1. ふたつの にじの あいだは、どうして くらいの?
1. 2本の虹のあいだの空は、なぜ暗く見えるのか
1. 主虹と副虹のあいだに暗い帯ができる:アレキサンダーの暗帯
にじが 2ほん でて いたら、2ほんの あいだの そらを みて ください。そこだけ、すこし くらく みえます。
この くらい おびには、アレキサンダーの あんたいと いう なまえが あります[5]。その ばしょには、たいようの ひかりが、みる ひとの ほうへ とどかないからだと せつめいされます[5]。
ひかりが こない ばしょが あるなら、ひかりが くる ばしょは きまって いる はずです。それは どこでしょう。
虹が2本出ているのを見たら、2本のあいだの空に目を向けてみてください。内側の虹(主虹)と外側の虹(副虹)にはさまれた部分は、まわりの空より暗く見えます。この暗い帯には、アレキサンダーの暗帯という名前があります[5]。
イギリスの気象機関Met Officeは、この帯には太陽の光が観察する人のほうへ散らばってこないため、暗く見えると説明しています[5]。名前は、古代ギリシャのアレクサンドロスという人が、この暗い部分を最初に書き残したことにちなむとされています[6]。
光が来ない場所があるということは、光が来る場所は決まっているということです。虹の帯は、雨粒がたまたま光ったものではなく、光が戻ってくる角度が決まっているから、あの位置に見えます。では、その角度は雨粒の中でどう決まるのでしょうか。
2. ひかりは あまつぶの なかで、どう まがるの?
2. 雨粒に入った光は、どんな角度で戻ってくるのか
2. 水滴内の屈折と反射、そして約42度の縁に光が集まること
そらに ういている みずの つぶは、ほとんど まるい かたちです。たいようの ひかりが はいると、屈折して まがり、おくで 反射して はねかえり、でる ときに また まがります[1]。
はいった ひかりと もどる ひかりの あいだの かどは、およそ 42ど です[1]。
ひかりは、この 42ど の ちかくに あつまります。だから そこだけ あかるく みえます[2]。たとえるなら、すべりだいの すぐ した、ひとが たまる ところです。ただし ほかの ばしょが まっくらなわけでは ありません。
空中の水滴はほぼ球の形をしています。太陽の光が水滴に入ると、水と空気の境目で曲がり(屈折)、水滴の奥の面で跳ね返り(反射)、出るときにもう一度曲がって戻ってきます。入ってきた光とのあいだにできる角は、約42度です[1]。
戻る角度には、いちばん小さくなる値(最小偏角)があります。太陽の光の多くは、この最小の角度に近い光線にそって集中し、その方向が明るく見えます。赤い光では、それが約42度です[2]。ここでいう「集中」は、縁に光がたまるという意味で、42度から外れた方向が真っ暗になるという意味ではありません[2]。
見る人にとっては、太陽の正反対の方向を中心にして、42度の角をなす円の上に反射光が並びます[1]。太陽の高さが約42度を超えると、地上からは虹が見えなくなります[2]。円の中心は太陽の反対側で、その高さは「太陽の高さ」の分だけ地平線の下にあるので、虹のいちばん高いところの高さは、約42度から太陽の高さを引いた値になります。たとえば太陽が30度の高さなら、約12度です(赤の部分での計算です)。
光は、同じ角度に戻ってきても、色までそろっているとは限りません。虹はなぜ、いろいろな色の帯になるのでしょうか。
空中の水滴はほぼ球形で、入射した太陽光は屈折・反射・屈折を経て、入射光線と約42度の角をなして戻る。観察者から見ると、太陽の正反対の点(対日点)を中心とした、半径約42度の円周上に反射光が現れる[1]。
水滴から出る光の角度には最小値があり、太陽光の多くはその光線に沿って集中する。赤の光では、この角度が約42度である[2]。注意したいのは、これが「縁に光がたまる」という意味であり、42度以外が暗黒だという意味ではない点だ。なお、この集中が起こる理由そのものは、今回あたった日本語資料が詳しく述べていない。
ここから、虹が見える条件が計算で導ける。対日点は太陽の反対側にあるため、その高さは太陽高度の分だけ地平線の下にある。したがって虹の頂点の高さは、約42度から太陽高度を引いた値になる。太陽高度が30度なら約12度、42度に達すれば0度で、地上からは見えなくなる。この一致は、「太陽の高さが約42度を超えると虹は見えない」という資料の記述と同じ結論である[2]。
角度は決まったが、色の問題が残る。同じ水滴から出る光が、なぜ帯状に色分かれするのか。
3. にじは どうして、いろが わかれて ならぶの?
3. 光はなぜ色に分かれ、赤が外側にくるのか
3. 分散が色を分ける:屈折率の差は約0.02、角度の差は約2度
たいようの ひかりは しろく みえますが、いろんな いろの ひかりが まざって います。みずに はいる ときの まがりかたが、いろごとに すこし ちがいます[3]。
むらさきの ひかりは すこし おおきく まがり、あかの ひかりは すこし ちいさく まがります[3]。だから、もどる かどが すこし ずれて、いろが ならびます。
そとがわが あか、うちがわが むらさきです[4]。
白く見える太陽の光は、実はいろいろな色の光が混ざったものです。色によって水の中での曲がり方が少しずつ違い、これを分散といいます[3]。ニュートンは、白色光がすべての色の光でできていて、赤は青より屈折しにくいことを示し、色が分かれる理由を説明しました[6]。
水の屈折率は、紫に近い光で約1.34、赤い光で約1.32です[3]。差は0.02で、割合にすると約1.5%(1.34÷1.32≒1.015)にすぎません。ところが戻る角度は、赤が約42度、紫が約40度と、約2度の幅になります[4]。ほんの少しの曲がり方の差が、空の上では2度ぶんの色の帯になって見えるわけです。
よく曲がる紫が内側、赤が外側になるので、主虹は外側が赤、内側がすみれ色になります[4]。では、外側にもう1本かかる虹は、どうなっているのでしょうか。
光の波長によって屈折率が異なる現象を分散という。水では、波長の短い紫に近い光に対して屈折率が約1.34、波長の長い赤い光に対して約1.32となる[3]。差は約0.02で、割合では約1.5%(1.34÷1.32≒1.015)にすぎない。歴史的には、ニュートンが、白色光はすべての色の光でできており、赤は青より屈折しにくいことを示して、この分かれ方を説明した[6]。
この小さな屈折率の差が、戻る角度では赤約42度、紫約40度という約2度の違いに拡大される[4]。2%に満たない差が、観察者の側では2度分の幅をもつ色の並びになる。屈折率が大きい紫ほど曲がりが大きく内側に、赤が外側になり、主虹は外側が赤、内側がすみれ色(すみれいろ)となる[4]。
では、主虹の外側に出る副虹は、同じ水滴の中で何が違うのか。
4. 2ほんめの にじは、どうして いろが さかさまなの?
4. 2本目の虹は、なぜ色の並びが逆になるのか
4. 副虹は2回の反射でできる:デカルトの実験と角度の引き算
2ほんめの にじは、あまつぶの なかで、ひかりが 2かい はねかえって できます[4]。1ばんめの にじの そとがわに みえます。
いろの ならびは、1ばんめと さかさまです。うちがわが あか、そとがわが むらさきです[4]。
デカルトと いう ひとが、1637ねんの ほんで、1ばんめは 1かい、2ばんめは 2かい はねかえると しめしたと いわれます[6]。
1ばんめの あかは 42ど、2ばんめの あかは 51どぐらい。この あいだが、くらい おびです。
副虹は、水滴の中で光が2回反射してできます。主虹の外側に、見かけの角度で約50〜53度のところに見え、辞典では赤の部分で約51度とされています[4]。色の並びは主虹と逆で、内側が赤、外側がすみれ色です[4]。
この違いを実験で示したのが、デカルトです。1637年の著作で、主虹は水滴の中の1回の反射、副虹は2回の反射でできることを示したと紹介されています[6]。
ここで、1つめの章の暗い帯に戻れます。主虹の赤の部分が約42度、副虹の赤の部分が約51度ですから、そのあいだの角度差は約9度で、2本の赤い縁の間隔の目安です。副虹の角度は資料によって幅があるので、9度というのも目安です。この2本のあいだの空が、アレキサンダーの暗帯として暗く見えるのは、どちらの虹の光もそこには向かってこないからだと説明されています[5]。
デカルトとニュートンの説明で、虹の位置と色は説明できました。それでも説明できない、細い縞があります。
副虹は、水滴の中で光が2回反射してできる。見かけの角度は約50〜53度と資料で幅があり、辞典では赤の部分で約51度とされる。色の配列は主虹と逆で、内側が赤、外側がすみれ色になる[4]。デカルトは1637年の著作で、主虹は水滴内の1回の反射、副虹は2回の反射でできることを実験で示したとされる[6]。
暗帯の幅も、この数字から見積もれる。主虹の赤の約42度と副虹の赤の約51度の差は、約9度前後になる。これは2本の赤い縁の角度差の目安で、副虹の角度に幅があるため厳密な値ではない。暗帯が暗く見えるのは、主虹と副虹の光がその範囲には向かってこないためと説明される[5]。暗い帯は、2本の虹の赤い縁にはさまれた空に当たるわけだ。
ところが、反射の回数と屈折率だけでは説明できない現象が、主虹の内側に残っている。
5. にじの うちがわに、ほそい しまが でる ことが あるの?
5. 主虹の内側に細い縞が出るのはなぜか
5. 過剰虹:光の干渉と水滴の大きさ、ヤングからエアリーまで
にじの うちがわに、あかや みどりの ほそい にじが なんぼんも ならぶ ことが あります。かじょうこうと いいます[6]。
これは、ひかりが なみの せいしつを もって いる からです。すこし ちがう みちを とおった ひかりが かさなって、つよめあったり、よわめあったり します[6]。
あまつぶが ちいさいほど、しまの はばは ひろく、いろは うすく なります[6]。
主虹の内側に、赤や緑の細い虹が、くり返し部分的に現れることがあります。過剰虹といいます[6]。デカルトやニュートンのように、光を細い線として考える説明では、この縞は説明できませんでした[6]。
光を波として考えると、少しずつ違う道すじを通った光どうしが重なり、強め合ったり弱め合ったりします。これを干渉といい、縞はその結果です[6]。1804年にトーマス・ヤングが最初の説明を与え、のちにエアリーが、縞と雨粒の大きさの関係を理論として発展させたとされます[6][7]。
水滴が小さいほど、この縞の帯は広くなり、色は薄くなります[6]。水滴の大きさが、虹の見え方を変えるのです。では、もっと小さな粒、たとえば霧の粒ではどうなるでしょうか。
6. きりの つぶだと、にじは どう なるの?
6. 霧の粒がつくる、色の薄い白い虹
6. 霧虹:半径約42度の白い帯と、月の光でできる虹
きりの うえに あらわれる にじを、きりにじと いいます。たいよう の はんたいがわを ちゅうしんに、およそ 42ど の しろい おびに なります[4]。
はばは ふつうの にじの 2ばいぐらい あります[4]。つきの ひかりで できる にじも、とても うすく しろく みえます[4]。
あまつぶの おおきさで、にじの すがたは かわるのです。
霧の上に現れる虹は霧虹と呼ばれます。太陽の反対側を中心に、半径約42度の白い帯になります。幅は通常の虹の2倍ほどもあります[4]。位置は主虹とほぼ同じ42度付近で、色がほとんどなく、帯が太いのが特徴です。
月の光でできる月虹も、非常に薄く白く見えるとされます[4]。
大きな雨粒がつくる、赤から紫の細い帯。小さな過剰虹の帯の広がり。霧の粒がつくる白く太い帯。どれも「42度のあたりに光がたまる」という同じ土台の上で、粒の大きさによって姿が変わるものです。ここまで読んだ形を、空の下で確かめるには、どうすればよいでしょうか。
霧の幕の上に現れる霧虹は、対日点を中心とする半径約42度の白い帯で、幅は通常の虹の2倍程度ある。月光によってできる月虹は、非常に薄く白く見える[4]。
霧虹の中心は主虹と同じ対日点で、半径も約42度だが、帯の幅は2倍ほどあり、色はほとんどない。過剰虹でも水滴が小さいほど帯は広く色が薄くなる[6]ので、小さな水滴が帯を広げ、色を薄くする方向の変化は共通している。ただし、霧虹の白さが干渉の効果かどうかまでは、参照した資料に書かれていない。
以上から、虹の位置は水滴の中の光の進み方で決まり、色の帯は水の性質で、縞や白さの見え方には水滴の大きさも関わる、という整理ができる。この整理は、自分の目で確かめることもできる。
にじを さがす ほうほう
太陽を背にして、虹を探してみる
資料を読む手がかりと、見て確かめる方法
きょう できること
あさか ゆうがたの、たいようが ひくい じかんに、にわで ホースの みずを こまかく まいて みましょう。たいように せなかを むけて、じぶんの かげの あたまの ほうを みます。にじの まんなかは、かげの あたまの あたりです[1]。たいようを じかに みては いけません。ぬれても いい ばしょで、ひとに みずを むけない ように します。たいようが たかすぎると、じめんからは にじが みえません[2]。
でかけて できること
ほんものの にじを みたら、そとがわが あかか、2ほんなら いろが さかさまか、あいだが くらいかを、みて みましょう。
こうしきの じょうほう
なごやしかがくかんの「にじを つくろう」の しりょうが あります[1]。
今日できること
朝か夕方の、太陽が低い時間に、庭やベランダでホースの水を細かく散らしてみます。太陽を背にして、自分の影の頭のほうを見ると、その近くが虹の円の中心になります[1]。太陽が高すぎると、地上から虹は見えません[2]。太陽は直接見ないこと、水がかかってもよい場所で、人に向けないことを守ります。
出かけてできること
本物の虹を見かけたら、外側が赤か、2本あれば色の並びが逆か、2本のあいだが暗いかを見比べてみます。
公式情報
資料を読むなら
名古屋市科学館の「虹をつくろう」(PDF)は、水滴の中の約42度の道すじを日本語で説明している[1]。虹の研究史と過剰虹の理論は、日本数学会の『数学通信』にある真島秀行の解説が詳しい。ただしPDFの文字が崩れている箇所があるので、人名は別の資料と照らす[7]。デカルト線への光の集中は、英語のNWSの解説(原典)で図つきで読める[2]。
自分で確かめるなら
太陽が低い朝夕に、太陽を背にしてホースの水を細かく散らし、虹が見える位置を調べる。虹の頂点の高さは約42度から太陽の高さを引いた値になるはずなので、太陽が高いほど虹は低くなる。太陽を直接見ない、人に水を向けない、水にぬれてもよい場所で行う。
公式情報
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
虹の位置と角度は名古屋市科学館と米国国立気象局に、屈折率はキヤノンの解説に、副虹と霧虹は日本大百科全書に、暗い帯は英国気象局に、歴史と過剰虹はウィキペディアと日本語の解説論文に依拠した。数字は各資料に書かれた範囲だけを使った。
- 名古屋市科学館「L215 虹をつくろう」 https://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibit_files/pdf/L215.pdf (水滴内の屈折・反射と約42度、太陽の反対側を中心とする円)
- National Weather Service Flagstaff「Rainbow」 https://www.weather.gov/fgz/Rainbow (最小偏角の光線への集中、太陽高度の限界)
- キヤノン「光の技術 屈折・分散」 https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/001/02.html (分散と屈折率の値)
- 日本大百科全書(ニッポニカ)「虹」 https://kotobank.jp/word/%E8%99%B9-109343 (主虹・副虹の角度と色の並び、霧虹・月虹)
- Met Office「Rainbows」 https://weather.metoffice.gov.uk/learn-about/weather/optical-effects/rainbows (2本の虹のあいだの暗い帯)
- Wikipedia「Rainbow」 https://en.wikipedia.org/wiki/Rainbow (デカルト・ニュートン・ヤングの研究、過剰虹と水滴の大きさ)
- 真島秀行「虹に見える漸近解析」日本数学会『数学通信』 https://www.mathsoc.jp/assets/pdf/publications/tushin/backnumber/0702/majima7-2.pdf (虹の研究史の流れ)
なおした ところ
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