1. しずめた あと、じしんけいは なにを するの?
1. 船から落とされた地震計は、海底に着いたら何を始めるのか
1. 投入から観測開始まで:自重で沈み、着底で記録を始める機械
この じしんけいは、水の おす ちからに たえる いれものに 入って います。したには、だいと おもりが ついて います。
ふねから そっと 海に いれると、おもさで 海の 底へ しずんで いきます。ロープも でんせんも ありません。
そこに つくと、だれも ボタンを おさなくても、じしんけいは じぶんで はかりはじめます。はかった ものは、いれものの 中の 記録の きかいに たまって いきます[1]。
では、1ねんの おわりに、この きかいは どうやって もどって くるのでしょう。
自己浮上式と呼ばれるこの海底地震計は、水圧に耐える容器の中に地震計を収め、架台とおもりを取り付けてあります。作業船から海へ入れると、その重さで海底まで沈みます[1]。
海底に着くと、自動で観測が始まります。人が付き添うことも、ケーブルで船や陸とつながることもありません。観測したデータは、容器の中の記録器にためられていきます[1]。
つまりこの機械は、「落としたら、あとは自分で測って、自分で覚えておく」ように作られています。落とした場所に置き去りにするだけなら、記録を取り出す手段がありません。そこで大事になるのが、帰り道の仕掛けです。
では、どうやって海面まで戻ってくるのでしょうか。
自己浮上式海底地震計は、耐圧容器に収めた地震計に架台と錘を付けた構造をとる。作業船から投入すると、錘の重さによって海底へ沈み、着底後は自動で観測を始める。データは容器内の記録器に蓄積される[1]。
この方式の特徴は、通信も給電も外部に頼らない点にある。観測中は、船・陸との線もつながっていない。したがって、記録は機械の中にためられたまま、回収されるまで取り出せない。観測の成否は、沈める作業と、帰り道の仕掛けの両方にかかっている。
では、その帰り道はどのように作られているのか。
2. おもりを てばなして うかぶ、って どういうこと?
2. 船の音の合図で、地震計はどうやって浮かび上がるのか
2. 音響信号による切り離しと、浮上後の位置探索
かえる ときは、ふねから 音の 合図を 海の 中へ おくります。人には きこえにくい 合図ですが、じしんけいは ちゃんと きき分けます[1]。
合図を うけとると、じしんけいは だいと おもりを 切りはなします。おもりが なくなると、かるく なった きかいは、うきの ちからで 海めんへ のぼります。
うかんだ あとは、ただよって います。そこで、電波を 出して、フラッシュライトを ぴかぴか させて、ばしょを 知らせます。ヘリコプターや ふねが、その 光と 電波を たよりに さがして、ひろいあげます[1]。
ひろい 海で、小さな きかいを さがすのは たいへんそうです。どうして こんな、ふしぎな やりかたに なったのでしょう。
回収のときは、船の上から特定の音波を海中へ送ります。地震計がそれを受け取ると、架台とおもりを切り離します。おもりがなくなった機械は、浮力で海面へ上がってきます[1]。
ここで、「合図を聞いておもりを手放す」ことが、この方式のいちばんの仕掛けです。ロープも、海面まで届く線もないのに、船が合図を送るだけで機械が自分で動き出します。
浮かんだあとの機械は、海面を漂います。海に流されて見失わないよう、位置を知らせるための電波を出し、フラッシュライトも点滅させます。ヘリコプターや船が、その光と電波を頼りに探して回収します[1]。
音で呼んで、光と電波で見つけてもらう。船の音の合図が、海底の地震計の「帰るスイッチ」になります。
では、この方式は、いつからこの形になったのでしょうか。
回収時には、船上から特定の音波信号を送る。海底の地震計はこれを受信すると架台と錘を切り離し、浮力で海面へ上昇して漂流する。浮上後は電波を発信し、フラッシュライトを点滅させて位置を知らせ、ヘリコプターや船が光と電波を頼りに探して回収する[1]。
海の中では音で合図し、海面では光と電波で位置を知らせる。水中では電波が届きにくいためと考えられる。
では、なぜ音で浮上させる形が定着したのか。それは、以前の方式の不便さと関わる。
3. むかしの やりかたは、なにが たいへんだったの?
3. ロープでブイにつなぐ方式は、何が大変だったのか
3. 係留方式の弱点と、自己浮上式が選ばれた事情
むかしは、じしんけいを ロープで 海めんの ブイに つないで いました。ブイは、うきの ことです。
このやりかたは、ひきあげるのに 手間が かかりました。そして、ブイが 流されて なくなって しまう ことも おおかったと、東京大学の せつめいに 書かれて います[2]。
いまの 方しきは、おとした ばしょの 上から ふねが 音を 送ると、じしんけいの ほうから うかんで きます。さがす ところが、へりました[2]。
ロープを やめた ことで、あつかいが らくに なったのです。
東京大学の解説によれば、以前は地震計をロープで海面のブイにつなぐ係留方式が使われていました。この方式は回収に手間がかかり、ブイが流されて失われることも多かったとされます[2]。
これに対し、今の自己浮上式は、測器を落とした位置の上から船が音波信号を送ると、地震計のほうから浮上してきます[2]。ブイを海面にずっと浮かべておく必要がないので、流されて失う心配が減り、扱いやすくなりました。
ブイが無くなったことを、「道具が一つ減った」と考えるとわかりやすいかもしれません。海面でただ待ち続けるものがなくなり、必要なときだけ、船が合図を送ればよくなったのです。
ところで、ロープなしで海底に置いておくなら、観測はどれくらいの間、続けられるのでしょうか。
東京大学の解説では、かつての主流はロープで海面のブイとつなぐ係留方式であり、回収に手間がかかるうえ、ブイが流出して失われることも多かったという[2]。ただし、失われた割合などの数値は資料にない。
これに対し自己浮上式は、測器を落とした位置の真上で船が音波信号を送ると、地震計が浮上する。ブイとロープという海面側の要素を持たないため、流出による紛失の経路そのものが減り、扱いが容易になった[2]。
設計の発想が逆転している点が重要だ。係留方式は「目印を常に海面に出しておく」方式、自己浮上式は「必要なときに自分で上がる」方式である。その代わり、観測中の機械は完全に孤立し、電池と記録器だけで過ごすことになる。この条件が、次の観測期間の話に直結する。
では、その孤立した状態で、どれだけ長く記録をとれるのか。
4. 1ねんも、でんちで もつの? とけいは くるわないの?
4. 電池で1年。長い待ち時間の中で、時計はどれほど正確なのか
4. 観測期間の延長と、時計のずれという課題
タイマーで うごく はじめのころの じしんけいは、1か月くらいの かんそくが できました。それが 2000ねん ごろから、電池を たくさん つめるように なり、1ねんの あいだ、つづけて 観測できるように なりました[2]。
地震は、いつ おこるか 分かりません。ながく まつほど、いろいろな 地震を とらえる ことが できます。
もう ひとつ 大じなのが、とけいです。いつ ゆれたのかが 分からないと、記録が やくに 立ちません。そこで、おくる まえと かえった あとに、GPSの じこくと あわせて、ずれを なおします。
ただし、いつも この とおりに なるとは かぎらない、とも 書かれて います。
1ねんも まつ きかいが、どうして 海の そこに おかれるのでしょう。
観測期間は、初期のタイマー式で約1か月でした。2000年ごろ以降は電池をたくさん積めるようになり、1年間の連続観測ができるようになりました[2]。地震調査研究推進本部の用語集も、最近は1年以上の記録がとれると説明しています[1]。
長く置くほどよいのは、地震が起こる時期を選べないからです。ただし、ためた記録は、いつの揺れなのかが分からなければ役に立ちません。そのため、時計がもう一つの大切な部品になります。
海底の時計は、設置前と回収後にGPSの時刻と合わせます。その間にずれが一定の割合で増えたと仮定して、記録の時刻を直す方法があります。これは海外の研究で紹介された一例です。水深の深い海底は水温が安定するので、時計に使う水晶発振器の速さが変わりにくい、という理由があげられています。
では、そんな機械が、なぜわざわざ海の底に置かれるのでしょうか。
観測期間は、初期のタイマー式で約1か月だった。2000年頃以降は電池の搭載量が増え、1年間の連続観測が可能になった[2]。用語集も「最近では1年以上の記録」と説明している[1]。
長期化が重要なのは、地震の発生時期を選べないためである。ただし、記録の価値は時刻の正確さにも左右される。時計のずれは、設置前と回収後にGPS時刻と合わせ、観測中に一定の割合で増えたと仮定して補正する。この補正方法は一例である。水深の深い海底は水温が安定するため、時計に使う水晶発振器の速さが変わりにくい、という理由が挙げられている。
以上から、1年の孤立観測は、電池・記録器・時計という3つの部品の組み合わせで成り立っている。だが、これほど手間をかけて海底に置く動機は何か。
5. りくから ひく ケーブルの じしんけいとは、どう ちがうの?
5. 海底の地震計は、ケーブルでつなぐ観測網とどう使い分けられるのか
5. ケーブル式観測網(S-net・DONET)との比較と役割分担
海の 下で おこる 大きな 地震は、りくの 観測だけでは すがたが とらえにくいと されます。そこで、海の 上でなく 地震の 真上の 海の そこに 地震計を おく ことが あります[4]。
りくから ケーブルを のばして、そのまま データを おくる 方しきも あります。たとえば S-netは、150か所の そうちを、海の 底の 光ケーブルで つなぎ、すぐに 観測します。ケーブルの 長さは ぜんぶで 約5500キロメートルです[5]。
南海トラフの ちかくには DONETと いう しくみが あり、DONET1は 51か所で つづけて います。おおきな 地震が しんぱいされる ばしょを みはって、データは すぐに 気象庁や 研究所へ おくられます[6]。
ただし、ケーブルは 長く、大きな 電力が いります。だから、みじかい あいだだけ、すぐ 知らせなくて よい ときは、うかぶ じしんけいが 向いて います[1]。
りょうほうに、とくいな ことが あるのです。
海溝型地震の震源域は海にあります。陸の観測網だけでは捉えにくい地震の姿を、震源域の真上で測ろうと、海底に地震計が置かれます。東京大学地震研究所は、東北地方太平洋沖地震の震源域でも、地震のあとに長期観測型の自己浮上式海底地震計で観測を行いました[4]。
一方、リアルタイムでデータを送りたければ、ケーブルが要ります。防災科学技術研究所のS-net(日本海溝海底地震津波観測網)は、150か所の観測装置を海底光ケーブルでつなぎ、全長は約5500kmです。平均約25の観測点を約30km間隔で網の目状に並べています[5]。漁業が行われる水深1500mより浅い海域では、深さ1m程度の溝を掘り、ケーブルと装置を埋めます[5]。
南海トラフの熊野灘と紀伊水道沖に展開されるDONETでは、DONET1が51観測点で運用を続けています。巨大地震が心配される「破壊開始域」の監視が主な目的で、データは陸上局を通して気象庁や研究機関へすぐに送られます[6]。
ケーブルには、長いケーブルと大きな電力が必要です。自己浮上式は、限られた期間の観測で、リアルタイムのデータが要らないときに使われます[1]。「すぐ知らせる網」と「期間を決めて詳しく記録する機械」で、役割が違うのです。
この違いを、身近なことで確かめるには、どうしたらいいでしょうか。
海溝型地震の震源域は海域にあり、陸上の観測網では捉えにくい地震像を、震源域の直上で観測するために海底地震計が用いられる。東京大学地震研究所は、東北地方太平洋沖地震の震源域で、地震後に長期観測型の自己浮上式海底地震計による観測を行った[4]。ただし、この点は検索結果の要旨にもとづく。
自己浮上式は、限られた期間の観測でリアルタイムのデータが不要なときに使う。リアルタイム送信にはケーブルが必要で、長いケーブルと大きな電力がかかるからである[1]。
防災科研のS-netは、150か所の観測装置を海底光ケーブルでつなぐリアルタイム観測網である。ケーブルは全長約5500km(資料により5700kmとする記述もある)、サブシステム1つは約800kmで、平均約25観測点を約30km間隔で網の目状に配置する。装置は3成分速度計、ハイゲイン・ローゲインの6成分加速度計、水圧計、傾斜計で構成され、水深1500m以浅の漁業海域では、深さ1m程度の溝を掘って埋設する[5]。
DONETは南海トラフの熊野灘と紀伊水道沖に展開され、DONET1は51観測点で運用が続く(DONET2の点数は本記事の資料に載っていない)。ジンバル機構で水平に保つ強震計・広帯域地震計や水圧計を備え、巨大地震が心配される「破壊開始域」の監視が主な目的で、データは陸上局経由で気象庁や研究機関へ即時に送られる[6]。
整理すると、ケーブル式は「常時・即時」、自己浮上式は「期間限定・後から回収して詳しく調べる」に向く。電力と通信を引き換えに手放す代わりに、ケーブルを敷きにくい場所にも機械を置きやすいという柔軟さを得ている、とも読める(これは筆者の整理)。両者は競合というより補完の関係にある。
では、この話から、読者は何を自分で確かめたくなるだろうか。
6. もっと しりたく なったら
6. 浮かぶ地震計の仕掛けを、家で想像してみる
6. 資料に当たって、方式の違いを自分でまとめる
きょう できる こと
おふろの 水に、かるい ものと おもい ものを いっしょに いれて みましょう。からの ペットボトルに、ゴムで 小さな 石を とめて、しずむ ように します。ゴムを はずすと、うかびます。じしんけいの 帰りかたの まねです。おとなの いる ところで、水を こぼしても いい ばしょで やりましょう。
しらべて みよう
うかぶ じしんけいと、ケーブルの じしんけい。どちらが どんな ときに むくのか、じぶんの ことばで せつめいして みましょう。
水の中で試す
洗面器の水と、からのペットボトルを用意します。ペットボトルに輪ゴムで小石をとめ、沈むように石の数を調節します。そのあと輪ゴムを外すと浮かびます。おもりを手放すと浮く、という仕掛けの基本を、目で確かめられます。水を使うので、大人のいるところで、こぼしてもよい場所でやってください。
方式の違いを言葉にする
浮上式とケーブル式について、電力・通信・観測期間の3つを紙に書き比べます。どんな場面でどちらが向くかを、自分の言葉で説明してみます。
次に気になる問い
1年間、海底で待った記録は、回収されたあと、どんなふうに読み解かれるのでしょうか。それは、この記事ではまだ扱っていない続きの問いです。
方式の違いを一覧にしてみる
自己浮上式(期間限定・リアルタイム不要、電池と記録器)とケーブル式(常時・即時、長いケーブルと大きな電力)を、自分で表にしてみるとよい。資料ごとに数値が異なる点(S-netのケーブル全長が約5500kmと約5700kmなど)は、表に出典と「約」を添えて残しておく。
原典に当たる
用語集[1]は短い。東京大学の解説[2]は開発の経緯、防災科研のS-net[5]とDONET[6]のページは観測網の構成がまとまっている。時計の補正の考え方は、海外の研究の紹介にもとづく一例である。
次の問いとして、回収した1年ぶんの記録を、陸の観測網のデータとどう突き合わせて地震の姿を描くのか、が残る。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 地震調査研究推進本部 用語集(海底地震計). https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_popup_type_obs/ (沈め方・浮上・回収の流れ、自己浮上式とケーブル式の使い分け)
- 東京大学 UTokyo FOCUS(海底地震計の開発). https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00074.html (係留方式との違い、観測期間が伸びた経緯)
- 東京大学地震研究所 成果報告(観測). https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/YOTIKYO/ex/15seikahoukoku/8.kansoku/8.kansoku.pdf (時計の公称精度。検索結果の要旨にもとづく)
- 東京大学地震研究所 東北地方太平洋沖地震 調査研究. https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/TohokuChosa/Tokatsu/PDF/1-1.pdf (震源域での海底観測の位置づけ。検索結果の要旨にもとづく)
- 防災科学技術研究所 S-net. https://www.seafloor.bosai.go.jp/S-net/ (観測点の数・ケーブルの長さ・装置の構成)
- 防災科学技術研究所 DONET. https://www.seafloor.bosai.go.jp/DONET/ (南海トラフの観測網の目的と観測点数)
なおした ところ
更新履歴
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