1. きょうしつで おしえる 先生と、校長先生は どこが ちがうの?
1. 教室で教える先生と、校長は何が違うのか
1. 「教育をつかさどる」教諭と、「校務をつかさどる」校長
きょうしつで じゅぎょうを するのは、たんにんの 先生です。では、校長先生は、なにを する 人なのでしょう。
学校の きまりを 書いた ほうりつには、校長先生の しごとが こう 書いて あります。学校の しごとぜんぶを うけもって とりしきり、はたらく 人たちを かんとくする[1]。
ほうりつでは、この「うけもって とりしきる」ことを、「つかさどる」と いいます。たんにんの 先生は 「子どもの 教育を つかさどる」と 書かれて います[1]。
つまり、先生は 子どもたちを おしえる ことを うけもち、校長先生は 学校ぜんたいを とりしきる 人、という わけかたです。
法律に書かれた校長の役目
授業をしない日もある校長は、学校で何をしているのでしょうか。手がかりは、学校教育法の第37条にあります。小学校の校長について「校務をつかさどり、所属職員を監督する」と書かれています[1]。校務とは学校の仕事全体のこと、「つかさどる」は担当して取りしきる、という意味です。
同じ条文には、ほかの役職の説明もあります。教諭は「児童の教育をつかさどる」。副校長は「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」。教頭は、校長(と副校長)に事故があるときにその職務を代理し、いないときは職務を行います[1]。
教諭が受け持つのは子どもの教育で、校長が受け持つのは学校全体の仕事です。範囲の広さが違います。では、その「全体」のなかで、校長の名前が条文に出てくる場面は、どんなところでしょうか。
学校教育法第37条は、小学校の校長の職務を「校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定める(中学校等には準用)[1]。「つかさどる」は担当して取りしきるの意で、校務は学校の仕事全体を指す。同じ条文は、教諭を「児童の教育をつかさどる」、副校長を「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」と書き分けている。教頭は、校長(と副校長)に事故があるときは職務を代理し、欠けたときは職務を行う[1]。
この書き分けから分かるのは、教諭の守備範囲が「児童の教育」であるのに対し、校長は教育を含む学校の仕事全体を取りしきり、所属職員を監督する立場に置かれているという点である。だから、学校の中の誰がどこまで決めるかを考えるとき、校長は学校の仕事全体を取りしきり、所属職員を監督する立場として条文に出てくる。
ただし、条文が書くのは大枠で、日々の仕事の細部ではない。そこで、校長の名前が条文に直接出てくる場面を、具体的に見る。最初は、卒業式である。
2. そつぎょうしょうしょを わたすのは、なぜ 校長先生?
2. 卒業証書は、校長が「認めた者」に渡す
2. 卒業証書の授与:「認める」のも「授与する」のも校長
そつぎょうしきで、校長先生が 一人ずつ そつぎょうしょうしょを わたします。これは、ただの ならわしでは ありません。
きまりを 書いた 文書には、「校長は、小学校の ぜんぶの かていを おえたと みとめた 人には、そつぎょうしょうしょを わたさなければ ならない」と 書いて あります[2]。
「みとめる」のも、「わたす」のも、校長先生です。そつぎょうしょうしょは、校長先生が 「ちゃんと 6ねん間 べんきょうしたね」と みとめた しるしなのです。
「認める」と「授与する」が、同じ人
卒業式の場面は、法令にも書かれています。学校教育法施行規則の第58条は、小学校の全課程を修了したと認めた者に、校長が卒業証書を授与しなければならない、と定めています[2]。
この条文では、「修了したと認める」ことと「証書を授与する」ことの両方の主語が校長です。卒業証書は、校長が認めたことを形にしたものだと読めます。
ただ、条文が書くのは「校長が認める」という主語までです。認めるときに先生たちの評価をどう使うかといった決め方は、この条文には書かれていません。では、校長が決められるのは、卒業のことだけでしょうか。次は、朝の教室の場面です。
卒業証書の授与は、学校教育法施行規則第58条が、小学校の全課程を修了したと認めた者に「校長は…授与しなければならない」と定める[2]。注目すべきは、「修了したと認める」判断と「授与する」行為の主語がどちらも校長で、しかも「授与しなければならない」と義務の形で書かれている点である。校長は、修了を認めた者に証書を授与する義務を負う者として条文に名が出る。
ただし、条文は主語を定めるだけで、校長がどのような手順で修了を認めるかまでは書いていない。教員の評価や会議を踏まえる運用があるとしても、それは別の取り決めの話であり、この条文から言えるのは「認める主体は校長」という点に限られる。
では、校長が判断主体として条文に名を出される場面は、卒業だけか。そう考えて別の法律を調べると、朝の教室の場面が見つかる。
3. かぜを ひろげない ために、休みを きめるのは?
3. 感染症で休ませる「出席停止」を決めるのは誰か
3. 学校保健安全法第19条:出席停止の権限は校長にある
インフルエンザのような びょうきは、うつる ことが あります。学校で ひろがらない ために、びょうきの 子に おやすみして もらう ことが あります。これを、しゅっせきていしと いいます。
この しゅっせきていしを きめられる 人は、ほうりつで 校長先生と 決まって います[3]。びょうきの 子が わるい わけでは ありません。ほかの 子の からだも まもる ための しくみです。
でも、学校ぜんぶを おやすみに する ときは ちがいます。それを きめるのは、学校を つくった ところです。公立の 学校では、きょういくいいんかい などです[3]。
休ませる決定は、校長の権限
学校保健安全法の第19条は、感染症にかかっている、かかっている疑いがある、またはかかるおそれのある児童生徒に対し、校長が政令の定めに従って出席を停止させることができる、と定めています[3]。
病気の子が悪いのではありません。ほかの子への広がりを防ぐための、学校の仕組みです。
学校全体を休みにする人は別
同じ法律の第20条では、学校全体の臨時休業を決めるのは学校の設置者とされています[3]。公立の小学校なら、設置者は市区町村の教育委員会などです。出席停止は校長、臨時休業は設置者、と決める人が区別されています。
校長の判断が、病気、卒業、と、子どもの毎日にじかに関わることは分かりました。では、毎日ある給食にも、同じように「決める人」はいるのでしょうか。
学校保健安全法第19条は、感染症にかかっている、疑いがある、またはかかるおそれのある児童生徒等に対し、校長は政令の定めるところにより出席を停止させることができると定める[3]。ここでは、個々の児童生徒の出席停止の判断が、校長の権限として書かれている。しかも「疑い」「おそれ」まで対象に含むため、症状が確定する前でも、予防の観点から停止を決められる。
一方、学校全体の臨時休業を決めるのは、第20条により学校の設置者(公立なら教育委員会など)である[3]。なぜ分けているのかは、条文からは読み取れないが、少なくとも「一人ひとりを休ませる判断」と「学校全体を止める判断」で、決める人が違うことは確かである。
出席停止は、病気の児童生徒を責めるためのものではなく、ほかの児童生徒への広がりを防ぐ仕組みとして置かれている。では、毎日の給食のように、体に入るものを守る仕組みには、決める人がいるのか。
4. きゅうしょくは、みんなより 30ぷん 先に たしかめる
4. 給食を食べる30分前に、確かめる人がいる
4. 学校給食衛生管理基準が定める、摂食開始の30分前の検食
きゅうしょくの じかんが くる まえに、あんぜんかどうかを たしかめる 人が います。これを、けんしょくと いいます[4]。
みんなが 食べはじめる 30ぷん まえまでに、きゅうしょくに 出す 食べものを ぜんぶ たしかめます。あらかじめ、たしかめる 人を 決めて おきます[4]。
たしかめる 人は、校長先生とは かぎりません。学校ごとに 決めます。校長先生 ひとりが すべてを する わけでは なく、いろんな 人が 分けあって、学校を まもって います。
全部の食品を、食べ始める前に確かめる
給食には「検食」という確認があります。学校給食衛生管理基準では、給食の全ての食品について、児童生徒が食べ始める30分前までに検食し、異常がないかを確かめる、とされています。あらかじめ責任者を決めておきます。責任者がいないときは、代わりの人が行います[4]。
責任者は、校長とは限らない
基準が定めているのは「責任者を決める」ことで、それが校長だとは書いていません。校長が学校全体の責任者であることと、検食の担当が誰かは、別の話です。学校の安全は、校長が決めるものと、別の人が受け持つものが組み合わさって守られています。
では、そんな校長になるのは、どんな人でしょうか。
学校給食衛生管理基準は、給食の全ての食品を、児童生徒の摂食開始の30分前までに検食し、異常がないことを確認するよう求める。あらかじめ検食の責任者を決めること、責任者が不在のときは代わりの者が行うことも定める[4]。
ただし、基準が定めるのは「責任者を決めること」であり、校長が行うとは限らない。校長が検食を行う学校があるかどうかは、この基準だけでは言えない。ここで確かなのは、校長が学校全体の責任者であっても、給食の安全は、責任者をあらかじめ決める仕組みで分担されているという点である。
こうして見ると、校長の仕事は「何でも自分でやる」ものではなく、「学校全体を取りしきる判断」と「分担の仕組み」が組み合わさっている。では、その校長には、誰がなれるのか。
5. 校長先生は、ぜんいん 先生だった 人?
5. 校長は、教員だった人しかなれないのか
5. 民間人校長と、校長になれる人の幅
校長先生は、ずっと 先生を して きた 人だけが なると おもって いませんか。じつは、先生を した ことの ない 人が 校長先生に なる こともあります[5]。
むかしは、先生の けいけんが ひつようでした。でも、へいせい12ねんに きまりが かわり、かいしゃなどで はたらいて いた 人も 校長先生に なれるように なりました[5]。
2010ねん 4がつには、先生だった 人では ない 校長先生が、ぜんこくの 公立の 学校で 106人 いました[6]。
平成12年の規則の改正
以前は、校長になる人の資格がもっと厳しく決められていました。平成12年の省令の改正で資格要件がゆるめられ、教員の経験がない民間人なども校長になれるようになりました[5]。平成17年4月までに、38の都道府県・市で、あわせて100人が登用されたと、文部科学省は報告しています[5]。
2010年には106人
文部科学省の別の資料では、教員出身でない人を公立学校の校長に任用していた教育委員会は、平成21年4月に43教委で96名、平成22年4月に43教委で106名と報告されています[6]。これは2010年時点の数で、今の人数ではありません。また、平成17年の「累計100人」とは数え方が違うので、並べて増減は言えません。
校長の資格は、教員免許や教育に関わる仕事の経験などで決められています。ただし、学校の運営上とくに必要なときは、同じくらいの力があると認めた人を、任命する側が校長にできる、とされています[2]。
校長のいま
令和6年4月1日現在、公立学校の校長のうち女性は22.2%で、約4.5人に1人です(100÷22.2で計算)。副校長・教頭は27.2%、女性管理職全体では24.9%で過去最高でした[7]。この22.2%は公立学校全体の数で、小学校だけの値ではありません。
平成12年の省令改正で校長の資格要件が緩和され、教員経験のない民間人等も校長に任用できるようになった。文部科学省は、平成17年4月現在、38都道府県市で累計100人が登用されていると報告している[5]。
ところで、教員出身でない公立学校の校長は、平成21年4月に43教委で96名、平成22年4月に43教委で106名である[6]。ただし、前者は「累計の登用数」、後者は「その時点の在職数」と、数え方が別の可能性があるため、100人→106人を増加と読んではならない。106名は2010年時点の数で、「今は何人」とは言えない。
校長になる資格の枠組みは、学校教育法施行規則第22条にあり、教員免許と教育に関わる職の年数などが基本で、学校運営上とくに必要な場合に、同等の資質があると認める者を任命権者が校長にできる、と要約されている[2]。年数の細部は、原文で確かめてほしい。
校長の人物像の幅は、性別でも見られる。令和6年4月1日現在、公立学校の女性管理職の割合は24.9%で過去最高、うち校長は22.2%、副校長・教頭は27.2%だった。前年度より724人増えている[7]。22.2%は約4.5人に1人(100÷22.2)にあたる。ただし、この値は公立学校全体の校長で、小学校だけの値ではない。
6. 自分の 学校で、校長先生の しごとを さがして みよう
6. 自分の学校で、校長の仕事を探してみる
6. 条文と、自分の学校のあいだを行き来する
つぎに 校長先生を 見かけたら、「この 人は、いま、なにを きめる 人なんだろう」と おもって みましょう。
学校だよりに、校長先生の ことばが のって いたら、読んで みましょう。学校の しごとの どの ところかを かんがえると、おもしろく なります。
話す きかいが あれば、「どんな しごとを して いますか」と、きいて みても いいですね。
今日できること
学校だよりやお知らせに、校長が書いた文章があれば読んでみてください。文章の中のどこが、法令の「校務」にあたるのかを考えると、仕事の幅が見えてきます。
機会があれば、校長先生に「どんな仕事をしていますか」と聞いてみるのも手です。
原典を読むなら
e-Govの法令検索で、学校教育法の第37条を引くと、校長・副校長・教頭・教諭の役目が並んで読めます。「つかさどる」が出てくる文を探してみてください。
学校教育法第37条は、e-Gov法令検索で全文を読める。校長・副校長・教頭・教諭の職務の書き方を見比べ、「つかさどる」がどの職に、どんな言い方でつくかを確かめると、役割の分け方が分かる。卒業証書は施行規則第58条、出席停止は学校保健安全法第19条、臨時休業は第20条で確かめられる。
教員出身でない校長の人数は、文部科学省の教員の人事管理に関するページ(本稿の[5][6])にある。ただし、数字は年ごとに更新されるので、最新の版を探してから使うこと。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。条文の細部や数字は、リンク先の最新の版で確かめてください。
- 学校教育法(第37条)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322AC0000000026 (校長・副校長・教頭・教諭の職務)
- 学校教育法施行規則(第22条・第58条)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/322M40000080011 (卒業証書の授与・校長の資格)
- 学校保健安全法(第19条・第20条) https://hourei.net/law/333AC0000000056 (出席停止と臨時休業)
- 文部科学省「学校給食衛生管理基準」をふまえた資料 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/__icsFiles/afieldfile/2020/20200121_mxt_kouhou02_1299359_03.pdf (検食の決まり)
- 文部科学省「民間人校長の登用」(校長の資格要件の緩和と民間人等の登用状況) https://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/kekka/06032806/001/002.htm (平成12年の資格要件の緩和)
- 文部科学省「教員の人事管理」資料 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1318882.htm (教員出身でない校長の人数)
- 文部科学省「公立学校の女性管理職」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1411820_00008.htm (令和6年の女性校長の割合)
なおした ところ
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