来た言葉です。辞典では「包帯を石膏で固めたもの」とされます。日本語の用例の初出は、1903年の小説『魔風恋風』と記されますが、これは文章に出る最初の例で、日本で使われ始めた年ではありません[9]。英語ではplaster bandage、castと呼び、石膏の英名plaster of Parisは、パリ郊外で良質な石膏がとれたことに由来するとされます。

石膏のギプスは安価ですが、重い、完全に乾くまで時間がかかる、レントゲンを通しにくい、という弱点があります。水と反応して固まる樹脂を含む、石膏より軽く強いガラス繊維のテープもあります。このテープは軽く、通気性がよく、レントゲンを通しやすいとされます[11]。

もう一つ、子どもの骨に特有の力があります。子どもの骨折では、骨が成長しながら形を整え直す力(自家矯正)を期待して、手術をしない治療が選ばれることが多い、と整形外科の資料にあります。ただし場所による差があり、手首は矯正する力が強いとされますが、部位や状態で矯正力は異なり、変形が残ることもあるそうです。矯正力には限界があり、見極めが必要とされています[10]。

固定の目的は、はじめから終わりまで、骨が自分でつながる時間を守ることでした。では、その「待ち時間」を、自分の手で体験することはできるでしょうか。

日本語の「ギプス」はドイツ語のGips(石膏)に由来し、辞典は「包帯を石膏で固めたもの」と定義する。用例の初出は1903年の小説『魔風恋風』とされるが、これは文献上の初出で、日本での使用開始年ではない。英語ではplaster bandage、cast。plaster of Parisの名は、パリ郊外に良質な石膏の産地があったことに由来するとされる[9]。

石膏は安価だが、重い、完全乾燥に時間がかかる、X線を通しにくいという欠点がある。そこで、水と反応するポリウレタン樹脂で固まる、石膏より軽く強いガラス繊維テープも使われ、軽さ、通気性、X線透過性、硬化後の強度維持が利点とされる。この記述は特許(1987年の米国特許)の背景説明による[11]。

固定材料の進歩とは別に、小児では骨自身の能力が治療方針を左右する。小児骨折では、リモデリングによる自家矯正に期待して保存的治療が選ばれることが多い。ただし部位差があり、手関節周囲は矯正力が強いとされるが、部位や状態で矯正力は異なり、変形が残ることがある。自家矯正力の限界を見極めた慎重な対応が必要とされる[10]。この整理は、一つの整形外科の資料の記述にもとづくもので、症例ごとの判断は医師による。

ここまでの流れを一言でまとめると、固定の道具は、乾燥待ちから水との反応へ、さらに樹脂とガラス繊維へと進んだが、固定の目的は変わらず、骨自身が癒合する時間を守ることである。その「待つこと」の感覚は、身近な材料でも観察できる。

7. かわくまでの 時間を、紙で はかって みよう

7. デンプンの包帯が乾く時間を、紙で測ってみる

7. 固まる時間を自分で測る観察と、原典の読みどころ

デンプンの ほうたいは、かわくのに 1日いじょう かかりました。その 感じを、身近な ものでためせます。

用意するのは、キッチンペーパー、小麦こ、水、つつ(ラップの しんなど)です。からの かんを 使う ときは、切り口が あぶなく ないか、大人に 見て もらって ください。小麦こは、小麦アレルギーの 人は 使わないで ください。人の 体には まかないで、かんの 外がわだけに まきます。

小麦こを 水で とかして、どろっと した のりに します。そこに キッチンペーパーを ひたして、かんに まきつけます。そして、1時間ごと、そのあと 1日 おいて、さわって かたさを たしかめます。

かたまるまで どれくらい かかったか、メモして みましょう。むかしの 人が、ほうたいが かわく のを まって いた 気もちが、少し わかります。

デンプンの包帯が乾くまで1日以上かかったことは、乾く待ち時間を、身近な材料で観察できます。ただし小麦粉のりの紙の観察で、昔のデンプン包帯と同じ材料・条件ではありません。用意するのは、キッチンペーパー、小麦粉、水、筒(ラップの芯など)です。空き缶を使うときは、切り口が危なくないか大人に確かめてもらってください。小麦アレルギーの人は、小麦粉の代わりに別のものを使うか、見る側にまわってください。人の体には巻かず、筒の外側だけに巻きます。

小麦粉を水で溶いて、どろっとしたのりのような液にします。そこにキッチンペーパーをひたし、筒に何重かに巻きます。1時間おき、さらに1日おいて、指で触って固さを確かめます。固まり方に差が出たら、巻いた枚数や、のりの濃さが違ったのかもしれません。条件を変えて比べると、乾く時間が何で変わるのかが見えてきます。

原典を読みたい人には、固定材料の歴史をまとめた総説(出典6)と、骨折治癒の段階を扱う整形外科の解説(出典1)が出発点になります。英語の資料は、図や年表のところだけでも流れが追えます。

固まる時間は、自分でも測れる。キッチンペーパー、小麦粉と水でつくったのり、空き缶を用意し、のりにひたした紙を缶の外側に巻く(人の体には巻かない。小麦アレルギーの人は小麦粉を避ける)。1時間おき、さらに1日後に、指で触って固さを記録する。紙の枚数や、のりの濃さを変えて比べると、乾燥時間を決める条件が見える。

これはデンプン包帯の乾燥の遅さの、あくまで簡易的な模擬である。実際の固定材料の硬化時間そのものを再現するものではない。

原典を読むなら、骨折治癒の段階は整形外科の総説(出典1)と小児骨折の教育資料(出典2)、固定材料の歴史は石膏の歴史をまとめた総説(出典6)、マテイセンとピロゴフの関係は医学史の論文(出典7)が出発点になる。特に、着想の逸話(教会の壁とニワトリ)が一次資料でどこまで裏づけられるかは、原典で確かめる価値のある残された問いである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字・用語は下の資料にある内容をまとめたものです。一部は二次資料のため、本文では「〜とされる」と書いています。

  1. 「ビジュアルにわかる骨癒合の基礎」臨床整形外科 59巻5号 http://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/05570433/59/5/1408202958/ (骨折治癒の段階)
  2. Royal Children's Hospital Melbourne "Fracture education: Fracture healing" https://www.rch.org.au/fracture-education/fracture_healing/ (血腫・仮骨・リモデリング、固定の理由)
  3. 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「上肢の骨折のリハビリテーション」 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/jousi-reha.html (手首〜肘まわりの固定期間の例)
  4. メディカルノート「骨折」 https://medicalnote.jp/diseases/%E9%AA%A8%E6%8A%98/contents/160427-004-JD (固定で足りる場合と手術が要る場合。二次資料)
  5. Said et al. 2013, International Orthopaedics (PMC3971265) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3971265 (古代エジプトの副木と包帯)
  6. Szostakowski et al. 2017 "Plaster of Paris – Short History of Casting and Injured Limb Immobilization" Open Orthop J 11:291 https://openorthopaedicsjournal.com/VOLUME/11/PAGE/291/ (ヒポクラテス・アル=ザフラウィーの固定材料、第5王朝の年代)
  7. PMC5420179(整形外科ギプスの歴史を含む論文) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5420179 (スータンのデンプン包帯・ピロゴフ)
  8. Wikipedia "Antonius Mathijsen" https://en.wikipedia.org/wiki/Antonius_Mathijsen (1851年の使用・1852年の発表・着想の逸話。二次資料)
  9. コトバンク「ギプス包帯」(日本国語大辞典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%82%AE%E3%83%97%E3%82%B9%E5%8C%85%E5%B8%AF-3149439 (ギプスの定義と語源)
  10. 了徳寺大学リポジトリ「小児の上腕骨近位部骨折の保存的治療」 https://ryotokuji-u.repo.nii.ac.jp/records/462 (子どもの骨の自家矯正)
  11. Google Patents US4668563A(Johnson & Johnson, 1987) https://patents.google.com/patent/US4668563 (ガラス繊維キャスティングテープの背景説明)

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