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学校には、どうして 動物の 小屋が あるの?

学校の飼育小屋はなぜ残ったのか ── ウサギの墓を作文にした授業から、いまの小屋まで

学校の飼育小屋はなぜ設けられ、なぜ残ったのか ── 明治後半の理科教育から2024年の文部科学省調査まで

分野:歴史・文化

むかしの 学校では、うさぎが 死んだ とき、学級の みんなで 墓はかを 作って、作文に 書いた という きろくが あります[1]。

いまも 学校には、動物の 小屋が ある ところが あります。どうして 学校には 小屋が あるのでしょう。いつ、なんの ために 始まって、勉強で 使わなく なっても どうして のこったのかが わかります。

明治41年ごろの小学校には、ウサギが死ぬと学級みんなで墓はかを作り、作文の時間に「兎のはか」という題で書かせた記録があります[1]。昭和11年の秋田県の小学校の学校地図には、兎舎が2つも書き込まれていました[1]。

では、なぜ学校は動物を飼い始め、授業から世話が消えたあとも、小屋は残ったのでしょうか。始まりの理由、小屋が「学校にあって当たり前の設備」になった経緯、2024年の全国調査の数字、先生だけで抱えない新しい試みが分かります。

明治41年ごろの小学校に、ウサギが死ぬと学級みんなで墓はかを作り、作文の時間に「兎のはか」という題で書かせたという記録がある[1]。昭和11年の秋田県の小学校の学校地図には、兎舎が2つも書き込まれていた[1]。生きものの世話が授業そのものだった時代と、小屋が学校の設備になった時代は、つながっている。

では、なぜ学校は動物を飼い始め、世話が授業の中身から離れたあとも小屋は残ったのか。始まりの理由、設備になっていった経緯、2024年の全国調査の数字、世話の担い手を広げる試みが分かる。

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1. 学校で 動物を かい はじめたのは、どうして?

1. 標本だけの理科から、ウサギを飼う理科へ

1. 教室の標本から生きたウサギへ ── 明治30年代の理科が動いた理由

明治めいじの 中ごろの 学校の 理科は、ひょうほんや 絵を 使って おしえるのが ふつうでした[1]。生きた 動物は、校庭や 学校の そとで 見る だけでした。

そこで 先生たちが、うさぎや にわとりを 子どもに かわせて みては どうか、と すすめました[1]。その 考えが 学校に 広がった きっかけの 一つかもしれない、と 研究した 人は 考えて います。ある 先生は、動物を かう ほうが 子どもの きょうみに 合い、やさしい 気もちを そだてるのに よい、と 考えました[1]。

うさぎが えらばれた わけは、おとなしくて、人に なれやすく、かいやすい うえに、ふえやすいから、と 書かれて います。子どもの 手だけで 世話が できると 考えられたのです[1]。

ただし、だれが 始めたのかは、はっきり 言い切れません。では、世話は 学校で どんな ようすだったのでしょう。

明治30年代前半の理科は、教室では標本・模型・図画を使って教えるのが中心で、生きた動物を見るのは校庭や校外での観察が主でした[1]。変わり目のひとつが、明治35年に文部省が開いた理科教授法講習会です。講師をつとめた東京高等師範学校の棚橋源太郎は、翌年にまとまった『理科教授法講義』で、ウサギやニワトリを子どもに飼わせてみることを勧めました[1]。

この主張が講習会を通して全国に広まり、学校でウサギやニワトリを飼う動きになった可能性がある、というのが研究者(鈴木哲也)の見立てです。棚橋が始めたと言い切れる資料ではありません[1]。

動物なら何でもよかったわけではありません。同じ東京高等師範学校の松田良蔵は、動物は植物の栽培より児童の興味に合い、道徳的な情操を育てるのに有効だと述べました。そのうえで、手間がかからず子どもの手だけで世話ができ、餌代も多くかからない代表として、哺乳類ではウサギ、鳥類ではニワトリを選びました[1]。ウサギの理由は、性格が穏やか、人に慣れやすい、飼いやすい、繁殖しやすい、でした[1]。

つまり、始まりの答えの要点は「標本だけでは足りない理科を、生きた動物で補う」ことと、「子どもの手で世話ができる動物だった」ことです。では、その世話は実際の学級でどんな様子だったのでしょうか。

明治30年代前半の理科は、教室内では標本・模型・図画を利用して進めるのが主で、生きた動物は校庭や校外での観察が中心だった[1]。流れを変えた一つが、明治35年に文部省が開いた理科教授法講習会である。講師をつとめた東京高等師範学校教授の棚橋源太郎(たなはしげんたろう)は、講習の内容をまとめた『理科教授法講義』(明治36年)で、ウサギやニワトリを子どもに飼わせてみることを勧めた[1]。

この主張が講習会を通して全国に広まり、各地の学校でウサギやニワトリを飼う動きになった「可能性がある」というのが、研究者の鈴木哲也(東京未来大学)の推定である[1]。起点を棚橋に断定できる資料ではない点は、押さえておきたい。

では、なぜウサギとニワトリだったのか。明治40年代から大正初期にかけて、同じ学校の松田良蔵(まつだりょうぞう)は、動物を飼う目的を「植物の栽培より児童の興味に合い、道徳的な情操を育てるのに有効」とした。そして、世話に手間がかからず子どもの手だけででき、餌代も多くかからないものの代表として、哺乳類はウサギ、鳥類はニワトリを選んでいる[1]。ウサギには、性格が穏やか、人に慣れやすい、飼いやすい、繁殖しやすいという理由が添えられた[1]。

始まりの答えは、標本中心の理科を生きた動物で補うこと、そして子どもの手だけで世話ができ、情操を育てられる動物を選んだことの二つに整理できる。ただし、いずれも1人の研究者がまとめた事例にもとづく。では、その「子どもの手の世話」は、実際の学級でどう進んだのか。

2. うさぎの 当番は、どんな しごとを したの?

2. ウサギ当番は、毎日どんな仕事をしたのか

2. ウサギ当番と「兎のはか」── 世話が授業の一部だった学級

明治めいじ41年の ある 学級では、4年生の 5人が うさぎの 当番でした[1]。毎日 かわりばんこに、家から やさいの くずを もって きて、そうじと 当番日記を うけもちました。

うさぎが 死んだ ときは、学級の みんなで 話し合って、墓はかを 作りました。作文の 時間には、「うさぎの はか」という 題で 書いた という きろくが あります[1]。

世話は、おてつだいでは なく、そうじ、日記、作文まで つながる 勉強の 一部でした。

ただし 昭和しょうわ6年には、はじめは おもしろがっても だんだん なまけて しまい、日曜日に えさを もらえない 小鳥も いる、という 投書が ざっしに のりました[1]。ひとりの 意見ですが、つづける むずかしさが 見えて きます。

では、世話が 勉強から 消えたら、小屋は どう なったのでしょう。

松田良蔵の学級(明治41年)の記録では、尋常4年のウサギ当番5人が毎日交代し、家から野菜くずを持ち寄り、掃除と当番日誌を担当しました[1]。ウサギが死んだときは、全級の児童が相談して墓を作り、作文の時間に「兎のはか」という題で書かせた記録があります[1]。

世話は手伝いではなく、掃除・記録・作文へとつながる学習の一部になっていました。動物が死ぬ場面まで授業に組み込まれていたことになります。のちの日本学術会議の提言も、動物飼育に、生物を愛護し生命を尊重する態度を育てる効果を期待しており[4]、期待の方向は近いといえます。

ところが昭和6年、雑誌『帝国教育』には、情操や勤労精神のために小鳥・ニワトリ・コイ・ヤギを飼う学校が「とても多い」と書きながら、はじめは面白がって世話をしても怠けるようになり、日曜日に餌をもらえない小鳥もいる、という投稿が載りました[1]。一人の意見ですが、鈴木は、飼育が広く普及したことと、ねらいどおりに続ける難しさの両方がうかがえると読んでいます。

世話は、授業のねらいどおりに続けるのが難しいものでもありました。その授業の中身は、のちにどうなったのでしょうか。

松田の学級(明治41年)の記録によると、尋常(じんじょう)4年のウサギ当番5人が毎日交代し、家から野菜くずを持ち寄り、掃除と当番日誌を担当した[1]。ウサギが死んだときは、全級の児童が相談して墓を作り、作文(綴方)の時間に「兎のはか」という題で書かせた記録がある[1]。

ここでは世話は手伝いではなく、掃除・記録・作文にまで広がる学習の一部になっている。動物が死ぬ場面までを授業に取り込んでいたことは、日本学術会議の提言(2003)が動物飼育に期待する、生物を愛護し生命を尊重する態度や、他人への愛情・共感を養う効果と、方向が近い[4]。

しかし、ねらいどおりに続けることは容易ではなかった。昭和6年の雑誌『帝国教育』には、情操や勤労精神のために小鳥・ニワトリ・コイ・ヤギを飼う学校が「とても多い」と述べつつ、はじめは面白がって世話をしても怠けるようになり、日曜日に餌をもらえない小鳥もいる、という投稿が載った[1]。鈴木はここから、普及と、教育の意図どおりに飼う難しさの両方を読みとる。投稿は一人の意見であり、当時どこでも世話が行き届かなかったとまでは言えない。

授業の一部として広まり、世話の難しさも早くから見えていた。では、世話が授業の中身から離れたあと、小屋はどうなったのか。

3. 勉強で 使わなく なっても、小屋は なぜ のこったの?

3. 授業から世話が消えたのに、なぜ小屋は残ったのか

3. 授業から世話が消えたあとも小屋が残った理由 ── 設備としての制度化

昭和しょうわ11年の 秋田県の 小学校の 地図には、うさぎ小屋が 2つも 書いて ありました[1]。にわとりや はとの 小屋も 書かれて います。

昭和17年の 教科書には、「うさぎの せわ」が 出て います[1]。うさぎの 重さを はかる、箱を そうじする、犬や ねこが 入る すきまを 調べる、1年間 当番を 決めて 日記に 書く、と いった ことが 書いて ありました。

この 世話は、昭和22年から 23年ごろに 使われた 教科書まで つづきましたが、そのあとは 教科書の 理科の 勉強としては 出て こなく なりました[1]。

それでも 小屋は のこりました。研究した 人は、昭和10年代の はじめまでに 小屋が 学校に あって あたりまえの ものの 一つに なり、新しい 学校を 作る ときに はじめから 小屋も 入れる ように なった ことが、一つの わけだと 考えて います[1]。

地図は 1つの 学校の れいです。それでも 「勉強で 使うから 作る」から 「学校には 小屋が ある もの」へ、小屋の 意味が かわって いった ようです。では、いま 学校の 動物は どれくらい いるのでしょう。

昭和11年、秋田県北秋田郡の大館尋常高等小学校の学校地図には、鳩舎・鶏舎・兎舎(2つ)・虫舎・禽舎が書かれています[1]。鈴木は、昭和10年代前半までに飼育小屋が学校設備の一部として制度化され、新しく校舎を作れば最初から飼育小屋も含まれるようになったと考えています[1]。ただし、これは1校の地図の例で、全国の学校に小屋があったとまでは言えません。

一方、授業の中身はどうだったのでしょうか。昭和17年の『初等科理科』第4学年の「兎のせわ」は、重さを量る、箱を掃除する、犬や猫が入る隙間を調べる、兎が嫌う草や毒になる草が混じっていないか調べる、一年間当番を決めて世話をし、気づいたことを日記に書く、という内容でした[1]。

ウサギ・ニワトリの世話は、戦後最初の国定教科書『理科の本』(昭和22〜23年使用)まで引き継がれ、その後は教科書で理科の内容として扱われなくなりました[1]。

それでも、小屋は新しい学校にも作られました。鈴木は、戦後に授業内容と関係なく小屋が作られたことの一因を、この「設備としての制度化」に見ています[1]。「一因と思われる」という推定ですが、「授業で使うから作る」から「学校には小屋があるもの」へ、理由が入れかわったという読み方ができます。では、いま学校の動物はどれくらいいるのでしょうか。

昭和11年、秋田県北秋田郡の大館尋常高等小学校の学校地図には、鳩舎・鶏舎・兎舎(2つ)・虫舎・禽舎が書かれている[1]。鈴木は、昭和10年代前半までに飼育小屋が学校設備の一部として制度化され、新しく校舎を作れば最初から飼育小屋も含まれるようになったと考える[1]。ただし事例は1校の地図で、全国の全校に小屋があったとは書けない。

一方、授業の中身はどうか。昭和17年の『初等科理科』(児童用)第4学年の「兎のせわ」は、兎の重さを量る、箱を掃除する、犬や猫が入る隙間を調べる、兎が嫌う草や毒になる草が混じっていないか調べる、一年間当番を決めて世話をし、気づいたことを日記に書く、という内容だった[1]。世話は体験にとどまらず、観察と記録を含む学習として組まれていた。

ところが、ウサギ・ニワトリの世話は戦後最初の国定教科書『理科の本』(昭和22〜23年使用)まで引き継がれたのち、教科書で理科の内容として扱われなくなる[1]。それなのに小屋は残り、授業の内容と関係なく新しい学校にも作られた。鈴木は、この一因を設備としての制度化に求める[1]。

「一因と思われる」という推定であり、小屋の普及率を示す統計は、ここで使った資料にはない。それでも、「授業で使うから作る」から「学校には小屋があるもの」へと、小屋を作る理由が入れかわったという読み方は、教科書から世話が消えても小屋だけが残った事実をよく説明する。では、いま小屋と動物はどれくらい残っているのか。

4. いま、うさぎを かって いる 学校は、どれくらい あるの?

4. いま、ウサギを飼う学校はどれくらいあるのか

4. 2024年の全国調査 ── ウサギを飼う学校は13.4%

2024年に、国が 全国の 小学校を 調査ちょうさしました[2]。1224校が 答えて、学校が 動物を もって かって いるのは 55%(673校)でした。この 動物には、魚や 虫も ふくまれます。

うさぎや カメなどの 動物を かう 学校は、答えた 学校の 4つに 1つぐらい(23.9%)でした。その 中で うさぎを かう 学校が いちばん 多く、56.2%でした。全体で 見ると、うさぎを かって いる 学校は およそ 7校から 8校に 1校です[2]。

おおさかふでは、うさぎや にわとりを かう 小学校が、2007年度の 80%ちかくから、2022年度の 20%あまりに へった、と しょうかいされて います[5]。いちばんの わけは、先生の 大へんさと されます。おおさかふの 数で、全国の 数では ありません。

へって いるのに、どうして 学校は 動物を かい つづけるのでしょう。

文部科学省は2024年6月から7月にかけて、無作為に選んだ公立小学校1,235校(義務教育学校を含む)に調査し、1,224校が回答しました[2]。学校が動物を所有して飼っている学校は55.0%(673校)、他の施設からの貸し出しが1.1%、その両方が1.3%、児童個人の所有など(教室の昆虫など)が42.6%でした。この「動物」には魚や昆虫も含まれます。

小屋のイメージに近い、哺乳類・鳥類・爬虫類を学校として飼う学校は、回答校の23.9%(292校)です。その292校の中で、ウサギは56.2%(164校)、カメ35.3%、モルモット7.2%、ニワトリ3.8%(11校)でした[2]。合計が100%を超えるので、複数の動物を飼う学校もあるようです。母数が292校なので、全回答校でみるとウサギは13.4%、ニワトリは0.9%です。13.4%はおよそ7〜8校に1校にあたります。

減っていることを示す数字もあります。大阪府教育委員会の調査として紹介された数字では、ウサギやニワトリなどを飼う小学校は2007年度に80%近くありましたが、2022年度には20%あまりになり、最大の理由は教員の負担の多さとされます[5]。大阪府の数字で、全国の割合ではありません。

負担が大きくても、飼い続ける学校がある。その価値はどこにあるのでしょうか。

文部科学省は2024年6月3日〜7月8日、無作為に抽出した公立小学校(義務教育学校を含む)1,235校に調査し、1,224校が回答した[2]。学校が動物を所有して飼う学校は55.0%(673校)、他施設からの貸し出しが1.1%、両方が1.3%、児童個人の所有など(教室の昆虫など)が42.6%である。この「動物」には魚や昆虫を含み、ウサギを飼う学校の割合ではない。

哺乳類・鳥類・爬虫類(家庭動物飼養保管基準の対象)を学校として飼うのは回答校の23.9%(292校)で、その292校ではウサギが56.2%(164校)、カメ35.3%、モルモット7.2%、ニワトリ3.8%(11校)だった[2]。母数が3種類(703校・292校・1,224校)あるため、全回答校あたりに直すとウサギは164÷1,224で13.4%、ニワトリは11÷1,224で0.9%になる。13.4%はおよそ7〜8校に1校である。割合の合計が100%を超えるので、複数の種類を飼う学校がある。

減少を示す数字としては、大阪府教育委員会の調査として紹介された、ウサギやニワトリなどを飼う小学校が2007年度の80%近くから2022年度には20%あまりへ減ったという例がある。減少の最大の理由は教員の負担の多さとされ、夏休みなどの世話を教職員が当番で行うケースが増えている[5]。これは大阪府の数字を紹介記事経由で見たもので、全国の割合ではなく、先の全国調査とは母数も調べ方も違う。

負担が小屋を減らしているのなら、なぜ飼い続ける学校があるのか。そこには、家庭の事情と学習の位置づけがからんでいる。

5. 家で かえない 子の ために、学校で かう 意味は あるの?

5. 家で動物を飼えない子がいても、学校で飼う意味はあるのか

5. 家で動物を飼えない子と生活科 ── 小屋は目的か、手段か

マンションなどでは、犬や ねこを かえない 家が ふえて います。そこで へいせい10年に、動物の お医者さんの 会が、子どもが 動物の ぬくもりに ふれる ことが すくなく なって いる、と 国に つたえました[4]。

学校の 生活科では、1年生と 2年生で つづけて 動物を かう 活動が 書かれて います[3]。子どもが 気もちを こめて かかわると、動物は 「にげない」「ちかよって くる」「なつく」ように なる、と、学校の 動物を 研究する 会は 書いて います[3]。

うさぎを 使った 勉強の れいには、ちょうしんきで しんぞうの おとを 聞く 活動も あります[3]。

小屋は、動物と 出会うための 一つの 形です。では、世話は だれが する ものでしょう。

日本獣医師会は平成10年4月、文部省への提言で、集合住宅が増えて犬や猫を飼えず、子どもが動物のぬくもりに触れる機会が少なくなっていると述べ、学校での動物とのふれあいを勧めました[4]。

学習の面ではどうでしょうか。平成10年12月の小学校学習指導要領は、生活科の第1・2学年の内容に、動物を飼ったり植物を育てたりして、それらが生命をもち成長していることに気づき、生き物に親しみ大切にできるようにする、と定めていました[4]。これは平成10年版の条文で、「飼育小屋」という語はなく、小屋を作ることまでは書かれていません。

全国学校飼育動物研究会は、生活科では動物を飼う活動を2学年にわたって継続的に行うことが明記されていると述べます。同会は、子どもが動物に思いを持ってかかわると、動物が「逃げない」「近寄ってくる」「なつく」といった行動を示す例を紹介しています。ウサギを使う指導例は10〜15時間で、聴診器で心音を聞く活動などがあります[3]。

動物と出会うことが目的で、小屋はその一つの形です。そうだとすれば、小屋以外の形で出会う道もあるはずです。世話は、だれがどう分け合えばよいのでしょうか。

日本獣医師会は平成10年4月に文部省へ提言し、集合住宅の増加で犬や猫を飼えず、子どもが動物のぬくもりに触れる機会が少なくなっているとして、学校での動物とのふれあいを勧めた[4]。小屋の価値は、家庭で飼えない事情を学校が補う面にもある。

制度上の根拠も確かめておく。平成10年12月の小学校学習指導要領は、生活科の第1・2学年の内容(7)で、動物を飼ったり植物を育てたりして、それらが生命をもち成長していることに気づき、生き物に親しみ大切にできるようにすると定めていた[4]。これは平成10年版で、現行版は確かめていない。この条文は、動物を飼う活動を生活科の内容に含めているが、「飼育小屋」の語はなく、小屋の形までは定めていない。

全国学校飼育動物研究会は、日本の学校の動物飼育を100年以上の歴史、生活科に位置づけられてからおよそ30年とし、生活科では2学年にわたって継続的に飼う活動を行うことが明記されているとする[3]。子どもが動物に思いを持ってかかわると、動物は「逃げない」「近寄ってくる」「なつく」といった行動を示すとされ、ウサギを使う指導例は10〜15時間、聴診器で心音を聞く活動などがある[3]。

こう並べると、小屋は目的ではなく、動物と出会い継続してかかわるための一つの形だと読める。そうであれば、世話の担い手や動物の持ち方を変える余地がある。実際に何が試されているのか。

6. 世話は、先生 ひとりで しなくても いいの?

6. 世話を先生ひとりで抱えないために、何が試されているか

6. 先生ひとりで抱えない ── 管理者・獣医師・貸し出しの試み

休みの 日の 世話は むずかしい ものです。国の 調査ちょうさでは、うさぎなどを かう 292校の うち、休みの 日の 世話の しくみを 整えて いる 学校が 76.7%、整えて いないのが 11.6%でした[2]。

国の 通知は、先生 ひとりに まかせきりに しない ように、と 書きます。休みの 日は、教育委員会や 地いきの ボランティア、家の 人、子どもの 力を かりる ことが 書かれて います[2]。

あいち県の 動物の お医者さんの 会では 2020年から、動物病院で かって いる モルモットを、1か月から 1年 だけ 学校に かす 取り組みを 始めました。えさや ケージ、病院の 代金は その 会が 出す、と しょうかいされて います[5]。東京都の 小学校には、夏休みに モルモットを 子どもの 家に あずける ところも あります[5]。

小屋を もたなくても 動物と 会える 形が、いま ためされて います。

2024年の調査では、哺乳類・鳥類・爬虫類を飼う292校のうち、休日等の管理体制を整えている学校は76.7%(224校)でした。整えておらず不適切な状態を招く可能性があるとされたのは11.6%(34校)です[2]。11.6%は292校の中での割合で、全国の学校の1割ではありません。

文部科学省の通知は、これらの動物を飼う場合、休日の清掃・給餌の体制、獣医師等の指導、動物と小屋などを管理する「管理者」を置くことを求め、特定の教職員に任せきりにしないよう、教育委員会が学校と連携して体制をつくるとします。休日は教育委員会・地域ボランティア・保護者・児童の協力を得て、教師に過度な負担をかけないようにするとも書かれています[2]。

獣医師が加わる動きは、昔からあります。日本学術会議の提言によれば、昭和50年代から各地で獣医師が学校の動物飼育に関わり、平成元年以降は教育委員会が獣医師会と連携して支援する例が増え、平成14年9月には23都道府県の約250市区町村が連携していました[4]。同じ提言は、教員養成課程に動物飼育の授業がなく、多くの教師が適切な飼育法を知らないことも指摘しました[4]。先生個人の力不足というより、習う機会が仕組みとして用意されていないことが問題とされたのです。

新しい形も紹介されています。愛知県獣医師会は2020年から、動物病院で飼うモルモットを1か月〜1年の期間限定で学校に貸し出す「ホスティング」を始め、えさ・ケージ・診療費は獣医師会が負担し、学校が望めば無償で譲渡するとされます。東京都大田区の小学校では、長期休暇中にモルモットを児童の家に預ける「ホームステイ」があります[5]。

2024年の調査で、哺乳類・鳥類・爬虫類を飼う292校のうち、休日等の管理体制を整えている学校は76.7%(224校)、整えておらず不適切な状態を招く可能性があるとされたのは11.6%(34校)だった[2]。獣医師等との相談体制は67.8%が整備、25.3%が未整備である。11.6%は292校の中の割合で、全国の学校の1割ではない。

通知は、これらの動物を飼う場合に、休日の清掃・給餌の体制、獣医師等の指導、動物と飼養施設(小屋等)を管理する「管理者」を置くことを求め、特定の教職員に任せきりにしないよう、教育委員会が学校と連携して体制をつくるとする[2]。休日は教育委員会・地域ボランティア・保護者・児童の協力を得て、教師に過度な負担をかけないよう留意とし、授業外の飼育環境づくりは原則「必ずしも教師が担う必要のない業務」と位置づけた[2]。

この方向は新しいわけではない。日本学術会議の提言によれば、昭和50年代から各地で獣医師が学校の動物飼育に関わり、平成元年以降は教育委員会が獣医師会と連携して支援する例が増え、平成14年9月には23都道府県の約250市区町村が連携していた[4]。同じ提言は、教員養成課程に動物飼育の授業がなく、多くの教師が適切な飼育法を知らない問題も指摘している[4]。個人の力不足ではなく、習う機会が制度として用意されていない点が問題とされた。

さらに、小屋を前提にしない形も出ている。紹介記事によると、愛知県獣医師会は2020年から動物病院で飼うモルモットを1か月〜1年の期間限定で学校へ貸し出す「ホスティング」を始め、えさ・ケージ・診療費は獣医師会が負担し、学校が望めば無償で譲渡する。東京都大田区の小学校では、長期休暇中にモルモットを児童の家に預ける「ホームステイ」がある[5]。これらは紹介記事の情報で、制度の詳細や効果の評価までは分からない。

7. 自分の 学校の 小屋を、見て みよう

7. 自分の学校では、だれがどう世話をしているのか聞いてみる

7. 確かめる道すじ ── 自分の学校と原典から

やってみよう。学校に 小屋や 動物が いたら、そとから 見て、だれが いつ 世話を して いるのか、先生や 当番の 人に 聞いて みましょう。小屋の 中には、かって に 入らないで ください。さわった あとは、手を あらいます。

小屋が ない 学校なら、「動物に 会える 場所は あるかな」と さがして みます。きょうしつの 生きものを だれが 世話して いるのか、先生に 聞いて みましょう。

もっと 知りたい 人は、国の 通知と、学校の 動物を 研究する 会の ホームページに、くわしい 話が あります。

やってみよう:自分の学校に小屋や動物がいれば、外から見て、「だれが」「いつ」「どんな世話を」しているのかを、先生や当番の人に聞いてみます。小屋の中には、勝手に入りません。動物にさわったあとは手を洗います。

小屋がない学校なら、教室の生きものをだれが世話しているのか、先生に聞いてみます。ここまでの流れでいえば、小屋は動物と出会うための一つの形でした。

原典に当たりたい人には、文部科学省の通知と別紙の調査結果(出典[2])、鈴木哲也の研究や全国学校飼育動物研究会の特集(出典[1][3])があります。

確かめる方法を2つ挙げる。①自分の学校に小屋や動物があれば、外から見て、「だれが」「いつ」「どんな世話を」しているのかを、先生や当番の人に聞く。小屋の中には勝手に入らず、動物にさわったあとは手を洗う。2024年の調査で見た休日の体制や管理者の話と、自校の実際を照らし合わせる。

②小屋がない学校なら、教室の生きものをだれが世話しているのか、先生に聞く。小屋がなくても、学校で動物と継続してかかわる方法があるか、あわせて尋ねてみる。

資料としては、文部科学省の通知と別紙の調査結果(出典[2])、鈴木哲也の研究(出典[1])、全国学校飼育動物研究会の特集(出典[3])、日本学術会議の提言(出典[4])がある。鈴木の研究は事例の集まりであり、起源の断定には使えない点も、あわせて読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:文部科学省の通知と調査結果、日本学術会議の提言、全国学校飼育動物研究会の資料、研究者の論文、紹介記事を使いました。何に使ったかは、各項目の最後に書いています。

  1. 鈴木哲也「戦前の学校飼育動物の授業利用の視点から探る」(全国学校飼育動物研究会)。https://www.schoolanimals.jp/file/512 (明治から昭和戦前期の学校での動物飼育、当番、小屋、教科書の記述)
  2. 文部科学省「学校における動物の飼育について(依頼)」別紙・調査結果(令和6年8月28日)。https://www.mext.go.jp/content/20240912-mxt_kyoiku02-100002611_001.pdf (2024年の全国調査の数字、休日の管理体制、通知の内容)
  3. 全国学校飼育動物研究会「学校の動物飼育に関する課題と改善策」特集。https://www.schoolanimals.jp/file/555 (生活科での動物飼育、子どもと動物の関わり)
  4. 日本学術会議「学校における動物飼育に関する提言」(2003)。https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1832.pdf (飼育への期待、獣医師との連携、日本獣医師会の提言、平成10年の学習指導要領の抜粋)
  5. いずみペット「消えた学校ウサギ。学校飼育動物のいま」(大阪府教育委員会の調査などを紹介)。https://www.izumi-pet.com/pet_information/2025/04/15/ (大阪府の減少の数字、愛知県のホスティングなど。紹介記事経由の情報)

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